厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は11月25日、9製品の承認について審議し、全て承認が了承されました。
新有効成分含有医薬品・新医療用配合薬では、関節リウマチに用いる新規JAK1阻害薬リンヴォック錠(ウパダシチニブ)や新規のHIV-1感染症治療薬ピフェルトロ錠(ドラビリン)に加え、HIV-1の初回治療として初の2剤併用療法を可能とするドウベイト配合錠(ドルテグラビルナトリウム/ラミブジン)の承認が了承されています。
新効能・新用量医薬品では、抗PD-1抗体キイトルーダ(ペムブロリズマブ)に腎細胞がんと頭頸部がんに関する適応追加の承認が了承されています。
2019.11.25時点では全て未承認、近々承認予定です。
2019.12.20に一部変更の品目については承認されました。
新薬については2020年に承認予定です。
2019年11月25日の薬食審・医薬品第二部会
今回は5つの新有効成分含有医薬品・新医療用配合薬、4つの新効能・新用量医薬品について審議され、以上9つ全てが承認が了承されています。
審議品目(承認了承)
新医薬品
- リンヴォック錠:「関節リウマチ」(選択的JAK1阻害薬)
- ピフェルトロ錠:「HIV-1感染症」(NNRTI)
- ドウベイト配合錠:「HIV感染症」(INSTI/NRTI)
- ノクサフィル錠:「造血幹細胞移植患者又は好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者における深在性真菌症の予防」、「フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌種の真菌症の治療」(アゾール系抗真菌薬)
- ニュベクオ錠:「遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん」(非ステロイド性アンドロゲン受容体阻害薬)
一変承認
- オフェブカプセル:「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患」追加(低分子チロシンキナーゼ阻害薬)
- シムジア皮下注:「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬及び乾癬性紅皮症」追加(ペグヒト化抗ヒトTNFαモノクローナル抗体Fab’断片製剤)
- ザバクサ配合点滴静注用:適応菌種「セラチア属及びインフルエンザ菌」、適応症「敗血症及び肺炎」追加(TAZ/CTLZ)
- バベンチオ点滴静注:「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」追加(ヒト型抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体)
また、報告品目が3つ挙げらています。
報告品目
一変承認
- キイトルーダ点滴静注:「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」「再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん」追加
- アドセトリス点滴静注用50mg:「末梢性T細胞リンパ腫」追加、「再発又は難治性の未分化大細胞リンパ腫」削除
- ダラザレックス点滴静注:「多発性骨髄腫」追加
審議品目(新有効成分含有医薬品・新医療用配合薬)
まずは審議が行われた新有効成分含有医薬品・新医療用配合薬5製品について。
リンヴォック錠
医薬品名 | リンヴォック錠7.5mg リンヴォック錠15mg |
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成分名 | ウパダシチニブ水和物 |
申請者 | アッヴィ |
効能・効果 | 既存治療で効果不十分な関節リウマチ (関節の構造的損傷の防止を含む) |
指定等 | なし |
1日1回の経口投与で用いる選択的JAK1阻害薬。
中等度から重度の関節リウマチ患者に対して、従来型合成DMARDとの併用・非併用に関わらず使用できる。
ピフェルトロ錠
2020年1月14日付で承認されました!
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医薬品名 | ピフェルトロ錠100mg |
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成分名 | ドラビリン |
申請者 | MSD |
効能・効果 | HIV-1感染症 |
指定等 | 希少疾病用医薬品 |
耐性ウイルスに対して高い活性を示す非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI*1)。
核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI*2)2剤と併用することで、食事の有無を問わず1日1回の経口投与で効果を発揮する。
NNRTI耐性ウイルスに対して強い活性を持つため、HIV-1感染症の新たな選択肢として期待されます。
ドウベイト配合錠
2020年1月14日付で承認されました!
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医薬品名 | ドウベイト配合錠 |
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成分名 | ドルテグラビルナトリウム/ラミブジン |
申請者 | ヴィーブヘルスケア |
効能・効果 | HIV感染症 |
指定等 | 希少疾病用医薬品 |
インテグラーゼ阻害薬(INSTI*3)のドルテグラビルと、核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)のラミブジンを含有する新医療用配合薬。
既承認のトリーメク配合錠からアバカビル硫酸塩(NRTI)を除いたレジメンです。
未治療の成人HIV-1感染患者に対する適応を取得する初めての2剤レジメンになります。
ノクサフィル錠
医薬品名 | ノクサフィル錠100mg ノクサフィル点滴静注300mg |
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成分名 | ポサコナゾール |
申請者 | MSD |
効能・効果 | 造血幹細胞移植患者又は好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者における深在性真菌症の予防 フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌種の真菌症の治療 |
指定等 | なし |
エルゴステロールの生合成を阻害することで抗真菌活性を示すアゾール系抗真菌薬。
ニュベクオ錠
医薬品名 | ニュベクオ錠300mg |
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成分名 | ダロルタミド |
申請者 | バイエル薬品 |
効能・効果 | 遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん |
指定等 | なし |
非ステロイド性アンドロゲン受容体阻害薬。
審議品目(新効能・新用量医薬品)
審議が行われた新効能・新用量医薬品4製品について。
オフェブカプセル:全身性強皮症に伴う間質性肺疾患
2019年12月20日付で承認されました!
(関連記事)
医薬品名 | オフェブカプセル100mg オフェブカプセル150mg |
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成分名 | ニンテダニブエタンスルホン酸塩 |
申請者 | 日本ベーリンガーインゲルハイム |
効能・効果 | 全身性強皮症に伴う間質性肺疾患 |
指定等 | 希少疾病用医薬品 |
低分子チロシンキナーゼ阻害薬。
血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)αβ、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)1〜3、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1〜3に結合し、活性化を阻害することで効果を発揮します。
元々の適応は「特発性肺線維症」(IPF*4またはCFA*5)のみ。
現在SSc-ILDに使用されている薬剤は免疫抑制薬のみなので、抗線維化作用を有する初のSSc-ILD治療薬が登場することになります。
シムジア皮下注:尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬及び乾癬性紅皮症
2019年12月20日付で承認されました!
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医薬品名 | シムジア皮下注200mgシリンジ シムジア皮下注200mgオートクリックス |
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成分名 | セルトリズマブペゴル(遺伝子組換え) |
申請者 | ユーシービージャパン |
効能・効果 | 既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬及び乾癬性紅皮症 |
指定等 | なし |
ペグヒト化抗ヒトTNFαモノクローナル抗体Fab’断片製剤(ヒト化抗ヒトモノクロナール抗体のFc領域を取り除いたFab’領域にポリエチレングリコールを結合したもの)。
TNF-αと結合することで、TNFαとTNFα受容体との結合を阻害し、その活性を抑制します。
元々の適応は「関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」のみ。
乾癬に対する適応を持つ3番目のTNF阻害薬になります。
ザバクサ配合点滴静注用:セラチア属及びインフルエンザ菌、敗血症及び肺炎
2019年12月20日付で承認されました!
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医薬品名 | ザバクサ配合点滴静注用 |
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成分名 | セフトロザン硫酸塩/タゾバクタムナトリウム |
申請者 | MSD |
効能・効果 | 適応菌種「セラチア属及びインフルエンザ菌」 適応症「敗血症及び肺炎」 |
指定等 | なし |
β-ラクタマーゼ阻害剤タゾバクタム0.5gとセフェム系抗生物質薬セフトロザンの配合剤。
基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL*6)とよばれる酵素を産生する細菌(ESBL産生菌)が問題になっているが、ザバクサはESBLを産生菌を含む多くの多くのグラム陰性菌に対して効果を発揮できます。
元々の適応菌種は「本剤に感性のレンサ球菌属、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、緑膿菌」、適応症は「膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍」
敗血症を起こすリスクのある尿路感染症や腹腔内感染症に対して使用されてきたが、敗血症自体や肺炎に対しても使用可能となることで、感染症治療の選択肢の幅が広がります。
バベンチオ点滴静注:根治切除不能又は転移性の腎細胞がん
2019年12月20日付で承認されました!
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医薬品名 | バベンチオ点滴静注200mg |
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成分名 | アベルマブ(遺伝子組換え) |
申請者 | メルクバイオファーマ |
効能・効果 | 根治切除不能又は転移性の腎細胞がん |
指定等 | なし |
ヒト型抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体でがん免疫療法薬の一種。
元々の適応は「根治切除不能なメルケル細胞癌」のみ。
「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」の適応では、チロシンキナーゼ阻害薬 インライタ(アキシチニブ)と併用します。
チロシンキナーゼ阻害薬と併用する適応を持つがん免疫療法薬は初めてです。
腎細胞がんに対する適応を持つ初の抗PD-L1抗体になります。
報告品目
PMDA*7(医薬品医療機器総合機構)の審査段階で部会での審議を行わず報告のみでよいと判断されたものです。
キイトルーダ点滴静注:根治切除不能又は転移性の腎細胞がん、再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん
2019年12月20日付で承認されました!
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医薬品名 | キイトルーダ点滴静注20mg キイトルーダ点滴静注100mg |
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成分名 | ペムブロリズマブ(遺伝子組換え) |
申請者 | MSD |
効能・効果 | 根治切除不能又は転移性の腎細胞がん 再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん |
指定等 | なし |
ヒト化抗ヒト PD-1 モノクローナル抗体でがん免疫療法薬の一種。
腎細胞がん、頭頸部がんともに化学療法歴のない患者に対しての適応です。
腎細胞がんについては、審議品目だったバベンチオ点滴静注と同様に、チロシンキナーゼ阻害薬 インライタ(アキシチニブ)と併用します。
キイトルーダの選択肢がさらに拡大します。腎細胞がんではインライタと併用しますが、キイトルーダとチロシンキナーゼ阻害薬の併用は初めてです。
アドセトリス点滴静注用:末梢性T細胞リンパ腫
2019年12月20日付で承認されました!
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医薬品名 | アドセトリス点滴静注用50mg |
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成分名 | ブレンツキシマブベドチン(遺伝子組換え) |
申請者 | 武田薬品 |
効能・効果 | 末梢性T細胞リンパ腫 |
指定等 | なし |
微小管阻害薬結合抗CD30モノクローナル抗体。
元々の適応は「ホジキンリンパ腫」と「再発又は難治性の未分化大細胞リンパ腫」だが、「再発又は難治性の未分化大細胞リンパ腫」が「末梢性T細胞リンパ腫」とより広い概念のリンパ腫に改められます。
未治療の患者に使用可能になり、既治療の患者(再発又は難治性の患者)では小児にも使用可能になります。
ダラザレックス点滴静注:多発性骨髄腫の用法・用量変更
2019年12月20日付で承認されました!
(関連記事)
医薬品名 | ダラザレックス点滴静注100mg ダラザレックス点滴静注400mg |
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成分名 | ダラツムマブ(遺伝子組換え) |
申請者 | ヤンセンファーマ |
変更内容 | 多発性骨髄腫の用法・用量が2通りに |
指定等 | なし |
ヒト型抗CD38モノクローナル抗体。
他の抗悪性腫瘍剤と併用して用いるのは変りませんが、A法またはB法の2通りの投与間隔ができるようになります。
- A法:1週間間隔、2週間間隔及び4週間間隔
- B法:1週間間隔、3週間間隔及び4週間間隔
併用する他の抗悪性腫瘍剤に合わせて投与方法を選択可能になります。