オゼックスによる腎性尿崩症、マリゼブ・オングリザ・ザファテックによる類天疱瘡など〜平成30年4月19日使用上の注意改訂指示

平成30年4月19日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品について、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回は6つの成分に対して以下のような改訂指示が出されています。

  • トスフロキサシン(オゼックス)による腎性尿崩症
  • オマリグリプチン(マリゼブ)・サキサグリプチン(オングリザ)・トレラグリプチン(ザファテック)による類天疱瘡
  • ペムブロリズマブ(キイトルーダ)による硬化性胆管炎
  • クラドリビン(ロイスタチン)による進行性多巣性白質脳症

※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。

使用上の注意の改訂指示(平成30年4月19日)

PMDAへのリンクを貼っておきます。

トスフロキサシン(オゼックス)による腎性尿崩症

オゼックス錠 添付文書
オゼックス細粒小児用15% 添付文書
トスフロキサシントシル酸塩水和物(経口剤) の「使用上の注意」の改訂について

添付文書改訂の対象となる医薬品の名称は以下のとおりです。

  • オゼックス錠150
  • オゼックス錠75
  • トスキサシン錠150mg
  • トスキサシン錠75mg
  • トスフロキサシントシル酸塩錠150mg
  • トスフロキサシントシル酸塩錠75mg
  • オゼックス細粒小児用15%
  • トスフロキサシントシル酸塩小児用細粒15%

トスフロキサシンは富山化学工業によって合成されたニューキノロン系抗菌薬です。
呼吸器感染症の原因菌にも効果を発揮するレスピラトリーキノロンの一つで、数少ない小児にも使用できるニューキノロン系抗菌薬になります。

添付文書改訂内容

添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項の急性腎障害、間質性腎炎に関する記載に下線部が追記されます。

「急性腎障害、間質性腎炎、腎性尿崩症:急性腎障害、間質性腎炎、腎性尿崩症等の重篤な腎障害があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。」

腎性尿崩症とは?

腎性尿崩症については重篤副作用疾患別対応マニュアルが作成されているので、以下のリンクから閲覧してもらえたらと思います。
腎性尿崩症(重篤副作用疾患別対応マニュアル)

腎性尿崩症は1日の尿が3リットル以上と増えてしまう病気で、多尿に伴い、のどの渇きや飲水の増加を認めます。高カルシウム血症、低カリウム血症、慢性腎盂腎炎により起こりますが、躁状態治療薬、抗リウマチ薬、抗HIV薬、抗菌薬、抗ウイルス薬などの医薬品により引き起こされる場合があります。医薬品を使用後に、次のような症状がみられ、その症状が持続する場合には、医師・薬剤師に連絡して、放置せず受診してください。
「尿量の著しい増加」、「激しい口渇」、「多飲」

症例報告

直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、トスフロキサシントシル酸塩の影響が疑われる腎性尿崩症関連症例が2例報告されており、そのうち2例は因果関係が否定できないものでした。
死亡例の報告はありません。

オマリグリプチン(マリゼブ)・サキサグリプチン水和物(オングリザ)・トレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック)による類天疱瘡

マリゼブ 添付文書
オングリザ 添付文書
ザファテック 添付文書
オマリグリプチン、トレラグリプチンコハク酸塩及びサキサグリプチン水和物の「使用上の注意」の改訂について

添付文書改訂の対象となる医薬品の名称は以下のとおりです。

  • オマリグリプチン
    • マリゼブ錠12.5mg
    • マリゼブ錠25mg
  • サキサグリプチン水和物
    • オングリザ錠2.5mg
    • オングリザ錠5mg
  • トレラグリプチンコハク酸塩
    • ザファテック錠50mg
    • ザファテック錠100mg

オマリグリプチン、サキサグリプチン水和物、トレラグリプチンコハク酸塩はいずれもDPP4(DiPeptidyl Peptidase 4)阻害薬に分類される糖尿病治療薬です。
特にオマリグリプチン、トレラグリプチンコハク酸塩は週1回投与製剤です。

添付文書改訂内容

添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に、以下の通り、類天疱瘡に関する記述が追記されます。

類天疱瘡:類天疱瘡があらわれることがあるので、水疱、びらん等があらわれた場合には、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

類天疱瘡は全てのDPP4阻害薬の副作用に

今回の改訂で、類天疱瘡は全てのDPP4阻害剤の添付文書に記載されている副作用ということになります。
DPP4阻害薬の副作用として順次追記されていったので当ブログの過去記事にもまとめてあります。
グラクティブ・ジャヌビア・エクア・エクメットの改訂の際の記事
ネシーナ・リオベル・トラゼンタ・テネリア・イニシンクの改訂の際の記事
(カナリアは上記記事の後に発売されたため、発売当初から記載)
スイニーの改訂の際の記事

類天疱瘡とは?

類天疱瘡とは、基底膜部(表皮と真皮の境の部分)に対する自己抗体(抗表皮基底膜部抗体)ができてしまった結果、基底膜部が破壊され、表皮と真皮の接着が悪くなり、水疱が引き起こされるもののようです。
天疱瘡とまとめて自己免疫性水疱症とも呼ばれます。
テトラサイクリン/ミノサイクリン・ニコチン酸アミドの内服併用、副腎皮質ステロイドの内服や外用、レクチゾールの内服、ロキシスロマイシン内服などの治療が行われるようです。

症例報告

直近3年度の国内における各薬剤ごとの類天疱瘡関連症例の集積状況についてまとめます。

  • オマリグリプチン(マリゼブ):8例(うち、因果関係が否定できない症例は3例)、死亡例なし
  • トレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック)0:7例(うち、因果関係が否定できない症例は1例)、死亡例なし
  • サキサグリプチン水和物(オングリザ):4例(うち、因果関係が否定できない症例は2例)、死亡例なし

 

ペムブロリズマブ(キイトルーダ)による硬化性胆管炎

キイトルーダ 添付文書
ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)の「使用上の注意」の改訂について

添付文書改訂の対象となる医薬品の名称は以下のとおりです。

  • キイトルーダ点滴静注20mg
  • キイトルーダ点滴静注100mg

ペムブロリズマブはヒト化モノクローナル抗体でPD-1阻害薬として癌免疫療法に使用されています。
いわゆる免疫チェックポイント阻害剤で、オブジーボに続いて発売された国内2番目の製剤になります。

添付文書改訂内容

添付文書の「重要な基本的注意」の項の肝機能障害に関する記載について下線部が追記されました。

(4)AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、Al-P、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害、硬化性胆管炎があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。

また、「副作用」の「重大な副作用」の項の肝機能障害、肝炎に関する記載について下線部が追記されました。

肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、Al-P、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、本剤の投与中止等の適切な処置を行うこと。

症例報告

直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、ペムブロリズマブの影響が疑われる硬化性胆管炎関連症例が7例報告されており、そのうち3例は因果関係が否定できないものでした。
死亡例が1例報告されていますが、因果関係を否定できないものではありませんでした。

クラドリビン(ロイスタチン)による進行性多巣性白質脳症

ロイスタチン 添付文書
クラドリビンの「使用上の注意」の改訂について

添付文書改訂の対象となる医薬品の名称は以下のとおりです。

  • ロイスタチン注8mg

ロイスタチン(クラドリビン)はヘアリー細胞白血病や再発・再燃または治療抵抗性の低悪性度またはろ胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫に対する適応を取得している用いられるプリン代謝拮抗剤です。
DNAの構成成分であるプリンに似た骨格を持つことで、DNAやRNAの合成・修復を阻害して、悪性腫瘍の増殖を抑制します。

添付文書改訂内容

添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に、以下の通り、進行性多巣性白質脳症(PML)に関する記載が追記されます。

進行性多巣性白質脳症(PML):進行性多巣性白質脳症(PML)があらわれることがあるので、本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害、視覚障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

進行性多巣性白質脳症(PML)とは?

進行性多巣性白質脳症(PML:Progressive Multifocal Leukoen- cephalopathy)とは、大脳皮質の内側に存在する白質と呼ばれる部分にJCウイルスが感染し、神経細胞の連絡繊維を壊してしまう結果、脳の機能を失ってしまう疾患です。
原因となるJCウイルスはヒトのポリオーマウイルスに属するウイルスで、健康星人の8割以上が感染しているウイルスです。
通常であれば、特別な症状を引き起こすことはありませんが、HIVによる感染や抗がん剤・免疫抑制剤により著しく免疫が低下した場合に、病原性が強くなり、脳に感染し、PMLを引き起こすと考えらています。

症例報告

直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、クラドリビンの影響が疑われる進行性多巣性白質脳症関連症例は報告されていませんが、海外症例が集積したこと等から、専門委員の意見も踏まえた結果、改訂することが適切と判断したそうです。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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