平成28年9月7日、厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会で10製品の承認が審議され、すべて了承されました。
今回は、審議が行われた品目の中から、ミケルナ配合点眼液についてまとめます。
ミケルナはミケランLA点眼液2%とキサラタン点眼液0.005%の配合点眼薬です。
なお、ミケルナ配合点眼液は平成28年9月28日に製造販売が承認されました。
平成28年9月7日薬食審・医薬品第一部会での審議品目
今回審議され、承認が了承されたのは以下の通りです。
- リクラスト点滴静注液:年に一回投与のビスフォスフォネート製剤
- カーバグル分散錠:NAGS欠損症、イソ吉草酸血症、メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症などによる高アンモニア血症に対する治療薬
- リアルダ錠:ペンタサ、アサコールに続く3つ目のメサラジン製剤
- ミケルナ配合点眼液:キサラタンとミケランを合わせた点眼液
- エビリファイ:小児の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対する適応追加
- ウプトラビ錠:肺動脈性高血圧症への適応を持つPGI2受容体作動薬
- ジャクスタピッドカプセル:ホモ接合体家族性高コレステロール血症に対して効果を発揮するMTP阻害薬
- プリズバインド静注液:プラザキサの中和薬
- ブリリンタ錠:プラビックス、エフィエントに続く新規抗血小板薬
- ミカトリオ配合錠:日本初の3剤配合降圧剤 テルミサルタン/アムロジピン/ヒドロクロロチアジド
- ポリドカスクレロール1%注:適応条件の緩和と用法・用量の追加(報告品目)
- 献血グロベニン-I静注用:ギラン・バレー症候群への適応追加(報告品目)
- トレシーバ注:注射時刻についての制限緩和(報告品目)
一つずつまとめていきたいと思います。
ミケルナ配合点眼液の承認了承
成分名:カルテオロール塩酸塩/ラタノプロスト
- ミケルナ配合点眼液
申請者:大塚製薬
効能・効果:緑内障、高眼圧症
用法・用量:1回1滴、1日1回点眼する。
カルテオロール塩酸塩2%とラタノプロスト0.005%を含む配合点眼液です。
ミケルナ配合点眼液の特徴は2つあります。
- カルテオロール塩酸塩を含む初のPGF2α誘導体/β遮断薬配合点眼液
- アルギン酸を加えることで眼圧降下作用を持続可能とする初のPGF2α誘導体/β遮断薬配合点眼液
PGF2α誘導体とβ遮断薬の配合剤
プロスタグランジン(PGF2α)誘導体は、プロスタノイドFP受容体を活性化させることでぶどう膜強膜からの房水流出を促進させ、眼圧を低下させます。
β受容体遮断薬は、毛様体上皮における眼房水の産生を抑制することで眼圧を下降させます。
いずれも、緑内障・高眼圧症の第一選択薬に位置付けられています。
緑内障・高眼圧症治療における代表的な2つの成分を配合することで、点眼回数を減らすことが可能になりますし、複数の点眼液を使用する際に必要な点眼間隔のための待ち時間をなくすことが可能になります。
カルテオロール塩酸塩を含む初の配合点眼液
プロスタグランジン(PGF2α)誘導体とβ受容体遮断薬の配合点眼液といえば、
- ザラカム配合点眼液(ラタノプロスト/チモロールマレイン酸塩)
- デュオトラバ配合点眼液(トラボプロスト/チモロールマレイン酸塩)
- タプコム配合点眼液(タフルプロスト/チモロールマレイン酸)
があります。
今回承認が了承されたミケルナ配合点眼液を見てみると、その成分はカルテオロール塩酸塩/ラタノプロスト。
カルテオロール塩酸塩といえばミケラン点眼液、ラタノプロストといえばキサラタン点眼液ですね。
これまでの配合点眼液と異なる特徴の一つ目として、カルテオロール塩酸塩を含む初の配合点眼液であることが挙げられます。
二種類の点眼液を一つにまとめることで、点眼回数を減らすという利便性に加えて、チモロールマレイン酸ではなくカルテオロール塩酸塩という、β受容体遮断薬の選択肢が加わるというのがミルケナ配合点眼液の利点となります。
日本初の効果持続型の配合点眼液
ミケルナ配合点眼液はアルギン酸が添加されていることも大きな特徴です。
アルギン酸の存在により、本来1日2回点眼しないと効果を維持することができないカルテオロール塩酸塩の効果を1日1回点眼で持続可能にしています。
チモロール配合点眼液の欠点
チモロールマレイン酸塩を主成分とする点眼液として以下の2剤があります。
- チモプトール点眼液
- リズモン点眼液
用法はいずれも「1日2回点眼」。
チモプトール、リズモン、それぞれに効果を持続することで用法を「1日1回点眼」とした製剤が存在します。
- チモプトールXE点眼液
- リズモンTG点眼液
チモプトールXEにはジェランガムという高分子多糖類が添加させれいます。
涙液中のナトリウムイオンと反応することで、ゲル化を引き起こし、薬剤が角膜表面に保持され、効果を持続します。
リズモンTGにはメチルセルロースが添加されています。
これは熱反応ゲル化剤と呼ばれるもので、体温により相転移を起こしてゲル状になり、薬剤が角膜表面に保持され、効果を持続します。
チモロールマレイン酸塩を配合したザラカム、デュオトラバ、タプコムには上記のようなゲル化剤は含まれていません。
ですので、いずれも、チモプトールXE点眼液/リズモンTG点眼液の配合剤ではなく、「チモプトール点眼液/リズモン点眼液とPGF2αの配合剤」ということになります。
ミケルナ配合点眼液はミケランLA点眼液の配合剤
カルテオロール塩酸塩を含む点眼液にはミケラン点眼液がありますが、その用法は「1日2回点眼」です。
その改良型がミケランLA点眼液です。
効果を持続させるために、昆布等のネバネバ成分(粘液多糖)であるアルギン酸が添加されています。
今回の申請されているミケルナ配合点眼液の特徴が、アルギン酸が添加されていることです。
ミルケナ配合点眼液はアルギン酸の働きによりβ遮断薬の効果を維持することができます。
ということで、ミルケナ配合点眼液「ミケランLA点眼液とキサラタン点眼液」の配合剤ということができると思います。
まとめ
ついにミケランの配合点眼液が登場ですね。
しかもミケランLA点眼液の配合点眼液です。
ミケラン点眼液とミケランLA点眼液は大塚製薬は千寿製薬と共同販売を行っていますが、年内に販売開始になりそうなミケルナ配合点眼液についても同様に、大塚と千寿のタッグで販売が行われるようです。
アルギン酸が添加されていることで、β受容体遮断薬であるカルテオロール塩酸塩の効果が持続され、適切な効果が発揮されることが期待されます。
気になるところ
ただ、やはり気になるのはアルギン酸を添加することによるラタノプロストの効果への影響です。
すでに発売されているチモロールマレイン酸塩を配合したザラカム、デュオトラバ、タプコムは、ゲル化による角膜貯留を行うことで、PGF2αによる充血等の副作用が起こりやすくなることを避ける為、あえてゲル化剤を添加しなかったという説明を聞いたことがあります。
今回のアルギン酸の添加では、ラタノプロストの効果が強く出すぎると言うことはなかったのでしょうか?
また、PGF2α誘導体では、点眼回数を増やすことでプロスタノイドFP受容体のダウンレギュレーションを引き起こしてしまうという問題がありました。
ゲル化により、ダウンレギュレーションが起こりやすくなるということはないのでしょうか?
おそらくそのあたりの問題はパスして製剤化されているとは思いますが、ちょっときになるところです。
平成28年11月18日、薬価収載
ミケルナ配合点眼液は平成28年11月18日薬価基準収載されました。
発売日は未定のようです。
ミケルナ配合点眼液の薬価は729.20。
配合元となる薬の薬価を見てみると
- カルテオロール塩酸塩LA点眼液2%「わかもと」:356.70
- ラタノプロスト点眼液0.005%:309.00〜409.90
う〜ん、薬価だけ見ると安いとは言えませんね。
ちなみに、新薬に対する14日の処方日数制限の対象から除外されています