令和2年2月26日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会が開催され、7つの製品について審議が行われ、すべて承認が了承されています。
今回承認間近となったのは、イリノテカンのリポソーム製剤 オニバイド、乳がんのサードライン以降に用いる抗体薬物複合体(ADC)のエンハーツ、BNCTに用いるホウ素薬剤 ステボロニン、低分子MET阻害薬 テプミトコなどです。
2020年2月26日の薬食審・医薬品第二部会
今回は新有効成分含有医薬品が5つ、新効能・新剤型医薬品と新効能・新用量医薬品がそれぞれ1つ、合計7製品について審議され、全ての承認が了承されています。
審議品目(承認了承)
新有効成分含有医薬品
- ベレキシブル錠(チラブルチニブ塩酸塩):「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」(BTK阻害薬)
- エンハーツ点滴静注用(トラスツズマブ デルクステカン):「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳がん(標準的な治療が困難な場合に限る)」(HER2を標的とした抗体薬物複合体)
- ステボロニン点滴静注(ボロファラン):「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部がん」(BNCT用ホウ素薬剤)
- テプミトコ錠(テポチニブ塩酸塩水和物):「MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」(低分子MET阻害薬)
- ボンベンティ静注用(ボニコグ アルファ):「フォン・ヴィレブランド(von Willebrand)病患者における出血傾向の抑制」(遺伝子組み換えVWF)
新効能・新剤型医薬品
- オニバイド点滴静注(イリノテカン塩酸塩水和物):「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な膵がん」(Ⅰ型トポイソメラーゼ阻害薬/リポソーム製剤)
新効能・新用量医薬品
- デュピクセント皮下注(デュピルマブ):「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)」(抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体)
また、4製品についての効能追加が報告品目として挙げらています。
報告品目
- ヌーカラ皮下注用(メポリズマブ):6歳以上12歳未満の小児に対する用法・用量 追加「気管支喘息(既存治療によって喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)」(ヒト化抗ヒトIL-5モノクローナル抗体)
- リサイオ点滴静(チオテパ):「悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療」(DNAアルキル化剤)
- ニンラーロカプセル(イキサゾミブクエン酸エステル):「多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法」(プロテアソーム阻害薬)
- ブスルフェクス点滴静注(ブスルファン):「悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療」(DNAアルキル化剤)
現時点(2020年2月26日)では未承認なので気をつけてね!
オニバイド点滴静注
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承認の種類 | 新効能・新剤型医薬品 |
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医薬品名 | オニバイド点滴静注43mg |
成分名 | イリノテカン塩酸塩水和物 |
申請者 | 日本セルヴィエ |
効能・効果 | がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な膵がん |
指定等 | なし |
海外承認 | 米国・EU等 (2019年10月末) |
承認日 | 未定 |
イリノテカンのリポソーム製剤
DDS*1にリポソームを採用したイリノテカン製剤です。
リポソーム製剤とすることで、標的部位でゆっくりと薬剤を放出、腫瘍組織に対して長く効果を発揮することを可能としています。
イリノテカンはトポイソメラーゼIを阻害することで、癌細胞DNAの転写や複製を阻害し、その結果、腫瘍増殖抑制作用を示します。
国内で販売されているリポソーム製剤には抗真菌薬のアムビゾームやカポジ肉腫治療薬のドキシルがあるね。
同じイリノテカン製剤のカンプト点滴静注を製造販売しているヤクルトがプロモーション提携を行っています。
ベレキシブル錠
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承認の種類 | 新有効成分含有医薬品 |
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医薬品名 | ベレキシブル錠80mg |
成分名 | チラブルチニブ塩酸塩 |
申請者 | 小野薬品 |
効能・効果 | 再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫 |
指定等 | 希少疾病用医薬品 |
海外承認 | なし (2019年11月) |
承認日 | 未定 |
- チラブルチニブ(ONO-4059)、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤「中枢神経系原発リンパ腫」および「原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫」を対象とした2つの臨床試験の結果を2019年米国血液学会(ASH)で発表(2019年12月9日)
- ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤「チラブルチニブ塩酸塩(ONO-4059)」 原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫に対する効能又は効果に係る国内製造販売承認申請(2019年11月27日)
- ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤「チラブルチニブ塩酸塩(ONO-4059)」 再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫に対する国内製造販売承認申請(2019年8月28日)
ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬 チラブルチニブ
チラブルチニブはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK*2)阻害薬です。
BTKはB細胞受容体シグナル伝達経路を制御する物質の一つで、B細胞の発達と成熟B細胞の機能に関与しています。
中枢神経系原発悪性リンパ腫 (PCNSL*3) では、B細胞受容体シグナル伝達経路が恒常的に活性化しているため、経路途中で働くBTKを阻害することでB細胞などの過剰な成熟を阻害し、腫瘍抑制効果を発揮します。
B細胞受容体シグナル伝達経路はB細胞性非ホジキンリンパ腫(B-NHL*4)などでも恒常的に活性化しており、チラブルチニブが効果を発揮できるのではないかと期待されます。
エンハーツ点滴静注用
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承認の種類 | 新有効成分含有医薬品 |
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医薬品名 | エンハーツ点滴静注用100mg |
成分名 | トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え) |
申請者 | 第一三共 |
効能・効果 | 化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳がん(標準的な治療が困難な場合に限る) |
指定等 | 条件付き早期承認制度適用医薬品 |
海外承認 | アメリカのみ (2019年12月承認) |
承認日 | 未定 |
- DS-8201(トラスツズマブ デルクステカン)の HER2過剰発現の胃がん第2相臨床試験の結果概要について(2020年1月27日)
- ENHERTU®の米国における新発売のお知らせ(2020年1月7日)
- ENHERTU®(トラスツズマブ デルクステカン)の米国における販売承認取得のお知らせ(2019年12月23日)
- トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の米国における承認申請受理について(2019年10月17日)
- トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の国内における製造販売承認申請について(2019年9月9日)
- トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の HER2陽性乳がん第2相臨床試験の結果概要について(2019年5月8日)
- トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)に関するアストラゼネカとのグローバル開発及び販売提携のお知らせ(2019年3月29日)
- トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の乳がんを対象とした米国承認申請目標時期の前倒しについて(2019年3月29日)
- trastuzumab deruxtecan(DS-8201)のHER2低発現乳がん患者を対象とした第3相臨床試験の開始について(2019年1月15日)
抗体薬物複合体 トラスツズマブ デルクステカン
トラスツズマブ デルクステカンはHER2*5(ヒト上皮増殖因子受容体2型)たんぱく(HER2/neu受容体)を標的とする抗HER2ヒト化モノクローナル抗体 トラスツズマブとトポイソメラーゼⅠ阻害薬 デルクステカンを結合させた抗体薬物複合体(ADC*6)です。
トラスツズマブ部分がHER2/neu受容体を抗原として認識し、HER2シグナルの伝達阻害作用や免疫細胞による抗体依存性細胞障害作用(ADCC*7)を発揮すると同時に、標的細胞内で放出されるデルクステカンがⅠ型トポイソメラーゼを阻害することで抗腫瘍作用を発揮します。
Ⅰ型トポイソメラーゼを阻害するのはオニバイド(イリノテカン)と同じだね!
HER2が発現している癌細胞に対して選択的に効果を発揮するため、正常な細胞へのダメージを最小限に抑えながら、抗腫瘍効果を発揮します。
また、免疫機能が低下し、ADCC活性が低下している場合でもデルクステカンの効果により抗腫瘍効果が維持されることも期待されます。
サードライン以降で使用
同じくHER2をターゲットとしたADCにはトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1、カドセイラ)があります。
こちらはトラスツズマブとチューブリン重合阻害作用を持つエムタンシン(DM-1)を結合させたADCです。
T-DM1はセカンドライン(トラスツズマブ(遺伝子組換え)及びタキサン系抗悪性腫瘍剤による化学療法の治療歴のある患者)に対して使用され、エンハーツはT-DM1でも治療が困難な場合、つまりはサードライン以降に使用されます。
DESTINY-Breast01
エンハーツの国際第2相臨床試験
- 対象:T-DM1治療歴のあるHER2陽性再発転移性乳がん患者
- 薬剤:トラスツズマブ デルクステカンの単剤療法
- 結果(効果):客観的奏効率 60.9%、奏効持続は14.8ヵ月、無増悪生存期間は16.4ヵ月
- 結果(安全性):グレード3以上の有害事象 57.1%(好中球数減少 20.7%、貧血 8.7%、吐き気 7.6%など)
Trastuzumab Deruxtecan in Previously Treated HER2-Positive Breast Cancer(N Engl J Med. 2019 Dec 11. doi: 10.1056/NEJMoa1914510.)
条件付き早期承認制度
重篤な疾患であって有効な治療法が乏しく患者数が少ない疾患等を対象とする医薬品について、我が国での治験実施が困難、あるいは実施可能であっても治験の実施にかなりの長時間を要すると認められる場合に、承認申請時に検証的臨床試験以外の臨床試験等で一定程度の有効性及び安全性を確認した上で、製販後に有効性・安全性の再確認等のために必要な調査等を実施すること等を承認条件により付与する取扱い等を整理し、明確化することにより、企業における開発予見性を高め、早期の実用化を促進する制度
参考:医薬品条件付早期承認制度への対応(Pmda)
ステボロニン点滴静注
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承認の種類 | 新有効成分含有医薬品 |
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医薬品名 | ステボロニン点滴静注バッグ9000mg/300mL |
成分名 | ボロファラン(10B) |
申請者 | ステラファーマ |
効能・効果 | 切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部がん |
指定等 | 先駆け審査指定制度 |
海外承認 | なし |
承認日 | 未定 |
BNCT用ホウ素薬剤 ボロファラン(10B)
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT*8)は、中性子とホウ素の核反応を利用した治療方法です。
ステボロニンは親会社であるステラケミファのホウ素同位体濃縮技術を利用してステラファーマが開発した薬剤です。
自然界でホウ素は10Bと11Bの2種類が安定して存在します。
ボロファランはそのうち20%しか存在しない10Bのみを濃縮することで99%以上の10Bを使用した化合物です。
ボロファランが体内に投与されると10Bが癌細胞に集まります。
そこに中性子線を照射すると10Bと核反応を起こし、ヘリウム核(α線)とリチウム核を放出します。
中性子はエネルギーが小さく貫通力が高いため、細胞にダメージを与えずに癌細胞まで到達することが可能です。
逆にアルファ線とリチウム核はエネルギーが大きく貫通力が低いため、周辺の細胞(癌細胞)のみにダメージを与えます。
また、ホウ素原子は中性子線を捕獲する確率が非常に大きいことが知られています。
この特性から、正常な細胞にはダメージを与えず、癌細胞のみに効果を発揮する治療を行えるようになると期待されます。
頭頸部がんの発生部位には鼻、口、耳、喉など日常生活に必須な器官が集中しているため、機能を温存しながら治療できる方法が求められており、ステボロニンのような薬剤の登場が期待されています。
BNCTは脳腫瘍など周りの細胞を破壊できない際の治療への応用が期待される治療法なので、ステボロニンのような薬剤が登場することに期待してます。
テプミトコ錠
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承認の種類 | 新有効成分含有医薬品 |
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医薬品名 | テプミトコ錠250mg |
成分名 | テポチニブ塩酸塩水和物 |
申請者 | メルクバイオファーマ |
効能・効果 | MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん |
指定等 | 希少疾病用医薬品 先駆け審査指定制度 |
海外承認 | なし |
承認日 | 未定 |
低分子MET阻害薬 テポチニブ
テポチニブは間葉上皮転換因子(MET*9)受容体(受容体型チロシンキナーゼ)を阻害する低分子化合物(低分子MET阻害薬)です。
MET受容体は一部の腫瘍細胞表面に発現しています。
肝細胞増殖因子(HGF*10)がMET受容体に結合することで細胞内のチロシンキナーゼドメインがリン酸化され、そこから開始されるシグナル伝達を介して腫瘍細胞の増殖や遊走などが促進されます。
非小細胞肺がん(NSCLC*11)の一部(約3%)ではMET遺伝子エクソン14スキッピング変異を有するものがあります。
その場合、HGFなしでMETがリン酸化され、常に腫瘍細胞が増殖刺激を受けている状態になってしまいます。
テポチニブはMETのリン酸化を阻害することで腫瘍増殖抑制作用を発揮します。
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異を対象とする薬剤は初めてで、コンパニオン診断薬についても審査中とのことです。
HGF/c-MET経路はEGFRチロシンキナーゼ阻害剤耐性機構にも関与しているようなので今後の応用も期待されます。
先駆け審査指定制度
原則として既承認薬と異なる作用機序により、生命に重大な影響がある重篤な疾患等に対して、極めて高い有効性が期待される医薬品を指定することとします。また、本制度はPMDAにおいて指名される審査パートナー(以下「コンシェルジュ」という。)を選任して、厚生労働省及びPMDA内部の関係各部との連携を強化するとともに定期的な進捗管理を通じて開発の迅速化を可能とし、新たに整備される相談の枠組みを優先的に適用し、かつ優先審査を適用することにより、審査期間を6ヶ月まで短縮することを目指します。
参考:先駆け審査指定制度について(厚生労働省)
参考:先駆け審査指定制度の対象品目一覧表(Pmda)
デュピクセント皮下注の適応追加:鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎
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承認の種類 | 新効能・新用量医薬品 |
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医薬品名 | デュピクセント皮下注300mgシリンジ |
成分名 | デュピルマブ(遺伝子組換え) |
申請者 | サノフィ |
追加される効能・効果 | 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る) |
追加前の効能・効果 | 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎 気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る) |
指定等 | なし |
海外承認 | アメリカ (2019年6月) |
承認日 | 未定 |
- デュピクセント®(デュピルマブ)が鼻茸を伴う重症慢性副鼻腔炎の治療薬として欧州で承認を取得(2019年11月)
- デュピクセント®(デュピルマブ)が鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)より承認取得(2019年7月)
- デュピクセント®、「在宅自己注射」対象薬剤へ追加(2019年4月)
- デュピクセント®鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する治療薬として適応追加申請(2019年4月)
- デュピクセント®(デュピルマブ)の鼻茸を伴う重症慢性副鼻腔炎の患者を対象とした2つの第III相試験における良好な結果を発表(2019年2月)
- デュピクセント®(デュピルマブ)の鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の患者を対象とした2つの第III相試験で良好な結果を確認(2018年10月)
抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体 デュピルマブ
デュピルマブはヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体です。
インターロイキン4(IL-4*12)とインターロイキン13(IL-13*13)のシグナル伝達を特異的に阻害することでTh2細胞による2型(Type2)炎症反応を上流から下流まで阻害します。
鼻茸(ポリープ)を伴う慢性副鼻腔炎は好酸球性副鼻腔炎に分類され、気管支喘息と密接な関係があ理、どちらもTh2細胞が主体となるTh2炎症が原因と言われています。
生理食塩水による鼻洗浄、局所ステロイド薬、経口ステロイド薬での治療を行い、それでも改善しない場合は内視鏡下鼻副鼻腔手術などの外科療法が施行されていますが、再発を繰り返したり、患者の身体への負担が大きいため、長期的に使用できる薬剤の開発が求められています。
承認されれば、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する初の生物製剤になります。
ボンベンティ静注用
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承認の種類 | 新有効成分含有医薬品 |
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医薬品名 | ボンベンティ静注用1300 |
成分名 | ボニコグ アルファ(遺伝子組換え) |
申請者 | シャイアー・ジャパン |
効能・効果 | フォン・ヴィレブランド(von Willebrand)病患者における出血傾向の抑制 |
指定等 | 希少疾病用医薬品 |
海外承認 | EU、アメリカなど (2019年12月) |
承認日 | 未定 |
遺伝子組み換えフォン・ヴィレブランド因子製剤 ボニコグ アルファ
フォン・ヴィレブランド病(VWD*14)は血友病の次に多い出血性の病気です。
正常であれば、出血が起こった際には血液中の成分により一次止血が行われます。
一次止血では、血液内にあるタンパク質 フォン・ヴィレブランド因子(VWF*15)が血小板と傷口を結合し、出血を止めます。
次に血液凝固因子の働きにより、フィブリンが作られ、血栓を覆い、安定させて止血が完了します。
VWFは一次止血で主要な役割を果たすとともに、二次止血において凝固第VIII因子(FVIII*16)を安定させる作用があります。
VWDはフォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor:VWF)が少ないか、あるいはうまく働かないため止血を行うことができない疾患です。
VWDは、以下のように分類されます。
- VWD 1型:VWFが減少
- VWD 2型:VWFの機能が不十分(重症度・機能によって2A・2B・2M・2Nに分類)
- VWD 3型:VWFが完全にない
ボニコグ アルファは世界で初めて承認された唯一の遺伝子組換えVWF製剤です。
また、これまではFVIIIと混合された形でしかVWFを含む製剤は存在しなかったため、承認されれば初のVWF単独製剤となります。
報告品目
Pmda*17(医薬品医療機器総合機構)の審査段階で部会での審議を行わず報告のみでよいと判断されたものです。
承認予定の内容だけ簡単に紹介します。
ヌーカラ皮下注用(適応拡大):小児用量の追加(気管支喘息)
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承認の種類 | 新用量医薬品(小児用量の追加) |
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医薬品名 | ヌーカラ皮下注用100mg |
成分名 | メポリズマブ(遺伝子組換え) |
申請者 | グラクソ・スミスクライン |
変更の対象となる効能・効果 | 気管支喘息(既存治療によって喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る) |
変更内容 | 小児に対する用法・用量の追加 |
指定等 | |
海外承認 | EU、アメリカなど |
承認日 | 未定 |
ヒト化抗ヒトIL-5モノクローナル抗体。
気管支喘息の適応に小児適応が追加されます。
これまでは12歳以上の小児のみに使用できましたが、承認されれば、6歳以上12歳未満の小児に対する用法・用量を追加されます。
リサイオ点滴静注(適応追加):悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療
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承認の種類 | 新効能・新用量医薬品 |
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医薬品名 | リサイオ点滴静注液100mg |
成分名 | チオテパ |
申請者 | 大日本住友製薬 |
効能・効果 | 悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療 |
追加前の効能・効果 | |
指定等 | |
海外承認 | あり |
承認日 | 未定 |
DNA合成阻害作用を持つ抗腫瘍性アルキル化剤。
小児悪性固形腫瘍における自家造血幹細胞移植の前治療に使用されていましたが、承認されれば、悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療の適応も追加されます。
ニンラーロカプセル(適応追加):多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法
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承認の種類 | 新効能・新用量医薬品 |
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医薬品名 | ニンラーロカプセル2.3mg ニンラーロカプセル3mg ニンラーロカプセル4mg |
成分名 | イキサゾミブクエン酸エステル |
申請者 | 武田薬品 |
追加される効能・効果 | 多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法 |
追加前の効能・効果 | 再発又は難治性の多発性骨髄腫 |
指定等 | |
海外承認 | なし (2019年11月) |
承認日 | 未定 |
プロテアソーム阻害薬。
承認されれば、多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法に係る効能・効果を持つ初の薬剤になります。
ブスルフェクス点滴静注(適応追加):悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療
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承認の種類 | 新効能・新用量医薬品 |
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医薬品名 | ブスルフェクス点滴静注用60mg |
成分名 | ブスルファン |
申請者 | 大塚製薬 |
追加される効能・効果 | 悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療 |
追加前の効能・効果 | 同種造血幹細胞移植の前治療 ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、神経芽細胞腫における自家造血幹細胞移植の前治療 |
指定等 | 事前評価済公知申請 |
海外承認 | イギリス、オーストラリア、カナダ、ドイツ、フランス (2019年3月) |
承認日 | 未定 |
DNAアルキル化剤。
2019年10月31日の薬食審医薬品第二部会で、医療上の必要性 の高い未承認薬・適応外薬検討会議の報告書に基づき、公知申請を行っても差し支えないとする事前評価が行われていたものです。
*1:Drug Delivery System
*2:Bruton’s Tyrosine Kinase
*3:Primary Central Nervous System Lymphoma
*4:B cell-Non-Hodgkin Lymphoma)))や慢性リンパ性白血病(CLL((Chronic Lymphocytic Leukemia
*5:Human. Epidermal growth factor Receptor type 2
*6:Antibody-Drug Conjugate
*7:Antibody-Dependent Cell-mediated Cytotoxicity
*8:Boron Neutron Capture Therapy
*9:Mesenchymal Epithelial Transition
*10:Hepatocyte Growth Factor
*11:Non-Small Cell Lung Cancer
*12:InterLeukin-4
*13:InterLeukin-13
*14:Von Willebrand Disease
*15:von Willebrand factor
*16:Factor VIII
*17:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency