【令和3年10月12日付】ゼルヤンツ、スルペラゾン、ストロメクトール(イベルメクチン)の添付文書改訂指示

令和3年10月12日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品等について、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回は3つの改訂指示が出されています。

※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。

PMDAへのリンクを貼っておきます。
令和3年度指示分 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

添付文書の改訂指示が出されたのは以下の3つです。

  • トファシチニブクエン酸塩(ゼルヤンツ):心血管系事象、悪性腫瘍
  • セフォペラゾンナトリウム・スルバクタムナトリウム:アレルギー反応に伴う急性冠症候群
  • イベルメクチン:意識障害

pmdaが発出する改定案の一部は旧記載要領と新記載要領の両方が掲載されるようになっています。

ゼルヤンツ(トファシチニブクエン酸塩)による心血管系事象、悪性腫瘍

日本国内で販売されているのは「ゼルヤンツ錠5mg」で関節リウマチ、潰瘍性大腸炎に対する適応を有しているJAK阻害剤(ヤヌスキナーゼ阻害薬)になります。
免疫系に作用する薬剤ということでCOVID19肺炎に対する効果の研究も行われている薬剤です。

今回の改訂に関する内容については欧州医薬品庁(EMA)Pharmacovigilance Risk Assessment Committee (PRAC)から関する注意喚起が出されており、2021年7月9日には日本リウマチ学会も案内を出しています。

改訂指示の内容

【新記載要領】に従ってまとめます。
下線部が追記、打消線が削除された部分です。

まずは、添付文書の「警告」について、以下の通り改訂が指示されています。

1.警告
本剤投与により、結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染等による重篤な感染症の新たな発現もしくは悪化等が報告されており、本剤との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍の発現報告されている。本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、これらの情報を患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
また、本剤投与により重篤な副作用が発現し、致命的な経過をたどることがあるので、緊急時の対応が十分可能な医療施設及び医師が使用し、本剤投与後に副作用が発現した場合には、主治医に連絡するよう患者に注意を与えること。
引用元:トファシチニブクエン酸塩 「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について」(令和3年6月11日付け薬生発0611第1号局長通知)に基づく改訂(新記載要領)

「効能又は効果に関連する注意」は以下の通り改訂が指示されています。

5.効能又は効果に関連する注意
〈効能共通〉
心血管系事象のリスク因子を有する患者に本剤を投与する際には、心筋梗塞等の心血管系事象、静脈血栓塞栓症があらわれるおそれがあるので、他の治療法を考慮すること。
引用元:トファシチニブクエン酸塩 「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について」(令和3年6月11日付け薬生発0611第1号局長通知)に基づく改訂(新記載要領)

続いて「重要な基本的注意」。

8.重要な基本的注意
悪性リンパ腫、固形癌等の悪性腫瘍の発現が報告されている。また、海外臨床試験において悪性腫瘍の発現頻度がTNF阻害剤に比較し本剤で高い傾向が認められたとの報告もあることから、悪性腫瘍の発現には注意すること。
引用元:トファシチニブクエン酸塩 「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について」(令和3年6月11日付け薬生発0611第1号局長通知)に基づく改訂(新記載要領)

「特定の背景を有する患者に関する注意」。

9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1 合併症・既往歴等のある患者
心血管系事象のリスク因子を有する患者
他の治療法を考慮すること。特に10mg 1日2回投与の必要性については慎重に判断すること。
本剤を投与する場合は、心筋梗塞等の心血管系事象、静脈血栓塞栓症の徴候及び症状の発現について十分に観察すること。
静脈血栓塞栓症があらわれるおそれがある。心血管系事象のリスク因子(喫煙、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患の既往等)を1つ以上有する50歳以上の関節リウマチ患者を対象としたに実施中の海外臨床試験において、心筋梗塞等の心血管系事象の発現頻度はTNF阻害剤群に比較し、本剤群で高い傾向が認められている。また、静脈血栓塞栓症肺塞栓症及び深部静脈血栓症の発現頻度はTNF阻害剤群と比較し、本剤5mg 1日2回群及び本剤10mg 1日2回群で本剤群で用量依存的に高くなる傾向が認められており、心突然死等を含む死亡の発現頻度はTNF阻害剤群と本剤5mg 1日2回群で同程度、本剤10mg 1日2回群で高い傾向であったことが報告されている。
引用元:トファシチニブクエン酸塩 「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について」(令和3年6月11日付け薬生発0611第1号局長通知)に基づく改訂(新記載要領)

「副作用」。

11.副作用
11.1 重大な副作用
心血管系事象:心筋梗塞等の心血管系事象があらわれることがある。
悪性腫瘍
引用元:トファシチニブクエン酸塩 「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について」(令和3年6月11日付け薬生発0611第1号局長通知)に基づく改訂(新記載要領)

詳細は省略しますが、「15. その他の注意」の「15.1 臨床使用に基づく情報」が削除され、「17. 臨床成績」に「17.3 その他」として海外市販後臨床試験の結果を記載するように改訂指示が出されています。

改訂理由

過去3年度で以下の通り国内での症例報告が集積されています。

  • 心血管系事象関連症例:22 例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例:5例)【死亡:7例(うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例:0例)】
  • 悪性腫瘍関連症例:15 例 【死亡:18例】 ※因果関係を評価していない

また、「トファシチニブクエン酸塩の「使用上の注意」の改訂について(2021年10月12日 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)」には以下のように記載されています。

改訂の理由及び調査の結果
心血管系事象のリスク因子を有する50歳以上の関節リウマチ患者を対象とした海外臨床試験(A3921133試験)の最終解析結果において、主要評価項目である「主要な心血管系事象(Major Adverse Cardiovascular Events:MACE)」及び「悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)」の発現率について、TNF阻害剤群に対する本剤群の非劣性が検証されなかったことを踏まえ、使用上の注意の改訂の必要性を検討した。専門委員の意見も踏まえ、以下の改訂が適切と判断した。
心血管系事象及び悪性腫瘍ともに、TNF阻害剤に比較し本剤で発現リスクが高い傾向が示唆されたことから、両事象を「重大な副作用」として注意喚起する。なお、「主要な心血管系事象」 に含まれる各事象の発現状況を踏まえ、心筋梗塞を例示として記載する。
・「心血管系事象のリスク因子を有する患者」に対する現行の注意喚起に、心血管系事象に関する記載を追加する。
・「悪性腫瘍」に関する現行の記載のうち、本剤との関連性等に関する記載を整備するとともに、「その他の注意」の項に記載されている臨床試験成績の記載を削除する。
・当該試験に関する現行の記載(中間解析結果)を、今般得られた最終解析結果に更新する。
なお、本剤と同様の効能・効果を有する他のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(バリシチニブ、ペフィシチニブ臭化水素酸塩、ウパダシチ ニブ水和物及びフィルゴチニブマレイン酸塩)については、本剤と安全性プロファイルは類似しているものの、心血管系事象及び悪性腫瘍ともに、JAK阻害剤に共通リスクであることを示す発現機序等の知見は得られておらず、当該試験結果を外挿することは困難であると考えることから、専門委員の意見も踏まえ、現時点では本剤と同様の使用上の注意の改訂は不要と判断した。
引用元:トファシチニブクエン酸塩の「使用上の注意」の改訂について(2021年10月12日 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)

慎重な評価が求められる改訂内容

今回の改訂内容については、現在治療中の患者さんの不利益にならないよう慎重に評価を行いたいところです。
リスクだけを見て薬剤を変更し、結果として治療がうまくいかなくなることは回避しなければいけません。

今回はトファシチニブのみの改訂であり、他のJAK阻害薬についての評価は行われていません。
JAK阻害薬は低分子であるため経口投与が可能というメリットがありますが、今回の改訂を受けて、TNF阻害薬への切り替えを検討する必要もあるかもしれません。
まさにリスクとベネフィットについて慎重に考慮を行う必要がある改訂かと思います。

スルペラゾン等(セフォペラゾンナトリウム・スルバクタムナトリウム)によるアレルギー反応に伴う急性冠症候群

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

  • スルペラゾン静注用
  • セフォセフ静注用
  • セフォン静注用
  • セフロニック静注用
  • バクフォーゼ静注用
  • ワイスタール配合静注用

第3世代セファロスポリン系抗菌薬であるセフォペラゾンとβラクタマーゼ阻害薬であるスルバクタムを配合したβ-ラクタマーゼ阻害剤配合抗生物質製剤です。
幅広い抗菌スペクトルを持ち殺菌的に作用するセフォペラゾンにスルバクタムを配合することで強い感染防御効果を発揮する薬剤です。

  • 適応菌種:ブドウ球菌属、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、プロビデンシア・レットゲリ、モルガネラ・モルガニー、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属、バクテロイデス属、プレボテラ属
  • 適応症:敗血症、感染性心内膜炎、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、膿胸、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、胆管炎、肝膿瘍、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎、子宮旁結合織炎

改訂指示の内容

【新記載要領】に従ってまとめます。

下線部が追記、打消線が削除された部分です。
まずは、添付文書の「重要な基本的注意」について、以下の通り改訂が指示されています。

8.重要な基本的注意
本剤によるショック、アナフィラキシー、アレルギー反応に伴急性冠症候群の発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとること。
引用元:セフォペラゾンナトリウム・スルバクタムナトリウム 「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について」(令和3年6月11日付け薬生発0611第1号局長通知)に基づく改訂(新記載要領)

「重大な副作用」。

11.副作用
11.1 重大な副作用

ショック、アナフィラキシー(呼吸困難等)、アレルギー反応に伴う急性冠症候群:ショック、アナフィラキシー(呼吸困難等)、アレルギー反応に伴う急性冠症候群があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
引用元:セフォペラゾンナトリウム・スルバクタムナトリウム 「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について」(令和3年6月11日付け薬生発0611第1号局長通知)に基づく改訂(新記載要領)

改訂理由

過去3年度で以下の通り国内での症例報告が集積されています。

  • アレルギー反応に伴う急性冠症候群関連症例:2例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例2例)
    【死亡1例(うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例1例)】

国内症例が集積したため、今回の改訂が望ましいと判断されました。

ストロメクトール(イベルメクチン)による意識障害

ストロメクトール錠3mg(イベルメクチン)は腸管糞線虫症、疥癬に対する適応を有する薬剤です。

ですが、COVID19に対する効果を期待する適応外処方が行われており、2020年4月17日には出荷調整に関する案内が出される事態となっています。

改訂指示の内容

下線部が追記、打消線が削除された部分です。
まずは、添付文書の「重要な基本的注意」について、以下の通り改訂が指示されています。

重要な基本的注意
意識障害があらわれることがあるので、自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事する際には注意するよう患者に十分に説明すること。
引用元:イベルメクチン 「医療用医薬品添付文書の記載要領について」(平成9年4月25日付け薬発第606号局長通知)に基づく改訂(旧記載要領)

「重大な副作用」。

副作用
重大な副作用

意識障害:昏睡、意識レベルの低下、意識変容状態等の意識障害が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
引用元:イベルメクチン 「医療用医薬品添付文書の記載要領について」(平成9年4月25日付け薬発第606号局長通知)に基づく改訂(旧記載要領)

改訂理由

過去3年度で以下の通り国内での症例報告が集積されています。

  • 意識障害関連症例:4例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例0例)
    【死亡1例(うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例0例)】

国内症例が集積したため、今回の改訂が望ましいと判断されました。

イベルメクチンの適応外使用について

今回の改訂にあわせてということではないかもしれませんが、同日、ストロメクトールの製造販売元のMSDから以下の案内が出されています。

COVID-19に対するイベルメクチンの処方について

新型コロナウイルス感染症に対してイベルメクチンが効果を発揮する可能性があるということで適応外処方される例があるようです。
実際に目にしたことはないのですが、本来の適応である腸管糞線虫症、疥癬への使用が滞りかねない事態となっていることを考えるとかなり多くの適応外処方が行われていることが想像できます。

イベルメクチンのCOVID19に対する効果は証明されておらず、むしろ効果は期待できないというエビデンスが蓄積されている状態です。
ですが、イベルメクチンには今回の意識消失を含む重大な副作用が存在することが明確で、適応外使用を行うことでリスクのみを増加させてしまうことになります。

メーカーからこういった形での注意喚起が行われることは極めて異例であり、そのことをよく考えたいと思います。

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