令和2年1月23日、厚生労働省は12製品19品目を承認しました。
今回の記事では同日に承認された医薬品についてまとめています。
この記事を読んでもらえれば承認された新医薬品について大まかに理解してもらえると思います。
薬局で勤務する者としてやはり注目なのは新規オレキシン阻害薬 デエビゴ錠ですね。
アトピー性皮膚炎に使用する初の概要JAK阻害薬 コレクチム軟膏0.5%や新規尿酸排泄促進薬 ユリス錠も注目です!
今回承認された新医薬品一覧
まずは、今回承認された新医薬品について五十音順にまとめました。
新医薬品
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新剤形
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新規格・新剤形(報告品目)
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新医薬品
まずは新医薬品として製造承認を受けたものについてまとめていきます。
アネレム静注用

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超短時間作用型BZD レミマゾラム

レミマゾラムは超短時間作用型ベンゾジアゼピン(BZD*1)です。
アネレム静注は超短時間作用型ベンゾジアゼピン系の静脈麻酔薬になります。
従来の麻酔ではジアゼパム(長時間型)、ミダゾラム(短時間型)が使用されています。
超短時間型であるレミマゾラムは国内外の臨床試験で麻酔作用・鎮静作用の速やかな発現・消失が示されています。(Chest. 2019 Jan;155(1):137-146. doi: 10.1016 PMID: 30292760)
ミタゾラムと同様レミマゾラムは水溶性です。
そのため、血管痛などの注射部位の発現を起こしにくく、他の製剤との混注も行いやすくなっています。
レミマゾラムが使用可能になることで麻酔使用時により速やかでより安全な鎮静が可能になると期待されます。
向精神薬として指定

新たに1物質を向精神薬に指定します(令和元年12月18日 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課)
+ 向精神薬に指定される物質
化学名:メチル=3-{(4S)-8-ブロモ-1-メチル-6-ピリジン-2-イル-4H-イミダゾ[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン- 4-イル}プロパノエイト及びその塩類
別名:レミマゾラム
- 施行日等
公布日:令和元年12月18日(水)
施行日:令和2年1月17日(金)
引用元:令和元年12月18日 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課
レミマゾラムは令和元年12月18日付で向精神薬に指定(施行は令和2年1月17日から)されているよ!
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コレクチム軟膏

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JAK阻害剤 デルゴシチニブ

デルゴシチニブはヤーヌスキナーゼ(JAK*2)阻害薬です。
細胞内の免疫活性化シグナル伝達を担うJAKの働きを阻害することで、過剰な免疫反応を抑制、自己免疫性疾患やアレルギー性疾患を改善すると言われています。
ヤーヌスキナーゼ
JAKを含む非受容体型チロシンキナーゼの多くは細胞外領域を持っていません。
細胞質側から細胞膜に結合しており、細胞内側の末端にチロシンキナーゼ部位をもつ構造です。
細胞膜表面に存在する受容体に免疫グロブリンやサイトカイン等が結合した結果、細胞質内で受容体タンパク質に結合しているJAKが活性化します。
活性化したJAKはまず受容体をリン酸化し、次に受容体に結合している下流分子であるシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT*2)をリン酸化させます。
その後、リン酸化されたSTATが種々の反応を引き起こしていくというわけです。
JAKは受容体とSTATの両方をリン酸化することから、二面神Janus(ヤーヌス)にちなんで「Janus kinase」(ヤーヌスキナーゼ)と呼ばれています。
デルゴシチニブはコレクチム軟膏という形で製剤化された初の外用JAK阻害薬であり、アトピー性皮膚炎に対する適応を有する初のJAK阻害薬です。
アトピー性皮膚炎の治療選択肢にJAK阻害薬が加わります!
「1回あたりの塗布量は5gまでとする。 」と使用量が決められているのがポイントですね。1本5gなので1回につき1本までしか使えない。
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デエビゴ錠

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2番目のオレキシン受容体機構薬 レンボレキサント

デエビゴ錠の成分であるレンボレキサントはオレキシン受容体拮抗薬です。
ベルソムラ(スボレキサント)に続いて2つ目のオレキシン受容体拮抗薬になります。
オレキシンは視床下部で産生される神経ペプチドの一つで、睡眠と覚醒の調整のほか、食欲や報酬系に関与していることが知られています。
レンボレキサントはオレキシン受容体に結合することでオレキシン神経伝達系を阻害し、睡眠導入や睡眠維持を促進します。
とにかく名前が言いにくい!「デエビゴ」って・・・。
デエビゴとベルソムラの比較
デエビゴとベルソムラを比較してみたよ!
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併用禁忌がないのは嬉しいけど、CY3A4阻害薬と併用する際に用量調節がいるのは変わらないね。
デエビゴには取扱い上の注意の記載がない・・・。一包化いける!?
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ニュベクオ錠

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3番目のアンドロゲン受容体阻害薬 ダロルタミド

非ステロイド性アンドロゲン受容体阻害薬。
新規の非ステロイド性アンドロゲン受容体阻害薬としてはイクスタンジ(エンザルタミド)、アーリーダ(アパルタミド)に続いて3剤目になります。
新規 非ステロイド性アンドロゲン受容体阻害薬 3剤の比較
ニュベクオとアーリーダ、イクスタンジを比較してみたよ!
それぞれ長所・短所があるけど、ニュベクオは痙攣リスクがないことと相互作用が少なめなのがメリットだね。
1日2回服用ってのは惜しいよね。ニュベクオはアーリーダと同じく遠隔転移がある場合は使用できないんだね。
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ノクサフィル錠・ノクサフィル点滴静注

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新規トリアゾール系抗真菌薬 ボサコナゾール

ボサコナゾールは新規のトリアゾール系抗真菌薬です。
真菌細胞の細胞膜を構成するエルゴステロールの生合成を阻害することで抗真菌活性を示します。
ボサコナゾールは他のトリアゾール系抗真菌薬と比較して、幅広い抗真菌活性を持っており、他のアゾール系抗真菌薬が無効な接合菌(ムコール目)に対しても抗真菌活性を有しています。
白血病などの血液腫瘍では造血幹細胞移植が行われますが、移植後しばらくの間は血液細胞の働きが安定せず、著しく免疫が低下した状態になります。
通常であれば真菌の感染は皮膚表面で起こる(表在性真菌症)のがほとんどですが、免疫力が低下した状態では真菌が体内の臓器に感染してしまう可能性があります。
このような真菌感染を(侵襲性)深在性真菌症といい、発症してしまうと予後不良なため、同種造血幹細胞移植後等では抗真菌薬の予防投与が国内外のガイドラインで推奨されています。
幅広い真菌の種類に対して効果を発揮するボサコナゾールによる深在性真菌症の予防効果が期待されます。
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プロウペス腟用剤

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ジノプロストンを用いた腟用剤

有効成分であるジノプロストンは内服では『プロスタグランジンE2錠0.5mg「科研」』として「妊娠末期における陣痛誘発並びに陣痛促進」に対して使用されています。
ジノプロストンはプロスタグランジンE2(PGE2*3)製剤です。
PGE2によるコラゲナーゼ活性の上昇により、子宮頸管熟化を促進します。
プロウペス腟用剤は取り出し用ネットに入った剤形で、12時間膣内に留置可能ですが、必要に応じてネットを引き抜くことで投与を中止できます。
子宮頸管熟化不全に対して欧米で標準的な経腟投与製剤が日本でも使用可能になります。
特殊な薬剤なので使用方法は熟知しておきたいね。
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ユリス錠
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新規尿酸排泄促進薬 ドチヌラド

ドチヌラドは尿酸再吸収の抑制作用を持つ尿酸排泄促進薬です。
従来の尿酸排泄促進薬であるベンズブロマロン(ユリノームなど)やプロベネシド(ベネシッドなど)では肝障害や薬物相互作用が問題となり使用できない場合があります。
ユリス錠はそのようなケースでも使用しやすい尿酸排泄促進薬を目指して開発された薬剤です。
従来の尿酸排泄促進薬が使えなかった場合でも使用可能となるので、高尿酸血症の治療の新たな選択肢になります。
尿酸排泄促進薬の比較
ユリス錠と他の尿酸排泄促進薬を比較してみたよ!
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確かに他の薬剤と比較して肝毒性は少なく、相互作用も少ないようだね。
フェブリクに置き換わるってことは難しいとは思うけど、長期投与が解禁されれば尿酸排泄促進薬では第一選択として使われそうだし、これまで副作用等で尿酸排泄促進薬を使うことができなかった方にも使えるようになりそうだね。
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リンヴォック錠

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選択的JAK1阻害薬 ウパダシチニブ

ウパダシチニブは1日1回の経口投与で用いる選択的JAK1阻害薬。
リンヴォック錠は中等度から重度の関節リウマチ患者に対して、従来型合成DMARDとの併用・非併用に関わらず使用できる。
関節リウマチに用いるJAK阻害薬の比較
関節リウマチに用いるJAK阻害薬 4剤を比較してみたよ!
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リンヴォック錠は禁忌に該当する好中球数が他の薬剤と比較してシビアになっていますね。
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新剤形
チラーヂンとフィコンパの新剤形が承認されています。
チラーヂンS静注液

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「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の議論を経て、厚生労働省が開発を要請した品目です。
チラーヂンS錠の適応は「粘液水腫、クレチン病、甲状腺機能低下症(原発性及び下垂体性)、甲状腺腫」だが、チラーヂンS静注液は粘液水腫による昏睡と甲状腺機能低下症により意識が混濁しているような状態を主体として使用される。
経口投与困難な状態の患者に対しては静注製剤による治療が可能になります。
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フィコンパ細粒

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部分発作・強直間代発作ともに12歳以上の小児・成人に対して他の抗てんかん薬との併用療法のみの適応でしたが4歳以上の小児及び成人に対して使用可能になり、それに伴って細粒が追加になりました。
AMPA*4型グルタミン酸受容体に対して選択的かつ非競合的な拮抗薬として働きます。
その結果、中枢神経系におけるグルタミン酸性の興奮性シナプス伝達を抑制、抗てんかん薬としての効果を発揮します。
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新規格・新剤形(報告品目)
部会で報告品目として挙げられていた新規格と新剤形も今回承認されました。
イブランス錠

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イブランス(パルボシクリブ)は世界初のサイクリン依存性キナーゼ(CDK*5)4/6阻害薬です。
パルボシクリブはCDK4/6の活性を選択的に阻害し、サイクリンD・CDK4/K6複合体の活性を阻害することで、細胞周期を停止させ、抗腫瘍効果を発揮します。
カプセル剤は食後投与の記載がありましたが、錠剤はその記載がなくなり、食事の摂取状況にかかわらず服用できます。
また、錠剤の適応には「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん」で、カプセルの適応である「手術不能又は再発乳癌」に「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の」が加わっていますが、カプセルの場合は同様の条件が「効能・効果に関連する使用上の注意」に記載されています。
[効能・効果に関連する使用上の注意]
2.本剤の投与を行う場合には、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の患者を対象とすること。
引用元:イブランスカプセル 添付文書
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ディナゲスト錠0.5mg

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ジエノゲストは第4世代の黄体ホルモンに分類されます。
第4世代黄体ホルモンの特徴は強いプロゲステロン活性を維持しつつ、アンドロゲン作用がないことです。
その結果、不正出血の副作用には注意が必要なものの、アンドロゲン作用による副作用(ニキビ、肌荒れ、多毛)が軽減され長期服用が可能となっています。
月経困難症とは?
月経期間中に月経に伴って身体に生じる病的な症状の総称を月経困難症と言います。
その代表的な症状が日常生活に使用が出たり、痛み止めを服用しないといけないような強い月経痛(生理痛)で、これが他の症状の原因となっていることも多いです。
月経困難症はその原因により2つに分けられます。
器質性月経困難症:骨盤内の異常が原因で起こる月経困難症。子宮内膜症、子宮腺筋症などが起きる。
機能性月経困難症:上記のような婦人科疾患を原因としない月経困難症。子宮内膜で産生されるプロスタグランジン等の影響により症状を引き起こす。
ジエノゲストは子宮内膜の増殖を抑えることにより、月経自体をなくします。
そのため1mgが「子宮内膜症」(と「子宮腺筋症に伴う疼痛の改善」)に対して使用されていますが、それを拡大し、0.5mgを月経困難症に対して使用します。
(従来の1mg錠と追加される0.5mg錠で適応が異なることに注意)
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まとめと感想