ニザチジンカプセル「オーハラ」とアシノン錠 75mgの自主回収〜ラニチジン製剤からニザチジン製剤に拡大?

  • 2019年12月3日
  • 2021年1月17日
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2019年9月末から全ラニチジン製剤が自主回収となってしまったことは記憶に新しいと思います。
まだ、その対応に追われている薬局も多いのではないかと思うそんな最中。
2019年10月23日、大原薬品工業がニザチジンカプセル「オーハラ」の一部ロットの自主回収を発表しました。
2019年12月3日、ゼリア新薬がアシノン錠 75mgの一部ロットの自主回収を発表しました。

ニザチジン製剤の自主回収

2019年9月26日から始まったラニチジン製剤(ザンタック等)の自主回収。
最終的には全ラニチジン製剤がクラスⅠ 自主回収という状態になってしまいました。
そんな中、類似した構造を持つということで各社が調査を行なっていたニザチジン製剤でも自主回収が行われることになりました。
ただし、2019年12月3日現在、自主回収の対象となっているのはニザチジンカプセル「オーハラ」(一部ロット)とアシノン錠 75mg(一部ロット)のみで、OTCも含めた他のニザチジン製剤については自主回収の案内は出ていません。

ニザチジン製剤のNDMA混入に関する調査

今回のニザチジン製剤の回収もラニチジン製剤と同じくNDMA*1の検出が原因です。
ラニチジン製剤と同時にニザチジン製剤についてもNDMAが混入していないかの調査が行われていました。

これを踏まえ、ラニチジン塩酸塩又はラニチジンと類似の化学構造を有するニザチジンを製造販売する事業者においては、下記のとおり対応いただくよう お願いいたします。
1. 製造販売するラニチジン塩酸塩及びニザチジンについて、有効期限内の製品に使用されている原薬の製造所ごとに、製造工程における亜硝酸又は亜硝酸塩の混入リスクの有無及びその根拠並びに2.で実施する分析結果が得られる時期の目処を9月30日までに、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・ 麻薬対策課宛て報告すること。
3. ラニチジン塩酸塩については、2.の分析結果が明らかになるまで、当該製品の新たな出荷は行わないこと。ただし、ニザチジンについてはこの限りでない。なお、2.の分析結果が明らかになるまでの間、NDMAの混入リスク等を示唆するその他の根拠がない限り、すでに市場に流通している製品の回収を行う必要はないこと。引用元:https://www.pmda.go.jp/files/000231528.pdf

ニザチジンカプセル「オーハラ」の自主回収

2019.10.23付で75mg・150mg両規格の一部ロットが自主回収(クラスI)の対象となっています。

アシノン錠75mgの自主回収

2019.12.3付で75mgの一部ロットが自主回収(クラスI)の対象となっています。
150mgは自主回収の対象とはなっていません。
また、一般用医薬品として販売されているアシノンZ錠、アシノンZ胃腸内服液についても問題なしとのことです。

ニザチジン製剤 自主回収の経緯

簡単に経緯をまとめておきます。

ニザチジン製剤 自主回収の経緯

  • 2019.9.13 EMA・FDA プレスリリース(ラニチジン製剤の一部にNDMAが混入している可能性があるため調査開始)
    • EMA「EMA to review ranitidine medicines following detection of NDMA」
    • FDA「Statement alerting patients and health care professionals of NDMA found in samples of ranitidine」
  • 2019.9.17 厚生労働省 EMA・FDAのプレスリリースを受けて日本国内のラニチジン製剤販売メーカーに一時販売停止と調査の実施を事務連絡(ラニチジン塩酸塩における発がん物質の検出に対する対応について)、ニザチジン製剤販売メーカーも調査を実施(販売停止の必要はなし)
  • 2019.9.26 GSK ザンタック錠/注射液の自主回収開始(クラスⅡ)
  • 2019.10.2 日医工 ラニチジン錠「日医工」の自主回収開始(クラスⅡ)
  • 2019.10.3 沢井製薬・武田テバ・マイラン(ファイザー)・ニプロ・東和薬品・鶴原製薬・小林化工 ラニチジン製剤の自主回収開始(クラスⅠ)
  • 2019.10.4 陽進堂(第一三共エスファ)・日本ジェネリック ラニチジン製剤の自主回収開始(クラスⅠ)
  • 2019.10.8 日医工 ラニチジン錠「日医工」の自主回収をクラスⅡからクラスⅠに切り替え
  • 2019.10.9 GSK ザンタック錠/注射液の自主回収をクラスⅡからクラスⅠに切り替え
  • 2019.10.10 GSK・武田テバ 自主回収を患者手持ち分まで拡大、それに伴う費用負担を発表
  • 2019.10.15 全社 自主回収を患者手持ち分まで拡大、それに伴う費用負担を発表
  • 2019.10.23 大原薬品工業 ニザチジンカプセル「オーハラ」(一部ロット)の自主回収開始(クラスⅠ)
  • 2019.12.3 ゼリア新薬 アシノン錠 75mg(一部ロット)の自主回収開始(クラスⅠ)

9/13 EMA・FDAプレスリリース

9/13付の欧州医薬品庁(EMA*2)・米国食品医薬品局(FDA*3)のプレスリリースについてリンクを貼っておきます。

いずれも一部のラニチジン製剤からNDMAが検出されたことを受け、調査を開始することについて記載されています。

NDMAについて

今回の自主回収の原因はN-ニトロソジメチルアミン(NDMA*4、C2H6N2O)という物質の混入です。
NDMA
NDMAはWHOをはじめとする多くの研究機関で発癌性物質として位置付けられています。

主要機関でのNDMAの位置付け

 

機関(年)分類
WHO*5IARC*6(1987)2A ヒトに対して恐らく発がん性がある。
EU*7(2004)2 ヒトに対して発がん性であるとみなされるべき物質。
USA*8NTP*9(2005)合理的にヒトに対して発がん性のあることが懸念される物質。
ドイツDFG*10(2004)2 動物の発がん性物質であり、
ヒトの発がん性物質でもあると考えられる。

NDMAとはどんな物質なのか?

NDMAはニトロソアミンと呼ばれる化合物の一種で、その中でも最も単純な構造を持っています。
ニトロソアミンはアミン類のアミン窒素上の水素がニトロソ基に置き換わったもので、酸性下で2級アミンと亜硝酸が反応することで容易に生成されます。

発癌性物質と聞くと摂取することなんてあり得ないと思ってしまうかもしれませんが、ニトロソアミンは一般的な生活の中でも摂取している物質です。
ニトロソアミンの元になる2級アミンは空気中や食品に普通に存在し、亜硝酸塩も食品添加物として広く使用されています。
ですので、ニトロソアミンは大気中や水、タバコなどに含まれていることが知られていますし、加工肉や燻製肉に比較的多く存在することが知られています。
生活習慣によって暴露されている量は異なるかもしれませんが、ニトロソアミンは普通に生活しているうちに接している可能性が高い発癌性物質ということが言えます。

どうしてNDMAが混入した?

今回、全てのラニチジン製剤と一部のニザチジン製剤(12/3時点で大原薬品工業とゼリア新薬 アシノン錠75mgのみ)が自主回収を行なっています。
ラニチジン製剤が自主回収となった理由については過去記事を参照してください。

ニザチジンについてはラニチジンと構造が類似しているため、同様の問題が起きる可能性があると指摘されていました。
まずはラニチジンの構造式です。
ラニチジンの構造式(ザンタック錠 添付文書より)

次がニザチジンの構造式。
ニザチジンの構造式(ニザチジンカプセル「オーハラ」添付文書より)
そっくりですね。

問題となるのが、ニザチジンの構造の下の赤丸を囲った部分です。
ニザチジンとNDMA
そして次の画像がNDMAの構造です。
NDMA
とても似ていることが分かりますね。
このように類似部分が存在するため、ニザチジンの合成過程でNDMAが副産物として生成されてしまうことが今回のNDMA混入の原因ではないかと考えられるようです。
これがある以上、ニザチジンの合成過程でNDMAが発生するリスクを完全に除去することは困難なのではないかと想像されます。

ただ、合成の過程でNDMAが発生したという結論はまだ出ていません。
どこかの段階で混入した可能性も否定できません。
現在はすべての可能性を想定して原因を調査している段階です。

ニザチジン製剤の服用=発がんリスク上昇なのか?

ニザチジン製剤に発癌物質であるNDMAが含まれていたのなら、ニザチジン製剤を服用していた人の発がんリスクは上昇するのか?
これに関しての詳しいデータは存在しませんが、現段階ではその可能性は低いのではないかと個人的には考えています。
その理由の一つは、「管理水準(0.32ppm)を上回る量=発がん性リスクを高める量」とは限らないため。
もう一つは、大原薬品工業の公表内容「ニザチジンカプセル「オーハラ」による発がん性を示唆する事象は認められていない」、ゼリア新薬の公表内容「これまでに本製品ならびに上記ニザチジンを有効成分とする製品による発がん性を示唆する事象は認められておりません」に書いてある通りです。

今回の対応(クラスⅠ 自主回収)はあくまでも社会的情勢を踏まえた予防的措置と言えます。
もちろん、今後の試験やデータ解析により悪い結果が出ることは否定できませんが、現時点で過剰な心配をする必要はないのではないかと考えています。

2019.12.3追記
NDMAの管理指標について、アシノン錠75mg自主回収(クラスⅠ)のお知らせに詳しく記載されています。

※:NDMA の管理指標
2018年アンジオテンシンII受容体拮抗薬(高血圧症治療薬)について、発がん性物質NDMA等が検出されたことを受け、国際的に回収等が行われました。こうした動向を踏まえ、平成30年11月5日に開催された第9回医薬品等安全対策部会安全対策調査会において、NDMA等の管理指標が設定されました。具体的には、生涯における10万分の1未満の発がんリスクを無視できるものとして、その水準となる許容摂取量を設定し、許容摂取量を超えないように、原薬または製剤中の許容限度値が設定されています。
引用元:アシノン錠75mg自主回収(クラスⅠ)のお知らせ

やはりかなりシビアな管理水準となっているようですね。

なぜ自主回収が行われるの?

今回の自主回収の原因はN-ニトロソジメチルアミン(NDMA*11、C2H6N2O)という物質の混入です。
NDMA
NDMAはWHOをはじめとする多くの研究機関で発癌性物質として位置付けられています。

主要機関でのNDMAの位置付け

 

機関(年)分類
WHO*12IARC*13(1987)2A ヒトに対して恐らく発がん性がある。
EU*14(2004)2 ヒトに対して発がん性であるとみなされるべき物質。
USA*15NTP*16(2005)合理的にヒトに対して発がん性のあることが懸念される物質。
ドイツDFG*17(2004)2 動物の発がん性物質であり、
ヒトの発がん性物質でもあると考えられる。

NDMAとはどんな物質なのか?

NDMAはニトロソアミンと呼ばれる化合物の一種で、その中でも最も単純な構造を持っています。
ニトロソアミンはアミン類のアミン窒素上の水素がニトロソ基に置き換わったもので、酸性下で2級アミンと亜硝酸が反応することで容易に生成されます。

発癌性物質と聞くと摂取することなんてあり得ないと思ってしまうかもしれませんが、ニトロソアミンは一般的な生活の中でも摂取している物質です。
ニトロソアミンの元になる2級アミンは空気中や食品に普通に存在し、亜硝酸塩も食品添加物として広く使用されています。
ですので、ニトロソアミンは大気中や水、タバコなどに含まれていることが知られていますし、加工肉や燻製肉に比較的多く存在することが知られています。
生活習慣によって暴露されている量は異なるかもしれませんが、ニトロソアミンは普通に生活しているうちに接している可能性が高い発癌性物質ということが言えます。

まとめ・雑感

2019.12.3で自主回収を開始しているのはニザチジンカプセル「オーハラ」とアシノン錠75mgの一部ロットみです。
ラニチジンのように全ロット回収にはなっていません。
他のメーカーについては調査中だと思います。
NDMAの混入と言っても発がん性との関連が示唆されているわけではないので過剰に心配する必要はないと思います。
今後、各社の対応については注視していきたいと思います。
参考までに、令和元年度第9回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の中でラニチジン製剤に関する対応についての経緯がまとめられています。(資料4-1 ラニチジン塩酸塩における発がん物質の検出に対する対応について

*1:N-NitrosoDiMethylAmine:N-ニトロソジメチルアミン

*2:European Medicines Agency

*3:Food and Drug Administration

*4:N-NitrosoDiMethylAmine

*5:世界保健機関/World Health Organization

*6:国際がん研究機関/International Agency for Research on Cancer

*7:欧州連合/European Union

*8:アメリカ合衆国/United States of America

*9:米国国家毒性プログラム/National Toxicology Program

*10:ドイツ研究振興協会/Deutsche ForschungsGemeinschaft

*11:N-NitrosoDiMethylAmine

*12:世界保健機関/World Health Organization

*13:国際がん研究機関/International Agency for Research on Cancer

*14:欧州連合/European Union

*15:アメリカ合衆国/United States of America

*16:米国国家毒性プログラム/National Toxicology Program

*17:ドイツ研究振興協会/Deutsche ForschungsGemeinschaft

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