薬食審第一部会 ベオビュ硝子体内注射用キット、バクスミー点鼻粉末剤など 20200127

  • 2020年2月4日
  • 2021年1月17日
  • 薬食審
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令和2年1月27日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会が開催され、3つの製品について審議が行われ、承認が了承されています。
今回承認間近となったのは、3ヶ月に一回の投与で効果を発揮する眼科用抗VEGF抗体薬 ベオビュ硝子体内注射用キット、経鼻投与可能なグルカゴン製剤 バクスミー点鼻粉末剤、そして、モディオダールの特発性過眠症についてです。

2020.2.21付でモディオダール錠、ネオーラル内用液10%、リツキサン点滴静注については一部変更承認が行われています。

2020年1月27日の薬食審・医薬品第一部会

今回は新有効成分含有医薬品、新投与経路医薬品、新効能医薬品、がそれぞれ一つずつ、合計3製品について審議され、全ての承認が了承されています。

審議品目(承認了承)

新有効成分含有医薬品

新投与経路医薬品

新効能医薬品

また、2製品の効能追加、1製品のバイオ後続品(BS*1)が報告品目として挙げらています。

報告品目

2020年2月21日付で一部変更については承認されましたが、ベオビュ、バクスミー、インスリン リスプロBS注HU「サノフィ」は未承認です。

審議品目(新有効成分含有医薬品・新投与経路医薬品)

まずは審議が行われた医薬品3製品について。

ベオビュ硝子体内注射用キット:「加齢黄斑変性」

表が画面に入りきらない場合は横にスクロールできます。

承認の種類新有効成分含有医薬品
医薬品名ベオビュ硝子体内注射用キット120mg/mL
成分名ブロルシズマブ(遺伝子組換え)
申請者ノバルティスファーマ
効能・効果中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性症
指定等なし
海外承認アメリカ(2019年10月時点)

参考資料

抗VEGF療法

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滲出性加齢黄斑変性(nAMD*2)では、血管内皮細胞増殖因子(VEGF*3)により新生血管が起こります。
新生血管が作られ、そこから血液や滲出液が漏れ出すことで、黄斑部の構造が破壊されてしまい、その結果、不可逆的な視力低下を引き起こします。
元々は光線力学的療法(PDT*4)のみが行われていましたが、そこに抗VEGF療法が加わり、現在はこの二種類を組み合わせて治療が行われています。

ブロルシズマブの作用機序

ブロルシズマブはヒト化抗ヒトVEGF-Aモノクローナル抗体から作られた一本鎖抗体フラグメント(scFv*5)です。
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一本鎖抗体フラグメント(scFv)

抗体は複数の断片が結合した構造を持っており、部位ごとに名称が付けられています。
その中でも、N末端にある抗原認識部位は抗原により構造が変化するため、可変領域(Fv*6)と呼ばれています。
Fvを構成する重鎖と軽鎖の断片をリンカーペプチドにより遺伝子工学的に結合させ、抗原認識の機能を持たせたものを一本鎖抗体フラグメントもしくは一本鎖Fvフラグメント(scFv)と呼びます。
scFvは通常の抗体と比較して非常に小さい構造(分子量にして1/5〜1/6)を持っているため、体内動態をコントロールしやすく、様々な用途が期待されます。
2018年、国内初のCAR-T*7細胞(キメラ抗原受容体T細胞)療法 キムリアが登場して話題になりましたが、そこにもscFvの技術が応用されています。
CAR-T療法ではCD19分子と結合するscFvがCAR-T細胞表面に発現するように設計されています。

3ヶ月に一回の投与で効果を発揮

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ベオビュ硝子体内注射の最大の特徴は維持期の投与間隔の長さです。
scFvを用いることにより、高濃度での投与が可能となり、その結果、作用時間を延長させることができています。
維持期は「12週に1回」つまり「3ヶ月に1回」の投与で効果を発揮します。
臨床試験の結果によると、投与開始1年時点で半数以上の患者が3ヵ月投与間隔を維持しています(HAWK試験で56%、HARRIER試験で51%)。(Dugel P, et al. HAWK and HARRIER: Phase 3, multicenter, randomized, double-masked trials of brolucizumab for
neovascular age-related macular degeneration [published online ahead of print]. Ophthalmology. 2019.)
現在、同じ適応(中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性)で使用されている抗VEGF薬と維持期の投与間隔は以下の通りです。
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医薬品名
(成分名)
マクジェン硝子体内注射
(ペガプタニブ)
ルセンティス硝子体内注射
(ラニビズマブ)
アイリーア硝子体内注射
(アフリベルセプト)
維持期の投与間隔6週ごと1ヶ月ごと(症状により延長)2ヵ月ごとに1回
承認されれば・・・抗VEGF療法は眼球内に注射(硝子体内注射)を行う必要があるため、継続していくのが困難になるケースが多いです。投与間隔が延長されることで患者さんの負担が減ることが期待されます。

バクスミー点鼻粉末剤:「低血糖時の救急処置」

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承認の種類新投与経路医薬品
医薬品名バクスミー点鼻粉末剤3mg
成分名グルカゴン
申請者日本イーライリリー
効能・効果低血糖時の救急処置
指定等なし
海外承認EU、アメリカ、カナダ(2019年12月現在)
グルカゴンの働き

グルカゴンはインスリンと同様に膵臓のランゲルハンス島から分泌(一部消化管から分泌)されるホルモンです。
インスリンは膵臓ランゲルハンス島のB細胞(β細胞)で生合成・分泌され、血糖値を低下させますが、グルカゴンは同じ膵臓ランゲルハンス島でもA細胞(α細胞)から分泌され、インスリンとは逆に血糖値を上昇させる働きを持ちます。
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血糖値が上昇するとインスリンが分泌されて血糖降下を促すのと同じように、血糖値が低下した際にはグルカゴンが分泌されて血糖上昇を促します。

グルカゴン点鼻

低血糖を起こしてしまった場合、通常であれば経口でブドウ糖などの糖分を摂取する必要があります。
ですが、重度の低血糖となってしまうと意識混濁、ひどい場合は意識をを失ってしまうため、経口でのブドウ糖摂取が難しくなります。
重度の低血糖は命に関わる危険があるため、速やかな対応が必要となるため、ブドウ糖の静脈注射が行われますが、医療従事者以外が静注を行うのは困難です。
そのため、重篤な低血糖を起こしやすい患者さんに対してはグルカゴン製剤が事前に処方されます。

  • グルカゴン製剤 一覧
    • グルカゴンGノボ注射用1mg
    • グルカゴン注射用1単位「イトウ」
    • グルカゴン注射用1単位「F」

グルカゴン注射は静注のみでなく筋注での投与でも効果を発揮するので、手技に慣れていない非医療従事者でも比較的投与しやすくなっています。
ですが、現在、日本で発売されているグルカゴン製剤にはキット製剤が存在しません。
そのため、意識が混濁してしまうと自分で使用するのは困難です。
そのため、事前に家族や介護者に対して手技を十分に説明する必要がありますが、使用することに不安や抵抗感を抱いてしまうケースが多く存在します。

今回承認が了承されたバクスミー点鼻粉末剤は点鼻によるグルカゴン投与を可能とする製剤です。
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注射製剤よりも簡便な点鼻での投与が可能となります。
点鼻であれば意識消失の危険性を感じた際に、自身で投与可能な場合がありますし、家族や介護者の投与も簡単になります。

承認されれば・・・家族や介護者の負担を軽減し、低血糖に対してより早い対応が可能になります。

モディオダール錠:適応追加「特発性過眠症」(承認済)

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承認の種類新効能医薬品
医薬品名モディオダール錠100mg
成分名モダフィニル
申請者アルフレッサファーマ
追加される効能・効果特発性過眠症に伴う日中の過度の眠気
追加前の効能・効果下記疾患に伴う日中の過度の眠気

  • ナルコレプシー
  • 持続陽圧呼吸(CPAP)療法等による
    気道閉塞に対する治療を実施中の閉塞性睡眠時無呼吸症候群
指定等希少疾病用医薬品
第一種向精神薬
海外承認メキシコのみ(2018年10月時点)
承認日2020年2月21日

参考資料

特発性過眠症

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睡眠は不足していないはずなのに日常生活に支障をきたすほどの眠気が日中に現れる病気です。
「特発性」という名前からもわかるように現在のところ原因不明の疾患ですが、遺伝的背景により起こる疾患と考えられています。
日中に強い眠気に襲われる過眠症と言えばナルコレプシーが有名ですが、ナルコレプシーと特発性過眠症は別の疾患に分類されます。
ナルコレプシーはレム睡眠に異常を起こす疾患であるため、情動性脱力発作を主とするREM関連症状が特徴です。

レム関連症状(REM睡眠関連症状)

  • 入眠時幻覚
  • 金縛り
  • 情動脱力発作(カタプレキシー):感情の昂りに合わせて体が脱力してしまう症状

ナルコレプシーはオレキシン神経系の異常が原因であるため、レム睡眠に関連する症状が起こります。
また、睡眠発作が起きた時に必要とする睡眠時間にも違いがあり、以下のような傾向がみられます。

  • ナルコレプシー:昼間の眠気は比較的短時間の睡眠で改善するがしばらくすると再び眠気に襲われる
  • 特発性過眠症:短時間の睡眠では眠気が十分に改善されず長時間の睡眠を必要とする

このように特発性過眠症はナルコレプシーとは異なる疾患ではありますが、傾眠疾患という点では同じです。
そのため、適応外ではありますが特発性過眠症に使用されているケースもあったようです。
ナルコレプシーのみではなく睡眠時無呼吸症候群(SAS*8)の場合でも「日中の眠気をとる」効果が期待できるわけですから、特発性過眠症に対しても効果を発揮できるのは当然です。

モダフィニルによる覚醒作用

モダフィニルの作用機序は完全には解明されてはいませんが、その研究はかなり進んでおり、解説している論文も存在しています。

モダフィニルの作用機序

  • オレキシン神経系を介したヒスタミン放出作用
  • 中枢アドレナリンα1受容体に対するアゴニスト作用
  • 神経末端におけるノルアドレナリン再取り込み抑制作用
  • 局所におけるGABA神経伝達の抑制作用
  • ドパミントランスポーター(DAT*9)抑制によるドパミン再取り込み阻害作用
Kim, D. Practical Use and Risk of Modafinil, a Novel Waking Drug Environmental Health and Toxicology 2012; 27:e2012007

アンフェタミン系薬剤の刺激興奮作用とは異なる機序であるため、報酬系に対する影響は少なく、依存性は少ないと言われてはいますが、DATに作用するのであれば依存性のリスクは除去できません。
そのため、以下のような承認条件がついた上での承認了承となっています。

  • 承認条件:「睡眠障害の診断、治療に精通した医師・医療機関のもとでのみ処方され、薬局では調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤がなされるよう必要な措置を講じること」

これまではベタナミン(ペモリン、「ナルコレプシーの近縁傾眠疾患」)が保険適応上使用可能ではありましたが、「特発性過眠症」そのものに対する適応を持つ薬剤は初になります。

 

報告品目

PMDA*10(医薬品医療機器総合機構)の審査段階で部会での審議を行わず報告のみでよいと判断されたものです。
承認予定の内容だけ簡単に紹介します。

ネオーラル内用液:適応追加「川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)」(承認済)

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承認の種類新効能・新用量医薬品
医薬品名ネオーラル内用液10%
成分名シクロスポリン
申請者ノバルティスファーマ
追加される効能・効果川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)
追加前の効能・効果
  1. 下記の臓器移植における拒絶反応の抑制
    腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植
  2. 骨髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主病の抑制
  3. ベーチェット病(眼症状のある場合)、及びその他の非感染性ぶどう膜炎(既存治療で効果不十分であり、視力低下のおそれのある活動性の中間部又は後部の非感染性ぶどう膜炎に限る)
  4. 尋常性乾癬(皮疹が全身の30%以上に及ぶものあるいは難治性の場合)、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、関節症性乾癬
  5. 再生不良性貧血、赤芽球癆
  6. ネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイドに抵抗性を示す場合)
  7. 全身型重症筋無力症(胸腺摘出後の治療において、ステロイド剤の投与が効果不十分、又は副作用により困難な場合)
  8. アトピー性皮膚炎(既存治療で十分な効果が得られない患者)
指定等なし
海外承認なし(2019年10月時点)
承認日2020年2月21日

参考資料

※ネオーラルカプセル、サンディミュン内用液10%、サンディミュン点滴静注用250mgへの適応追加はなし

ステロイド以外で川崎病に使える初の免疫抑制剤(カルニシニューリンインヒビター)です。

インスリン リスプロBS注HU:ヒューマログ初のBS

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承認の種類バイオ後続品
医薬品名インスリン リスプロBS注ソロスターHU「サノフィ」
インスリン リスプロBS注カートHU「サノフィ」
インスリン リスプロBS注100単位/mL HU「サノフィ」
成分名インスリン リスプロ(遺伝子組換え)
〔インスリン リスプロ後続1〕
申請者サノフィ
効能・効果インスリン療法が適応となる糖尿病
指定等なし
海外承認EU、アメリカなど30以上の国・地域(2019年11月現在)

「HU」はHumalog(ヒューマログ)の頭文字なのかな?

承認されれば・・・ヒューマログのバイオ後続品は初めてです。

リツキサン点滴静注:適応追加「後天性血栓性血小板減少性紫斑病」(承認済)

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承認の種類新効能・新用量医薬品
医薬品名リツキサン点滴静注100mg
リツキサン点滴静注500mg
成分名リツキシマブ(遺伝子組換え)
申請者全薬工業
追加される効能・効果後天性血栓性血小板減少性紫斑病
追加前の効能・効果
  • CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫
  • CD20陽性の慢性リンパ性白血病
  • 免疫抑制状態下のCD20陽性のB細胞性リンパ増殖性疾患
  • 多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎
  • 難治性のネフローゼ症候群 (頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合)
  • 慢性特発性血小板減少性紫斑病
  • 下記のABO血液型不適合移植における抗体関連型拒絶反応の抑制
    腎移植、肝移植
  • インジウム (111In) イブリツモマブ チウキセタン (遺伝子組換え) 注射液及びイットリウム (90Y) イブリツモマブ チウキセタン (遺伝子組換え) 注射液投与の前投与
指定等事前評価済公知申請(2019年8月1日薬食審第一部会)
海外承認なし(2019年10月時点)
承認日2020年2月21日

参考資料

日本血液学会から、厚労省の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に対して開発要望が提出され、公知申請の該当性に係る報告書を元に2019年8月、薬食審第一部会で事前評価が行われた結果、申請が妥当と判断されていました。

事前評価済公知申請とは?

海外で承認されている適応について「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に対して開発の要望があった適応外薬のうち、薬事承認の申請について公知申請が適当とされたもので、その後、薬事・食品衛生審議会において公知申請の事前評価が終了したものについては、薬事承認上は適応外であっても、保険適用の対象となります。
参考:公知申請に係る事前評価が終了した適応外薬の保険適用について

*1:BioSimilar

*2:neovascular Age-related Macular Degeneration

*3:Vascular endothelial growth factor

*4:PhotoDynamic Therapy

*5:single chain Fv

*6:Fragment variable

*7:Chimeric Antigen Receptor T-cell

*8:Sleep Apnea Syndrome

*9:DopAmine Transporter

*10:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency

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