【5年間?】処方箋の保存期間とその根拠【3年間?】

皆さんの薬局では処方箋はどのように保管されていますか?

薬局によってそれぞれだと思いますが、「健康保険法に基づく処方箋は3年間、それ以外の法律に基づく処方箋は5年間保管している薬局」と「すべての処方箋を5年間保管している薬局」のどちらかではないでしょうか?

ですが、現在は、令和2年に施行された民法の改正により、すべての処方箋を5年間保存しておくべきとなっています。

いきなり答えが出てしまいましたね。
ということで、この記事では処方箋を5年間保存すべき根拠についてまとめます。

処方箋の保管は基本は3年間だが結果的に5年間

結論から言うと、↑の表題通り、「処方箋の保管は薬剤師法的には3年間ですが、そのほかの法律を考慮すると5年間保管」と言うことになります。

処方箋(調剤録)の保存期間は処方箋に適用される公費負担医療制度によって定められていますが、まず基本となるのが薬剤師法と健康保険法(療養担当規則)です。

薬剤師法と療養担当規則では3年間の保存が定められている

まずは、薬剤師法で規定される処方箋の保存期間についてです。

(処方せんの保存)
第二十七条 薬局開設者は、当該薬局で調剤済みとなつた処方せんを、調剤済みとなつた日から三年間、保存しなければならない。

引用元:薬剤師法 第四章 業務

次に、療養担当規則(健康保険法)で規定される処方箋の保存期間について。

(処方せん等の保存)
第六条 保険薬局は、患者に対する療養の給付に関する処方せん及び調剤録をその完結の日から三年間保存しなければならない。

引用元:保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則

この2つが処方箋(調剤録)を3年間保管する根拠となっています。

民法の改正により請求権が5年間に延長

令和2年4月1日から施行された民法改正ですが、その中で診療報酬の請求権の事項が変更されました。それまでは診療報酬の請求権は3年間だったのですが、民法改正により原則5年間請求可能となりました。
これにより、処方箋は原則5年間保存すべきと言うことになりました。

以下にそのことをまとめている資料を掲載します。

民法で規定される調剤報酬請求権

3.保険医療機関における診療報酬請求権の時効については、民法で3年間とされていたが、令和2年4月1日施行の民法改正により何年になるのか。
3.保険医療機関における診療報酬請求権の時効については、令和2年3月診療分までは3年間令和2年4月診療分からは原則5年間とされました。
なお、その起算日については、診療月の翌月1日とされています。

引用元:請求支払に関するQ&A|社会保険診療報酬支払基金

第3 改正民法及び改正健康保険法等の施行に伴う留意点について
1 診療報酬請求権等の時効期間について
第1の1の改正において、「医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権」に係る3年間の短期消滅時効が廃止されたため、保険医療機関等の診療報酬債権等についても、権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間、権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年間で消滅時効が完成することとなる。
保険医療機関等による診療報酬請求権の消滅時効については、債権者たる保険医療機関等が当該請求権を行使することができることを知っていることが通常であると考えられることから、当該保険医療機関等が診療報酬請求権を行使できることを知らなかったと考えられる特段の事情がない限り、原則として診療月の翌月1日(国民健康保険の場合は翌々々月の1日)から起算して5年間で消滅時効が完成すると解して差し支えない。なお、第1の4の経過措置により、上記取扱いは、改正民法の施行日(令和2年4月1日)以降の診療により発生した診療報酬請求権から適用される。

(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

引用元:民法の一部を改正する法律等の施行について(令和2年5月8日)

公費負担医療制度に関連する法律で5年間保存が定められているもの

民法改正により、レセプト請求を行うものは5年間保存という結論が出てしまっているので、そのほかの法律はどうでもいいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、復習もかねて処方箋(調剤録)の5年間保存を定めている公費負担医療制度とその法律をまとめておきます。

生活保護法で規定される処方箋の保存期間

(帳簿)
第九条 指定医療機関は、診療及び診療報酬の請求に関する帳簿及び書類を完結の日から五年間保存しなければならない。
(薬局に関する特例)
第十二条 指定医療機関である薬局にあつては、第五条の規定は適用せず、第八条中「診療録」とあるのは「調剤録」と読み替え適用するものとする。

引用元:指定医療機関医療担当規程(生活保護法)

障害者総合支援法(旧 障害者自立支援法)で規定される処方箋の保存期間

(帳簿)
第八条 指定自立支援医療機関は、診療及び診療報酬の請求に関する帳簿及びその他の物件をその完結の日から五年間保存しなければならない。
(薬局に関する特例)
第十一条 指定自立支援医療機関である薬局にあっては、第三条第二項及び第五条の規定は適用せず、第七条中「診療録」とあるのは「調剤録」と読み替えて適用する。

引用元:指定自立支援医療機関(育成医療・更生医療)療養担当規程

児童福祉法で規定される処方箋の保存期間

(帳簿)
第八条 指定小児慢性特定疾病医療機関は、診療及び診療報酬の請求に関する帳簿及びその他の物件をその完結の日から五年間保存しなければならない。
第十一条 指定小児慢性特定疾病医療機関である薬局にあっては、第五条の規定は適用せず、第七条中「診療録」とあるのは「調剤録」と読み替えて適用する。

引用元:指定小児慢性特定疾病医療機関療養担当規程

難病法で規定される処方箋の保存期間

(帳簿)
第六条 指定医療機関は、診療及び診療報酬の請求に関する帳簿及びその他の物件をその完結の日から五年間保存しなければならない。
(薬局に関する特例)
第九条 指定医療機関である薬局にあっては、第五条中「診療録」とあるのは「調剤録」と読み替えて適用する。

引用元:指定医療機関療養担当規程(難病)

感染症法(旧 結核予防法)で規定される処方箋の保存期間

(帳簿の保存)
第十一条 感染症指定医療機関は、診療及び診療報酬の請求に関する帳簿及び書類をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、診療録にあっては、その完結の日から五年間とする。
(薬局に関する特例)
第十三条 結核指定医療機関である薬局にあっては、第二条の三及び第五条の二の規定は適用せず、第十条中「診療録」とあるのは「調剤録」と読み替えて適用するものとする。

引用元:感染症指定医療機関医療担当規程

 

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