令和2年2月26日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会再生医療等製品部会が開催されました。
ゾルゲンスマ点滴静注とネピックという2つの製品について審議が行われ、どちらも承認が了承されました。
2020年2月26日の薬食審・再生医療等製品部会
ゾルゲンスマ点滴静注とネピックという2つの製品について審議が行われ、どちらも承認が了承されています。
ゾルゲンスマ点滴静注
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2歳未満で体重2.6kg以上の患者が対象となるようです。
脊髄性筋萎縮症とオナセムノゲン アベパルボベク

オナセムノジーンアベパルボベックは脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療薬です。
アデノ随伴ウイルス9型(AAV9*1)からウイルスDNAを取り除き、SMN1導入遺伝子とプロモーターを導入したものを医薬品としています。
脊髄性筋萎縮症ではSMN1遺伝子に変異が起きており、その結果、運動ニューロンが正常に機能するために必要なSMNタンパク質を十分に作ることができなくなっています。
投与されたオナセムノジーンアベパルボベックは、AAV9の性質により標的細胞に侵入、細胞核にSMN1導入遺伝子を運びます。
その結果、導入されたSMN1からSMNタンパク質が作られるようになり、脊髄性筋萎縮症の症状が改善します。
運動ニューロンは細胞分裂を行わないため、1回の投与で遺伝子導入が行われれば、治療が完了となります。
承認が遅れた理由
ゾルゲンスマ点滴静注は元々、AveXis社が開発を行っていたもので、ノバルティスは2018年に同社を買収し、その権利を手に入れています。
その後、2019年5月に米国で承認されましたが、2019年8月にアベクシス社が動物実験の一部データについて改ざんを行っていたことが明らかになりました。
FDAは安全性や有効性には影響なしと判断して販売を継続しましたが、日本での承認に当たってもこの点が問題になったようです。
先駆け審査指定再生医療等製品を受けた上で、2018年11月に承認申請が行われたにも関わらず、2020年2月の部会まで承認されていないのはこういった事情が影響しているようですね。
結果としては問題はなかったということですが、データの信憑性などを検討するのに時間がかかってしまったということのようです。
超高額薬価
すでに一般のニュースなどでも報じられていますが、アメリカでのゾルゲンスマ点滴静注の薬価は212.5万ドル(1ドル110円換算で約2億3400万円)で、2019年時点で世界一高額な医薬品です。
非常に高額であることは間違いないのですが、現在、脊髄性筋萎縮症に対して使用されているスピンラザ髄注12mg(ヌシネルセンナトリウム、バイオジェン・ジャパン)は乳児期は4ヶ月ごと、それ以降は半年ごとの投与が生涯にわたって必要な薬剤で、その薬価は9,493,024円/バイアル(2019.10月現在)です。
半年ごとと考えても年間約1,900万円の薬剤費となり、13年間投与するとゾルゲンスマ点滴静注の米国薬価を超えてしまいます。
そう考えると、あながち無茶苦茶な薬価ではないのかな、ということになりますね。
ネピック
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角膜上皮幹細胞疲弊症に対する再生医療
角膜上皮幹細胞疲弊症とは、角膜上皮細胞を作り出す角膜上皮幹細胞が失われることで発症する疾患で、角膜の混濁など視力低下を引き起こします。
先天性の原因として、無虹彩症や強膜化角膜など、後天性の原因として、熱傷、スティーブンス・ジョンソン症候群や眼類天疱瘡などが挙げられます。

ネピックによる治療(ジャパン・テイッシュ・エンジニアリングより)
角膜上皮幹細胞が豊富な角膜輪部より患者本人の細胞を採取し、それを培養し、シート状にした後で患者の目に移植する治療方法になります。