令和元年9月4日に薬価収載された医薬品一覧と発売日とタグリッソの市場拡大再算定

2019年8月28日、厚生労働省の中医協総会が開かれ、新薬12製品(12成分17品目)の薬価収載を了承、9月4日に薬価収載されました。
前回(5月22日)に薬価収載見送りとなっていた鉄乏性貧血治療薬のフェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)は今回も収載見送り、切除不能な進行・再発の扁平上皮非小細胞肺がんに対する適応を持つポートラーザ(ネシツムマブ)も今回の収載は見送られました。
また、再生医療等製品として、前回の収載が見送られていたコラテジェンの収載が決定しました!
それに加えて、タグリッソ(オシメルチニブ)の市場拡大再算定による薬価引き下げ(2019年11月1日実施)についても決定しているのでまとめます。

参考資料

今回参考にした資料です。

今回薬価収載された新医薬品・再生医療等製品の一覧

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製品名
(一般名)
規格薬価
アジマイシン点眼液
(アジスロマイシン水和物)
1%1瓶302.20円
イナビル吸入懸濁用
(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)
160mg1セット4,164.40円
ヴァンフリタ錠
(キザルチニブ塩酸塩)
17.7mg1錠
26.5mg1錠
19,694.90円
26,582.10円
オンパットロ点滴静注
(パチシランナトリウム)
2mg/mL瓶986,097円
ゾルトファイ配合注フレックスタッチ
(インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え))
1キット5,293円
デファイテリオ静注
(デフィブロチドナトリウム)
200mg瓶53,108円
ビベスピエアロスフィア
(グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物)
1キット1780.30円
ビレーズトリエアロスフィア
(ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物)
1キット4,074.80円
ミニリンメルトOD錠
(デスモプレシン酢酸塩水和物)
25µg1錠
50µg1錠
59.50円
100.00円
ユルトミリス点滴静注
(ラブリズマブ(遺伝子組換え))
300mg瓶717,605円
ロズリートレクカプセル
(エヌトレクチニブ)
100mg1カプセル
200mg1カプセル
5,214.20円
9,889.90円
ロナセンテープ
(ブロナンセリン)
20mg1枚
30mg1枚
40mg1枚
278.40円
401.30円
520.20円
コラテジェン筋注用
(ベペルミノゲン ペルプラスミド)
4mg1瓶600,360円

 

新たに薬価収載された医薬品

新規に薬価収載された医薬品についてまとめます。

新規有効成分を含む新医薬品

まずは新規有効成分を含有する医薬品として承認され、薬価収載が決定した医薬品についてまとめます。

ヴァンフリタ錠

  • 医薬品名と薬価
    • ヴァンフリタ錠17.7mg:19,694.90円/錠
    • ヴァンフリタ錠26.5mg:26,582.10円/錠
      添付文書IFRMP
  • 成分名:キザルチニブ塩酸塩
  • 申請者:第一三共
  • 効能・効果:再発又は難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病
  • 用法・用量:通常、成人にはキザルチニブとして1日1回26.5mgを2週間経口投与し、それ以降は1日1回53mgを経口投与する。
  • 1日薬価:53,164.20円/日
  • 算定方式:類似薬効比較方式(I)
  • 加算:新薬創出等加算(主な理由:希少疾病用医薬品)
  • 発売日:2019年10月10日
  • 新医薬品の投薬日数制限:あり(2020年9月末日)

急性骨髄性白血病(AML*1)は骨髄系の血液細胞の成熟や分化に異常が起こり、腫瘍化してしまう疾患です。
腫瘍化した血液細胞は長期間にわたって生存するため、骨髄の中が腫瘍化した異常な血液細胞で占められるようになり、免疫系が破綻してしまいます。
キザルチニブはすでに発売されているギルテリチニブ(ゾスパタ)と同じFLT3阻害薬です。
AML患者の3分の1は細胞増殖促進に関与する受容体型チロシンキナーゼ(FLT3*2遺伝子)に変異を起こしていると言われています。
FLT3遺伝子変異はがん細胞の増殖を高めるため、変異のある場合は再発率が高く予後不良(生存期間が短い)となります。
FLT3遺伝子変異には種類がありますが、キザルチニブはFLT3-ITDを阻害します。

FLT3遺伝子変異とFLT3阻害薬

 

  • 遺伝子内縦列重複変異(FLT3-ITD*3
    • キザルチニブ(ヴァンフリタ)
    • ギルテリチニブ(ゾスパタ)
  • チロシンキナーゼドメイン変異(FLT3-TKD*4
    • ギルテリチニブ(ゾスパタ)
留意事項通知

レセプトにFLT3-ITD変異陽性を確認した検査の実施年月日を記載する。

  • 初回投与月
  • 検査実施月

は必須。

ヴァンフリタ錠17.7mg及び同錠26.5mg
本製剤の効能又は効果に関連する使用上の注意において、「十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、FLT3-ITD変異陽性が確認された患者に投与すること。」とされているので、FLT3-ITD変異陽性を確認した検査の実施年月日を診療報酬明細書に記載すること。
なお、当該検査を実施した月のみ実施年月日を記載すること。ただし、本剤の初回投与に当たっては、必ず実施年月日を記載すること。
引用元:使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0903第1号 令和元年9月3日)

海外承認状況と進行中の臨床試験

「再発又は難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病」の適応は米国FDAでは承認に至りませんでした。

現在はMDM2*5阻害剤ミラデメタンとの併用で以下の2つの適応に対する試験が行われています。

  • FLT3-ITD変異のある再発または難治性の急性骨髄性白血病患者
  • FLT3-ITD変異がありながら強力な化学療法が受けられない新規の急性骨髄性白血病患者」

参考:急性骨髄性白血病患者を対象としたキザルチニブとミラデメタン(DS-3032)の併用試験開始について

ロズリートレクカプセル

  • 医薬品名と薬価
  • 成分名:エヌトレクチニブ
  • 申請者:中外製薬
  • 効能・効果:NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がん
  • 用法・用量:通常、成人にはエヌトレクチニブとして1日1回600mgを経口投与する。通常、小児にはエヌトレクチニブとして1日1回300mg/m2(体表面積)を経口投与する。ただし、600mgを超えないこと。
  • 1日薬価:29,669.70円/日
  • 算定方式:類似薬効比較方式(I)
  • 加算:
    • 有用性加算(II)(A=10%)
    • 先駆け審査指定制度加算(A=10%)
    • 新薬創出等加算(主な理由:希少疾病用医薬品、加算適用品)
  • 発売日:2019年9月4日(薬価収載即日発売)
  • 新医薬品の投薬日数制限:あり(2020年9月末日)

ロズリートレクはNTRK融合遺伝子を標的にする初の薬剤で、キイトルーダ(ペムブロリズマブ)に続き国内2番目になる癌種を問わない抗がん剤です。
神経栄養因子チロシン受容体キナーゼ(NTRK*6)融合遺伝子が陽性の場合、TRK*7融合タンパクが生成されることによりがん細胞の増殖が促進されてしまいます。
ロズリートレクはTRK融合タンパクの活性を阻害することでがん細胞の増殖を抑制します。

有用性加算と先駆け審査指定制度加算の対象

ロズリートレクは有用性加算(II)(A=10%)、先駆け審査指定制度加算(A=10%)、新薬創出等加算の対象になっています。

  • 有用性加算(II)(A=10%):本剤は受容体型チロシンキナーゼ(TRK)を阻害する新規作用機序医薬品である。また、本剤は、標準的治療法が存在しない乳腺分泌癌等の患者のうち、NTRK融合遺伝子が陽性の患者で一定の奏効率が見られたことから、臨床上有用な新規作用機序を有する医薬品であり、有用性加算(II)(A=10%)を適用することが適当と判断した。
  • 先駆け審査指定制度加算(A=10%):本剤は、新規の作用機序を有し、世界に先駆けて日本で承認されたものである一方で、「日本における承認事項の基礎となった臨床試験」に該当する中核的な探索的試験において、安全性の解析対象とされた日本人患者は16例と限られていることから、限定的な評価とした。

引用元:新医薬品の薬価算定について(中医協 総-1-1 元.8.28)

ロズリートレクのコンパニオン診断について

2019年6月27日付でFoundationOne CDx がんゲノムプロファイルがロズリートレクのコンパニオン診断としての承認を取得しています。

コンパニオン診断とは?

分子標的薬は特定の遺伝子異常をターゲットとする薬剤であるため、投与前に遺伝子診断を行う必要があります。
ある薬剤を使用するために必要となる遺伝子診断をその薬剤の「コンパニオン診断」と呼びます。

  • companion:仲間、友、相手役など

参考:FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル

留意事項通知

レセプトにNTRK融合遺伝子陽性を確認した検査の実施年月日を記載する。

  • 初回投与月
  • 検査実施月

は必須。

ロズリートレクカプセル100mg及び同カプセル200mg
本製剤の効能又は効果に関連する使用上の注意において、「十分な経験を有する病理医又は検査施設により、NTRK融合遺伝子陽性が確認された患者に投与すること。」 とされているので、NTRK融合遺伝子陽性を確認した検査の実施年月日を診療報酬明細書に記載すること。
なお、当該検査を実施した月のみ実施年月日を記載すること。ただし、本剤の初回投与に当たっては、必ず実施年月日を記載すること。
引用元:使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0903第1号 令和元年9月3日)

申請中の適応

NTRK融合遺伝子は、様々な固形がんで認められるが、非小細胞肺がんや結腸・直腸がんなどの患者数の多いがん種では1%未満とされる一方、患者数の少ない神経内分泌腫瘍、唾液腺がんでは多く認められるようです。
また、ロズリートレクは「ROS1融合遺伝子陽性の局所進行または転移性非小細胞肺がん」の適応について3月に申請が行われています。
参考:ROS1/TRK阻害剤「エヌトレクチニブ」のROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんに対する製造販売承認申請について

オンパットロ点滴静注

  • 医薬品名と薬価
  • 成分名:パチシランナトリウム
  • 申請者:Alnylam Japan
  • 効能・効果:トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー
  • 用法・用量:通常、成人には3週に1回パチシランとして0.3mg/kgを点滴静注する。体重が104kg以上の患者には3週に1回パチシランとして31.2mgを点滴静注する。いずれの場合にも、70分間以上(投与開始後15分間は約1mL/分、その後は約3mL/分)かけて投与すること。
  • 1日薬価:80,040円/日
  • 算定方式:類似薬効比較方式(I)
  • 加算:
    • 有用性加算(I)(A=40%)
    • 新薬創出等加算(主な理由:希少疾病用医薬品)
  • 発売日:2019年9月9日
  • 新医薬品の投薬日数制限:なし

RNA干渉(RNAi*8)を利用した初のSiRNA*9治療薬です。

RNA干渉とは?

2006年にAndrew Z.FireとCraig Cameron MelloはRNA干渉を発見した功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
生体内にはマイクロRNA(miRNA*10)と呼ばれる短いRNAが存在し、mRNA(メッセンジャーRNA)と特異的に結合、切断を行うことにより、遺伝子の発現(蛋白質合成)を調整しています。
遺伝子の発現はDNA配列だけで決まるのではなく、このRNA干渉と呼ばれる現象からも大きな影響を受けます。
人口的に特定のRNAを標的に合成した短いRNA(SiRNA)を作って遺伝子の発現を抑制(サイレンシング)することも可能です。
siRNA治療薬はこの技術を用いて作られた遺伝子サイレンシング薬です。

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP*11)は遺伝子の変異によりトランスサイレチン(TTR)というタンパク質が壊れやすくなり、アミロイドと呼ばれる不溶性線維状タンパクが末梢神経や様々な臓器に沈着してしまう疾患です。
パチシランナトリウムは変異を起こしているTTR遺伝子のRNA配列に結合・切断し、異常なTTRの合成を抑制します。
ですが、2本鎖合成オリゴヌクレオチドであるパチシランナトリウムは、そのまま投与しても標的臓器である肝臓にたどり着く前に分解されてしまいます。
そこでオンパットロは脂質ナノ粒子に内包した製剤となっています。
その結果、2本鎖RNAを安定した形で肝臓まで送り、肝臓でのTTR産生を阻害することを可能にしています。

ちなみにオンパットロの流通はスズケンに制限されているみたいですね。

有用性加算の対象

オンパットロは有用性加算(II)(A=40%)と新薬創出等加算の対象になっています。

  • 有用性加算(I)(A=40%):本剤は、本邦で初めてのsiRNAの核酸医薬品であり、既存の薬剤とは全く異なる新規の薬理作用を有すると認められる。また、本剤は既存治療薬と異なり、遺伝子変異型や疾患の進行程度などに左右されることなく、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー患者への有効性が示されていること等から、治療方法の改善が客観的に示されていると認められる。以上を踏まえ、有用性加算(I)A=40%が妥当と判断した。

引用元:新医薬品の薬価算定について(中医協 総-1-1 元.8.28)

留意事項通知

確定診断と専門医の元での治療を必要としています。

オンパットロ点滴静注2mg/mL
本製剤の効能・効果に関連する使用上の注意において「本剤の適用にあたっては、最新のガイドラインを参照し、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの診断が確定していることを確認すること。」とされていることから、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの診断及び治療に精通した医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例に使用すること。
引用元:使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0903第1号 令和元年9月3日)

デファイテリオ静注

  • 医薬品名と薬価
  • 成分名:デフィブロチドナトリウム
  • 申請者:日本新薬
  • 効能・効果:肝類洞閉塞症候群(肝中心静脈閉塞症)
  • 用法・用量:通常、デフィブロチドナトリウムとして1回6.25mg/kgを1日4回、2時間かけて静脈内投与する。
  • 算定方式:原価計算方式
  • 加算:
    • 有用性加算(II)(A=10%)
    • 市場性加算(I)(A=10%)
    • 新薬創出等加算(主な理由:希少疾病用医薬品)
  • 発売日:2019年9月4日(薬価収載即日発売)
  • 新医薬品の投薬日数制限:なし

肝類洞閉塞症候群(SOS*12)または肝中心静脈閉塞症(VOD*13)は造血幹細胞移植後の合併症の一つです。
移植前に行われる大量化学療法、全身放射線照射、免疫抑制剤などが原因で肝臓の類洞(洞様毛細血管)に血栓が生じ、それが原因で肝細胞が破壊される疾患です。
デフィブロチドナトリウムはブタ腸粘膜から精製された一本鎖デオキシリボ核酸です。
詳しい作用機序は不明ですが、血管内皮の保護、血液の凝固および線溶のバランスを正常化させることにより、効果を発揮すると考えられています。
医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議を経て、厚労省が開発要請した品目です。

有用性加算と市場性加算の対象

デファイテリオは有用性加算(II)(A=10%)、市場性加算(I)(A=10%)、新薬創出等加算の対象になっています。

  • 有用性加算(II)(A=10%):本邦においては肝類洞閉塞症候群の治療を効能・効果として承認されている薬剤はないこと、海外の診療ガイドラインにおいて本剤が標準的治療法として推奨されていることから治療方法の改善が示されていると判断し、有用性加算(II)(A=10%)を適用することが適当と判断した。
  • 市場性加算(I)(A=10%):本剤は希少疾病用医薬品の指定を受けていることから加算の要件を満たす。ただし、症例数が限られて市場規模が小さいことは原価計算方式の計算の中で価格に反映されていることを踏まえて、限定的な評価とした。

引用元:新医薬品の薬価算定について(中医協 総-1-1 元.8.28)

ユルトミリス点滴静注

  • 医薬品名と薬価
  • 成分名:ラブリズマブ(遺伝子組換え)
  • 申請者:アレクシオンファーマ
  • 効能・効果:発作性夜間ヘモグロビン尿症
  • 用法・用量:通常、成人には、ラブリズマブ(遺伝子組換え)として、患者の体重を考慮し、1回2,400〜3,000mgを開始用量とし、初回投与2週後に1回3,000〜3,600mg、以降8週ごとに1回3,000〜3,600mgを点滴静注する。
  • 1日薬価:133,587円/日
  • 算定方式:類似薬効比較方式(I)
  • 加算:
    • 有用性加算(II)(A=5%)
    • 新薬創出等加算(主な理由:希少疾病用医薬品)
  • 発売日:2019年9月4日(薬価収載即日発売)
  • 新医薬品の投薬日数制限:あり(2020年9月末日)

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH*14)は後天性の遺伝子変異により造血幹細胞に異常が起きる疾患です。
特に夜間に赤血球が壊れやすくなるため、早朝の黒色尿や貧血症状を特徴とします。
PNH型血球の存在が特徴となるので検査にはフローサイトメトリーを用います。

同じくアレクシオンファーマが販売するソリリス(エクリズマブ)と同様にユルトミリス(ラブリズマブ)もヒトの補体(C5)を阻害することで効果を発揮するヒト化モノクローナル抗体製剤です。
ラブリズマブはエクリズマブを改良し、長時間安定して効果を発揮するようにした長時間作用型抗補体(C5)抗体です。
ソリリス(エクリズマブ)がソリリスが2週に1回の間隔で投与を必要とするところ、ユルトミリスは8週間に1回の投与ですむのが特徴です。

有用性加算と市場性加算の対象

ユルトミリスは有用性加算(II)(A=5%)、市場性加算(I)(A=10%)、新薬創出等加算の対象になっています。

  • 有用性加算(II)(A=5%):本剤の投与間隔は8週間に1回であり、比較薬のエクリズマブ(遺伝子組換え)と比べると注射の頻度が4分の1となって患者負担の軽減につながることから、対象疾病等の治療方法の改善に該当し、有用性加算(II)(A=5%)を適用することが適当と判断した。

引用元:新医薬品の薬価算定について(中医協 総-1-1 元.8.28)

留意事項通知

フローサイトメトリーを用いた確定診断が必須となっています。

ユルトミリス点滴静注300mg
本製剤の効能・効果に関連する使用上の注意において「本剤は、フローサイトメトリー法等により、発作性夜間ヘモグロビン尿症と確定診断された患者に使用すること。」とされているので、発作性夜間ヘモグロビン尿症の確定診断が行われた場合にのみ投与すること。
引用元:使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0903第1号 令和元年9月3日)

また、承認時には髄膜炎菌感染症の発症のリスクについての留意事項も出されています。
補体(C5)に結合することで、C5aとC5b-9(膜侵襲複合体/membrane attack complex)の産生を抑制する抗補体(C5)モノクローナル抗体は髄膜炎菌感染症の発症リスクを高めます。
そのため、投与前には髄膜炎菌に対するワクチンを接種することとされています。

ラブリズマブ(遺伝子組換え)製剤(販売名:ユルトミリス点滴静注300mg)(以下「本剤」という。)については、本日、「発作性夜間ヘモグロビン尿症」を効能・効果として承認したところですが、本剤については、髄膜炎菌感染症の発症のリスクが高まることが懸念されること等から、その使用に当たっては、特に下記の点につきご留意いただくよう貴会会員あてに周知をお願いします。

  1. 本剤については、承認に際し、製造販売業者による全症例を対象とした使用成績調査、適正な流通管理の実施等をその条件として付したこと。(略)
  2. 本剤の警告及び効能・効果に関連する使用上の注意の記載は以下のとおりであり、髄膜炎菌感染症の発症のリスクには特段の留意をお願いすること。なお、その他の使用上の注意についても別添の添付文書を参照されたいこと。(略)
  3. 本剤については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第79条に基づき、承認取得者である製造販売業者に対し、「製造販売後、一定数の症例に係るデー タが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施」する よう義務付けたので、その調査の実施にご協力願いたいこと。

引用元:ラブリズマブ(遺伝子組換え)製剤の使用に当たっての留意事項について(薬生薬審発0618第9号 令和元年6月18日)

 

新医療用配合剤

すでに他の医薬品として販売されている成分を組み合わせた新医療用配合剤です。

ゾルトファイ配合注フレックスタッチ

  • 医薬品名と薬価
    • ゾルトファイ配合注フレックスタッチ:5,293円/キット
      添付文書IFRMP
  • 成分名:インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え)
  • 申請者:ノボ ノルディスクファーマ
  • 効能・効果:インスリン療法が適応となる2型糖尿病
  • 用法・用量:通常、成人では、初期は1日1回10ドーズ(インスリン デグルデク/リラグルチドとして10単位/0.36mg)を皮下注射する。投与量は患者の状態に応じて適宜増減するが、1日50ドーズ(インスリン デグルデク/リラグルチドとして50単位/1.8mg)を超えないこと。注射時刻は原則として毎日一定とする。なお、本剤の用量単位である1ドーズには、インスリン デグルデク1単位及びリラグルチド0.036mgが含まれる。
  • 1日薬価:882円/日
  • 算定方式:新医療用配合剤の特例
  • 加算:なし
  • 発売日:2019年9月26日
  • 新医薬品の投薬日数制限:あり(2020年9月末日)

持効型インスリンアナログのトレシーバ(インスリン デグルデク(IDeg*15))とGLP-1受容体作動薬ビクトーザ(リラグルチド(Lira*16))の配合剤で、インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤は初となります。
IDeg 1単位に対してLira 0.036mgの割合で配合されており、ドーズ(1ドーズ=IDeg 1単位/Lira 0.036mg)という単位が使用されます。
最大50ドーズ(IDeg 50単位/Lira 1.8mg)まで使用可能。

薬価を比較

ちょっと薬価を比較してみます。
(薬価は2019年10月1日以降のもの)

  • トレシーバ注 フレックスタッチ:2465.00円/IDeg 300単位
  • ビクトーザ皮下注:10435.00円/Lira 18mg

単純にゾルトファイ(IDeg 300単位+Lira 10.8mg)の成分量に換算すると、
2,465円(IDeg 300単位)+6,261円(Lira 10.8mg)=8,726円
なので、ゾルトファイの薬価5,293円/キットはかなりお得ですね!

留意事項通知

保険医が投薬することができる注射薬(処方箋を交付することができる注射薬)及び在宅自己注射指導管理料の対象薬剤の追加について(案)(中医協 総-4 元.8.28)
の資料の通り、在宅自己注射について検討、認められているので発売されればすぐに自己注射で使用可能です。

ゾルトファイ配合注フレックスタッチ

  1. 本製剤はインスリン及びグルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニストの配合製剤であり、本製剤の自己注射を行っている患者に対して指導管理を行った場合は、「診療報酬の算定方法」(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第一医科診療報 酬点数表(以下「医科点数表」という。)区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料を算定できるものであること。
  2. 本製剤は注入器一体型のキットであるため、医科点数表区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料を算定する患者に対して処方した場合には、医科点数表区分番号「C151」注入器加算は算定できないものであること
  3. 本製剤の自己注射を行っている者に対して、血糖自己測定値に基づく指導を行うために血糖自己測定器を使用した場合には、インスリン製剤の自己注射を行っている者に準じて、医科点数表区分番号「C150」血糖自己測定器加算を算定すること。

引用元:使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0903第1号 令和元年9月3日)

ビベスピエアロスフィア

  • 医薬品名と薬価
    • ビベスピエアロスフィア28吸入:1780.30円/キット
      添付文書IFRMP
    • ビベスピエアロスフィア112吸入:薬価未収載(長期処方解禁後)
  • 成分名:グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物
  • 申請者:アストラゼネカ
  • 効能・効果:慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解(長時間作用型吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
  • 用法・用量:通常、成人には、1回2吸入(グリコピロニウムとして14.4µg、ホルモテロールフマル酸塩として9.6µg)を1日2回吸入投与する。
  • 1日薬価:254.30円/日
  • 算定方式:新医療用配合剤の特例
  • 加算:なし
  • 発売日:2019年9月4日(薬価収載即日発売)
  • 新医薬品の投薬日数制限:あり(2020年9月末日)

長時間作用性抗コリン剤(LAMA*17) グリコピロニウムと長時間作動型β2刺激剤(LABA*18) ホルモテロールの配合吸入薬です。
エアロスフィアという新規デバイスが採用されており、デバイスの分類はpMDIになります。
COPDに対して使用するLAMA/LABA配合剤としては4剤目になりますが、pMDIは初になります。
シーブリとオーキシスを合体させてpMDIにしたってことですね。

医薬品名ビベスピウルティブロアノーロスピオルト
デバイスエアロスフィアブリーズヘラーエリプタレスピマット
分類pMDI*19DPI*20DPISMI*21
LAMAグリコピロニウムグリコピロニウムウメクリジニウムチオトロピウム
LABAホルモテロールインダカテロールビランテロールオロダテロール
用法1回2吸入を1日21回1吸入を1日1回1回1吸入を1日1回1回2吸入を1日1回

ホルモテロールが採用されるのも初ですが、1回2吸入を1日2回使用しないといけないのはデメリットですね・・・。
まだ実物を触っていないので詳細は不明ですが、エアロスフィアというデバイスがどの程度魅力的なのかが気になりますね。

薬価を比較

既存のLAMA/LABA吸入薬 14日分と薬価を比較してみます。
(薬価は2019年10月1日以降のもの)

  • ビベスピエアロスフィア28吸入:1780.30円/キット→3560.6円/14日分
  • ウルティブロ吸入用カプセル:245.50円/cap→3,437円/14日分
  • アノーロエリプタ7吸入用:1847.70円/キット→3695.4円/14日分
  • スピオルトレスピマット28吸入:3875.60円/キット→3875.60円/14日分

14 日分で比較した場合、最安はウルティブロでビベスぺはそれに続く形ですね。

ビレーズトリエアロスフィア

  • 医薬品名と薬価
    • ビレーズトリエアロスフィア56吸入:4,074.80円/キット
      添付文書IFRMP
    • ビレーズトリエアロスフィア120吸入:薬価未収載(長期処方解禁後)
  • 成分名:ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物
  • 申請者:アストラゼネカ
  • 効能・効果:慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド剤、長時間作用型吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
  • 用法・用量:通常、成人には、1回2吸入(ブデソニドとして320µg、グリコピロニウムとして14.4µg、ホルモテロールフマル酸塩として9.6µg)を1日2回吸入投与する。
  • 1日薬価:291.10円/日
  • 算定方式:類似薬効比較方式(I)
  • 加算:新薬創出等加算(主な理由:加算適用品等の収載から3年以内3番手以内)
  • 発売日:2019年9月4日(薬価収載即日発売)
  • 新医薬品の投薬日数制限:あり(2020年9月末日)

吸入ステロイド剤(ICS*22) ブデソニド、長時間作用性抗コリン剤(LAMA) グリコピロニウム、長時間作動型β2刺激剤(LABA) ホテモテロールの3剤配合吸入薬です。
ビベスピにさらにブデソニド(ICS)が加わったものです。
3剤配合吸入薬は同じくCOPDを適応にもつテリルジーに続いて2剤目ですね。
テリルジーのデバイスがDPI(エリプタ)なのに対してビレーズトリのデバイスはエアロスフィア(pMDI)です。
COPDの喘息合併例(ACO*23)をターゲットとする薬剤なのでDPIよりもpMDIの方が使いやすいとは思います。
が、実際にICSまで必要とする例になかなか遭遇しないので、使用できるケースはそんなに多くないんじゃないかと思います。
テリルジーと同様に喘息適応を狙っているんでしょうから、本格的に使用されるのは喘息適応取得後なんじゃないかなあと思います。

テリルジー100エリプタ14吸入用が4183.50円/キットなのでビレーズトリエアロスフィア56吸入(4,074.80円/キット)の方が若干安いですね。

新規格・新剤形

新規格や新剤形が追加されたものです。

ミニリンメルト:男性における夜間多尿による夜間頻尿用の新規格

  • 医薬品名と薬価
      • ミニリンメルトOD錠25µg:59.50円/錠
      • ミニリンメルトOD錠50µg:100.00円/錠

    添付文書IF

  • 成分名:デスモプレシン酢酸塩水和物
  • 申請者:フェリング・ファーマ
  • 効能・効果:男性における夜間多尿による夜間頻尿
  • 用法・用量:成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50µgを経口投与する。
  • 1日薬価:100.00円/日
  • 算定方式:規格間調整
  • 加算:なし
  • 発売日:2019年9月20日
  • 新医薬品の投薬日数制限:あり(2020年9月末日)

「男性における夜間多尿による夜間頻尿」の適応追加に伴う規格追加です。
この適応に使えるのは今回薬価収載された25μgと50μgのみで、規格ごとに適応が異なる形になるので注意が必要です。

適応:尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症

  • ミニリンメルトOD錠60μg
  • ミニリンメルトOD錠120μg
  • ミニリンメルトOD錠240μg
    添付文書IF

製造販売元:フェリング・ファーマ株式会社
販売元:協和キリン株式会社

適応:中枢性尿崩症

  • ミニリンメルトOD錠60μg
  • ミニリンメルトOD錠120μg
  • ミニリンメルトOD錠240μg
    添付文書IF

製造販売元:フェリング・ファーマ株式会社
販売元:協和キリン株式会社

適応:男性における夜間多尿による夜間頻尿

  • ミニリンメルトOD錠25μg
  • ミニリンメルトOD錠50μg
    添付文書IF

製造販売元:フェリング・ファーマ株式会社
販売提携:キッセイ薬品工業株式会社

といった感じですね。
夜間頻尿に使用する際は過度の水分が体内にたまりやすく、水中毒(低ナトリウム血症)の発現リスクが高いため、従来よりも適用量の規格が追加されました。

留意事項通知

使用する際にはその適応となるかしっかりと確認することが必要です。

ミニリンメルトOD錠25μg及び同OD錠50μg
本製剤の効能又は効果は「男性における夜間多尿による夜間頻尿」であり、効能又は効果に関連する使用上の注意において、「夜間多尿指数が33%以上、且つ夜間排尿回数が2回以上の場合にのみ考慮すること」とされているので、使用にあたっては十分留意すること。
引用元:使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0903第1号 令和元年9月3日)

ロナセンテープ

  • 医薬品名と薬価
    • ロナセンテープ20mg:278.40円/枚
    • ロナセンテープ30mg:401.30円/枚
    • ロナセンテープ40mg:520.20円/枚
      添付文書IFRMP
  • 成分名:ブロナンセリン
  • 申請者:大日本住友製薬
  • 効能・効果:統合失調症
  • 用法・用量:通常、成人にはブロナンセリンとして40mgを1日1回貼付するが、患者の状態に応じて最大80mgを1日1回貼付することもできる。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日量は80mgを超えないこと。本剤は、胸部、腹部、背部のいずれかに貼付し、24時間ごとに貼り替える。
  • 1日薬価:1,040.40円/日
  • 算定方式:類似薬効比較方式(I)
  • 加算:なし
  • 発売日:2019年9月10日
  • 新医薬品の投薬日数制限:あり(2020年9月末日)

ブロナンセリンは非定型抗精神病薬の一つで他のセロトニン・ドパミン・アンタゴニスト(SDA*24)と比較して、よりドパミンに対する効果が強いためドパミン・セロトニン・アンタゴニスト(DSA*25)と呼ばれています。
すでに発売されている錠剤は食事の影響を受けやすく、食後と比較して空腹時には吸収が大幅に低下してしまいます。

【用法・用量に関連する使用上の注意】
本剤の吸収は食事の影響を受けやすく、有効性及び安全性は食後投与により確認されているため、食後に服用するよう指導すること。〔空腹時に投与すると、食後投与と比較して吸収が低下し、作用が減弱するおそれがある。また空腹時で投与を開始し、食後投与に切り替えた場合には血中濃度が大幅に上昇するおそれがある。
引用元:ロナセン錠 添付文書

食事の影響を気にせず、1日1回の貼付で安定した効果が期待できる新剤形ということになります。
また、抗精神病薬として初の貼付剤になります。

ロナセン錠4mg(138.30)×2錠(138.30×2=276.6円)がロナセンテープ40mg(520.20円/枚)相当なので薬価は2倍弱ってところですね。
経口摂取が苦手、効果が安定しないなどの問題がなければ錠剤でいいですね。

アジマイシン点眼液

  • 医薬品名と薬価
  • 成分名:アジスロマイシン水和物
  • 申請者:千寿製薬
  • 効能・効果:結膜炎、眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎
  • 用法・用量:
    • 〈結膜炎〉通常、成人及び7歳以上の小児には、1回1滴、1日2回2日間、その後、1日1回5日間点眼する。
    • 〈眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎〉通常、成人には、1回1滴、1日2回2日間、その後、1日1回12日間点眼する。
  • 1日薬価:19.40円/日
  • 算定方式:類似薬効比較方式(I)
  • 加算:小児加算(A=5%)
  • 発売日:2019年9月11日
  • 新医薬品の投薬日数制限:あり(2020年9月末日)

ジスロマック(アジスロマイシン)の点眼液ですね。
最大の特徴はその半減期の長さを生かした1日点眼回数の少なさで、1日2回を2日間点眼した後は1日1回の点眼で効果を発揮できます。
ですが、わかりやすいというかややこしいというか、適応症によって投与日数が決まっているのも特徴となります。

唯一のマクロライド系抗菌点眼薬になりますね。(エリスロマイシンを成分とするエコリシンは現在眼軟膏しか存在しない)
優れた結膜、角膜、眼瞼への移行性と高い滞留性、さらに抗菌作用に加えて抗炎症作用を持つというのがメリットだと思います。
実際の製品は、粘性が結構強く、冷所保存というのが難点かなあ?
眼科専門医からは多く処方されるのではないかなとも思いますがどうでしょう?

小児加算の対象

アジマイシン点眼液は小児加算(A=5%)の対象になっています。

  • 小児加算(A=5%):本剤は、小児に係る用法・用量が明示的に含まれていること、比較薬は小児加算を受けていないことから、加算の要件に該当する。加算率については、国内臨床試験で7歳未満の小児が組み入れられておらず、これらの患者への投与は不適切と評価されていること等から、5%が妥当であると判断した。

引用元:新医薬品の薬価算定について(中医協 総-1-1 元.8.28)

使用に対する留意事項

AMR*26(薬剤耐性)対策が重要視されている中での発売となるため、アジマイシン点眼液の承認時には関連する内容の留意事項が出されています。

アジスロマイシン水和物点眼剤(販売名:アジマイシン点眼液1%。以下「本剤」という。)については、本日、適応菌種「アジスロマイシンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、コリネバクテリウム属、インフルエンザ菌、アクネ菌」、適応症「結膜炎、眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎」を効能又は効果として製造販売が承認されたところであり、本剤の投与期間は、「用法及び用量」の欄において、結膜炎については7日間、眼瞼炎、麦粒腫及び涙嚢炎については14日間とされています。
近年、不適正な抗菌薬の使用による薬剤耐性菌及びそれに伴う感染症の増加が国際的に問題となっており、抗菌薬のより一層の適正使用が求められています。
つきましては、本剤の投与に当たっては、耐性菌の発現等を防ぐため、用法及び用量を遵守するよう患者に十分指導をしていただくなど、適切に対応していただくよう、貴管下の医療機関及び薬局に対する周知をお願いします。
引用元:アジスロマイシン水和物点眼剤の使用に当たっての留意事項について(薬生薬審発0618第10号/薬生安発0618第5号 令和元年6月18日)

用法・用量はしっかり守りましよう。

イナビル吸入懸濁用

  • 医薬品名と薬価
    • イナビル吸入懸濁用160mgセット:4,164.40円/瓶
      添付文書IFRMP
  • 成分名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物
  • 申請者:第一三共
  • 効能・効果:A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療
  • 用法・用量:成人及び小児には、ラニナミビルオクタン酸エステルとして160mgを日本薬局方生理食塩液2mLで懸濁し、ネブライザを用いて単回吸入投与する。
  • 1日薬価:4,164.40円/日
  • 算定方式:類似薬効比較方式(I)
  • 加算:新薬創出等加算(主な理由:新薬創出等加算を受けている製剤の剤型追加)
  • 発売日:2019年10月25日
  • 新医薬品の投薬日数制限:なし

ネブライザーで使用できるイナビルです。
従来のイナビルだと吸入が困難な5歳未満の小児や呼吸器疾患の悪化により肺機能が低下している患者でも使用しやすいように、ネブライザーを用いて吸入できるようにした新剤形です。
添加物に乳糖水和物を使用していないため、慎重投与の乳製品に対する過敏症の記載が省略されています。

留意事項通知

適正使用について呼びかけられています。

イナビル吸入懸濁用160mgセット

  1. 本製剤については、抗ウイルス薬の投与が全てのA型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療に必須ではないことを踏まえ、本剤の使用の必要性を慎重に検討した上で、A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の発症後の治療を目的として使用した場合に限り算定できるものであること。
  2. 本製剤の使用上の注意に、「本剤はC型インフルエンザウイルス感染症には効果がない。」及び「症状発現後、可能な限り速やかに投与を開始することが望ましい。症状発現から48時間を経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。」と記載されているので、使用に当たっては十分留意すること。

引用元:使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0903第1号 令和元年9月3日)

 

再生医療等製品

2019年3月26日に承認されていたキムリア点滴静注と一緒に承認されていたコラテジェン筋注用が薬価収載されました。

コラテジェン筋注用

  • 医薬品名と薬価
  • 成分名:ベペルミノゲン ペルプラスミド
  • 申請者:アンジェス
  • 効能・効果:標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症及びバージャー病)における潰瘍の改善
  • 用法・用量:通常、成人には、投与対象肢の虚血部位に対して1カ所あたり本品0.5mgを8カ所に4週間間隔で2回筋肉内投与する(1回総計4mg)。なお、臨床症状が残存する場合には、2回目投与の4週後に3回目の投与を行うこともできる。また、投与に際しては、日局生理食塩液で希釈し、希釈後の1カ所あたりの薬液量は3mLとし、投与対象筋が小さい場合には2mLまで減じてよい。
  • 算定方式:原価計算方式
  • 加算:
  • 発売日:2019年9月10日

販売や使用成績比較調査は田辺三菱製薬が担当します。
日本初の遺伝子治療薬になります。

コラテジェンの有効成分であるベペルミノゲン ペルプラスミドは環状二本鎖構造のプラスミドDNAです。
ヒト肝細胞増殖因子(HGF*27)遺伝子とその転写に必要なプロモーター領域等を持っているため、コラテジェンを筋肉内に投与することで、人の筋肉細胞内でヒトHGのmRNA転写が行われ、その後ヒトHGFが産生されます。
慢性動脈閉塞症に対してコラテジェンを投与すると、血管新生作用が発揮され、閉塞した血管を補うように新しい血管が作られ、血流が回復することが期待されます。

コラテジェンは国内初の遺伝子治療薬ということで、以下の条件つきで承認されています。

  1. 重症化した慢性動脈閉塞症に関する十分な知識・治療経験を持つ医師のもとで、創傷管理を複数診療科で連携して実施している施設で本品を使用すること。
  2. 条件及び期限付承認後に改めて行う本品の製造販売承認申請までの期間中は、本品を使用する症例全例を対象として製造販売後承認条件評価を行うこと。

また、承認日(2019年3月26日)から5年間の期限付き承認でもあります。

留意事項通知

日本初の遺伝子治療薬ということで、使用条件がかなりしっかりと厳しく定められていますね。

コラテジェン筋注用4mg

  1. 本品の効能、効果又は性能において、「標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症」とされていることから、本品の投与が適切と判断される患者であって、かつ閉塞性動脈硬化症の患者は以下のすべての要件を満たした場合、バージャー病の患者は以下の1〜3の要件を満たした場合に限り算定できるものであること。なお、病態によって4の指標の測定が困難な閉塞性動脈硬化症患者においては、虚血に基づく潰瘍であると判断した血行動態指標(足趾血圧、足趾上腕血圧比(TBI)等)の測定値を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
    1. 血管造影、コンピュータ断層血管造影(CTA)又は磁気共鳴血管撮影(MRA)により投与対象肢の浅大腿動脈、膝窩動脈又は膝窩下の動脈に閉塞又は狭窄部位が認められ、かつ潰瘍を有していること。
    2. 投与対象肢の血行再建術(血管内治療を含む)の適応が困難であること。
    3. 既存の内科的治療や処置による対象肢の症状の改善が認められないこと。
    4. 対象肢の血行動態の指標が、以下の条件をいずれも満たすこと。
      • ア 安静時上腕・足関節血圧比(ABPI)が0.6以下であること
      • イ 足関節血圧が70mmHg未満であること
  2. 本品は以下の1〜4のすべての要件を満たす施設で使用すること。
    1. 以下の3つの診療科を標榜していること。
      • ア 循環器内科
      • イ 血管外科又は心臓血管外科
      • ウ 形成外科又は皮膚科
    2. 循環器内科の経験を6年以上有する常勤医師、血管外科の経験を8年以上有する常勤医師、形成外科の経験を6年以上有する常勤医師、皮膚科の経験を5年以上有する常勤医師のいずれか1名以上が責任医師として配置されていること。
    3. 血行再建術に関する十分な臨床経験(計50件以上)を有する医師が、本品を用いた治療の医師として配置されていること。
    4. 定期的に循環器内科の医師、血管外科の医師、及び形成外科又は皮膚科の医師が参加する、慢性動脈閉塞症の治療方針を決定するカンファレンスが開催されていること。
  3. 糖尿病を合併している患者に本品を投与する場合は、糖尿病合併症管理料の施設基準を届け出ている保険医療機関で糖尿病の治療が行われていること。
  4. バージャー病で喫煙を継続している患者に本品を投与する場合は、ニコチン依存症管理料の施設基準を届け出ている保険医療機関で禁煙指導が行われていること。

引用元:使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0903第1号 令和元年9月3日)

 

タグリッソの市場拡大再算定

タグリッソ錠に市場拡大再算定が適応され、2019年11月1日より薬価が引き下げられます。

市場拡大再算定とは?

2年目以降の予想販売額が一定額を上回った場合、年4回の薬価収載のタイミングで薬価の引き下げが行われるルール。

  1. 原価計算方式で薬価算定された医薬品:
    • 年間販売額150億円超かつ予測年間販売額の2倍以上
    • 年間販売額100億円超かつ予測年間販売額の10倍以上

    →最大25%の薬価引き下げ

  2. 類似薬効比較方式で薬価算定された医薬品:適応拡大などで市場実態が大きく変化し、年間販売額150億円超かつ予測年間販売額の2倍以上
    →最大15%の薬価引き下げ

タグリッソ(成分名:オシメルチニブ)は販売当初(2016年3月)は「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺がん」(2次治療)の適応しか持っていませんでしたが、2018年8月21日に「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺がん」(1次治療)の適応を取得しました。
それに伴い、使用量が増えた結果、「年間販売額が 350 億円超かつ、基準年間販売額の2倍超」となり、市場拡大再算定の対象となったというわけです。
変更後の薬価は以下の通りです。

  • タグリッソ錠40mg:12,713.70円/錠→10,806.60円/錠
  • タグリッソ錠80mg:24,375.80円/錠→20,719.40円/錠

 

まとめ・雑感

今回薬価収載された品目で注目なのは、

  • ロズリートレクカプセル:癌種を問わない抗がん剤
  • オンパットロ点滴静注:日本初のSiRNA治療薬
  • コラテジェン筋注用:日本初の遺伝子治療役

ですね。
最近の医薬品の進歩はすごいです。
少し気を抜くと、あっという間に理解は追いつかなくなる・・・。
しっかり勉強していかなきゃ!

*1:Acute Myeloid Leukemia

*2:FMS-like tyrosine kinase 3

*3:Internal Tandem Duplication

*4:Tyrosin Kinase Domain

*5:Murine Double Minute 2

*6:Neurotrophic Tyrosine Receptor Kinase

*7:Tropomyosin Receptor Kinase

*8:RNA interference

*9:Small interfering RNA

*10:microRNA

*11:TransThyRetin-type Familial Amyloid Polyneuropathy

*12:Sinusoidal Obstruction Syndrome

*13:Veno-Occlusive Disease

*14:Paroximal Nocturnal Hemogrobinuria

*15:Insulin Degludec

*16:Liraglutide

*17:Long-Acting Muscarinic Antagonist

*18:Long-Acting Beta2 Agonist

*19:pressurized MeterDose Inhaker:加圧式定量噴霧吸入器

*20:Dry Powder Inhaler:ドライパウダー吸入器

*21:Soft Mist Inhaler:ソフトミスト吸入器

*22:Inhaled CorticoSteroid

*23:Asthma and COPD Overlap

*24:Serotonin-Dopamine Antagonist

*25:Dopamine-Serotonin Antagonist

*26:AntiMicrobial Resistance

*27:Hepatocyte Growth Factor

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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