2019年8月23日に厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会が開催され、新規ニューキノロン薬ラスビック錠などの承認が了承されました。
この記事を作成している時点では承認が了承された段階で、正式には承認されていません。
令和元年9月20日付で正式に承認され、薬価収載・発売待ちです。
2019年8月23日の薬食審・医薬品第二部会
今回審議が行われたのは新薬3品目の製造承認と1品目の適応追加です。
審議品目
- ラスビック錠(キノロン系抗菌薬)
- イスパロクト静注用(半減期延長型血液凝固第Ⅷ因子製剤)
- ベネクレクスタ錠(慢性リンパ性白血病)
- オテズラ錠の適応追加(ベーチェット病による口腔潰瘍)
全て了承されています。
また、5製品の一部変更について、報告品目として提出されました。
報告品目
- テセントリク点滴静注840mg(適応追加・新用量・新規格)
- アブラキサン点滴静注100mg(テセントリクの適応追加に伴う用法・用量)
- ベバシズマブBS点滴静注用「第一三共」(アバスチンBS)
- アービタックス注射液100mg(適応変更)
- リツキシマブBS点滴静注「ファイザー」(リツキサンBS)
- ベンリスタ点滴静注用(小児用量)
審議品目
まずは審議を受けた4品目についてまとめます。
ラスビック錠
ラスビック錠
杏林製薬が創薬したフルオロキノロン系抗菌薬(ニューキノロン系抗菌薬)です。
ラスビック(ラスクフロキサシン)の特徴は高い肺への組織選択性です。
グレースビット(シタフロキサシン)以来の経口キノロンになるのか・・・。
え?グレースビットって2007年・・・、もう10年も経ったのか・・・。
ショック!!
イスパロクト静注用
イスパロクト静注用
半減期延長型血液凝固第8因子製剤です。
現在発売されている半減期延長型の第Ⅷ因子製剤は以下の4種類があります。
- アディノベイト静注用(ルリオクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)):週2回
- イロクテイト静注用(エフラロクトコグ アルファ(遺伝子組換え)):投与間隔3〜5日
- エイフスチラ静注用(ロノクトコグ アルファ(遺伝子組換え)):週2回または週3回
- ジビイ静注用(一般名:ダモクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)):週1〜2回
イスパロクトはノボエイト(ツロクトコグ アルファ)をペグ化して半減期を延長させたものになります。
ベネクレクスタ錠
ベネクレクスタ錠
選択的BCL-2阻害薬です。
難治性の慢性リンパ性白血病(CLL*1)で高頻度に見られる抗アポトーシス・タンパク質であるBCL-2タンパクを標的とする初の分子標的薬です。
オテズラ錠:局所療法で効果不十分なベーチェット病による口腔潰瘍
オテズラ錠
cAMPに特異的な経口ホスホジエステラーゼ4(PDE4*2)阻害薬、現在は尋常性乾癬と関節症性乾癬の適応で使用されている。
報告品目
PMDA*3(医薬品医療機器総合機構)の審査段階で部会での審議を行わず報告のみでよいと判断されたものです。
テセントリク点滴静注:新剤形、乳がん適応の追加、用法・用量の追加
テセントリク点滴静注
- 新剤形:テセントリク点滴静注840mg(既存 テセントリク点滴静注1200mg)
(添付文書・IF・RMP・適正使用ガイド(乳癌)) - 有効成分:アテゾリズマブ(遺伝子組換え)
- 申請者:中外製薬
- 追加される効能・効果:PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん
- 既存の効能・効果(1200mg):切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、進展型小細胞肺癌
- 追加される用法・用量:パクリタキセル(アルブミン懸濁型)との併用において、通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回840mgを60分かけて2週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。
- 承認:2019年9月20日
先日(2019年8月22日付)、「進展型小細胞肺がん」の適応を取得したばかりのテセントリク(アテゾリズマブ)にまた新たな適応(PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん)が追加予定です。
エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体・HER2が腫瘍細胞に発現していない、いわゆるトリプルネガティブ(TN*4)乳がんに対する初の治療薬になります。
テセントリク(アテゾリズマブ(遺伝子組換え))免疫チェックポイント阻害薬の一種で抗PD-L1抗体に分類されます。
適応追加、用法・用量の追加とともに、840mgの新剤形(規格)も追加(既存は1200mg)されます。
アブラキサン点滴静注:テセントリクとの併用療法
アブラキサン点滴静注
テセントリクの乳がん適応の場合に併用されます。
第一三共のアバスチンBS
ベバシズマブBS点滴静注用「第一三共」
ファイザー(ベバシズマブBS点滴静注用「ファイザー」)に続く、2番目のアバスチンBSです。
米アムジェンが製造し、第一三共が流通と販売を行うようです。
アービタックス注射液:治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌の条件変更
アービタックス注射液
「EGFR陽性」から「RAS遺伝子野生型」に変更となります。
大腸ガンにおける抗EGFR抗体薬はRAS遺伝子(KRAS/NRAS遺伝子)に変異がある場合は効果が期待できません。
そのことを踏まえての適応変更と思われます。
ファイザーのリツキサンBS
リツキシマブBS点滴静注「ファイザー」
- 医薬品名:
- リツキシマブBS点滴静注100mg「ファイザー」
- リツキシマブBS点滴静注用400mg「ファイザー」
(添付文書・IF)
- 有効成分:リツキシマブ(遺伝子組換え)〔リツキシマブ後続2〕
- 申請者:ファイザー
- 効能・効果:
- CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫
- 免疫抑制状態下のCD20陽性のB細胞性リンパ増殖性疾患
- 多発血管炎性肉芽腫症
- 顕微鏡的多発血管炎
- 承認:2019年9月20日
サンドのリツキシマブBS点滴静注「KHK」に続く2番目のリツキサンBSです。
ベンリスタ点滴静注用:既存治療で効果不十分なSLEに対する小児用量
ベンリスタ点滴静注用
「既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス」に5歳以上の小児の用法・用量を追加されます。
ベンリスタは可溶型Bリンパ球刺激因子(BLyS)を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体です。
全身性エリテマトーデス(SLE*5)の発病に関与する可溶性Bリンパ球刺激因子に結合、活性を阻害することで効果を発揮します。