在宅移行初期管理料【令和6年度改定】

令和6年度診療報酬改定で新設された「在宅移行初期管理料」についてまとめます。
「在宅移行初期管理料」は薬学管理料に該当します。

※実際の算定については、告示や通知等を確認の上、各自で判断を行っていただくようお願いします。

在宅移行初期管理料(R6年度改定)

  • 230点/回(1回のみ)

在宅療養へ移行が予定されている患者であって通院が困難なもののうち、服薬管理に係る支援が必要なものに対して、当該患者の訪問薬剤管理指導を担う保険薬局として当該患者が指定する保険薬局の保険薬剤師が、当該患者の同意を得て、当該患者の在宅療養を担う保険医療機関等と連携して、在宅療養を開始するに当たり必要な薬学的管理及び指導を行った場合

「在宅患者訪問薬剤管理指導料1」、「薬剤師居宅療養Ⅱ1」、「薬剤師居宅療養Ⅱ2」を算定した初回算定日の属する月に1回に限り算定

「認知症患者、精神障害者である患者など自己による服薬管理が困難な患者」、「障害児である 18 歳未満の患者」、「6歳未満の乳幼児」、「末期のがん患者及び注射による麻薬の投与が必要な患者」にのみ算定可能

在宅移行初期管理料(R6年度改定)のポイント
・R6年度改定で新設
・在宅療養を開始する前に必要な薬学的管理及び指導を行った場合の評価なので在宅開始後に入院、退院するにあたっての準備等では算定不可(疑義解釈1の問24)
・計画的な訪問薬剤管理指導を実施する前に患者宅を訪問
・在宅患者訪問薬剤管理指導料で単一建物診療患者が1人の場合、(介護予防)居宅療養管理指導費で単一建物居住者が一人の場合を算定する患者が対象(留意事項(2)イ)
・対象となるのは「認知症・精神障害者」、「18 歳未満の障害児」、「6歳未満の乳幼児」、「末期がん及び麻薬注射の投与が必要な患者」に限定(留意事項(2)ア)
・実施した薬学的管理、指導に応じて、薬学的管理指導計画書を作成・見直しする
・在宅療養を担う保険医療機関の医師及び居宅介護支援事業者の介護支援専門員に対して必要な情報提供を文書で行う(服薬情報等提供料は算定不可)(留意事項(5))
・いつ実施したかどの算定対象(疾患)に該当するかをレセプト摘要欄へ記載
・同日に外来服薬支援料1は算定不可(点数表 注1、(留意事項(6))

ぺんぎん薬剤師の個人的な印象

在宅開始前の事前訪問を評価する点数が新設されました。
在宅開始時に残薬を整理したり、一包化を作り直したり、お薬カレンダーの利用を開始して整理したりすることが評価されます。

これまでは外来服薬支援料1(185点)を算定していたと思いますが、同月中に在宅患者訪問薬剤管理指導料(居宅療養管理指導費)を算定する場合は算定不可でした。
在宅移行初期管理料は在宅に関する点数を取った月でも算定可能(むしろ初回算定日が属する月にしか算定できない)です。
外来服薬支援料1よりも点数が高いのはありがたいのですが、在宅移行初期管理料は地域支援体制加算における地域に貢献している薬局である実績に含まれる外来服薬支援料1の実績には含まれない(疑義解釈1の問11)ため、地域支援体制加算の届出を行なっていて、外来服薬支援料1を算定する機会が少ない薬局は実績の維持に注意が必要になります。
いちおう同日でなければ外来服薬支援料1と在宅移行初期管理料の両方を算定できます(点数表 注1)が、留意事項(6)を見る限り、そのようなケースでは外来服薬支援料1の行為は在宅移行初期管理料に含まれると判断されることがほとんどと思うので避けた方が良さそうですね。
せめて、服薬情報等提供料の実績になればいいんですけどね・・・(留意事項(5))。

個人在宅を積極的に行っている薬局からすれば、ようやく普段行っている作業が評価されるようになったという印象だと思います。
重要事項の説明や契約と合わせて行うことで在宅をスムーズに開始できそうですね。

施設の場合は基本対象外ですが、複数対応していても、算定上「単一建物診療患者(居住者)が一人」であれば算定対象になるようです(留意事項の(3))。
「認知症・精神障害者」、「18 歳未満の障害児」、「6歳未満の乳幼児」、「末期がん及び麻薬注射の投与が必要な患者」の縛りについては、在宅療養を開始するのであればいずれかに当てはまるケースがほとんどと思いますが、難病等で寝たきりの場合は成人していると該当しないのでそのあたりは今後見直して欲しいなと思います。

省令・告示・事務連絡(R6年度改定)

令和6年度診療報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html

診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 令和6年厚生労働省告示第57号

別表第三(調剤点数表)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001218733.pdf

第2節 薬学管理料
区分 15の8 在宅移行初期管理料 230点

注1 在宅療養へ移行が予定されている患者であって通院が困難なもののうち、服薬管理に係支援が必要なものに対して、当該患者の訪問薬剤管理指導を担う保険薬局として当該患者が指定する保険薬局の保険薬剤師が、当該患者の同意を得て、当該患者の在宅療養を担う保険医療機関等と連携して、在宅療養を開始するに当たり必要な薬学的管理及び指導を行った場合に、当該患者において区分番号15に掲げる在宅患者訪問薬剤管理指導料の1その他厚生労働大臣が定める費用を算定した初回算定日の属する月に1回に限り算定する。ただし、在宅移行初期管理料を算定した日には、区分番号14の2に掲げる外来服薬支援料1は算定できない。なお、区分番号00に掲げる調剤基本料の注2に規定する別に厚生労働大臣が定める保険薬局においては、算定できない。

注2 在宅移行初期管理に要した交通費は、患家の負担とする。

診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 令和6年3月5日保医発0305第4号

別添3 調剤報酬点数表に関する事項
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001252056.pdf

<薬学管理料>
区分分15の8 在宅移行初期管理料

(1) 在宅移行初期管理料は、在宅での療養に移行する予定の服薬管理に係る支援が必要な患者に対して、計画的な訪問薬剤管理指導を実施する前に、保険薬剤師が患家を訪問して、当該患者の在宅療養を担う保険医療機関等の多職種と連携しながら、退院時の処方内容を踏まえた薬剤の調整、残薬の整理、適切な服薬方法の提案等の必要な薬学的管理及び指導を行うことを評価するものである。

(2) 在宅移行初期管理料は、以下のア及びイを満たす患者のうち、薬学的管理の観点から保険薬剤師が患家を訪問して特に重点的な服薬支援の行う必要性があると判断したものを対象とする。

  • 認知症患者精神障害者である患者など自己による服薬管理が困難な患者児童福祉法第 56 条の6第2項に規定する障害児である 18 歳未満の患者6歳未満の乳幼児末期のがん患者及び注射による麻薬の投与が必要な患者
  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料(単一建物診療患者が1人の場合に限る。)、居宅療養管理指導費及び介護予防居宅療養管理指導費(いずれも保険薬局の保険薬剤師が行う場合に限り、単一建物居住者が1人の場合に限る。)に係る医師の指示のある患者

(3) (2)のイの場合においては、「15」在宅患者訪問薬剤管理指導料の1の(2)及び(12)における単一建物診療患者の取扱いに準ずること。

(4) 必要な薬学的管理及び指導として、薬物療法に係る円滑な在宅療養への移行及び在宅療養の継続の観点から、以下に掲げる業務を実施すること。

  • ア 患者及びその家族等から、服薬状況、居住環境、家族関係等の薬学的管理に必要な情報を収集すること。
  • 患家における残薬の確認及び整理並びに服薬管理方法の検討及び調整を行うこと。
  • ウ 日常の服薬管理を適切に行うことができるよう、ポリファーマシーへの対応や服用回数を減らすための観点も踏まえ、必要に応じて医師等と使用する薬剤の内容を調整すること。
  • 在宅での療養に必要な情報を当該患者の在宅療養を担う保険医療機関等の多職種と共有すること。
  • オ 退院直後の患者の場合は、入院していた医療機関と連携し、入院中の処方内容に関する情報や、患者の退院に際して実施された指導の内容などに関する情報提供文書を活用した服薬支援を実施することが望ましい

(5) 実施した薬学的管理及び指導の内容等について薬剤服用歴等に記載し、必要に応じて、薬学的管理指導計画書を作成・見直しすること。また、当該患者の在宅療養を担う保険医療機関の医師及び居宅介護支援事業者の介護支援専門員に対して必要な情報提供を文書で行うこと。なお、この場合の文書での情報提供については、服薬情報等提供料を別途算定できない

(6) 在宅移行初期管理料は、計画的な訪問薬剤管理指導を実施する前であって別の日に患家を訪問して(4)に掲げる業務を実施した場合に算定する。なお、この場合に実施した服薬管理の支援等については、外来服薬支援料1を別途算定できない

(7) 在宅移行初期管理料は、当該患者において在宅患者訪問薬剤管理指導料(単一建物診療患者が1人の場合に限る。)、居宅療養管理指導費及び介護予防居宅療養管理指導費(いずれも保険薬局の保険薬剤師が行う場合に限り、単一建物居住者が1人の場合に限る。)の算定した初回算定日の属する月に1回に限り算定する。

(8) 在宅移行初期管理料に係る業務について、「15」に掲げる在宅患者訪問薬剤管理指導料の1の(4)に規定する在宅協力薬局が実施した場合は算定できない。

(9) (6)に掲げる訪問を実施した日付について、調剤報酬明細書の摘要欄に記載すること。

(10) 「注2」に規定する交通費は実費とする。

(11) 在宅移行初期管理料は、特別調剤基本料Bを算定している保険薬局は算定できない。

「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について(通知) 令和6年3月27日 保医発0327第5号

「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について(通知) 令和6年3月27日 保医発0327第5号
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001252051.pdf
別表Ⅰ 調剤報酬明細書の「摘要」欄への記載事項等一覧
在宅移行初期管理料
  • 記載事項:(計画的な訪問薬剤管理指導を実施する前であって別の日に患家を訪問して実施した場合)訪問を実施した日付について、記載すること。
  • レセプト電算処理システム用コード
    • 850190270(訪問を実施した年月日(在宅移行初期管理料);(元号)yy“年”mm“月”dd“日”)
  • 記載事項:特に重点的な服薬支援を行う必要性があると判断した対象患者を選択し記載すること。
  • レセプト電算処理システム用コード
    • 820101289(対象患者(在宅移行初期管理料):認知症患者、精神障害者である患者など自己による服薬管理が困難な患者)
    • 820101290(対象患者(在宅移行初期管理料):障害児である18歳未満の患者)
    • 820101291(対象患者(在宅移行初期管理料):6歳未満の乳幼児)
    • 820101292(対象患者(在宅移行初期管理料):末期のがん患者)
    • 820101293(対象患者(在宅移行初期管理料):注射による麻薬の投与が必要な患者)

補足

「調剤後薬剤管理指導料」(令和6年度改定)について、直接的な部分ではないけど知っておきたい関連する情報をまとめます。

かかりつけ薬剤師包括管理料とは併算定できない

別添3 調剤報酬点数表に関する事項
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001252056.pdf

<薬学管理料>
区分13の3 かかりつけ薬剤師包括管理料 291点

注1 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険薬局(区分番号00に掲げる調剤基本料の注2に規定する別に厚生労働大臣が定める保険薬局を除く。)において、当該施設基準に規定する要件を満たした保険薬剤師が、医科点数表の区分番号A001に掲げる再診料の注12に掲げる地域包括診療加算若しくは注13に掲げる認知症地域包括診療加算、区分番号B001-2-9に掲げる地域包括診療料又は区分番号B001-2-10に掲げる認知症地域包括診療料を算定している患者の同意を得て、必要な指導等を行った場合に、処方箋受付1回につき所定点数を算定できる。この場合、この表に規定する費用(区分番号01に掲げる薬剤調製料の注4及び注5に規定する加算、区分番号15に掲げる在宅患者訪問薬剤管理指導料(当該患者の薬学的管理指導計画に係る疾病と別の疾病又は負傷に係る臨時の投薬が行われた場合に限る。)、区分番号15の2に掲げる在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、区分番号15の3に掲げる在宅患者緊急時等共同指導料、区分番号15の4に掲げる退院時共同指導料、区分番号15の7に掲げる経管投薬支援料、区分番号15の8に掲げる在宅移行初期管理料、区分番号20に掲げる使用薬剤料及び区分番号30に掲げる特定保険医療材料を除く。)は当該点数に含まれるものとする。

2 区分番号10の3に掲げる服薬管理指導料又は区分番号13の2に掲げるかかりつけ薬剤師指導料を算定している患者については、算定しない。

かかりつけ薬剤師包括管理料を算定している場合は在宅移行初期管理料を算定できません。

算定を行った根拠について薬剤服用歴等に記載する(薬学管理料)

別添3 調剤報酬点数表に関する事項
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001252056.pdf

<薬学管理料>
通則

(5) 薬剤服用歴等の記載に当たっては、患者から収集した情報、相談事項及び患者への指導内容を単に全て記載するのではなく、その要点を記載することで差し支えないが、指導後速やかに記載を完了させること。また、定型文を用いて画一的に記載するのではなく、指導等を行った保険薬剤師が必要事項を判断して記載すること。特に、薬学管理料やその加算を算定する場合には、その根拠及び指導内容等について簡潔に記載すること。なお、指導の内容等について処方医等へ情報提供した場合には、情報提供した文書等の写し又はその内容の要点等を薬剤服用歴等に記載又は添付すること。

薬剤服用歴の記載について、令和4年度改定では調剤管理料で定められていましたが、令和6年度からは薬学管理料の通則に変更されています。
主に細かい変更となっていますが、ポイントとなるのが追加された(5)の内容です。
改定前に話題になった、「要点の記載」、「情報提供文書の写しの添付があれば要点省略可能」、「定型分による画一的な記載の禁止」がここで述べられています。

この中で、「薬学管理料やその加算を算定する場合には、その根拠及び指導内容等について簡潔に記載する」という文章が追加されており、すべての薬学管理料について、算定を行う根拠の記載が求めらています。

これまでに公開されている疑義解釈資料

過去の診療報酬改定時も含めた疑義解釈資料を整理します。

疑義解釈資料の送付について(その1) 事務連絡 令和6年3月28日(R6年度改定)

疑義解釈資料の送付について(その1)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001237675.pdf

(別添6)調剤報酬点数表関係

【地域支援体制加算、連携強化加算及び在宅薬学総合体制加算】

問 11 地域支援体制加算の施設基準において、これまで患者宅で残薬の調整等を行った場合は外来服薬支援料1を算定することで、地域支援体制加算の実績要件に含めることができたが、在宅移行初期管理料を算定した場合に、外来服薬支援料1に相当する業務として地域支援体制加算の実績要件に含まれるような取扱いはできないのか。
(答)できない。在宅移行初期管理料は、地域支援体制加算の実績要件に含まれない。

【在宅移行初期管理料】

問 24 訪問薬剤管理指導を実施している在宅での療養を行っている患者が入院した場合であって、退院後に再び在宅療養を継続する場合に、在宅移行初期管理料を算定できるか。
(答)算定不可。本管理料は在宅での療養に移行する予定の患者であって計画的な訪問薬剤管理指導を実施する前の段階における薬学的管理及び指導に対する評価であり、入院前に訪問薬剤管理指導を実施していた場合など、すでに在宅療養における環境が整っている患者においては、本管理料の対象とならない。

そのほか 厚生労働省 資料(R6年度改定)

個別改定項目について(短冊)

第2 改定の概要
1.個別改定項目について(令和6年2月14日)※2月14日から修正しております。(3月7日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001220531.pdf

Ⅱ ポスト 2025 を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療 DX を含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
【Ⅱ-8 質の高い在宅医療・訪問看護の確保-㉙】
㉙ 在宅医療における薬学的管理に係る評価の新設

第1 基本的な考え方
在宅医療において、薬剤師が医療・介護の多職種と連携しつつ、質の高い薬学管理を推進するため、退院後の在宅訪問を開始する移行期における薬学的管理、医師等との連携による処方内容の調整、介護関係者に対する服用薬等に係る情報提供等について、新たな評価を行う。

第2 具体的な内容
1.退院直後など、計画的に実施する訪問薬剤管理指導の前の段階で患家を訪問し、多職種と連携して今後の訪問薬剤管理指導のための服薬状況の確認や薬剤の管理等の必要な指導等を実施した場合の評価を設ける。
(新) 在宅移行初期管理料(1回に限り) 230 点

令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】

第2 改定の概要
3.令和6年度診療報酬改定説明資料等について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00012.html

説明資料(分割版)
24 令和6年度診療報酬改定の概要 (調剤)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001238903.pdf

令和6年度改定前の中医協での議論

中央社会保険医療協議会 総会(第568回)議事次第
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00227.html

○在宅(その5)について
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172377.pdf

 

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