薬食審第二部会 カボメティクス錠、オプジーボの適応追加など 20200129

  • 2020年2月24日
  • 2021年1月17日
  • 薬食審
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令和2年1月29日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会が開催され、5つの製品について審議が行われ、すべて承認が了承されています。
今回承認間近となったのは、新規マルチキナーゼ阻害薬カボメティクス錠、レブラミドカプセルやアレセンサカプセル、ロズリートレクカプセルの適応追加などです。

2020.2.21付でレブラミドカプセル、アレセンサカプセル、ロズリートレクカプセル、ピリヴィジェン10%点滴静注、オレンシア点滴静注用/皮下注、オプジーボ点滴静注の一部変更が承認されました。

2020年1月29日の薬食審・医薬品第二部会

今回は新有効成分含有医薬品が一つ、新効能・新用量医薬品が4つ、合計5製品について審議され、全ての承認が了承されています。

審議品目(承認了承)

新有効成分含有医薬品

新効能・新用量医薬品

また、2製品、3種類の効能追加が報告品目として挙げらています。

報告品目

  • オレンシア点滴静注用/皮下注(アバタセプト):「関節リウマチ」の効能・効果に「関節の構造的損傷の防止を含む」(適応拡大)を追加(CTLA4-Ig)
  • オプジーボ点滴静注(ニボルマブ):「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん」と「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道がん」を追加(ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体)

2021年2月21日付で一部変更については承認されています。カボメティクスについては未承認なので気をつけてね!

審議品目(新有効成分含有医薬品・新投与経路医薬品)

まずは審議が行われた医薬品5製品について。

カボメティクス錠:根治切除不能又は転移性の腎細胞がん

承認の種類新有効成分含有医薬品
医薬品名カボメティクス錠20mg
カボメティクス錠60mg
成分名カボザンチニブリンゴ酸塩
申請者武田薬品
効能・効果根治切除不能又は転移性の腎細胞がん
用法・用量成人:カボザンチニブとして1回60mgを空腹時に経口投与
指定等なし
海外承認化学療法歴のない根治切除不能又は転移性の腎細胞がん:アメリカ(2017年12月)、EU(2018年5月)
化学療法歴のある根治切除不能又は転移性の腎細胞がん:アメリカ、EU(2016年)

参考資料

AXL/MET/VEGFRキナーゼ阻害薬で化学療法歴のない根治切除不能または転移性の腎細胞がんに用います。
主にVEGFR2を介したシグナル伝達分子(細胞外シグナル調節キナーゼ等)のリン酸化を阻害すること腫瘍増殖抑制作用を発揮すると考えられています。

腎細胞癌に対する適応をもつ代表的薬剤とそれぞれの位置付け

現時点で腎細胞がんに対する適応で承認されている薬についてまとめてみます。
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「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」の適応を持つ薬剤(腎細胞癌の一次治療に使用可能な薬剤)

分子標的薬

  • ソラフェニブ(ネクサバール錠):チロシンキナーゼ阻害薬(マルチキナーゼ阻害薬)
  • スニチニブ(スーテントカプセル):チロシンキナーゼ阻害薬(マルチキナーゼ阻害薬)
  • アキシチニブ(インライタ錠):チロシンキナーゼ阻害薬(マルチキナーゼ阻害薬)
  • パゾパニブ(ヴォトリエント錠):チロシンキナーゼ阻害薬(マルチキナーゼ阻害薬)
  • エベロリムス(アフィニトール錠):mTOR*1阻害薬
  • テムシロリムス(トーリセル点滴静注液):mTOR阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬

  • ニボルマブ(オプジーボ点滴静注)+イピリムマブ(ヤーボイ点滴静注液):抗PD-1*2抗体薬+抗CTLA-4抗体薬
  • アベルマブ(バベンチオ点滴静注)+アキシチニブ併用:抗PD-L1*3抗体薬+チロシンキナーゼ阻害薬
  • ペムブロリズマブ(キイトルーダ点滴静注)+アキシチニブ併用:抗PD-1抗体薬+チロシンキナーゼ阻害薬

進行腎癌に対する薬物療法の選択基準

(日本泌尿器科学会:腎癌診療ガイドライン 2017年版より)

分類推奨治療薬
一次治療淡明細胞型腎細胞癌低リスクスニチニブパゾパニブ
代替治療薬:ソラフェニブ、IF-α、低用量IL-2
中リスクイピリムマブ+ニボルマブ併用
スニチニブパゾパニブ
代替治療薬:ソラフェニブ、IL-α、低用量IL-2
高リスクイピリムマブ+ニボルマブ併用
代替治療薬:スニチニブ、テムシロリムス
非淡明細胞型腎細胞癌スニチニブテムシロリムス
二次治療チロシンキナーゼ阻害薬後アキシチニブニボルマブ
代替治療薬:エベロリムス、ソラフェニブ
サイトカイン療法後アキシチニブソラフェニブ
代替治療薬:スニチニブ、パゾパニブ
mTOR阻害薬後
三次治療チロシンキナーゼ阻害薬2剤後ニボルマブ
代替治療薬:エベロリムス
チロシンキナーゼ阻害薬/mTOR阻害薬後ソラフェニブアキシチニブ
代替治療薬:スニチニブ、パゾパニブ
その他

※IMDC 分類
注:2019年12月20日付で「アベルマブ+アキシチニブ併用」、「ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用」も「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」に対する適応を取得、一次治療で使用可能となっているので近い将来ここに加わるのだと思います。

マルチキナーゼ阻害剤 カボザンチニブ

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カボザンチニブはAXL/MET/VEGFRを阻害するチロシンキナーゼ阻害薬(マルチキナーゼ阻害薬)です。
血管新生を促進する血管内皮増殖因子受容体 VEGFR*4、腫瘍細胞の浸潤および転移に関与するMET、癌細胞の耐性化に関わるAXLを阻害することで効果を発揮します。

参考までに各チロシンキナーゼ阻害剤(TKI*5)とその標的分子をまとめておきます。

腎癌適応を持つTKIと標的分子

  • ソラフェニブ(ネクサバール錠):VEGFR、PDGFR、KIT、Flt3、Raf
  • スニチニブ(スーテントカプセル):VEGFR、PDGFR、KIT、Flt3
  • アキシチニブ(インライタ錠):VEGFR、PDGFR、KIT
  • パゾパニブ(ヴォトリエント錠):VEGFR、PDGFR、KIT
  • カボザンチニブ(カボメティクス錠):VEGFR、AXL、MET、Flt3、RET、TIE2

レブラミドカプセル:適応追加「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫及び辺縁帯リンパ腫」(承認済)

表が画面に入りきらない場合は横にスクロールできます。

承認の種類新効能・新用量医薬品
医薬品名レブラミドカプセル2.5mg
レブラミドカプセル5mg
成分名レナリドミド水和物
申請者セルジーン
追加される効能・効果再発又は難治性の濾胞性リンパ腫及び辺縁帯リンパ腫
追加前の効能・効果多発性骨髄腫

5番染色体長腕部欠失を伴う骨髄異形成症候群
再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫

指定等なし
海外承認アメリカのみ(2019年10月)
濾胞性リンパ腫:EU(2019年11月)
承認日2020年2月21日

参考資料

濾胞性リンパ腫と辺縁帯リンパ腫

濾胞性リンパ腫と辺縁帯リンパ腫はどちらも悪性リンパ腫です。
リンパ球の中のB細胞から発生するB細胞性非ホジキンリンパ腫に分類されます。
※非ホジキンリンパ腫:リード・シュテルンベルグ細胞やホジキン細胞が見られないリンパ腫
一般的にはいずれも悪性度は高くないとされています。

濾胞性リンパ腫

濾胞性リンパ腫:FL*6
リンパ節の中に癌細胞がたくさん固まってできる球状の腫瘍性濾胞が見られるのが特徴で、それが増殖していきます。
濾胞中の癌細胞は、細胞表面マーカー検査でCD20、CD10が陽性、高い割合でBCL2遺伝子を発現しているのが特徴です。

辺縁帯リンパ腫

辺縁帯B細胞リンパ腫:MZL*7
リンパ組織の特定の領域(辺縁帯)から発生する悪性リンパ腫の一種です。
発生した場所 によって以下の3種類に分けられます。

  • 脾辺縁帯リンパ腫:脾臓に発生
  • 節性辺縁帯リンパ腫:リンパ節に発生
  • 節外性辺縁帯リンパ腫:他のリンパ組織に発生

※節外性辺縁帯リンパ腫はMALT*8(粘膜関連リンパ組織)リンパ腫と同義

レナリドミドの作用機序

レナリドミドは経口の免疫調節薬(IMiDsR*9)です。
サイトカイン産生調節作用、造血器腫瘍細胞に対する増殖抑制作用、血管新生阻害作用等の薬理作用により効果を発揮すると考えられています。
今回追加される「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫及び辺縁帯リンパ腫」に対する適応ではリツキシマブと併用して用いるようになっています。

アレセンサカプセル150mg:適応追加「再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫」(承認済)

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承認の種類新効能・新用量医薬品
医薬品名アレセンサカプセル150mg
成分名アレクチニブ塩酸塩
申請者中外製薬
追加される効能・効果再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫
追加前の効能・効果ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
指定等希少疾病用医薬品
海外承認なし(2019年11月)
承認日2020年2月21日

参考資料

未分化大細胞リンパ腫

未分化大細胞型リンパ腫は悪性リンパ腫の一種です。
非ホジキンリンパ腫のうち、中悪性度に分類される末梢性T細胞リンパ腫の一型です。

未分化大細胞リンパ腫

未分化大細胞リンパ腫:ALCL*10
CD30、EMA陽性という特徴をもつ大型のリンパ球系細胞が増殖するリンパ腫。
ALK融合遺伝子(腫瘍細胞内での遺伝子組換え)の有無などの特徴から以下のように分類される。

  • ALK陽性未分化大細胞型リンパ腫(Anaplastic large cell lymhoma, ALK positive)
  • ALK陰性未分化大細胞型リンパ腫(Anaplastic large cell lymhoma, ALK negative)
  • 原発性皮膚CD30陽性T細胞増殖性疾患(Primary cutaneous CD30 positive T-cell lymphoproliferative disdorders)
    • 原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(pcALCL*11
    • リンパ腫様丘疹症(Lymphomatoid papulosis)
アレクチニブの作用機序

アレクチニブは第二世代ALK阻害薬です。
ALK融合タンパク質を特異的に阻害することでALK陽性腫瘍の増殖を抑制、アポトーシスを引き起こします。

ALK遺伝子は細胞増殖に関わるチロシンキナーゼの一種である未分化リンパ腫キナーゼ(ALK*12)を発現する遺伝子です。
通常、細胞膜に発現しているALKに増殖因子が結合、活性化することで、シグナル伝達が核に伝達され、癌細胞の増殖が促されます。
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ALK遺伝子が他の遺伝子と融合してできるALK融合遺伝子はALK融合タンパク質(EML4-ALK融合キナーゼ)を発現します。
ALK融合タンパクは増殖因子がなしで活性化し、常にシグナル伝達が核に伝達している状態になってしまい、癌細胞の増殖が促進されてしまいます。
ALK阻害薬であるアレクチニブはALK融合タンパクに高選択的に結合することで、ALK融合タンパクにATPが結合、活性化するのを防ぐことでALK陽性腫瘍の増殖を抑制します。
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ロズリートレクカプセル:適応追加「ROS1融合遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」(承認済)

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承認の種類新効能・新用量医薬品
医薬品名ロズリートレクカプセル100mg
ロズリートレクカプセル200mg
成分名エヌトレクチニブ
申請者中外製薬
追加される効能・効果ROS1融合遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
追加前の効能・効果NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌
指定等なし
海外承認アメリカのみ(2019年10月)
承認日2020年2月21日

参考資料

ROS1融合遺伝子

ROS1融合遺伝子は非小細胞肺がんのおよそ1%に見られる遺伝子変異です。
ROS1遺伝子が他の遺伝子と融合してできたROS1融合遺伝子から生成されるROS1融合タンパクは、増殖因子による活性化を必要とせず、常に癌細胞を増殖させるシグナルをオンにしてしまいます。
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エヌトレクチニブの作用機序

エヌトレクチニブはROS1(c-rosがん遺伝子1)とTRK(神経栄養因子受容体)ファミリーを選択的に阻害するチロシンキナーゼ阻害薬です。
ROS1とTRKキナーゼ活性を阻害することで、ROS1融合遺伝子もしくはNTRK融合遺伝子を持つがん細胞の増殖を抑制します。
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2019年12月に「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」はロズリートレクのROS1肺がんのコンパニオン診断として承認を取得済みです。

コンパニオン診断とは?

分子標的薬は特定の遺伝子異常をターゲットとする薬剤であるため、投与前に遺伝子診断を行う必要があります。
ある薬剤を使用するために必要となる遺伝子診断をその薬剤の「コンパニオン診断」と呼びます。

  • companion:仲間、友、相手役など

ピリヴィジェン10%点滴静注:適応追加「無又は低ガンマグロブリン血症」(承認済)

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承認の種類新効能・新用量医薬品
医薬品名ピリヴィジェン10%点滴静注5g/50mL
ピリヴィジェン10%点滴静注10g/100mL
ピリヴィジェン10%点滴静注20g/200mL
成分名pH4処理酸性人免疫グロブリン
申請者CSLベーリング
追加される効能・効果無又は低ガンマグロブリン血症
追加前の効能・効果慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の筋力低下の改善
慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)
指定等なし
海外承認アメリカ、EUなど(2019年1月)
承認日2020年2月21日

参考資料

無又は低ガンマグロブリン血症

免疫グロブリンGが不足していたり作られない状態を免疫不全と言い、以下の2つに分類されます。

  • 原発性免疫不全症候群(PID*13):先天性の免疫異常により免疫機能が低下した状態
  • 続発性免疫不全症候群(SID*14):癌、HIVなどのウイルス感染、放射線照射、抗悪性腫瘍剤投与、免疫抑制剤投与などにより免疫機能が低下した状態

そのうち、体内で免疫グロブリンGが全く作られない状態を無ガンマグロブリン血症、少しだけ作られる場合や何らかの原因により免疫グロブリンGが低下している場合を低ガンマグロブリン血症と呼びます。

報告品目

PMDA*15(医薬品医療機器総合機構)の審査段階で部会での審議を行わず報告のみでよいと判断されたものです。
承認予定の内容だけ簡単に紹介します。

オレンシア:適応変更「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」(承認済)

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承認の種類新効能医薬品
医薬品名オレンシア点滴静注用250mg(①)
オレンシア皮下注125mgシリンジ1mL(②)
オレンシア皮下注125mgオートインジェクター1mL(②)
成分名アバタセプト(遺伝子組換え)
申請者ブリストル・マイヤーズスクイブ
追加される効能・効果①既存治療で効果不十分な下記疾患 関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎
既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
追加前の効能・効果①既存治療で効果不十分な下記疾患 関節リウマチ、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎
②関節リウマチ(既存治療で効果不十分な場合に限る)
指定等なし
海外承認点滴静注用:アメリカ(2005年12月)、EU(2007年5月)
皮下注:アメリカ(2011年7月)、EU(2012年7月)
承認日2020年2月21日

参考資料

T細胞活性化のメカニズム

T細胞は抗原提示細胞から抗原刺激を受けることで活性化されます。
抗原刺激を受けたT細胞にはCD28が発現し、そこに抗原提示細胞のCD80/86が結合することで、共刺激シグナルの伝達が開始されます。
抗原刺激シグナルと共刺激シグナルが揃うことでT細胞は活性化し、共刺激シグナルがないとT細胞はアポトーシスに向かいます。
抗原提示がない場合、T細胞にはCD28と同じくCD80/86をリガンドとするCTLA-4が発現しており、CD80/86とCTLA-4が結合することで負のシグナル伝達が起こり、T細胞は抑制されています。

アバタセプトの作用機序

アバタセプトはT細胞選択的共刺激調節薬と呼ばれています。
ヒトCTLA-4受容体とヒトIgG抗体のFc領域を結合した製剤です。
CTLA-4はCD28よりもCD80/86に対する親和性が高いため、アバタセプトはT細胞の活性化を競合的に阻害します。

今回追加される「関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」の効能・効果を持つ生物製剤にはアクテムラ、エンブレル、シムジア、シンポニー、スマイラフ、ヒュミラ、レミケードがあります。

オプジーボ点滴静注:適応追加「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん」、「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道がん」(承認済)

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承認の種類新効能医薬品
医薬品名オプジーボ点滴静注20mg
オプジーボ点滴静注100mg
オプジーボ点滴静注240mg
成分名ニボルマブ(遺伝子組換え)
申請者小野薬品
追加される効能・効果①がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん
②がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道がん
追加前の効能・効果悪性黒色腫
切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌
がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌
がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫
指定等食道がん:優先審査品目
海外承認MSI-Highを有する結腸・直腸がん:アメリカ(2017年7月)
食道がん:なし(2019年10月)
承認日2020年2月21日

参考資料

オプジーボ(ニボルマブ)の作用機序

ニボルマブはヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(免疫チェックポイント阻害薬)です。
本庶佑先生とジェームズ・P・アリソン先生がノーベル生理学賞(免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん治療への応用)を受賞した研究を基に開発された薬剤です。
癌細胞が持つ免疫反応を回避する機能を阻害することで効果を発揮します。

活性化された免疫細胞(T細胞やB細胞)の表面には、PD-1*16と呼ばれる、免疫細胞のアポトーシス(細胞自己死)に拘わる分子が存在しています。
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PD-1は免疫のブレーキ役(免疫チェックポイント)として免疫応答を調節しています。
また、PD-1に特異的に結合する物質(リガンド)とて発見されたのがPD-L1とPD-L2です。
PD-1にPD-L1が結合すると、免疫細胞としての反応が抑制されてしまいます。
がん細胞は自身の表面にPD-L1を発現させることで、免疫反応による攻撃を回避します。

オプジーボの有効成分であるニボルマブはヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体です。
ニボルマブはPD-1の細胞外領域(PD-1リガンド結合領域)に結合することで、PD-1とPD-L1の結合を阻害します。
その結果、免疫反応にかかっていたブレーキが解除され、がんを抗原とする抗原抗体反応を増強、悪性腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。

免疫チェックポイント阻害薬と高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)

今回、オプジーボに追加される適応のうち、「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」について説明します。
マイクロサテライトとはゲノム上に存在する反復配列のうち、数塩基単位の配列の繰り返し(マイクロサテライトリピート)部分を指します。
細胞分裂に伴う遺伝子複製では一定の確率でエラーが起こり、異なる塩基配列の遺伝子が複製(変異)されてしまいます。
単純な塩基配列が繰り返されるマイクロサテライト部分は特にエラーが生じやすくなっています。
例えばマイクロサテライトの繰り返し回数が10回のものがあるとして、エラーが生じることで11回になったり9回になってしまったりします。
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通常の細胞であればこういったエラーが生じても修復する機能(ミスマッチ修復機能)が存在するのですが、一部の癌細胞では修復機能が欠損しており、異なる反復回数のマイクロサテライトが増えてしまいます。
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こういった状態を「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High*17)ということなので癌細胞の遺伝子全体で変異が起こりやすくなっています。
変異によって生じたタンパク質は免疫反応のターゲットとなる腫瘍特異抗原を作りやすくします。
その結果、T細胞などの免疫細胞は(MSI-Highの)癌細胞を認識しやすくなっているため、ニボルマブなどの抗PD-1抗体が抗腫瘍効果を発揮すると考えられます。

ちなみに、切除不能の結腸・直腸がん患者のうちMSI-Highを持つ割合は約5%と言われており、標準治療のフッ化ピリミジン系抗がん剤(ゼローダ、ティーエスワンなど)を含む化学療法の有効性が乏しいことが報告されています。

MSI-Highをターゲットとする免疫チェックポイント阻害薬は今回のオプジーボで2剤目です。
同じヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であるキイトルーダ(ペムブロリズマブ)は2018年12月21日により広い範囲の適応として「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」を取得しています。
キイトルーダはMSI-Highが確認されればがん種横断的に使用できます。

免疫チェックポイント阻害薬と食道癌

食道がんに対する適応を有する免疫チェックポイント阻害薬はオプジーボが初めてです。
オプジーボは化学療法群(ドセタキセルまたはパクリタキセル)と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS*18)の有意な延長を示し、死亡リスクを 23%低減しています。(ATTRACTION-3試験:Kato K, et al.: Lancet Oncol. 20(11): 1506-1517, 2019)
日本では、シスプラチンと5-FUの効果がなくなった食道がんの二次治療において明確な生存期間の延長効果を示した薬剤がないため、オプジーボが標準治療になるのではないかと期待されています。

補足:免疫チェックポイント阻害薬の適応

現時点で承認されている免疫チェックポイント阻害薬の適応についてまとめます。
表が画面に入りきらない場合は横にスクロールできます。

作用機序製品名成分名適応
悪性黒色腫非小細胞肺がん小細胞肺がん腎細胞がんホジキンリンパ腫頭頚部がん悪性胸膜中皮腫結腸・直腸がん食道がん尿路上皮がんMSI-High固形がんメルケル細胞がんTN乳がん*19
抗PD-1抗体オプジーボニボルマブヤーボイ併用
単独:術後補助療法
MSI-High結腸・直腸がん
キイトルーダペムブロリズマブ術後補助療法化学療法併用
単剤:PD-L1発現
アキシチニブ併用
抗PD-L1抗体バベンチオアベルマブ
テセントリクアテゾリズマブ単剤:2次治療
化学療法併用:1次治療
進展型
イミフィンジデュルバルマブステージ3
抗CTLA-4抗体ヤーボイイピリムマブ
(オプジーボ併用)
オプジーボ併用

※2020.2.21時点

*1:mammalian Target Of Rapamycin

*2:Programmed cell Death-1

*3:Programmed cell Death-1 Ligand-1

*4:Vascular Endothelial Growth Factor Receptor

*5:Tyrosin Kinase Inhibitor

*6:Follicular Lymphoma

*7:Marginal Zone b-cell Lymphoma

*8:Mucosa Associated Lymphoid Tissue

*9:immunomodulatory drugs

*10:Anaplastic Large Cell Lymphoma

*11:primary cutaneous Anaplastic Large Cell Lymphoma

*12:Anaplastic Lymphoma Kinase

*13:Primary ImmunoDeficiency disease

*14:Secondary ImmunoDeficiency disease

*15:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency

*16:Programmed cell death-1

*17:MicroSatellite Instability-High frequency)」と言います。
MSI-Highが見られるということはミスマッチ修復機能が欠損している(DNAミスマッチ修復機能欠損:dMMR((deficient MisMatch Repair

*18:Overall Survival

*19:トリプルネガティブ乳がん

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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