2019年8月22日付で適応追加などの一部変更が承認されています。
今回承認されたのは、2019年8月1日の薬食審・医薬品第一部会での報告品目、8月2日の薬食審・医薬品第二部会で承認了承されたテセントリクの「進展型小細胞肺がん」と報告品目です。
(テリボン 皮下注28.2μgオートインジェクターとアレジオンLX点眼液0.1%の製造承認はまだみたいです)
今回の一変承認の内容について簡単にまとめます。
令和元年8月22日付 一変承認 一覧
今回承認された内容は以下の通りです。
- テセントリク点滴静注 適応追加「進展型小細胞肺がん」(2019年8月2日 薬食審・医薬品第二部会 審議品目)
- 献血ベニロン-I 静注用 適応追加「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の筋力低下の改善」(2019年8月1日 薬食審・医薬品第一部会 報告品目)
- アフィニトール 適応追加(拡大)「結節性硬化症」(2019年8月1日 薬食審・医薬品第一部会 報告品目)
- マヴィレット配合錠 小児用量追加(2019年8月2日 薬食審・医薬品第二部会 報告品目)
- ロンサーフ配合錠 適応追加「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃がん」(2019年8月2日 薬食審・医薬品第二部会 報告品目)
- ダラザレックス点滴静注 適応追加「多発性骨髄腫」(2019年8月2日 薬食審・医薬品第二部会 報告品目)
- ベルケイド注射用3mg ダラザレックスの適応追加に伴う用法・用量追加(2019年8月2日 薬食審・医薬品第二部会 報告品目)
テセントリク点滴静注:進展型小細胞肺がん
テセントリク(アテゾリズマブ)は免疫チェックポイント阻害薬の一種で抗PD-L1抗体に分類されます。
「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」のみだった適応に「進展型小細胞肺がん」が加わりました。
現在、小細胞肺がんに対する適応を取得している免疫チェックポイント阻害剤は存在しません。
非小細胞肺がんについては、アテゾリズマブ(テセントリク)以外にも、ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、デュルバルマブ(イミフィンジ)が適応を有しています。
肺がんのうち20%を占めると言われている小細胞肺がんは進展型の割合が60〜70%と非常に高く、新たに免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療が可能となることが期待されています。
- 最適使用推進ガイドライン アテゾリズマブ(遺伝子組換え)(販売名:テセントリク点滴静注 1200mg)〜小細胞肺癌〜(中医協 総-5-1 元.8.28)
- 最適使用推進GLが策定された医薬品の保険適用上の留意事項について(中医協 総-5-2 元.8.28)
- 抗PD-L1抗体「テセントリク」進展型小細胞肺癌に対する適応拡大のお知らせ
- テセントリク点滴静注1200mg 効能・効果 用法・用量追加のご案内
- テセントリク点滴静注1200mg 使用上の注意等改訂のお知らせ
テセントリク点滴静注の添付文書改訂内容
下線部
「進展型小細胞肺がん」の適応が追加になります。
【効能・効果】
〇切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
〇進展型小細胞肺癌
引用元:テセントリク点滴静注1200mg 添付文書
それに伴い、下線部の通り、効能又は効果に関連する使用上の注意、用法及び用量、用法及び用量に関連する使用上の注意についても文書が追加されています。
【効能又は効果に関連する使用上の注意】
切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
(1)〜(3) 略
進展型小細胞肺癌
臨床試験に組み入れられた患者の進展型の基準等について、【臨床成績】の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
【用法及び用量】
進展型小細胞肺癌患者の場合
カルボプラチン及びエトポシドとの併用において、通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを60分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。
【用法及び用量に関連する使用上の注意】
進展型小細胞肺癌において、カルボプラチン及びエトポシドとの併用に際しては【臨床成績】の項の内容、特に、併用する抗悪性腫瘍剤の用法・用量を十分に理解した上で投与すること。
引用元:テセントリク点滴静注1200mg 添付文書
献血ベニロン-I 静注用:慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の筋力低下の改善
効能・効果に「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の筋力低下の改善」が追加されました。
- 医薬品名:
- 成分名:乾燥スルホ化人免疫グロブリン注射用
- 申請者:KMバイオロジクス
- 新規 効能・効果:慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の筋力低下の改善
献血ベニロン-I 静注用の添付文書改訂内容
下線部
「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の筋力低下の改善」の適応が追加になります。
- 低又は無ガンマグロブリン血症
- 重症感染症における抗生物質との併用
- 特発性血小板減少性紫斑病(他剤が無効で著明な出血傾向があり、外科的処 置又は出産等一時的止血管理を必要とする場合)
- 川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)
- ギラン・バレー症候群(急性増悪期で歩行困難な重症例)
- 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症における神経障害の改善(ステロイド剤が効果不十分な場合に限る)
- 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の筋力低下の改善
引用元:献血ベニロン−I静注用 添付文書
それに伴い用法・用量と用法・用量に関連する使用上の注意についても改訂が行われています。
追加部分のみを引用します。
【用法・用量】
(7)慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の筋力低下の改善
通常、1日にスルホ化人免疫グロブリンG 400mg(8mL)/kg体重を5日間連日点滴静注する。なお、年齢及び症状に応じて適宜減量する。<用法・用量に関連する使用上の注意>
(5)慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の筋力低下の治療において、本剤投与開始4週間は追加投与を行わないこと(4週間以内に追加投与した場合の有効性及び安全性は検討されていない)。
引用元:献血ベニロン−I静注用 添付文書
アフィニトール:結節性硬化症
アフィニトール錠ならびにアフィニトール分散錠の適応が拡大(結節性硬化症)されました。
- 医薬品名:
- 成分名:エベロリムス
- 申請者:ノバルティスファーマ
- 新規 効能・効果:結節性硬化症
- ノバルティス、結節性硬化症の治療薬として、mTOR阻害剤 「アフィニトール®」の適応拡大承認を取得
- 「アフィニトール錠2.5mg/錠5mg」、「アフィニトール分散錠2mg/分散錠3mg」の<使用上の注意改訂のお知らせ>を更新しました。
アフィニトール錠の添付文書改訂内容
「4.結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫」「5.結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫」が下線部の通り「4. 結節性硬化症」に変更(適応拡大)されました。
【効能又は効果】
- 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
- 神経内分泌腫瘍
- 手術不能又は再発乳癌
- 結節性硬化症
引用元:アフィニトール錠 添付文書
それに伴い下線部の通り用法・用量が追加・変更とになりました。
結節性硬化症の場合
成人の結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の場合
通常、エベロリムスとして1日1回10mgを経口投与する。なお、患者の状態やトラフ濃度により適宜増減する。
上記以外の場合
通常、エベロリムスとして3.0mg/m2を1日1回経口投与する。なお、患者の状態やトラフ濃度により適宜増減する。
引用元:アフィニトール錠 添付文書
アフィニトール分散錠の添付文書改訂内容
下線部
の通り「結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫」が「結節性硬化症」に変更(適応拡大)されました。
【効能又は効果】
結節性硬化症
引用元:アフィニトール分散錠 添付文書
それに伴い下線部の通り用法・用量が追加・変更とになりました。
【用法及び用量】
成人の結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の場合
通常、エベロリムスとして10mgを1日1回、用時、水に分散して経口投与する。なお、患者の状態やトラフ濃度により適宜増減する。
上記以外の場合
通常、エベロリムスとして3.0mg/m2を1日1回、用時、水に分散して経口投与する。なお、患者の状態やトラフ濃度により適宜増減する。
引用元:アフィニトール分散錠 添付文書
マヴィレット配合錠:小児用量追加
成人のみだった用法・用量の範囲が12歳以上の小児まで拡大されました。
12歳以上という縛りはありますが、小児に適応をもつ初めてのDAA*1(直接作用型抗ウイルス剤)になります。
これまではインターフェロン+リバビリン併用療法しか選択肢がなかったため、DAA療法が可能になる15歳まで治療を待つケースがありましたが、これでより早い段階で治療開始が可能になります。
インターフェロン+リバビリン併用療法と比較して、DAA療法の方が有効性、安全性ともに高いことは十分知られているので早い段階で治療開始が可能になることは嬉しいですね。
マヴィレット配合錠の添付文書改訂内容
下線部
の通り、用法・用量が成人のみから12歳以上の小児まで拡大されました。
用法・用量
- セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎の場合
通常、成人及び12歳以上の小児には1回3錠(グレカプレビルとして300mg及びピブレンタスビルとして120mg)を1日1回、食後に経口投与する。投与期間は8週間とする。なお、C型慢性肝炎に対する前治療歴に応じて投与期間は12週間とすることができる。- セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のC型代償性肝硬変の場合
- セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しないC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変の場合
通常、成人及び12歳以上の小児には1回3錠(グレカプレビルとして300mg及びピブレンタスビルとして120mg)を1日1回、食後に経口投与する。投与期間は12週間とする。引用元:マヴィレット配合錠 添付文書
ロンサーフ配合錠:がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃がん
ロンサーフ配合錠(トリフルリジン/チピラシル塩酸塩)は経口ヌクレオシド系抗悪性腫瘍剤であるトリフルリジンとトリフルリジンの分解に関与するチミジンホスホリラーゼを阻害するチピラシル塩酸塩の配合剤です。
「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」のみだった適応に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃がん」が追加となりました。
- 医薬品名:
- 成分名:トリフルリジン/チピラシル塩酸塩
- 申請者:大鵬薬品
- 新規 効能・効果:がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃がん
ロンサーフ配合錠の添付文書改訂内容
下線部
の通り、効能・効果に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌」が追加されました。
【効能・効果】
治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌
引用元:ロンサーフ配合錠 添付文書
ダラザレックス点滴静注:多発性骨髄腫
ダラザレックス(ダラツムマブ)は、CD38を標的とするモノクローナル抗体(ヒト抗CD38モノクローナル抗体)です。
ダラザレックスの適応から「再発又は難治性の」が外れることで、多発性骨髄腫の一次治療(ファーストライン)で使用が可能になりました。
再発又は難治性ではない多発性骨髄腫に対しては、ダラザレックス(ダラツムマブ)とベルケイド(ボルテゾミブ)、アルケラン(メルファラン)及びプレドニゾロンとの併用療法(DVMP療法)で治療が行われます。」
- 医薬品名:
- 成分名:ダラツムマブ(遺伝子組換え)
- 申請者:ヤンセンファーマ
- 効能・効果の拡大:「再発又は難治性の多発性骨髄腫」→「多発性骨髄腫」
- 用法・用量の変更:ベルケイドとの併用の追加
ダラザレックス点滴静注の添付文書改訂内容
下線部の通り、適応が「再発又は難治性の多発性骨髄腫」から「多発性骨髄腫」に拡大ました。
それに伴い、下線部の通り、用法・用量も変更されています。
【効能・効果】
多発性骨髄腫
【用法・用量】
通常、成人にはダラツムマブ(遺伝子組換え)として、1回16mg/kgを以下の投与間隔で点滴静注する。
ボルテゾミブ、メルファラン及びプレドニゾロン併用の場合:
1週間間隔(1〜6週目)、3週間間隔(7〜54週目)及び4週間間隔(55週目以降)
レナリドミド及びデキサメタゾン併用の場合(再発又は難治性の場合に限る):
1週間間隔(1〜8週目)、2週間間隔(9〜24週目)及び4週間間隔(25週目以降)
ボルテゾミブ及びデキサメタゾン併用の場合(再発又は難治性の場合に限る):
1週間間隔(1〜9週目)、3週間間隔(10〜24週目)及び4週間間隔(25週目以降)
引用元:ダラザレックス点滴静注 添付文書
ベルケイド注射用3mg:用法・用量の追加
ベルケイド(ボルテゾミブ)はプロテアソーム阻害薬です。
細胞内の蛋白質分解酵素複合体であるプロテアソームに結合し、キモトリプシン様活性を不可逆的かつ選択的に阻害することでがん細胞のアポトーシスを誘導します。
ダラザレックス点滴静注の適応拡大に伴い、再発又は難治性ではない多発性骨髄腫との併用療法に関する用法・用量が追加されました。
ベルケイド注射用3mgの添付文書改訂内容
多発性骨髄腫に関する用法・用量が下線部の通り一部変更となっています。
【用 法・用 量】
多発性骨髄腫
通常、成人に1日1回、ボルテゾミブとして1.3mg/m2(体表面積)を以下のA法又はB法で静脈内投与又は皮下投与する。本剤は最低72時間空けて投与すること。
A法:
他の抗悪性腫瘍剤との併用において、週2回、2週間(1、4、8、11日目)投与した後、10日間休薬(12〜21日目)する。この3週間を1サイクルとし、2又は8サイクルまで投与を繰り返す。3又は9サイクル以降は、週1回、2週間(1、8日目)投与し、13日間休薬(9〜21日目)する。この3週間を1サイクルとし、18サイクルまで投与を繰り返す。週1回投与への移行時期は併用する抗悪性腫瘍剤を考慮して選択すること。
B法(再発又は難治性の場合に限る):
週2回、2週間(1、4、8、11日目)投与した後、10日間休薬(12〜21日目)する。この3週間を1サイクルとし、投与を繰り返す。
8サイクルを超えて継続投与する場合には上記の用法・用量で投与を継続するか、又は維持療法として週1回、4週間(1、8、15、22日目)投与した後、13日間休薬(23〜35日目)する。この5週間を1サイクルとし、投与を繰り返す。
引用元:ベルケイド注射用3mg 添付文書
まとめ・雑感
個人的に驚いたのはテセントリクとマヴィレットです。
抗PD-L1抗体であるテセントリクに「進展型小細胞肺がん」の適応が追加されたことで、ついに小細胞肺がんに対する適応を持つ免疫チェックポイント阻害剤が登場することになりました。
また、マヴィレットに小児用量がついたことで、ついに小児のC型肝炎に対してもIFNフリーのDAA療法を行うことが可能になりました。
12歳以上に限られますが、副作用の少なさ、ウイルス学的著効(SVR*2)率の高さからも大きな選択肢になります。