リアルダ錠の特徴・作用機序・副作用〜添付文書を読み解く【1日1回 最大用量で使用可能なメサラジン製剤】

平成28年9月7日、厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会で10製品の承認が審議され、すべて了承されました。
今回は、審議が行われた品目の中から、リアルダ錠についてまとめます。
リアルダはペンタサ、アサコールに続くメサラジン(5‐ASA:5‐アミノサリチル酸)製剤で潰瘍性大腸炎に対する適応を持ちます。
特徴は1日1回で効果を発揮、メサラジンを最大用量で使用可、直腸まで効果を発揮するという点です。
なお、リアルダ錠は平成28年9月28日に製造販売が承認されました。

平成28年9月7日薬食審・医薬品第一部会での審議品目

今回審議され、承認が了承されたのは以下の通りです。

一つずつまとめていきたいと思います。

リアルダ錠の承認了承

  • 成分名:メサラジン
  • 製品名:リアルダ錠1200mg
  • 申請者:持田製薬
  • 効能・効果:「潰瘍性大腸炎」
  • 用法・用量:「通常、成人にはメサラジンとして1日1回2,400mgを食後経口投与する。活動期は、通常、成人にはメサラジンとして1日1回4,800mgを食後経口投与するが、患者の状態により適宜減量する。」

ペンタサ、アサコールに続く潰瘍性大腸炎(UC:Ulcerative Colitis)に適応を持つメサラジン製剤です。
一番の特徴は1日1回の服用で済むことです。
また、国内で承認されているメサラジン製剤として、最大の用量で使用可能になっています。
(ペンタサ:4,000mg、アサコール:3,600mg)
活動期はステロイドの内服により炎症を鎮める必要がありますが、できるだけステロイドの投与量を減らしたい場合、最大量のメサラジンを内服可能にできるのは大きなメリットになるかもしれません。
ちなみに、すでに海外では販売されています。

MMXによるメサラジン徐放製剤

リアルダ錠はMMX(マルチマトリックス)というDDS(Drug Delivery System)を用いることで、大腸へメサラジンを到達させ、継続的に効果を発揮できるようにしたものです。
リアルダ錠の表面はpHが7以上のアルカリ性の条件で溶ける特殊なアクリル系樹脂でコーティングされています。
これは、アサコールで用いられているコーティングと同様と考えていいようです。
そのため、小腸の最後のあたりでコーティングが溶解し、その中身が放出されていきます。
コーティングの中には、親油性基材と親水性基材に含有される形でメサラジンが入っています。
アルカリ性でコーティングが崩壊した後は、親油性基材が水分の侵入をコントロールし、少しずつ水分が親水性基材に吸収されていきます。
親水性基材は水分を吸収することでゲル化し、メサラジンが少しずつ放出されていきます。

ペンタサ、アサコール、リアルダの比較

メサラジンは炎症部位に直接作用することで効果を発揮する薬剤ですが、そのまま経口投与するとほとんどが小腸上部で吸収されてしまいます。
そのため、潰瘍性大腸炎の患部である大腸で効果を発揮させるためにはDDSを用いた製剤とする必要があります。
ペンタサ、アサコール、リアルダはいずれも大腸で効果を発揮できるように加工されたメサラジン製剤ですが、そのメカニズムは異なります。

  • ペンタサ:エチルセルロースによる放出調整
  • アサコール:pH依存放出性フィルムコーティング
  • リアルダ:MMXによる徐放製剤
ペンタサの放出調整機構

ペンタサはエチルセルロースによりメサラジンを覆った形の錠剤です。
エチルセルロースには細かい穴が空いているため、そこから少しずつ薬剤が放出されていきます。
消化管を通過する間に少しずつ薬物を放出していくため、小腸・大腸の両方で効果を発揮します。
そのため、潰瘍性大腸炎のみでなく、クローン病にも効果を発揮します。
薬物を放出した後もエチルセルロース部分はそのまま残るので、薬の殻だけが糞便中に排泄されるゴーストピル(ゴーストタブレット)が見られることがあります。

アサコールのpH依存性の放出調整機構

アサコールはpH依存放出性のフィルムコーティングによりメサラジンを覆っています。
このpH依存放出性フィルムコーティングはpH6.4では溶解しませんが、pH7.2になると溶解します。
そのため、胃や小腸はそのままの形で通過し、大腸に到達すると溶解して薬物を放出します。
この機構により、アサコールは効率的にメサラジンを大腸に送り届けることが可能になっています。
安倍総理大臣がアサコールにより、潰瘍性大腸炎の寛解状態を維持できるようになったというのは有名な話ですね。
(詳細についてはよくは知りませんが)
アサコールもペンタサ同様、ゴーストピル(ゴーストタブレット)が見られることがあります。

MMXを用いたリアルダは直腸でも効果を発揮

アサコールと同様に大腸に到達してから溶解を始めるリアルダですが、そこからさらに徐放性を持つということで、より広い範囲に効果を発揮することが期待されます。
「pH依存型メサラジン放出調整製剤3600mg/日(1日3回)を対照とした活動期に置ける国内第Ⅲ層試験」(非劣性試験)のサブグループ解析では、「病変範囲別にみたUC-DAIスコアの変化量(平均値)」としてまとめられています。

  • リアルダ錠4800mg/日
    • 全大腸炎型(n=19):-2.8
    • 左側大腸炎型(n=64):-2.4
    • 直腸炎型(n=50):-2.7
  • pH依存型メサラジン放出調整製剤3600mg/日
    • 全大腸炎型(n=14):-3.0
    • 左側大腸炎型(n=60):-2.5
    • 直腸炎型(n=53):-0.7

このデータを見ると、リアルダ錠が直腸まで大腸全域で変わらず効果を発揮することがわかります。
直腸の病変部位でメサラジンの効果を発揮させるための選択肢としては、

  • ペンタサ坐剤
  • ペンタサ注腸

があります。
ですが、坐剤や注腸の使用は患者負担が大きいため、内服でコントロールできるというのは大きなメリットになると思います。

まとめ

ペンタサ、アサコールの復習も兼ねて、リアルダ錠も含めたDDSの比較を行いました。
その特徴をまとめます。

リアルダ錠への期待

整理するとこんな感じでしょうか?

  1. 少ない服用回数で効果を発揮
  2. 最大量のメサラジンを使用可能
  3. 大腸全体で安定して効果を発揮
少ない服用回数で効果を発揮

アサコールと比較した際の効果がどの程度なのかは不明ですが、1日1回の服用で済むのはかなりいいですね。
服用する錠剤数もアサコールの1回分と同じ2錠です。(活動期は4錠となりますが)
長く継続して服用していかなければいけない薬であるだけに、少ない服用回数で済むのであれば、飲み忘れも減り、結果として再燃率も下がるのではないかと期待していまします。

最大量のメサラジンを使用可能

活動期は4錠まで服用可能なので、国内で承認されている薬剤のうち、最大量のメサラジンを使用することが可能です。
ステロイドの投与量を減らしたり、より速やかに症状を安定させることが可能になるのではないかと期待できます。

大腸全体で安定して効果を発揮

また、MMXという新しい技術により、直腸までの大腸全般で効果を発揮することが可能とされています。
これまで、ペンタサ注腸やペンタサ坐剤を使用していた人にとって、内服で済むのであれば大きなメリットになります。
1年間は14日の投与制限があるので悩むところかもしれませんが・・・。

リアルダ錠の気になる部分

いくつか気になる部分もあります。

錠剤の大きさ

まず、錠剤の大きさです。
ペンタサ、アサコール、リアルダを並べてみました。
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アサコールを隣にすればよかったですね。
リアルダが大きいのわかります?
これを2〜4錠服用ってのは人によってはちょっと大変かもしれません。
もちろん、徐放性を維持するために半割・粉砕は不可です。

リアルダは冷所保存

次に保管方法。
リアルダは冷所保存になっています。
これは安定性試験の結果によるものです。
加速試験(30℃/65%RH、プラスチックPTP/アルミ袋)では3ヶ月までは安定でしたが、6ヶ月で溶出性が規格上限付近まで上昇したようです。
なので、長期保管のための冷所保存という理解で大丈夫そうです。
よほど暑いところに保管しない限り、短期間の旅行などの移動中くらいであれば問題はないかと思います。

ゴーストピル

表面のコーティングはアサコールと同様のものなので、排便時のゴーストピルの注意も必要ですね。

平成28年11月28日販売開始

平成28年11月18日に薬価基準収載されました。
薬価は212.00円。

  • ペンタサ錠250mg:46.10
  • ペンタサ錠500mg:89.40
  • メサラジン錠250mg:21.10〜25.00
  • メサラジン錠500mg:52.50
  • アサコール錠400mg:76.20
  • メサラジン腸溶錠400mg:44.60
  • リアルダ錠1200mg:212.00

思ったよりも高いかな?
平成28年11月28日に販売開始されました。
新薬の投与日数制限を受けるので、平成29年11月末までは14日分しか処方できません。

参考資料

  • リアルダ錠1200mg 添付文書 持田製薬
  • ペンタサ錠250mg/ペンタサ錠500mg 添付文書 杏林製薬
  • アサコール錠400mg 添付文書 協和発酵キリン
  • リアルダ錠1200mg 総合製品情報 持田製薬

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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