厚生労働省の薬食審医薬品第一部会が平成30年7月27日に開催され、日本ベーリンガーインゲルハイムが申請したトラディアンス配合錠の承認が了承されました。
その名前から話かる通り、DPP-4阻害薬トラゼンタとSGLT2阻害薬ジャディアンスの配合剤です。
近いうちに正式に承認となる予定です。
また、リンゼス錠の「慢性便秘症」の適応追加が了承されています。(こちらは平成30年8月21日に正式に承認されました。)
新規医薬品(1品目のみ)
今回審議が行われた医薬品はトラディアンス配合錠のみでした。
トラゼンタとジャディアンスの配合剤はトラディアンス配合錠
- 医薬品名
- トラディアンス配合錠AP
- トラディアンス配合錠BP
- 成分名:リナグリプチン/エンパグリフロジン
- 申請者:日本ベーリンガーインゲルハイム
- 効能・効果:2型糖尿病(ただし、リナグリプチン及びエンパグリフロジンの併用による治療が適切と判断される場合に限る)
- 用法・用量(仮):通常、成人には1日1回1錠(リナグリプチン/エンパグリフロジンとして5mg/10mg又は5mg/25mg)を朝食前又は朝食後に経口投与する。
用法・用量については勝手に予想して記載しました。
国内3番目のDPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬配合剤
DPP-4阻害薬のトラゼンタ錠(成分名:リナグリプチン)とSGLT2阻害薬のジャディアンス錠(成分名:エンパグリフロジン)の配合剤です。
同様の配合剤としては、
- カナリア配合錠(成分名:テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物/カナグリフロジン水和物)
- スージャヌ配合錠(成分名:シタグリプチンリン酸塩水和物/イプラグリフロジンL-プロリン)
に続く3剤目になります。
AP/BPの2規格が存在しますが、成分含有量は以下の通りになっています。
- トラディアンス配合錠AP:リナグリプチン5mg/エンパグリフロジン10mg
- トラディアンス配合錠BP:リナグリプチン5mg/エンパグリフロジン25mg
配合剤である以上、他のものと同じように、少なくともどちらかの成分を使用していて効果不十分の場合にのみ使用可能ということになりそうです。
トラディアンス配合錠はDPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬配合剤の中で唯一複数の規格をもつ薬剤になります。
これがメリットとなるか煩雑化となるか・・・。
DPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬配合剤のまとめ
現時点(平成30年7月時点)で判明しているDPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬配合剤についてまとめておきます。
配合剤名 | DPP-4阻害薬 | SGLT2阻害薬 |
---|---|---|
カナリア配合錠 | テネリグリプチン 20mg (テネリア錠20mg) | カナグリフロジン 100mg (カナグル錠100mg) |
スージャヌ配合錠 | シタグリプチン 50mg (ジャヌビア錠50mg) | イプラグリフロジン 50mg (スーグラ錠50mg) |
トラディアンス配合錠AP | リナグリプチン 5mg (トラゼンタ錠5mg) | エンパグリフロジン 10mg (ジャディアンス錠10mg) |
トラディアンス配合錠BP | エンパグリフロジン 25mg (ジャディアンス錠25mg) |
報告品目など
PMDA*1の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたものです。
リンゼスに便秘症の適応追加
平成30年8月21日、正式に承認されました。
「リンゼス®錠0.25mg」について 日本で慢性便秘症の効能・効果で追加承認取得
リンゼス錠0.25mg 添付文書
リンゼス錠0.25mg インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- リンゼス錠0.25mg:89.90円/錠
- 成分名:リナクロチド
- 申請者:アステラス製薬
- 追加される効能・効果:慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)
- 用法・用量:通常、成人にはリナクロチドとして0.5mgを1日1回、食前に経口投与する。なお、症状により0.25mgに減量する。
- 1日薬価:179.8円
リンゼス錠の作用機序と特徴
リンゼスの作用機序について復習しておきます。
リンゼス錠(成分名:リナクロチド)は酸化マグネシウムやセンノシド等の古典的な下剤とは異なる作用機序を持つ新規便秘改善薬(上皮機能変容薬)の一つです。
リンゼス錠の有効成分であるリナクロチドは腸管上皮細胞に存在するグアニル酸シクラーゼC(GC-C*2)受容体のアゴニストとして作用します。
リナクロチドの働きにより活性化されたGC-Cは、細胞内のcGMP濃度を増加させます。
cGMP*3の働きにより、腸管分泌促進作用、小腸輸送能促進作用が促され、便秘症の改善に繋がります。
リンゼス錠は元々「便秘型過敏性腸症候群」の適応をもつ薬剤として発売されましたが、cGMPの増加が排便を促すと同時に、大腸痛覚過敏改善作用を示すことが理由です。
腸管からの吸収がほとんど見られないため、腎機能低下などを気にせず使えることもこの薬剤のメリットです。
ただし、用法が「食前服用」となっているため、服用が難しいケースがあるかもしれません。(食後に投与することで下痢が多くなるとの報告あり*4)
また、湿気に弱いため服用直前に包装から取り出すようにされており、一包化不可なのも欠点です。
慢性便秘症の適応追加に伴う留意事項
今回の慢性便秘症の適応追加に伴い、厚生労働省から留意事項が出されています。
医薬品医療機器等法上の効能・効果等の変更に伴う留意事項の一部改正等について(保医発0821第1号 平成30年8月21日)
1 効能・効果等の一部変更承認に伴う留意事項について
リンゼス錠0.25mg
本製剤の器質的疾患による便秘を除く慢性便秘症への使用に当たっては、他の便秘症治療薬(ルビプロストン製剤及びエロビキシバット水和物製剤を除く。)で効果不十分な場合に使用すること。
要は、ルビプロストン(アミティーザ)、エロビキシバット(グーフィス)同様に慢性便秘症の第一選択として使用しないようにということですね。
これに合わせて、アミティーザとグーフィスの一部留意事項も変更されています。
2 効能・効果等の一部変更承認に伴う留意事項の一部改正について
- (4)「使用薬剤の薬価(薬価基準)等の一部改正について」(平成24年11月22日付 け保医発 1122 第3号)の記の2の(1)を次のように改める。
(1)アミティーザカプセル24μg
本製剤の使用に当たっては、他の便秘症治療薬(エロビキシバット水和物製剤及びリナクロチド製剤を除く。)で効果不十分な場合に、器質的疾患による便秘を除く慢性便秘症の患者へ使用すること。- (5)「使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について」(平成30年4月17日付け 保医発 0417 第3号)の記の3の(2)を次のように改める。
(2)グーフィス錠5mg
本製剤の使用に当たっては、他の便秘症治療薬(ルビプロストン製剤及びリナクロチド製剤を除く。)で効果不十分な場合に、器質的疾患による便秘を除く慢性便秘症の患者へ使用すること。
ファブラザイム点滴静注のBS
- 医薬品名
- アガルシダーゼ ベータBS点滴静注5mg「JCR」
- アガルシダーゼ ベータBS点滴静注35mg「JCR」
- 成分名:アガルシダーゼ ベータ(遺伝子組換え)[アガルシダーゼベータ後続1]
- 申請者:JCRファーマ
- 効能・効果:ファブリー病
- 用法・用量:通常、アガルシダーゼ ベータ(遺伝子組換え)として、1回体重1kgあたり1mgを隔週、点滴静注する。
ファブラザイムの初のバイオ後続品になります。
その他
今回の部会ではその他の内容についても報告されています。
フェブリクの最審査期間延長
フェブリク錠は現在再審査期間中(2019年1月20日)ですが、その期間がさらに2年間延長となることが報告されています。
結果、フェブリク錠(成分名:フェブキソスタット)の再審査期間は2021年1月20日までになります。
フェブリクが疼痛・高尿酸血症の小児適応を取得するための試験を行うことが理由のようです。
公知申請:イムラン錠、アザニン錠への自己免疫性肝炎の適応追加
イムラン錠/アザニン錠(成分名:アザチオプリン)に対する「自己免疫性肝炎」の適応追加について、公知申請が了承されています。
今後は、「自己免疫性肝炎」に対して保険適応となります。