令和7年3月7日に令和7年度薬価改定の内容が正式に告示されました。
厚生労働省が公開している資料を元に改定前後の薬価比較表を作成しました。
Googleスプレッドシートで公開しているので、ダウンロードする形でご活用ください。
ミスがないよう、細心の注意を払って作成していますが、厚生労働省の資料を確認の上でご活用ただければと思います。
フィルタをつけているので各項目で並び替えや抽出が可能です。
- A列:区分
内服だけ抽出(成分名と組み合わせ) - C列:成分名
特定の成分名だけ抽出 - H列:品名
五十音順に並び替え
特定の単語を含む品目だけ抽出 - L列:算定上の先発・後発
⭐︎()含むで抽出 → 算定上の後発品のない先発品
★()含むで抽出 → 算定上後発品扱いにならない後発品
なんて使い方が便利だと思います。
この記事では今回の薬価比較表の内容について解説します。
令和7年度薬価改定 改定前後の薬価比較表
令和7年4月1日と令和7年3月31日までの薬価を比較する形で作成しています。
厚生労働省の「医療保険が適用される医薬品について」に掲載される情報を元にしています。
それぞれリンク先に薬価をエクセルファイルにまとめたものが公開されています。
薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和7年4月1日適用)
薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和7年3月31日まで)
それぞれのエクセルファイルをダウンロードしてまとめたものをベースにして、薬価基準収載医薬品コードを検索値として、vlookup関数で繋げてあげれば大まかな比較表は完成です。
改定前・改定後の薬価を一つの表にまとめることができれば、薬剤ごとの薬価差や薬価改定率はエクセルの関数で簡単に計算できます。
- 薬価差=改定後薬価ー改定前薬価(円)
- 薬価改定率=改定後薬価÷改定前薬価(%)
として計算しています。
薬価基準収載医薬品コードと統一名収載品
改定後と改定前の表を薬価基準収載医薬品コードを検索値としてvlookup関数で繋げる・・・と書きましたが、この方法だと一部エラーが返されてしまうと思います。
- 改定前:銘柄別収載 → 改定後:統一名収載
- 改定前:統一名収載 → 改定後:銘柄別収載
いずれかの場合だと薬価基準収載医薬品コードが一致せずエラーとなってしまいます。
統一名収載品と銘柄別収載品
統一名収載品とは、成分・剤形・規格・薬価が同一の製品について統一名で収載されているものです。
官報においては統一名収載品は「統一名」でのみ掲載され、個別の銘柄名では告示されません。
また、コードにおいても統一名収載品は銘柄名によらず同一の薬価基準収載医薬品コード(厚労省コード)で示されます。
同一の成分・剤形・規格の品目で、銘柄間の薬価に開きがある場合に、低薬価のものが統一名収載されます。
そのため、薬価改定によって、新たに統一名収載品になったり、銘柄別収載に変更することがあります。
薬価基準収載医薬品コード(厚労省コード)とYJコード
薬価基準収載医薬品コードは厚生労働省が管理する薬価収載されたすべての医療用医薬品に対して「薬価ごと」に設定されているコードです。
英数字12桁で表現され以下のルールの範囲内で設定されます。
- 左から1〜4桁目(4桁):薬効分類番号
- 左から5〜7桁目(3桁):投与経路別の成分(内服薬:001〜399、注射薬:400〜699、外用薬:700〜999)
- 左から8桁目(英数字):剤形
- 左から9桁目(1桁):規格
- 左から10〜11桁目(2桁):個別の番号(統一名収載の場合は01)
- 左から12桁目:チェックデジット(上記の入力間違いがないか確認するための数字)
これに対してYJコードは基本的には薬価基準収載医薬品コードと同一ですが、統一名収載品の場合のみ異なり、YJ、コードでは個々の銘柄ごとにコードが設定されます。
ですので、以下のような違いが生じます。
- 銘柄別収載の場合:薬価基準収載医薬品コードとYJコードは同一
- 統一名収載の場合:左から10〜11桁目(2桁)のみが異なる(統一名収載の場合は01で固定)
詳しくは DATA INDEXの情報医療ナレッジ「いろいろな医薬品コード」を参考にしてもらえればと思います。
医薬品のコードに関してわかりやすくまとめられており、非常に勉強になります。
統一名収載品と銘柄別収載品を紐づけるには?
統一名収載品の薬価基準収載医薬品コードからYJコードを導くことは不可能(YJコードを調べるしかない)ですが、逆に統一名収載品のYJコードから薬価基準収載医薬品コードを導くことは可能です。
今回のように、統一名収載品と銘柄別収載品を紐づけたいのであれば、双方の左から12桁目(チェックデジット、下1桁目)を削除して11桁として、 銘柄別収載品の薬価基準収載医薬品コードの左から10〜11桁目を01に変更すれば統一名収載品と同じコードになります。
これを用いて紐付けを行えば全ての医薬品についてvlookup関数で紐付け、比較を行うことが可能となります。
もし、薬価基準収載医薬品コードとYJコードの両方が掲載されているマスタを持っていれば、それを用いて紐づけるのがベストだと思います。
今回の比較表においては「改定前:銘柄別収載 → 改定後:統一名収載」に該当するものは、備考欄に旧名称(銘柄)を記載しています。
各種情報の活用
薬価の比較だけであれば上記の方法で完了です。
ですが、個人的には付随するさまざまな情報も活用したいと思ったので、今回のファイルでは可能な限りの情報を掲載するようにしています。
診療報酬において加算等の算定対象となる後発医薬品(J列)
後発医薬品であっても「先発医薬品と薬価が同額又は高いもの」は「診療報酬における加算等の算定対象とならない後発医薬品」になります。
この欄には以下のような情報が掲載されています。
- 診療報酬における加算等の算定対象となる後発医薬品:後発品
- 診療報酬における加算等の算定対象とならない後発医薬品:★
- いずれにも該当しない場合:(空欄)
今回の資料ではここの内容についても改定前後での比較を行い、改定前後で変更があった場合には改定前の情報を()で記載しています。
これにより診療報酬における後発医薬品としての扱いに変更があった品目を抽出することが可能になっています。
各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報(L列)
これについては 厚生労働省の「医療保険が適用される医薬品について」の各ページ「5.その他(各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報)」に掲載されています。
- 薬価基準収載品目リストについて(令和7年4月1日適用)→各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報(Excel、PDF)
- 薬価基準収載品目リストについて(令和7年3月31日まで)→各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報(Excel、PDF)
それぞれ以下の情報が掲載されています。
- 1:後発医薬品がない先発医薬品(後発医薬品の上市前の先発医薬品等)
- 2:後発医薬品がある先発医薬品(先発品と後発品で剤形や規格が同一でない場合等を含む。ただし、全ての後発品が経過措置として使用期限を定められている場合を除く)
- ☆:後発医薬品と同額又は薬価が低い先発医薬品
- 3:後発医薬品
- ★:先発医薬品と同額又は薬価が高い後発医薬品
これらについても「診療報酬において加算等の算定対象となる後発医薬品」と同様の形で比較を行い、今回の表に追加して掲載しています。
これにより、薬価の比較と合わせて先発品・後発品に関する詳細な情報を得ることが可能になっています。
長期収載品の選定療養(T列)
令和7年度薬価改定に連動する形で、令和7年4月1日から長期収載品の選定療養の対象品目の見直しが行われます。
薬価改定の告示と同日に令和7年4月1日からの対象品目についての事務連絡が発出されています。
新リスト
長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養の対象医薬品について(令和7年3月7日 事務連絡)
対象医薬品リスト(PDF、Excel)
同ページには過去のリストも公開されています。
旧リスト
長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養の対象医薬品について(令和6年4月19日 事務連絡)
対象医薬品リスト(PDF、Excel)
このリストも薬価基準収載医薬品コードを用いて作成されているため、それぞれのリストを薬価基準収載医薬品コードを検索値としてvlookup関数で紐づけることで、
- 新リストに記載なし・旧リストに記載あり→長期収載品の選定療養の対象から除外されたもの
- 新リストに記載あり・旧リストに記載なし→新たに長期収載品の選定療養の対象となったもの
を調べることが可能です。
このように作成したリストですが、薬価比較表とは別にGoogleスプレッドシートで公開しています。
ただ、このリストはあくまでもおまけというか、途中過程というか・・・。
このリストを元に、以下の情報を薬価比較表に加えています。
- ◎:新たに長期収載品の選定療養の対象となったもの
- ◯:長期収載品の選定療養の対象(継続)
- ×:長期収載品の選定療養の対象から除外されたもの
これにより改定による薬価の見直しで除外された品目が明確にわかるようになっています。
新薬創出・適応外薬解消等促進加算(U列)
今回の薬価改定では新薬創出・適応外薬解消等促進加算(新薬創出等加算)の適用と合わせて、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の累積額控除も適用されています。
加算の適用はこれまで通りですが、累積額控除についてはこれまでの中間年改定では実施されていませんでした。
そのため、予定より1年早まる形で薬価の大幅な引き下げを受ける品目が登場しています。

これについては令和7年度薬価改定についてに対象リストが掲載されています。
第2 改定の概要
(別添3-1)新薬創出・適応外薬解消等促進加算 対象品目(薬価維持品目)リスト(PDF、Excel)
(別添3-2)新薬創出・適応外薬解消等促進加算 対象品目(薬価非維持品目)リスト(PDF、Excel)
(別添5-1)新薬創出・適応外薬解消等促進加算の加算相当額を控除した品目(PDF、Excel)
(別添5-2)新薬創出等加算対象品目等を比較薬として算定された品目に係る控除した品目(PDF、Excel)
これらのリストを元に、以下の情報を追加しています。
- 対象:薬価維持品目
- 対象:薬価非維持品目
- 控除:後発品収載
- 控除:薬価収載15年超
- 控除:比較薬として算定された品目に係る
これにより薬価引き下げや維持に新薬創出等加算が関係しているかどうか、関係しているのであればどういった内容なのかがわかるようになっています。
基礎的医薬品(V列)

基礎的医薬品についても令和7年度薬価改定についてに対象リストが掲載されています。
第2 改定の概要
(別添1)基礎的医薬品対象品一覧(PDF、Excel)
リストには基礎的医薬品の対象となった理由が記載されています。
- 安定確保
- 歯科用局所麻酔剤
- 生薬
- 軟膏基剤
- 病原生物
- 不採算
- 麻薬
薬価比較表には理由のみを記載し、理由の記載があることで基礎的医薬品に該当することがわかるようにしています。
不採算品再算定(W列)
令和7年度薬価改定では引き続き特例・臨時的に不採算品再算定が実施されました。
医薬品の供給不安に対応するためです。

令和7年度薬価改定について
第2 改定の概要
(別添2)不採算品再算定対象品一覧(PDF、Excel)
不採算品再算定の対象となったものは◯印でわかるようになっています。
薬価比較表の記載することで、薬価引き上げが行われた理由が明確にわかります。
最低薬価(X列)
令和7年度薬価改定では最低薬価の見直しが実施されました。
それに伴い、薬価が見直し後の最低薬価より低いものは全て、見直し後の最低薬価まで薬価の引き上げが行われています。

過去の最低薬価の際に問題となり、負の遺産として残っていた「みなし最低薬価」についても引き上げの対象となったため、真の意味での「最低薬価」が設定された形になります。
令和7年度薬価改定について
第2 改定の概要
(別添7)最低薬価品目リスト(医薬品コード順) (PDF、Excel)
対象となった品目は薬価比較表に◯印をつけているので、不採算品再算定や基礎的医薬品とと合わせて薬価引き上げの理由が明確になっています。
改定時加算(Y列)
令和7年度薬価改定では過去の中間年改定では実施されていなかった「追加承認品目の加算」が臨時的に適用されています。
中央社会保険医療協議会 総会(第602回) 議事次第
資料 総-3改定時加算の対象品目について
これにより、改定までの間に適当追加等が行われたもののうち、加算に相当する品目について薬価の引き上げが実施されています。
令和7年度薬価改定について
第2 改定の概要
(別添6)改定時加算の対象品目について(PDF)
薬価比較表には加算の対象だったかどうか、その理由も含めて記載しているので薬価改定の評価を行う際に役に立つと思います。
あとがき
誰が使うんだこんなもん・・・みたいなマニアックな薬価比較表が完成したわけですが、個人的にこの表を使ってあれこれやりたいと企んでいます・・・。
が、時間がない!
いつになることやら・・・と言っていたら本当にできなくなるので、なんとかしたいです。