2024年元日に令和6年能登半島地震が発生しました。
被災された皆さまには心よりお見舞い申し上げるとともに、一刻も早い復旧、復興をお祈り申し上げます
発生と同時に様々な通知が公開されています。
この記事では令和6年能登半島地震に伴う調剤に関する情報をまとめたいと思います。
【1月6日更新】厚生労働省が各種通知・事務連絡をまとめたページを公開しています。
厚生労働省 – 通知・事務連絡等(石川県能登地方を震源とする地震)
更新等も早いと思うので↑のサイトを参考にしてもらうのが一番確実と思います!
保険証関連
令和6年能登半島地震の影響で、被保険者証や公費負担医療受給者証等を紛失したり、手元に入手するのが難しい場合でも、保険診療を受けることが可能になる対応が取られています。
被災地やその周辺はもちろんですが、そうでなくても、遠方の親族の元で生活する等の理由で、被災者の方々が薬局を訪れる可能性は十分あるため、対応方法をすぐ調べるようになっておくべきです。
災害の被災者に係る被保険者証等の提示等について(事務連絡 令和6年1月1日)
https://www.jshp.or.jp/content/2024/0103-1.pdf(令和6年能登半島地震関連情報|日本病院薬剤師会)
被災に伴い保険証を紛失、もしくは手元にない場合の対応についての通知です。
令和6年能登半島地震にかかる災害の被災に伴い、被保険者が被保険者証等を紛失あるいは家庭に残したまま避難していることにより、保険医療機関等に提示できない場合等も考えられることから、この場合においては、氏名、生年月日、連絡先(電話番号等)、被用者保険の被保険者にあっては事業所名、国民健康保険又は後期高齢者医療制度の被保険者にあっては住所(国民健康保険組合の被保険者については、これらに加えて、組合名)を申し立てることにより、受診できる取扱いとするので、その実施及び関係者に対する周知について、遺漏なきを期されたい。
災害の被災者に係る公費負担医療の取扱いについて(事務連絡 令和6年1月1日)
公費医療についても同様の対応が取られています。
そのような場合においても、被災者の保護及び医療の確保に万全を期す観点から、各制度について、当面別紙1のとおり、被爆者健康手帳や患者票等がなくとも、①別紙の各制度の対象者であることを申し出、②氏名、③生年月日、④住所等を確認することにより受診できるものとし、緊急の場合は、指定医療機関以外の医療機関でも受診できる取扱いといたします。また、当該被災者に係る公費負担医療の請求等の取扱いについては、別紙2のとおり取り扱われるようお願いします。
リンク先を見てもらうと各公費別の請求方法が詳しく記載されています。
そのほか介護保険等の取り扱いについても通知がでています。(最下部の参考資料、全国保険医団体連合会にリンクあり)
薬機法・調剤報酬関連
被災地に所在する薬局、被災した薬局等に対する薬機法の例外と調剤報酬上の取り扱いについて通知がだされています。
災害に伴う医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等に係る取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/content/001185871.pdf(厚生労働省)
かなり長くなるため、重要な部分のみを簡単にまとめます。
必ずリンク先の本文を確認の上、対応を行なってください。
以下(2は除く)は「令和6年能登半島地震による災害により被災」の影響を受けた場合にのみ適用される
1 仮説店舗での調剤等
当該薬局で業務を行うことが困難な場合、復旧の見込みがあれば、届出を提出することで仮説店舗で調剤等を行うことが可能(届出はリンク先)
2 管理薬剤師に関する届出の省略
・薬局等の管理者が令和6年能登半島地震による災害の被災地に赴いて調剤等に従事する場合に都道府県知事等による兼務許可は不要(記録が必要)
・上記の場合に薬局は管理者の代行を立てて対応することが可能、管理者を変更する場合は変更届は省略可能
3 営業時間・勤務時間の変更届の省略
一時的に薬局又は医薬品の販売業の営業時間を変更する場合や薬事に関する実務に従事する薬剤師又は登録販売者の氏名又は週当たりの勤務時間数を変更する場合は、変更の届出を省略可能(記録が必要)
4 処方箋医薬品の販売(零売)
被災地の患者に対する処方箋医薬品の取扱いについては「正当な理由」に該当し、医師等の受診が困難な場合、又は医師等からの処方箋の交付が困難な場合において、患者に対し、必要な処方箋医薬品を販売又は授与することが可能
5 医薬品の分譲範囲の拡大
大規模な災害で通常の医薬品等の供給ルートに支障を来し、需給が逼迫する場合に、病院、診療所、薬局又は地方公共団体の間で医薬品等を融通することは、差し支えない
6 医療用麻薬の交付
麻薬処方箋の交付が困難な場合、麻薬小売業者等から麻薬施用者である医師へ症状等を連絡し、医療用麻薬施用の指示を確認することで、必要な医療用麻薬交付することが可能
7 覚醒剤原料の交付
処方箋の交付が困難な場合、覚醒剤原料取扱者である薬局等から医師へ症状等を連絡し、覚醒剤原料施用の指示を確認することで、必要な覚醒剤原料を交付することが可能
8 向精神薬の交付
処方箋の交付が困難な場合において、向精神薬小売業者等から医師へ症状等を連絡し、向精神薬の施用の指示が確認できる場合のほか、医師等からの事前の包括的な施用の指示(例えば、被災者の患者の持参する薬袋等から常用する向精神薬の薬剤名及び用法・用量が確認できる場合に、当該向精神薬を必要な限度で提供することについて事前に医師等に了承を得ている場合等)が確認できる場合において、必要な向精神薬を施用のため交付することが可能
9 交付した医療用麻薬等の記録
医療用麻薬、覚醒剤原料、向精神薬について記録し、連絡を取った医師等に報告する
10 調剤場所
被災地において、薬剤師が薬局で調剤できない場合、薬局以外の地方自治体の設置する避難所内の調剤所等で、薬剤師が販売又は授与の目的で調剤することが可能
参考:令和6年能登半島地震による災害に伴う医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等に係る取扱いについて(事務連絡 令和6年1月2日)
これらについては基本的に被災地のみに該当する内容です。
あくまでも例外的な対応となるので特に記載されていない場合もメモ書き程度でも記録を残しておくほうが望ましいのかもしれません。
保険診療関係等及び診療報酬の取扱いについて
令和6年能登半島地震による被災に伴う保険診療関係等及び診療報酬の取扱いについて詳しくまとめられています。
1 保険医療機関等の建物が全半壊した場合の取扱い
保険医療機関である医療機関又は保険薬局である薬局の建物が全半壊等し、これに代替する仮設の建物等(以下「仮設医療機関等」という。)において診療又は調剤等を行う場合、当該仮設医療機関等と全半壊等した保険医療機関等との間に、場所的近接性及び診療体制等から保険医療機関等としての継続性が認められる場合については、当該診療等を保険診療又は保険調剤として取り扱って差し支えないこと。2.保険調剤の取扱い
(1)被災地の保険薬局において、次に掲げる処方箋(通常の処方箋様式によらない、医師の指示を記した文書等を含む)を受け付けた場合においては、それぞれに掲げる事項を確認した上で、保険調剤として取り扱って差し支えないこと。
① 保険者番号、被保険者証・被保険者手帳の記号・番号の記載がない場合
被災により、被保険者証を保険医療機関に提示できなかった場合であること。この場合、保険薬局において、加入の保険及び被用者保険の被保険者等御中にあっては事業所名、国民健康保険の被保険者及び後期高齢者医療制度の被保険者にあっては住所を確認するとともに、調剤録に記載しておくこと。
② 保険医療機関の記載がない場合
処方箋の交付を受けた場所を患者に確認すること。なお、処方箋の交付を受けた場所が、救護所、避難所救護センターその他 保険医療機関以外の場所であることが明らかな場合は、保険調剤として取り扱えないものであること。((3)参照)
(2)患者が処方箋を持参せずに調剤を求めてきた場合については、事後的に処方箋が発行されることを条件として、以下の要件のいずれにも該当する場合には、保険調剤として取り扱って差し支えない。
ア 交通の遮断、近隣の医療機関の診療状況等客観的にやむをえない理由により、医師の診療を受けることができないものと認められること。
イ 主治医(主治医と連絡が取れない場合には他の医師)との電話やメモ等により医師からの処方内容が確認できること。
また、医療機関との連絡が取れないときには、服薬中の薬剤を滅失等した被災者であって、処方内容が安定した慢性疾患に係るものであることが、薬歴、お薬手帳、包装等により明らかな場合には、認めることとするが、事後的に医師に処方内容を確認するものとすること。
(3)災害救助法に基づく医療の一環として、救護所、避難所救護センター等で処方箋の交付を受けたと認められる場合には、当該調剤に係る報酬は救護所の設置主体である県市町に請求するものであること。ただし、災害救助法が適用されている期間内において処方箋が交付され、調剤されたものであること。5.診療報酬の請求等の取扱いについて
カルテ及びレセプトコンピュータの全部又は一部が汚損又は滅失し、診療報酬を請求できない場合の概算請求及び保険者等が特定できない場合の診療報酬請求書の記載方法等については、追って連絡する予定であること。
また、別紙にはQ&Aが掲載されています。
個人的に注目した部分のみ引用します。
Ⅰ.被災地(災害救助法の適用対象市町村をいう。以下同じ。)
問1 日本赤十字社の救護班、DMAT(災害派遣医療チーム)やJMAT(日本医師会による災害医療チーム)などボランティアにより避難所や救護所等で行われている診療について、保険診療として取り扱うことは可能か。また、それら診療について一部負担金を患者から徴取することは可能か。
(答)都道府県知事の要請に基づき、日本赤十字社の救護班やDMAT、JMATなど、ボランティアが避難所等で行った医療に係る経費については、
① 薬剤、治療材料等の実費
② 救助のための輸送費や日当・旅費等の実費
などを災害救助法の補助対象としており、これを保険診療として取り扱うことはできない。したがって保険診療としての一部負担金を患者に求めることはできない。問2 被災地の保険医療機関の医師等が、各避難所等を自発的に巡回し、診療を行った場合、保険診療として取り扱うのか。
(答)保険診療として取り扱うことはできない。(災害救助法の適用となる医療については、県市町村に費用を請求する。なお、当該費用の請求方法については、県市町村に確認されたい。)問3 被災地の保険医療機関の医師等が各避難所等を自発的に巡回し診療を行っている際に、訪れた避難所等において偶然、普段外来にて診療している患者の診察、処方等を行った場合は、保険診療として取り扱うのか。
(答)保険診療として取り扱うことはできない。(災害救助法の適用となる医療については、県市町に費用を請求する。なお、当該費用の請求方法については、県市町村に確認されたい。)問4 避難所や救護所等において診察を受けて発行された処方箋による調剤は、どのような取扱いになるか。
(答)保険調剤として取り扱うことはできない。(災害救助法の適用となる医療については、県市町村に費用を請求する。なお、当該費用の請求方法については、県市町村に確認されたい。)問5 保険診療による処方箋とはどのように区別したらよいか。
(答)災害により避難所や救護所等において発行された処方箋については、当該処方箋に「 災 」(資料中は◯の中に災)と記されている場合もあるが、災害救助法の適用が明らかな場合は保険診療としては取り扱われないので、処方箋の交付を受けた場所を患者に確認するなど留意されたい。問15 問6、7及び14に関し、保険薬剤師が避難所又は居宅を訪問し、薬学的管理及び指導を行った場合、在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定できるか。
(答)医師の指示に基づき実施した場合は算定できる。ただし、疾病、傷病から通院による療養が可能と判断される患者に対しては算定できない。なお、同じ避難所等に居住する複数人に対して同一日に在宅患者訪問薬剤管理指導を行う場合は「同一建物居住者の場合」の取扱いとするが、同一世帯の複数の患者が避難所等に同居している場合には、1 人目は「同一建物居住者以外の場合」を算定し、2 人目以降の患者については、「同一建物居住者の場合」を算定する。
DMATやJMATが行った診療、医師等により避難所で行われた診療は保険診療ではなく、災害救助法の適用となる
ことがポイントと思います。
オンライン資格確認等システムにおける「緊急時医療情報・資格確認機能」のアクティブ化
令和6年能登半島地震にかかる対応に伴い、以下対象地域に所在する医療機関・薬局の災害時医療情報閲覧機能が開放されています。
令和6年能登半島地震にかかる対応について(医療機関等向けポータルサイト)
医療機関等向けポータルサイトに「緊急時医療情報・資格確認機能」のアクティブ化についてのページが開設されています。
https://www.iryohokenjyoho-portalsite.jp/news/6-1.html(オンライン資格確認・医療情報化支援基金関係 医療機関等向けポータルサイト)
・対象地域:
【新潟県】新潟市、長岡市、三条市、柏崎市、加茂市、見附市、燕市、糸魚川市、妙高市、五泉市、上越市、佐渡市、南魚沼市、三島郡出雲崎町
【富山県】富山市、高岡市、氷見市、滑川市、黒部市、砺波市、小矢部市、南砺市、射水市、中新川郡舟橋村、中新川郡上市町、中新川郡立山町、下新川郡朝日町
【石川県】金沢市、七尾市、小松市、輪島市、珠洲市、加賀市、羽咋市、かほく市、白山市、能美市、河北郡津幡町、河北郡内灘町、羽咋郡志賀町、羽咋郡宝達志水町、鹿島郡中能登町、鳳珠郡穴水町、鳳珠郡能登町
【福井県】福井市、あわら市、坂井市
・開放期間:1月1日~1月7日(予定)
・災害時医療情報の閲覧について
https://www.iryohokenjyoho-portalsite.jp/download/docs/saigaijietsuran.pdf
・医療機関等向けオンライン資格確認等システム操作マニュアル(災害時医療情報閲覧編)
https://www.iryohokenjyoho-portalsite.jp/download/docs/manual_saigai.pdf
・医療情報を特例的に閲覧する場合に留意すべき点
https://www.iryohokenjyoho-portalsite.jp/news/docs/iryojyouhou_tokurei.pdf
通知等(参考)
厚労省からも通知がだされています。
オンライン資格確認等システムにおける「緊急時医療情報・資格確認機能」をアクティブ化する医療機関・薬局の範囲・期間について(事務連絡 令和6年1月1日)
オンライン資格確認等システムにおける「緊急時医療情報・資格確認機能」をアクティブ化する医療機関・薬局の範囲・期間について(その2)(事務連絡 令和6年1月1日)
参考資料
参考:令和6年能登半島地震による被災者の医療(全国保険医団体連合会 )
全国保険医団体連合会が公開している文書で、令和6年1月4日現在で判明している令和6年能登半島地震に関する、被災者の診療、窓口対応、診療報酬等の取扱いをまとめたものです。
(調剤報酬に関する部分は省略されていますが・・・)
また、患者さん向けの掲示もあるのでリンクを掲載しておきます。
能登半島地震被災者のみなさまへ(能登半島地震 厚労省 医療機関等向け事務通知|全国保険医団体連合会)
令和6年能登半島地震による被災者の医療(能登半島地震 厚労省 医療機関等向け事務通知|全国保険医団体連合会)
参考資料へのリンク
- 厚生労働省 – 通知・事務連絡等(石川県能登地方を震源とする地震)
- 内閣府 – 令和6年能登半島地震による被害状況等について
- 厚生労働省 – 石川県能登地方を震源とする地震による被害状況等について
- 令和6年能登半島地震による災害に伴う医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等に係る取扱いについて(事務連絡 令和6年1月2日)
- 【お知らせ】令和6年能登半島地震にかかる対応について(2024年1月1日)|オンライン資格確認・医療情報化支援基金関係 医療機関等向けポータルサイト
- 令和6年能登半島地震にかかる災害の被災者に係る被保険者証等の提示等について(令和6年1月1日付事務連絡)
- 令和6年能登地震の被災に伴う保険診療関係等の取扱い及び診療報酬の取扱いについて(令和6年1月2日付事務連絡)
- 令和6年能登半島地震による災害に伴う医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等に係る取扱いについて(令和6年1月2日付事務連絡)
- オンライン資格確認等システムにおける「緊急時医療情報・資格確認機能」をアクティブ化する医療機関・薬局の範囲・期間について(令和6年1月1日付事務連絡)
- オンライン資格確認等システムにおける「緊急時医療情報・資格確認機能」をアクティブ化する医療機関・薬局の範囲・期間について(その2)(令和6年1月1日付事務連絡)
全国保険医団体連合会 – 能登半島地震 厚労省 医療機関等向け事務通知
- 能登半島地震被災者のみなさまへ
- 令和6年能登半島地震による被災者の医療
- 令和6年能登半島地震による災害に係る介護報酬等の取扱いについて
- 令和6年能登半島地震にかかる災害の被災者に係る公費負担医療の取扱いについて
- 令和6年能登半島地震にかかる災害の被災者に係る被保険者証等の提示等について
- 令和6年能登半島地震にかかる災害の被災者に係る被保険者証等の提示等について別添
- 令和6年能登半島地震の被災に伴う保険診療関係等及び診療報酬の取扱いについて
- 令和6年能登半島地震に伴う災害による後期高齢者医療制度の一部負担金及び保険料の取扱いについて
- 災害により被災した被保険者等に係る一部負担金等及び健康保険料の取扱い等について
- 国民健康保険料等の取り扱いについて
- オンライン資格確認等システムにおける「緊急時医療情報・資格確認機能」をアクティブ化する医療機関・薬局の範囲・期間について
- オンライン資格確認等システムにおける「緊急時医療情報・資格確認機能」をアクティブ化する医療機関・薬局の範囲・期間について(その2)