2021年9月28日、厚生労働省が新型コロナウイルス感染症に伴う特例対応として実施されていた調剤報酬(診療報酬)上の対応について、10月以降どのように変更されるか発表しました。
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その63)(事務連絡 令和3年9月28日)
「感染防止対策の継続支援」の周知について(事務連絡 令和3年9月28日)
薬局においてはほとんどの特例が令和3年9月末を期限とされていたので、10月以降の対応がどうなるのか気になっていた方も多いと思うのですが、かなりギリギリになってからの発表となりました。
新型コロナウイルス感染症対策に関する診療報酬・介護報酬上の特例は令和3年9月末で打ち切りに
令和3年9月末で打ち切られることが決まったのは以下の3つです。
- 乳幼児服薬指導加算の特例(12点)
- 調剤感染症対策実施加算(4点)
- 介護報酬:新型コロナウイルス感染症への対応特例(0.1%上乗せ)
これらは元々令和3年9月末までの特例とされていたので、打ち切りは予定通りです。
「延長されなかった」というのが正確かもしれませんね。
今回の事務連絡で明らかになった内容についてまとめます。
介護報酬 新型コロナウイルス感染症への対応特例(0.1%上乗せ)→廃止
※上記2つに変わるものとして感染症対策経費を直接支援する補助金(10〜12月:上限6万円)が設定乳幼児服薬指導加算の特例(12点)→廃止
※新たな乳幼児に対する感染症対策に伴う加算(6点)が新設自宅療養・宿泊療養に対する服薬指導
・訪問(対面)で実施:在宅患者緊急訪問薬剤指導料1の特例(500点)
・電話等で実施:在宅患者緊急訪問薬剤指導料2の特例(200点)
・医療機関に服薬状況等を文書で情報提供:服薬情報等提供料1の特例(30点)※月1回の算定上限なし
復習:乳幼児服薬指導加算の特例(廃止)
6歳未満の小児の調剤に際し、小児の外来診療において特に必要な感染症対策を講じた上で、必要な薬学的管理及び指導を行い、「薬剤服用歴管理指導料」または「かかりつけ薬剤師指導料」を算定した場合、薬剤服用歴管理指導料の注8(乳幼児服薬指導加算)に相当する12点を算定できるというものでした。
令和2年12月15日の事務連絡から算定可能となり、その後、令和3年9月末まで延長されましたが、再延長はなく廃止となりました。
ですが、乳幼児の新型コロナウイルス感染症対策については新たに別の点数が設けられます。
今回、打ち切りとなった「乳幼児服薬指導加算の特例」について、詳しくは過去記事を参照してください。
復習:調剤感染症対策実施加算(廃止)
特に必要な感染予防策を講じた上で、必要な薬学的管理及び指導を行った場合、調剤料の注6(自家製剤加算)のうち、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の内服薬における、予製剤による場合の加算に相当する点数(4点)をさらに算定できるというものでした。
当初の予定通り、令和3年4月診療分から9月診療分までの実施で廃止されました。
年内の感染症対策の経費については実費に対する補助金という形で配布されることになります。
今回、打ち切りとなった「調剤感染症対策実施加算」について、詳しくは過去記事を参照してください。
復習:介護報酬 新型コロナウイルス感染症への対応特例(0.1%上乗せ)(廃止)
新型コロナウイルス感染症に対応するやめ、かかり増しの経費が必要となることを踏まえ、すべてのサービスについて、基本報酬に0.1%の上乗せが実施されました。
令和3年度介護報酬改定に伴い令和3年4月から実施されていましたが、当初の予定通り、令和3年9月末で廃止されました。
今回、打ち切りとなった「介護報酬の新型コロナ感染症対応特例(0.1%上乗せ)」について、詳しくは過去記事を参照してください。
令和3年10月1日から新たに実施される調剤報酬上の臨時的な取り扱い
令和3年9月28日、厚生労働省医政局総務課から「感染防止対策の継続支援」の周知について(令和3年9月28日)の事務連絡が発出されています。
また、同日には厚生労働省保険局医療課からは新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その63)(令和3年9月28日)の事務連絡が発出されています。
小児の外来診療等に係る措置について
小児に対して感染予防対策を講じた場合に算定可能な加算は12点から6点に変更となって継続されます。
(形式上は「乳幼児服薬指導加算の特例」が廃止となり、新たな点数として新設)
「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱い(その31)」(令和2年12月15日厚生労働省保険局医療課事務連絡)の1及び「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱い(その35)」(令和3年2月26日厚生労働省保険局医療課事務連絡)の1により、令和3年9月診療分まで実施している小児の外来診療等に係る特例的な評価については、同年10月診療分から令和4年3月診療分までの取扱いとして、以下の取扱いとする。
(3)保険薬局において、6歳未満の乳幼児に係る調剤に際し、小児の外来診療等において特に必要な感染予防策を講じた上で、必要な薬学的管理及び指導を行い、「薬剤服用歴管理指導料」又は「かかりつけ薬剤師指導料」を算定する場合、現行の要件を満たせば算定できる加算に加えて、「01 調剤料」注3に規定する「向精神薬、覚醒剤原料又は毒薬を調剤した場合」に係る加算に相当する点数から「00 調剤基本料」注7に規定する点数に相当する点数を減算した点数(6点)をさらに算定できることとすること。
引用元:新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その63)
算定要件はこれまでの「乳幼児服薬指導加算の特例」と同じですが、点数については12点から6点に減っています。
12点は「乳幼児服薬指導加算」と同じ点数という形でしたが、今回の6点は「調剤料の注3(向精神薬、覚醒剤原料又は毒薬を調剤した場合)」に該当する8点から「調剤基本料の注7(後発医薬品に係る減算)」に該当する2点を引いた点数という形になっています。
自宅・宿泊療養者への対応(調剤)
調剤報酬上の新たな特例評価として、
- 自宅・宿泊療養者への緊急の訪問/電話等による服薬指導への特例拡充
- 自宅・宿泊療養者の服薬状況の医療機関への文書への情報提供の特例
が追加されました。
自宅・宿泊療養者への緊急の訪問/電話等による服薬指導への特例拡充
(別添) 調剤報酬点数表関係
問 16 自宅・宿泊療養を行っている者に対して発行された処方箋を受け付けた保険薬局の薬剤師が、保険医の求めにより、緊急に薬剤を配送し、当該患者に対して必要な薬学的管理指導を実施した場合、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の算定について、どのように考えればよいか。
(答)保険薬局において、自宅・宿泊療養を行っている者に対して発行された処方箋(備考欄に「CoV 自宅」又は「CoV 宿泊」と記載されているものに限る。)に基づき、調剤を実施する場合において、処方箋を発行した医師の指示により、当該保険薬局の薬剤師が当該患者に緊急に薬剤を配送した上で、当該患者の療養している場所において、当該患者に対して対面による服薬指導その他の必要な薬学的管理指導を実施した場合には、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1(500点)を算定できる。
また、上記の患者に緊急に薬剤を配送した場合であって、対面による服薬指導を実施する代わりに、当該患者に対して、緊急に電話や情報通信機器(以下「電
話等」という。)を用いた服薬指導を実施した場合又は当該患者の家族等に対して、緊急に対面若しくは電話等による服薬指導を実施した場合には、在宅患者緊
急訪問薬剤管理指導料2(200点)を算定できる。
なお、この場合、薬剤服用歴管理指導料及びかかりつけ薬剤師指導料等は併算定できない。
この取扱いは、本事務連絡の発出日以降適用される。引用元:新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その63)
CoV自宅、CoV宿泊(新型コロナウイルス感染症で自宅・宿泊療養を行なっている患者)の処方箋について、医師の指示に基づき薬剤師が緊急に薬剤を配送した場合に算定可能な点数が追加されています。
患者本人に対して対面による服薬指導を実施した場合、「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1」(500点)を算定可能。
患者の家族に対して指導を行った場合や電話や情報通信機器による服薬指導を実施した場合、「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料2」(200点)を算定可能となります。
通常の「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」とは異なり、報告書の提出は算定要件に含まれていません。
これらについては令和3年9月28日から(上記事務連絡発出日以降)算定可能です。
(別添) 調剤報酬点数表関係
問 17 問 16 において、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1又は2を算定する場合、薬剤服用歴管理指導料に係る加算及び在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料に係る加算を算定できるか。
(答)各加算の算定要件を満たしていれば、薬剤服用歴管理指導料に係る加算を算定できる。ただし、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料に係る加算は算定できない。
引用元:新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その63)
今回の取り扱いで新型コロナウイルス感染症に対する特例であり、実際の在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の算定要件とは異なります。
そのため、「薬剤服用歴管理指導料」を「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」に置き換わっていると考えるのが自然なので、薬剤服用歴管理指導料に係る加算は算定できて、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料に係る加算は算定できないという解釈は自然だと思います。
(別添) 調剤報酬点数表関係
問 18 問 16 において、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1又は2を算定する場合、書面による請求を行う保険薬局の診療報酬明細書等の記載等については、どのような取扱いとなるか。
(答)書面による請求を行う保険薬局において、調剤行為名称を記載する場合においては、次に示す略号を用いて差し支えない。なお、その他の記載方法については、「診療報酬請求書等の記載要領等について」(昭和51年8月7日保険発第82号)によること。
- 問16に示す在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1:緊コA
- 問16に示す在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料2:緊コB
引用元:新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その63)
レセプト上は通常の「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」と今回の特例による「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」は区別されているようですね。
(通常の在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の略号は緊訪A、緊訪Bです)
自宅・宿泊療養者の服薬状況の医療機関への文書への情報提供の特例
(別添) 調剤報酬点数表関係
問 19 自宅・宿泊療養を行っている者について、保険医療機関から情報提供の求めがあった場合において、当該患者の同意を得た上で、薬剤の使用が適切に行われるよう、当該患者の服薬状況等について確認し、当該保険医療機関に必要な情報を文書により提供等した場合に、服薬情報等提供料1(30点)を算定できるか。
(答)算定可。なお、この場合、月1回の限度を超えて算定できる。この取扱いは、本事務連絡の発出日以降適用される。
引用元:新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その63)
CoV自宅、CoV宿泊(新型コロナウイルス感染症で自宅・宿泊療養を行なっている患者)について、医療機関の情報提供の求めに応じて、患者の同意の上、服薬状況等を文書で情報提供した場合に「服薬情報等提供料1」(30点)が算定可能になります。
また、通常は月1回しか算定できませんが、特例に該当する場合は算定回数の制限を超えて(月2回以上でも)算定可能です。
施設・事業所における感染防止の支援の継続
「調剤感染症対策実施加算」や「介護報酬:新型コロナウイルス感染症への対応特例(0.1%上乗せ)」に変わる感染症対策支援として、感染症対策のかかり増し経費を直接支援する補助金による支援が行われます。
経費に対して補助金が支払われるものになるので申請が必要ですが、領収書等の証拠書類を必要としないは簡素な方式になりました。
医療に対する感染症対策補助金(令和3年10月〜12月分)
医療に対する補助金は国直接執行の補助金により行われ、薬局は3ヶ月(10〜12月)で最大6万円が支給されます。
介護、障害福祉についてもそれぞれ補助金が設定されていますが、「医療の補助金が支給される場合は当該補助金で対応」と記載されているので、薬局の場合、「介護報酬:新型コロナウイルス感染症への対応特例(0.1%上乗せ)」に変わるものは設定されないということになります。
3ヶ月で6万円ということは月2万円になるので、「調剤感染症対策実施加算」(4点)で考えると、受付500回分です。
つまり、月当たりの受付回数が500回を越す場合(多くの薬局)においては感染症対策に関する費用は削減されるという形になります。
申請に際して領収書等の証拠書類の提出は不要ですが、領収書等は5年間保存しておく必要があります。
詳しい内容について公開されているのでリンクを掲載します。
- 令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止継続支援補助金について(事務連絡 令和3年10月7日)
- 令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止継続支援補助金の交付について(厚生労働省発医政 1007 第6号 令和3年10月7日)
- 令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止継続支援補助金に関する Q&A(令和3年10月7日 第1版)
最後に
ちなみに医科についてはとんでもない点数がついています。
まずは外来診療。
- 院内トリアージ実施加算:300点→550点
- 救急医療管理加算の特例(ロナプリーブ投与):2,850点
- 救急医療管理加算の特例(ロナプリーブ投与以外):950点
つづいて在宅(自宅療養・宿泊療養)。
- 救急医療管理加算の特例(ロナプリーブ投与):4,750点
- 救急医療管理加算の特例(ロナプリーブ投与以外):2,850点
ただ、こういう点数を見ているとコロナ後の税金が怖くなるな・・・。
今回はかなりギリギリの発表の上、当日から点数を算定可能ということでレセコンメーカーさんは対応に追われたんじゃないかと思います。
実際、その場では算定せず、レセコン更新後に算定とするしかなかったとは思いますが、まだしばらくはこういうケースが続くのかもしれませんね・・・。