ベオーバ錠・エイベリス点眼液・ロラピタ静注・メトアナ配合錠など承認了承〜平成30年8月30日 薬食審 第一部会

  • 2018年8月30日
  • 2021年1月17日
  • 薬食審
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厚生労働省の薬食審医薬品第一部会が平成30年8月30日に開催されました。
今回の部会では新薬5製品の承認について審議が行われ、すべて了承されています。
前日には第二部会が行われているので、連日での新薬情報になりますね。

新規有効成分を含有する医薬品

今回、新規成分を含有する医薬品2品目の審議が行われています。

ベオーバ錠

  • 医薬品名:ベオーバ錠50mg
  • 成分名:ビベグロン
  • 申請者:杏林製薬
  • 効能・効果:過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
  • 用法・用量:1回50mgを1日1回投与

ビベグロンは選択的β3アドレナリン受容体作動薬です。
膀胱β3受容体に作用することで、膀胱を弛緩させ、過活動膀胱の症状を改善します。
米メルクが創薬した成分ですが、杏林が日本での権利を取得し開発したものです。

同じ作用機序の薬剤にベタニス(成分名:ミラベグロン)がありますが、徐放製剤のため粉砕できない、生殖可能な年齢の患者への投与は避けるように警告があるなどの欠点はクリアできているのか気になるところではあります。

エイベリス点眼液

  • 医薬品名:エイベリス点眼液0.002%
  • 成分名:オミデネパグ イソプロピル
  • 申請者:参天製薬
  • 効能・効果:緑内障・高眼圧症
  • 用法・用量:1回1滴、1日1回点眼

宇部興産が創薬したオミデネパグを参天製薬と共同開発したものです。
プロスタノイドEP2受容体に作用することで眼房水の流出を促進し、眼圧を低下させます。

プロスタノイド関連の緑内障治療薬には以下のものがあります。

  • プロスタグランジンF2α誘導体:イソプロピル ウノプロストン(レスキュラ)、ラタノプロスト(キサラタン)、トラボプロスト(トラバタンズ)、タフルプロスト(タプロス)
  • プロスタマイドF2α誘導体:ビマトプロスト(ルミガン)

今回審議されたオミデネパグ イソプロピルはこのどれにも当てはまらない新規化合物で、誘導体ではないのでやり選択的にプロスタノイドEP2受容体に作用することが可能になっているのではないかと思われます。

既存の有効成分を含む医薬品

すでに他の薬剤として承認されている成分を用いた医薬品が3品目審議されています。

ロラピタ静注

  • 医薬品名:ロラピタ静注2mg
  • 成分名:ロラゼパム
  • 申請者:ファイザー
  • 効能・効果:てんかん重積状態

同成分としてワイパックス錠がありますが、その静注版です。
国際抗てんかん連盟によると「てんかん重積状態とは、発作停止機構の破綻あるいは発作を引き起こす状態が異常に遷延する状態」*1を指します。
てんかん重積状態の第一選択薬はジアゼパムまたはロラゼパムの静注とされていますが、ロラゼパム静注については国内未発売です。
そのため、 日本てんかん学会から治療薬の開発が要望され、厚労省からの開発要請を受けてファイザーが開発しました。

モビコール配合内用剤

  • 医薬品名:モビコール配合内用剤
  • 成分名:マクロゴール4000/塩化ナトリウム/炭酸水素ナトリウム/塩化ナトリウム
  • 申請者:EAファーマ
  • 効能・効果:慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)

マクロゴール4000を有効成分として用いたポリエチレングリコール製剤で、浸透圧性下剤です。
小児の便秘では、原則として浸透圧性下剤から治療を開始するようにされています。
そのため、日本小児栄養消化器肝臓学会から治療薬の開発が要望され、厚労省からの開発要請を受けてEAファーマと持田製薬が共同開発しました。
この2社の組み合わせはグーフィス錠と同じですね。

マクロゴール4000を有効成分としているものでは、同じくEAファーマの経口腸管洗浄剤モビプレップ配合内用剤がありますが、名前も組成も近くなっています。
モビコールは

  • 2歳から7歳未満の幼児
  • 7歳以上12歳未満の小児
  • 12歳以上

の3段階で用法・用量が設定されるようです。

メトアナ配合錠

  • 医薬品名:
    • メトアナ配合錠LD
    • メトアナ配合錠HD
  • 成分名:アナグリプチン/メトホルミン塩酸塩
  • 申請者:三和化学研究所
  • 効能・効果:2型糖尿病(ただし、アナグリプチン及びメトホルミン塩酸塩の併用による治療が適切と判断される場合に限る)
  • 用法・用量:通常、成人には1回1錠(アナグリプチ/メトホルミン塩酸塩として100mg/250mg又は100mg/500mg)を1日2回朝夕に経口投与する。

ビグアナイド薬(BG*2)メトグルコ(成分名:メトホルミン塩酸塩)とDPP-4阻害薬スイニー錠(成分名:アナグリプチン)の配合剤です。
メトホルミンとアナグリプチンで「メトアナ」、わかりやすいネーミングですね。

BG薬とDPP-4阻害薬の配合剤には

  • エクメット配合錠(成分名:ビルダグリプチン/メトホルミン塩酸塩):1日2回
  • イニシンク配合錠(成分名:アログリプチン安息香酸塩/メトホルミン塩酸塩):1日1回

がありますが、ここに割って入る意義があるのかどうか・・・。

報告品目

報告品目とは、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で薬食審の部会では審議は不要、報告のみで問題ないと判断されたものです。
既に承認されている医薬品と同じ薬理作用に基づく効能効果の追加や剤形追加、規格追加などが対象となることが多いです。

ラグノス経口ゼリー分包の新剤形・新適応

  • 医薬品名:ラグノスNF経口ゼリー分包12g
  • 成分名:ラクツロース
  • 申請者:三和化学研究所
  • 効能・効果:慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)

ラグノスゼリー分包16.05gの新剤型で適応違いになります。
有効成分がラクツロースなので浸透圧性下剤に分類されます。

現在使用されているラグノスゼリー分包16.05gの適応は以下の通りです。

  • 高アンモニア血症に伴う下記症候の改善
    • 精神神経障害
    • 手指振戦
    • 脳波異常
  • 産婦人科術後の排ガス・排便の促進

これに対して、ラグノスNF経口ゼリー分包12gの適応は「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」です。

ラクツロースを有効成分とする下剤にはモニラック・シロップ(ラクツロース・シロップには便秘の適応がありません)がありますが、便秘に関する適応は「小児における便秘の改善」となっており、成人に対する適応はありません。
これに対して、ラグノスNF経口ゼリー分包12gは成人のみの用法・用量となっています。

ところでNFですが、ラコールと同じく、新組成(New Formula)の略でしょうか?

ドブタミンに心エコー図検査における負荷に対する適応追加

  • 医薬品名(申請者):
    • ドブトレックス注射液100mg(共和薬品)
    • ドブトレックスキット点滴静注用200mg(共和薬品)
    • ドブトレックスキット点滴静注用600mg(共和薬品)
    • ドブタミン点滴静注液100mg「ファイザー」(マイラン製薬)
    • ドブタミン点滴静注液200mgキット「ファイザー」(マイラン製薬)
    • ドブタミン点滴静注液600mgキット「ファイザー」(マイラン製薬)
  • 成分名:ドブタミン
  • 申請者:
  • 追加される効能・効果:心エコー図検査における負荷

*1:Trinka E, Cock H, Hesdorffer D et al: A definition and classification of status epilepticus – Report of the ILAE Task Force on Classification of Status Epilepticus. Epilepsia 56: 1515-1523, 2015.

*2:BiGanide

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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