2013年11月に再生医療法の成立と薬事法の改正が行われました。
薬事法は改正後、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)という名称に変更されます。
2014年6月12日の施行までに知っておかなければならないことはたくさんあるのですが、まずは注目されていたネット販売(特定販売)部分を二回に分けてまとめてみたいと思います。
今回は要指導医薬品についてです。
医薬品販売の歴史
改正前の一般用医薬品規制
薬事法の中で医薬品がどのように規制されてきたか復習してみましょう。
2003年7月 記帳義務医薬品の廃止
いわゆるマル記医薬品の枠組みがなくなり、全ての医薬品について記録を残すようになりました。
2005年4月 要指示医薬品→処方せん医薬品
医療用医薬品の中の要指示医薬品という区分を見直し、処方せん医薬品に変更されました。
要指示医薬品:「医師等の処方せん・指示により使用すること」
処方せん医薬品:「医師等からの処方せんの交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、販売を行ってはならない」
要指示医薬品では口頭の指示が認められいたため、口頭指示による明確でない販売が存在しました。
また、院内のみの使用と考えられていた注射薬や、麻薬及び向精神薬取締法や覚せい剤取締法で処方せんによる調剤が義務付けられていたものは要指示医薬品に含まれていなかったため、それらも含めて処方せん医薬品という新たな区分を設けました。
※処方せん医薬品 = 要指示医薬品 + 注射剤、麻薬、向精神薬、覚せい剤(原料)、放射性医薬品など
一般用医薬品として販売されていた一部の医薬品(ナリジクス酸、パモ酸ピランテル)も処方せん医薬品となったので、一般用としては販売できなくなりました。
※販売中止になった例 ナリジクス酸:ウナセルス パモ酸ピランテル:コンバントリン
改正施行後も、それまでと同じ感覚で販売している薬局が次々と発覚して問題になりましたね。
2006年改正薬事法(2009年6月1日施行)
・一般用医薬品の定義
実はそれまでは世間的に一般用医薬品やOTC医薬品という言葉はあっても、薬事法上は医療用医薬品以外の医薬品という位置づけでした。
・一般用医薬品のリスク区分
一般用医薬品をリスクに応じて分類し、その販売・情報提供について定められました。
情報提供(専門家が行う)
第一類:薬剤師のみ
第二類・第三類:薬剤師または登録販売者
販売
第一類:薬剤師またはその管理・指導下の従事者
第二類・第三類:薬剤師または登録販売者もしくはその管理・指導下の従事者
・登録販売者制度
これまでは薬剤師の管理下でのみしか販売できなかった一般用医薬品ですが、第二類・第三類に関しては登録販売者の管理下で販売を行うことが可能となりました。
・医薬品の通信販売の禁止
これまで、医薬品の通信販売に関しては明確な規定はなく、電話やインターネットによる通信販売が行われていたのですが、第三類以外は郵便等販売(を禁止すると規定されました。
・薬局医薬品の規定と指定医薬品の廃止
一般用医薬品以外の医薬品が薬局医薬品として定義されました。
薬局医薬品 = 医療用医薬品 + 薬局製剤
薬局医薬品の販売は薬剤師が対面で行うこと、書面による情報提供、販売の記録などが定められました。
また、これに伴い、指定医薬品の規制が廃止となりました。
※指定医薬品:薬局又は一般販売業において薬剤師による取り扱いを必要とし、薬種商販売業においては販売することができない医薬品
2013年1月 医薬品のネット販売を認める判決
インターネット販売業者等が国に対して行った裁判の最高裁で「一般用医薬品のインターネットによる通信販売を一律に禁止する改正薬事法施行規則の規定は違法・無効である」との判決がくだされました。
これにより、一般用医薬品のネット販売は実質認められたことになりました。
改正後のネット販売は・・・?
改正前に最高裁がネット販売を認めているのだから、改正後はすべての一般用医薬品がネット販売可能になったのかと思いきや・・・そうではないんですよね。
新たに定められた要指導医薬品はネット販売不可、一般用医薬品はネット販売可能という形になりました。
この結果、視点や立場によって全く逆の評価になっています。
ネット販売解禁に否定的な薬剤師側:改正前の薬事法では第一類・第二類の通信販売は禁止だったのに、改正後薬事法では要指導医薬品以外の全てが通信販売可能となっている・・・。
ネット販売を推進する販売業者側:最高裁の判決ですべての一般用医薬品が通信販売可能だったのに、改正後は要指導医薬品の販売が禁止となってしまう・・・。
今回の改正は規制緩和でしょうか?規制強化でしょうか?
要指導医薬品とは?
新たに決められた要指導医薬品とはどんなものなのでしょうか?
要指導医薬品:スイッチ直後品目+販売直後のダイレクトOTC+劇薬(毒薬)指定品目となっています。
今回の改正で医薬品は薬局医薬品、一般用医薬品、要指導医薬品の三つに分類されるようになりました。
スイッチ直後品目
医療用医薬品で使用された結果、安全性が確認され、一般用医薬品として販売するようになったものをスイッチOTCと言います。
このスイッチOTCの内、安全性評価を終えていないものをスイッチ直後品目と言います。
これまで安全性評価は四年かかっていましたが、今回の改正に合わせて三年間となりました。
つまり、スイッチOTCはスイッチ後三年間は要指導医薬品となります。
2014年3月の時点でスイッチ直後品目は21品目存在します。
※イノセアバランスについては今月評価終了予定
スイッチ直後品目の例:ロキソニンS、アレグラFXなど
ダイレクトOTC
新規有効成分であるにもかかわらず、医療用医薬品として使用される前に、直接、一般用医薬品として販売されたものをダイレクトOTCと言います。
ミノキシジル(商品名:リアップ)や赤ブドウ葉乾燥エキス(商品名:アンチスタックス)がこれにあたります。
新有効成分は8年間、新効能・新用量は4年間、新投与経路は6年間の評価期間が定められています。
※リアップX5のリスク評価が平成26年2月に完了、アンチスタックスは平成32年1月完了予定
劇薬とは?
副作用のリスクが特に高いとされる劇薬もも要指導医薬品に含まれます。
現在、5品目が劇薬指定を受けています。
劇薬指定成分
ヨヒンビン、ストリキニーネ、ホルマリン
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要指導医薬品に関する規制
要指導医薬品は薬剤師が対面で書類(電磁記録)を用いて情報提供・指導を行うように定められています。
要指導医薬品販売時に行うこと
1、購入者が使用者本人かどうかの確認(違う場合は正当な理由の確認)
2、他の薬局で同じ医薬品を購入しているかどうかの確認
3、2を元に必要な数量のみを販売
4、購入者が指導内容を理解し、質問がないことを確認してから販売
5、相談があれば情報提供・指導を行ってから販売
6、販売した薬剤師の氏名、薬局の名称・電話番号その他連絡先を購入者に伝える
と定められています。
要指導医薬品販売時に記録するもの
1、品名
2、数量
3、販売又は授与の日時
4、販売した薬剤師の氏名、情報提供・指導を行つた薬剤師の氏名
5、購入者の理解の確認の結果
以上を二年間保存(購入者の連絡先は努力義務)
※薬局医薬品・第一類医薬品も同様
要指導医薬品の陳列
要指導医薬品を陳列する場合には、一般用医薬品とは混在させず、専用の陳列区画の内部の陳列設備に陳列させる必要があります。
陳列設備は、1.2メートル以内に購入者が進入することができないようにするか、鍵をかけるなど購入者が直接手の触れられないようにしなければいけません。
また、一般用医薬品と同様、要指導医薬品を販売しない営業時間は要指導医薬品を陳列する場所等を閉鎖しなければなりません。
改正後の医薬品分類と規制
情報提供 | 販売記録 | 情報提供者 | 販売者 | 陳列 | 販売方法 | ||
薬局医薬品 | 医療用医薬品 | 義務 | 義務 | 薬剤師 | 調剤室 | 対面販売 | |
薬局製剤 | 特定販売 | ||||||
要指導医薬品 | 購入者と隔離 | 対面販売 | |||||
一般用医薬品第一類医薬品薬剤師薬剤師管理下特定販売
指定第二類医薬品努力努力薬剤師登録販売者薬剤師登録販売者管理下7m以内
第二類医薬品-
第三類医薬品-
要指導医薬品。
なんとなくイメージできたでしょうか?
医薬品の販売記録や情報提供など、薬局医薬品・要指導医薬品・第一類がごっちゃになりそうな・・・。
一度詳しく整理しないといけないですね・・・。