2023年8月15日、新規後発医薬品の承認が行われました。
今回承認された後発品は、企業が希望すれば12月に薬価収載される予定です。
承認された後発品のうち、気になったものについて色々まとめてみたいと思います。
- 1 2023年8月15日に承認された後発品一覧
- 2 はじめて後発品が登場するもの
- 3 新たに承認されたオーソライズドジェネリック(AG)
- 4 そのほか気になる承認品目
- 5 まとめ
2023年8月15日に承認された後発品一覧
承認品目をまとめてみます。
内服薬(2023年8月15日承認の後発品)
まずは内服薬の一覧表です。
後発品名 | 屋号 | 先発品名 | 備考 |
---|---|---|---|
アビラテロン酢酸エステル錠250mg | DSEP、JG、SUN、 サンド、トーワ、ニプロ | ザイティガ錠250mg | 500mgは未承認 |
エルデカルシトール錠0.5μg エルデカルシトール錠0.75μg | トーワ | エディロール錠0.5μg エディロール錠0.75μg | 一社のみ(AGの可能性大) ※東和薬品は先発品の製造委託先カプセルは既収載 |
オセルタミビル錠75mg | トーワ | タミフルカプセル75mg | タミフルの剤形違い |
シタグリプチン錠12.5mg シタグリプチン錠25mg シタグリプチン錠50mg シタグリプチン錠100mg | サワイ | ジャヌビア錠12.5mg/25mg/50mg/100mg グラクティブ錠12.5mg/25mg/50mg/100mg | 一社のみ |
ゾニサミドOD錠25mgTRE ゾニサミドOD錠50mgTRE | SMPP | トレリーフOD錠25mg トレリーフOD錠50mg | 一社のみ(AG) ※既収載のゾニサミド錠はEX(エクセグラン)のGEのみ |
ダサチニブ錠20mg ダサチニブ錠50mg | BMSH | スプリセル錠20mg スプリセル錠50mg | 一社のみ(AG) JG、NK、サワイ、トーワが既収載 |
プラスグレル錠2.5mg プラスグレル錠3.75mg プラスグレル錠5mg プラスグレルOD錠20mg | トーワ、DSEP | エフィエント錠2.5mg エフィエント錠3.75mg エフィエント錠5mg エフィエントOD錠20mg | DSEPがAGの可能性大 |
ベプリジル塩酸塩錠50mg ベプリジル塩酸塩錠100mg | TE | ベプリコール錠50mg ベプリコール錠100mg | 一社のみ ベプリコールのGEは初 |
ルビプロストンカプセル12μg ルビプロストンカプセル24μg | VTRS | アミティーザカプセル12μg アミティーザカプセル24μg | 一社のみ(AG) |
レナリドミドカプセル2.5mg レナリドミドカプセル5mg | F | レブラミドカプセル2.5mg レブラミドカプセル5mg | BMSH(AG)とサワイが既承認、未収載 |
レボカルニチンFF内用液10% レボカルニチンFF内用液10%分包5mL レボカルニチンFF内用液10%分包10mL | アメル、トーワ | エルカルチンFF内用液10% エルカルチンFF内用液10%分包5mL エルカルチンFF内用液10%分包10mL | 内用液は初 ※錠、静注シリンジは既収載 |
酢酸亜鉛錠25mg 酢酸亜鉛錠50mg | CEO、ニプロ、ノーベル | ノベルジン錠25mg ノベルジン錠50mg | ノーベルはAG 承認時点で「低亜鉛血症」の適応なし ※既収載のサワイは「低亜鉛血症」の適応あり |
外用薬(2023年8月15日承認の後発品)
続いて外用薬の一覧表です。
後発品名 | 屋号 | 先発品名 | 備考 |
---|---|---|---|
タフチモ配合点眼液 | SEC | タプコム配合点眼液 | AG NITが既収載 |
タフルプロスト点眼液0.0015% | SEC | タプロス点眼液0.0015% | AG NITが既収載 |
ジクアホソルNa点眼液3% | ニットー | ジクアス点眼液3% | 一社のみ |
ケトプロフェンテープS20mg「テイコク」 | テイコク | モーラステープ20mg? | 組成をケトプロフェンテープ40mg「テイコク」に合わせた新規後発品 ※ケトプロフェンテープ20mg「テイコク」は発売中止 |
所感(ざっと見た感想)
今回も承認企業数は少ないですね・・・。
採算性の低下、安定供給困難、これらの問題が合わさって、ビジネスとしての後発品製造が大きく変化していることを実感します。
AGの参入が増えていることからもビジネスモデルの変化を感じさせます。
じほう社さんが公開している承認簿のページ数からも、承認品目数が少なっていることが感じられます。
承認簿(医療用医薬品、承認 該当件数:49件(後発新規) 施行年月日:2023/08/15)
その反面、新規参入製品の数は多くなっており、見応えたっぷりな承認となってますね。
ということで、一つずつ気になるものをまとめていきたいと思います。
はじめて後発品が登場するもの
まずははじめて後発品が登場するものについて解説していきます。
アビラテロン酢酸エステル錠250mg(ザイティガ錠250mgのGE)→2023.12収載見送り
ザイティガ錠のジェネリックが承認されています。
承認を取得したのは以下の6社です。
- DSEP(第一三共エスファ)
- JG(日本ジェネリック)
- SUN(サンファーマ)
- サンド
- トーワ(東和薬品)
- ニプロ
2023年6月に薬価収載されたばかりの500mg錠の後発品は承認されていません。
適応については先発品と同じ内容を取得しているようです。
ザイティガ後発との比較 | 先発品 | 後発品 |
---|---|---|
製品名 |
| アビラテロン酢酸エステル錠250mg (500mgの承認はなし) |
適応 |
|
|
製造販売元 | ヤンセンファーマ |
|
承認・収載 等 |
| 2023年8月15日:製造販売承認 |
一点気になっているのは、この記事を作成している時点(2023年9月2日)でいずれの製造販売元も承認を取得したことや12月に薬価収載予定である旨の案内を公開していないことです。
それが気になって↑の表に「承認・収載 等」についてもまとめてみましたが、特許でもめていたりするのかな・・・?
シタグリプチン錠(ジャヌビア/グラクティブのGE)→2023.12収載見送り
ジャヌビア錠(MSD)・グラクティブ錠(小野薬品)の2ブランドで販売されているシタグリプチン錠のジェネリックが初めて承認されています。
- シタグリプチン錠12.5mg「サワイ」
- シタグリプチン錠25mg「サワイ」
- シタグリプチン錠50mg「サワイ」
- シタグリプチン錠100mg「サワイ」
DPP-4阻害薬として初めて承認される後発品です。
先発品の適応は「2型糖尿病」ですね。
沢井製薬は特許の問題をパスできているのか?
噂に聞いていたところでは、特許の都合上、ジャヌビア/グラクティブ(シタグリプチン)よりも先にエクア(ビルダグリプチン)のジェネリックの方が先に登場するということだったので、ちょっと驚きました。
ジャヌビア/グラクティブの再審査期間はいずれの適応でも「2017年10月15日まで」となり、すでに完了しています。
一つ気になるのは適応です。
ジャヌビア/グラクティブは以下のように段階的に適応拡大が行われました。(覚えていますか?)
- 2009年10月16日:製造販売承認「25mg・50mg・100mg」、適応「食事療法、運動療法のみで十分な効果が得られない場合、及び食事療法、運動療法に加えて他の経口血糖降下剤(スルホニルウレア剤、チアゾリジン系薬剤、ビグアナイド系薬剤)を使用して十分な効果が得られない場合に限る2型糖尿病」
- 2011年5月20日:適応追加「食事療法、運動療法に加えてα-グルコシダーゼ阻害剤を使用して十分な効果が得られない2型糖尿病」
- 2011年9月16日:適応追加「食事療法、運動療法に加えてインスリン製剤を使用して十分な効果が得られない2型糖尿病」
- 2013年9月2日:製造販売承認「12.5mg」
- 2014年5月23日:適応拡大「2 型糖尿病」
表にまとめてみると以下のようになります。
2009年 10月16日 | 2011年 5月20日 | 2011年 9月16日 | 2014年 5月23日 | |
単剤 | ○ | ○ | ○ | ○ |
SU剤 | ○ | ○ | ○ | ○ |
TZD系薬剤 | ○ | ○ | ○ | ○ |
BG系薬剤 | ○ | ○ | ○ | ○ |
α-GI | × | ○ | ○ | ○ |
インスリン | × | × | ○ | ○ |
上記以外のDM薬 | × | × | × | ○ |
ジャヌビア/グラクティブが適応に関する特許を取得しているのであれば、後発品であるシタグリプチン錠「サワイ」の適応は一部のみになる可能性があります。
それ以上に気になる部分があります。
それは先発品と後発品の成分名と含有量の違いです。
規格 | ジャヌビア錠/グラクティブ錠 | シタグリプチン錠「サワイ」 | ||
成分名 | 含有量 (シタグリプチンとして) | 成分名 | 含有量 | |
12.5mg | シタグリプチンリン酸塩水和物 | 12.5mg | シタグリプチンリン酸塩 | 15.51mg |
25mg | シタグリプチンリン酸塩水和物 | 25mg | シタグリプチンリン酸塩 | 31.02mg |
50mg | シタグリプチンリン酸塩水和物 | 50mg | シタグリプチンリン酸塩 | 62.03mg |
100mg | シタグリプチンリン酸塩水和物 | 100mg | シタグリプチンリン酸塩 | 124.06mg |
先発品は「水和物」なのに後発品は「水和物じゃない」(無水物)・・・。
記載される含有量も異なります・・・!(先発品はシタグリプチンとしての含有量、沢井はシタグリプチンリン酸の含有量)
後発品として承認を取得している以上、生物学適同等性試験はパスしているのは間違いないのですが、どうしてこんなことになったのか?
それは特許を回避するため以外には考えられません。
つい先日、MSDのMRさんが「ジャヌビアはもうしばらく後発品は現れませんよ〜」とおっしゃってたんですが、それはおそらく物質特許の延長が認められたからなんだと思います。
再審査期間が満了し、物質特許・用途特許に問題なければ後発品の承認は認められます。
シタグリプチンの物質特許の延長がどのような形で行われたのかは不明ですが、今回の承認結果を見る限り、水和物でなければ物質特許の延長は回避できたということになります。
今回、シタグリプチンについては沢井製薬 一社のみが承認を取得していますが、沢井製薬は他社に先駆けて後発品の承認を取得することが多い会社です。
特許関係に相当強く、それが承認取得の見極めにつながっているものと思われます。
がその分、先発品メーカーからの訴訟されることも多く、最近ではノベルジン錠(酢酸亜鉛)で特許侵害訴訟を受けています。
記憶している中では、エディロール、エビスタ、レミッチ、テリボン、リバロ、フロモックス、ムコスタ、エルプラットで訴訟されていますが、いずれも沢井製薬は敗訴していないんじゃなかったかな・・・?(間違っていたら教えてください)
国がジェネリック発売可能になったよーと案内を出すわけでなく、後発品の製造販売を希望する会社が調査を行なった上で、承認のタイミングを見極めて申請を行わないといけないってのはなかなかシビアですよね・・・。
ゾニサミドOD錠TRE (トレリーフOD錠のGE)
トレリーフOD錠(住友ファーマ)のジェネリックが初めて承認されています。
製造販売承認を取得したのは住友ファーマプロモ。いわずもがな、住友ファーマの子会社なので、AGとして承認を取得しています。
- ゾニサミドOD錠25mgTRE「SMPP」
- ゾニサミドOD錠50mgTRE「SMPP」
TREは識別記号とのことですが、トレリーフ(TRERIEF)の略称ですね。
ゾニサミドを有効成分とする薬剤にはトレリーフ(TRERIEF)の他にエクセグラン(EXCEGRAN)が存在します。
エクセグランのジェネリックの一部は識別記号にEXを用いていますね。
先発医薬品 (薬価※) | エクセグラン錠100mg(19.10) エクセグラン散20%(37.50) | トレリーフOD錠25mg(966.10) トレリーフOD錠50mg(1449.10) |
---|---|---|
後発医薬品 (薬価※) | ゾニサミド錠100mg「アメル」(12.40) ゾニサミド散20%「アメル」(27.80) ゾニサミド錠100mgEX「KO」(12.40) | ゾニサミドOD錠25mgTRE「SMPP」(未収載) ゾニサミドOD錠50mgTRE「SMPP」(未収載) |
適応 | 部分てんかんおよび全般てんかんの下記発作型
|
|
※薬価は2023年9月2日時点のもの
同じゾニサミドで含有量も少ないにも関わらず、適応の異なる製品であるためトレリーフの薬価はエクセグランと比較してかなり高くなっています。
薬価収載されれば、AGであることから、一気に切り替えが進みそうですね。(MRさんより:12月に薬価収載、年明けに発売開始予定だそうです)
DSPBではなくてSMPPな理由
もう一つ気になるのは屋号「SMPP」です。
住友ファーマプロモが製造販売権を持つ後発品は以下の製品です。
- イルベサルタン錠「DSPB」
- イルアミクス配合錠「DSPB」
- ブロナンセリン錠/散「DSPB」
- メトホルミンMT錠「DSPB」
- ゾニサミドOD錠TRE「SMPP」
DSPBとSMPPの屋号が混在しています。
DSPBはDSファーマバイオメディカルの屋号です。
DSファーマバイオメディカルはDSファーマプロモに吸収され、さらに今は親会社の社名変更(大日本住友製薬→住友ファーマ)に伴い住友ファーマプロモに社名変更されました。
住友ファーマプロモだからSMPP(SuMitomo Pharma Promo)が屋号というわけですね。
自分は「なんでSMPPなの?」と思ったけど、若い人は「なんでDSPBなの?」って思うんだろうな・・・。
プラスグレル錠(エフィエントのGE)→2023.12収載見送り
エフィエント錠(第一三共)のジェネリックがはじめて承認されています。
東和薬品(トーワ)と第一三共エスファ(DSEP)の2社が承認を取得していますが、第一三共エスファはAGの可能性が高いです。
- プラスグレル錠2.5mg
- プラスグレル錠3.75mg
- プラスグレル錠5mg
- プラスグレルOD錠20mg
エフィエント錠の適応は
- ①経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患
- ②虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(2.5mg/3.75mgのみ)
の2種類ですが、今回後発品が取得しているのは①のみになります。
ベプリジル塩酸塩錠(ベプリコール錠のGE)
ベプリコール錠(オルガノン)のジェネリックが初めて承認されています。
1993年2月から発売されている医薬品ですが、実は後発品が存在していなかったんですね。
循環器領域に定評のあるトーアエイヨーが特許取得です。
- ベプリジル塩酸塩錠100mg「TE」
- ベプリジル塩酸塩錠50mg「TE」
適応は先発品と同じで、以下の通りです。
下記の状態で他の抗不整脈薬が使用できないか、又は無効の場合
- 持続性心房細動
- 頻脈性不整脈(心室性)
- 狭心症
ルビプロストンカプセル(アミティーザカプセルのGE)→2023.12収載見送り
アミティーザカプセル(ファイザー)のジェネリックが初めて承認されています。
承認を取得したのはヴィアトリス製薬(VTRS)ということで、AGで承認を取得しています。
- ルビプロストンカプセル12μg「VTRS」
- ルビプロストンカプセル24μg「VTRS」
適応は「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」です。
ジクアホソルNa点眼液(ジクアス点眼液のGE)
ジクアス点眼液(参天製薬)のジェネリックが初めて承認されています。
- ジクアホソルNa点眼液3%「ニットー」
承認を取得したのは東亜薬品で販売元は日東メディック(ニットー)です。
適応は「ドライアイ」です。
先発品 | ジクアス点眼液3% | ジクアスLX点眼液3% |
---|---|---|
後発品 | ジクアホソルNa点眼液3%「ニットー」 | (未承認) |
有効成分 | ジクアホソルナトリウム | ジクアホソルナトリウム (添加剤にポビドン追加) |
用法・用量 | 通常、1回1滴、1日6回点眼する。 | 通常、1回1滴、1日3回点眼する。 |
今回承認されるのは同じジクアホソルナトリウム3%点眼液でもジクアス点眼液3%の後発品でジクアスLX点眼液3%の後発品ではありません。
将来的にジクアスLX点眼液3%の後発品も発売されるのかもしれませんが、同じジクアホソルNa3%点眼液であるため、名称をどう区別するか気になりますね。(普通にLXつけるのかな)
新たに承認されたオーソライズドジェネリック(AG)
今回は新規承認されたAG(Authorized Generic)も非常に多くなっています。
後発品名 | 製造販売元 | 先発品名 | 製造販売元 |
---|---|---|---|
エルデカルシトール錠0.5μg「トーワ」 エルデカルシトール錠0.75μg「トーワ」 | 東和薬品 | エディロール錠0.5μg エディロール錠0.75μg | 中外製薬 (販売元:東和薬品) |
ゾニサミドOD錠25mgTRE「SMPP」 ゾニサミドOD錠50mgTRE「SMPP」 | 住友ファーマプロモ | トレリーフOD錠25mg トレリーフOD錠50mg | 住友ファーマ |
ダサチニブ錠20mg「BMSH」 ダサチニブ錠50mg「BMSH」 | ブリストル・マイヤーズスクイブ販売 | スプリセル錠20mg スプリセル錠50mg | ブリストル・マイヤーズスクイブ |
プラスグレル錠2.5mg「DSEP」 プラスグレル錠3.75mg「DSEP」 プラスグレル錠5mg「DSEP」 プラスグレルOD錠20mg「DSEP」 | 第一三共エスファ | エフィエント錠2.5mg エフィエント錠3.75mg エフィエント錠5mg エフィエントOD錠20mg | 第一三共 |
ルビプロストンカプセル12μg「VTRS」 ルビプロストンカプセル24μg「VTRS」 | ファイザーUPJ | アミティーザカプセル12μg アミティーザカプセル24μg | ヴィアトリス製薬 |
酢酸亜鉛錠25mg「ノーベル」 酢酸亜鉛錠50mg「ノーベル」 | ダイト (販売元:ノーベルファーマ) | ノベルジン錠25mg ノベルジン錠50mg | ノーベルファーマ |
タフチモ配合点眼液「SEC」 | 参天アイケア | タプコム配合点眼液 | 参天製薬 |
タフルプロスト点眼液0.0015%「SEC」 | 参天アイケア | タプロス点眼液0.0015% | 参天製薬 |
あれこれ気になることをまとめておきます。
エルデカルシトール錠「トーワ」(エディロール錠AG)→2023.12収載見送り
エディロール錠は中外製薬が製造販売元となっていますが、販売元は東和薬品です。
また、錠剤の開発は東和薬品が中心となって行い、東和薬品の持つ特許技術であるOil dispersion法をもちいて製剤化されています。
そのジェネリックの製造販売権を東和薬品が取得したわけですからAGで取得しているのは当然です。
- エルデカルシトール錠0.5μg「トーワ」
- エルデカルシトール錠0.75μg「トーワ」
ただ、気になるのは先発品であるエディロール錠が発売(2022年12月)から1年経過していない時点でのAG承認取得ということです。
カプセルのAGであるエルデカルシトールカプセル「トーワ」が発売されている中での先発品の剤形追加ということで、エディロール錠はそこまで売れているわけではないと予想しますが、12月に薬価収載されてしまうと先発品の発売から1年で後発品が発売という形になってしまいます。
エルデカルシトール錠「トーワ」の薬価はエルデカルシトールカプセルの薬価と同じになるでしょうから東和薬品としては無理にAGへの切り替えを進めるメリットが薄いのではないかと考えます。
ただし、カプセルから錠剤への切り替えを進めたいのであれば先発品よりも後発品である方が有利な気がします。
ちなみに、東和薬品の2023年12月追補収載予定ページにはエルデカルシトール錠「トーワ」の記載がありません。(2023年9月2日時点)
12月に薬価収載されるかどうか判断が難しいところですね。
ゾニサミドOD錠TRE「SMPP」(トレリーフAG)
↑で大体のところは説明したので、発売されるかどうかの判断について。
一社のみの承認、高薬価であることを考えれば12月に薬価収載される可能性は低く、他社が承認を取得したタイミングでAGも薬価収載されるのではないかと思っていますが、ホームページに承認の案内が出ていますね。
もし、収載されれば患者さんにとってはかなりの朗報になると思います!
(住友ファーマプロモMRさんより12月に薬価収載、年明けに発売開始だそうです。)
ダサチニブ錠「BMSH」(スプリセルAG)
スプリセル(ブリストル・マイヤーズスクイブ)の後発医薬品はすでに発売されています。
- JG(日本ジェネリック)
- NK(日本化薬)
- サワイ(沢井製薬)
- トーワ(東和薬品)
ただし、先発品と後発品で適応違いが生じています。
製品名 | スプリセル錠(先発品) | ダサチニブ錠(後発品) |
---|---|---|
適応 |
| 再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 |
ダサチニブ錠「BMSH」(ブリストル・マイヤーズスクイブ販売)は両方の適応を有しているかどうか不明ですが、AGが登場すれば後発品への切り替えが加速しそうですね。
ちなみにBMSHはBristol Myers Squibb Hanbaiの略でできた屋号なのかな・・・?
プラスグレル錠「DSEP」(エフィエントAG)→2023.12収載見送り
エフィエント(第一三共)の後発品は2社が承認を取得していますが、そのうち一社がDSEP(第一三共エスファ)となっており、AGであることが濃厚となっています。
これについてももう一社である東和薬品の2023年12月追補収載予定ページにプラスグレル錠「トーワ」の記載がない(2023年9月2日時点)ことから東和は薬価収載を見送り、AGだけという状況になりそうです。
そうなった場合、第一三共としてはAGを発売するメリットはないでしょうから、薬価収載見送りとなってしまうのではないかと予想します。
ルビプロストンカプセル「VTRS」(アミティーザAG)→2023.12収載見送り
アミティーザ(ヴィアトリス製薬)の後発品をファイザーUPJが取得しています。
同グループ内での承認取得なので、当然AGと思いますが、ファイザーUPJってまだ残っていたんですね・・・。(ファイザーの関連会社はややこしい・・・)
一社のみなのでAGを発売するメリットが薄く、12月は薬価収載を見送る可能性が高いのではないでしょうか?
薬価高いのでAG出れば嬉しいんですけどね。
酢酸亜鉛錠「ノーベル」(ノベルジン錠AG)
ノベルジン錠(ノーベルファーマ)のAGをダイトが取得しています。
上にも少し書きましたが、酢酸亜鉛錠については沢井製薬がノーベルファーマによる差し止め請求を受けながら、8月4日に発売を開始しています。
沢井製薬の発売に対抗する形で登場した酢酸亜鉛錠「ノーベル」はダイトが製造販売元ですが、販売元はなんとノーベルファーマ!
ノーベルファーマは先発品(ノベルジン)の製造販売元でありながら、後発品(酢酸亜鉛錠「ノーベル」)の発売元という、なんとも不思議な状況になります。
製造販売元がダイトになっていますが、おそらくノベルジン錠の委託製造先がダイトなんでしょうね。
一つ気になるのは適応の部分。
製品名 | ノベルジン錠 (先発品) | 酢酸亜鉛錠「ノーベル」 (AG) | 酢酸亜鉛錠「サワイ」 (後発品) |
---|---|---|---|
適応 |
| ウィルソン病(肝レンズ核変性症) |
|
先発品と既収載の「サワイ」の適応は同じなのに、AGは「低亜鉛血症」の特許を未取得というなんとも不思議な状態です。
これは「低亜鉛血症」の特許は有効であるというノーベルファーマの主張の現れなんでしょうか?
薬価収載までに適応の歪みが解消するのか気になるところですね。
ちなみに、今回、CEO(セオリア ファーマ)とニプロも酢酸亜鉛錠の承認を取得しているのですが、AGが登場する中、薬価収載が行われるかどうかは微妙なところですね。
タフチモ配合点眼液「SEC」(タプコムAG)→2023.12収載見送り
タフルプロストとチモロールの配合点眼液であるタプコム配合点眼液(参天製薬)のAGをSEC(参天アイケア)が取得しています。
すでにタフチモ配合点眼液「NIT」(製造販売元:東亜薬品、販売元:日東メディック)が発売されている状況ですが、AGが登場することで後発品への切り替えはより加速しそうです。
タフルプロスト点眼液0.0015%「SEC」(タプロスAG)→2023.12収載見送り
タプロス点眼液0.0015%(参天製薬)のAGをSEC(参天アイケア)が取得しています。
すでにタフルプロスト点眼液0.0015%「NIT」(製造販売元:東亜薬品、販売元:日東メディック)が発売されている状況ですが、これについてもタフチモ配合点眼液と同じようにAGが登場することで後発品への切り替えはより加速しそうです。
タプロスミニ点眼液0.0015%のジェネリックは未承認です。
そのほか気になる承認品目
そのほか気になる承認品目についてまとめます。
レボカルニチンFF内用液10%/分包5mL/分包5mL
エルカルチンFF(FF:Free Form)については錠と静注の後発品がすでに薬価収載、発売されています。
今回、内用液の後発品をアメル(共和薬品工業)とトーワ(東和薬品)が取得しています。
- レボカルニチンFF内用液10%
- レボカルニチンFF内用液10%分包5mL
- レボカルニチンFF内用液10%分包5mL
これについては東和薬品の2023年12月追補収載予定ページに掲載されているので、少なくとも東和薬品は薬価収載を行う予定のようです。
オセルタミビル錠75mg「トーワ」
先発品のタミフルはカプセルのみの剤形ですが、東和薬品は錠剤の開発に成功、承認を取得しています。
錠剤は直径7.1mm、厚さ3.6mmと小さいのでカプセルよりもずっと飲みやすくなります。
オセルタミビルについては、先発品のタミフルカプセル/DS(中外製薬)、後発品のオセルタミビルカプセル/DS「サワイ」(沢井製薬)、そして後発品で錠剤のオセルタミビル錠75mg「トーワ」という選択肢になります。
これについても東和薬品の2023年12月追補収載予定ページに掲載されているので、12月に薬価収載される予定です。
ケトプロフェンテープS20mg「テイコク」
帝国製薬はケトプロフェンテープ20mg「テイコク」とケトプロフェンテープ40mg「テイコク」を販売しているのに、新たにケトプロフェンテープS20mg「テイコク」の承認を取得・・・?
どういうことだと思っていたら、帝国製薬から案内がでましたね。
ケトプロフェンテープS20mg「テイコク」 新発売とケトプロフェンテープ20mg「テイコク」 販売中止のご案内|帝國製薬
- 発売中止:ケトプロフェンテープ20mg「テイコク」
- 新発売:ケトプロフェンテープS20mg「テイコク」
以下のように添加物が異なる別製剤としてケトプロフェンテープS20mg「テイコク」が発売されます。
ケトプロフェンテープS20mg「テイコク」はケトプロフェンテープ40mg「テイコク」と同じ添加物・製法のようなので、本当の意味の規格違いということになります。
ケトプロフェンテープS20mg「テイコク」の発売に伴い、ケトプロフェンテープ20mg「テイコク」は販売終了となります。
ちょっとわかりにくい話ですね。
販売状況 | 販売中止(2023年11月以降) | 販売継続 | 新発売(2023年10月17日) |
製品名 | ケトプロフェンテープ20mg「テイコク」 | ケトプロフェンテープ40mg「テイコク」 | ケトプロフェンテープS20mg「テイコク」 |
添加物 | 流動パラフィン、l -メントール、 クロタミトン、脂環族飽和炭化水素樹脂、 スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、 BHT、ポリブテン | スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、 脂環族飽和炭化水素樹脂、 水素添加ロジングリセリンエステル、 ポリブテン、BHT、l -メントール、 流動パラフィン、その他3成分 | スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、 脂環族飽和炭化水素樹脂、 水素添加ロジングリセリンエステル、 ポリブテン、BHT、l -メントール、 流動パラフィン、その他3成分 |
まとめ
今回は参入メーカーは多くありませんが、新規承認品目が多く、AGも多い、濃厚な後発品承認になっています。
ただ、AG単独承認のものについては、12月に薬価収載される可能性は低く、他社が承認を取得するまでは薬価収載される可能性が低いです。
もし、本当に薬価収載されなければ、他社後発品の承認を牽制の意味でのAG承認となってしまうので少し気になるところです。
ともあれ、12月に薬価収載されれば、医療費ならびに患者さんの自己負担を大きく軽減できるものばかりなので、楽しみにしておきたいと思います。
参考資料
2023年8月15日付医薬品承認情報(承認簿)|じほう新薬創出・適応外薬解消等促進加算 対象品目リスト(医薬品コード順)ゾニサミド OD 錠 25mgTRE「SMPP」/ OD 錠 50mgTRE「SMPP」 製造販売承認取得のお知らせ|住友ファーマプロモ2023年12月追補収載予定|東和薬品ジェネリック医薬品の製造販売承認を取得|東和薬品骨粗鬆症治療剤(活性型ビタミン D3製剤) エルデカルシトールカプセル 0.5μg/0.75μg「トーワ」 オーソライズド・ジェネリックの製造販売に関するお知らせ|東和薬品骨粗鬆症治療剤「エディロール錠」発売のお知らせ|東和薬品ウィルソン病治療剤(銅吸収阻害剤)「ノベルジン®」 ダイト株式会社によるオーソライズド・ジェネリック(AG) 製造販売承認取得のお知らせ|ノーベルファーマウィルソン病治療剤(銅吸収阻害剤)・低亜鉛血症治療剤「ノベルジンR」の オーソライズド・ジェネリック医薬品に関するライセンス契約の締結について|ノーベルファーマ「ノベルジン」特許に関する特許権侵害訴訟の提起について|ノーベルファーマケトプロフェンテープS20mg「テイコク」 新発売とケトプロフェンテープ20mg「テイコク」 販売中止のご案内|帝國製薬