【令和5年2月14日付】GLP-1受容体作動薬、タゾバクタム・ピペラシリン水和物の添付文書改訂指示

令和5年2月14日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品等について、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回は2つの改訂指示が出されています。
※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。

PMDAへのリンクを貼っておきます。
令和4年度指示分 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

添付文書の改訂指示が出されたのは以下の3つです。

  • GLP-1作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬:急性胆道系疾患関連事象
    1. エキセナチド(バイエッタ皮下注ペン、ビデュリオン皮下注用ペン)
    2. セマグルチド(遺伝子組換え)(オゼンピック皮下注、オゼンピック皮下注SD、リベルサス錠)
    3. デュラグルチド(遺伝子組換え)(トルリシティ皮下注アテオス)
    4. リキシセナチド(リキスミア皮下注)
    5. リラグルチド(遺伝子組換え)(ビクトーザ皮下注)
    6. インスリングラルギン(遺伝子組換え)・リキシセナチド(ソリクア配合注ソロスター)
    7. インスリンデグルデク(遺伝子組換え)・リラグルチド(遺伝子組換え)(ゾルトファイ配合注フレックスタッチ)
    8. チルゼパチド(マンジャロ皮下注アテオス)
  • タゾバクタム・ピペラシリン水和物(ゾシン配合点滴静注用バッグ、ゾシン静注用、タゾピペ配合静注用、タゾピペ配合点滴静注用バッグ):血球貪食性リンパ組織球症

pmdaが発出する改定案の一部は旧記載要領と新記載要領の両方が掲載されるようになっています。

GLP-1受容体作動薬による急性胆道系疾患関連事象

GLP-1受容体作動薬に加えて、GLP-1アゴニスト作用を有するGIP/GLP-1受容体作動薬も改訂の対象となっています。
GIP/GLP-1受容体作動薬として承認されているのはチルゼパチド(マンジャロ皮下注アテオス)のみで、薬価収載前に添付文書の改訂が実施されます。

GLP-1受容体作動薬については、胆嚢・胆管疾患のリスク増加と関連が見られ、減量に用いた場合、高用量を用いた場合、長期間使用した場合については、特にリスク増加が大きいとするメタアナリシスも出されています。(JAMA Intern Med. 2022;182(5):513-519. doi:10.1001)

GLP-1受容体作動薬に対する改訂指示の内容

【新記載要領】に従ってまとめます。
下線部が追記された部分です。

まずは、添付文書の「8. 重要な基本的注意」に以下の内容が追加されています。

8. 重要な基本的注意
胆石症、胆嚢炎、胆管炎又は胆汁うっ滞性黄疸が発現するおそれがあるので、腹痛等の腹部症状がみられた場合には、必要に応じて画像検査等による原因精査を考慮するなど、適切に対応すること。

「11.副作用」の「11.1 重大な副作用」に以下の内容が追加されています。

11. 副作用
11.1 重大な副作用
胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸

GIP/GLP-1受容体作動薬に対する改定指示の内容

【新記載要領】に従ってまとめます。
下線部が追記、打消線が削除された部分です。

まずは、添付文書の「8. 重要な基本的注意」に以下の内容が追加されています。

8. 重要な基本的注意
胆嚢炎、胆石症等の急性胆道系疾患 胆石症、胆嚢炎、胆管炎又は胆汁うっ滞性黄疸が発現するおそれがあるので、腹痛等の腹部症状がみられた場合には、必要に応じて画像検査等による原因精査を考慮するなど、適切に対応すること。

「11.副作用」の「11.1 重大な副作用」に以下の内容が追加されています。

11. 副作用
11.1 重大な副作用
胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸

改訂理由

過去3年度で以下の通り、国内での急性胆道系疾患関連事象(胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸)に関する症例報告が集積されています。

  1. エキセナチド(バイエッタ皮下注ペン、ビデュリオン皮下注用ペン):13例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例8例)【死亡0例】
  2. セマグルチド(遺伝子組換え)(オゼンピック皮下注、オゼンピック皮下注SD、リベルサス錠):3例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例1例)【死亡0例】
  3. デュラグルチド(遺伝子組換え)(トルリシティ皮下注アテオス):4例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例1例)【死亡0例】
  4. リキシセナチド(リキスミア皮下注):23例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例6例)【死亡0例】
  5. リラグルチド(遺伝子組換え)(ビクトーザ皮下注):3例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例1例)【死亡0例】
  6. インスリングラルギン(遺伝子組換え)・リキシセナチド(ソリクア配合注ソロスター):1例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例0例)【死亡0例】
  7. インスリンデグルデク(遺伝子組換え)・リラグルチド(遺伝子組換え)(ゾルトファイ配合注フレックスタッチ):1例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例0例)【死亡0例】
  8. チルゼパチド(マンジャロ皮下注アテオス):0例

改訂の理由及び調査の結果として以下のように記載されています。

  • GLP-1受容体作動薬含有製剤と急性胆道系疾患関連症例(胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸)との因果関係が否定できない国内症例が集積したこと
  • GLP-1受容体作動薬の胆嚢収縮抑制作用等の薬理機序から、胆石発生が促され、胆嚢炎等の急性胆道系疾患が引き起こされる可能性があること
  • GLP-1受容体作動薬の使用により急性胆道系疾患のリスク上昇を示唆する公表文献が複数報告されていること(JAMA Intern Med 2022; 182: 513-9、JAMA Intern Med 2016; 176: 1474-81 等)

また、チルゼパチド(マンジャロ皮下注アテオス)については、症例集積はないものの、 GLP-1アゴニスト作用を有するため、GLP-1受容体作動薬と同様の副作用が起こる可能性が否定できず、使用上の注意を改訂することが適切と判断されたと記載されています。

タゾバクタム・ピペラシリン水和物による血球貪食性リンパ組織球症

血球貪食性リンパ組織球症(HLH:Hemophagocytic LymphoHistiocytosis)は、マクロファージやリンパ球が過剰に活性化してしまうことで、制御不能な免疫機能障害を引き起こす疾患です。

改定指示の内容

【旧記載要領】に従ってまとめます。
下線部が追記された部分です。

「副作用」の「重大な副作用」に以下の内容が追加されています。

副作用
重大な副作用
血球貪食性リンパ組織球症(血球貪食症候群):血球貪食性リンパ組織球症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、発熱、発疹、神経症状、脾腫、リンパ節腫脹、血球減少、LDH上昇、高フェリチン血症、高トリグリセリド血症、肝機能障害、血液凝固障害等の異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

改訂理由

過去3年度で以下の通り、血球貪食性リンパ組織球症に関する症例報告が集積されています。

  • 国内:15例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例5例)【死亡2例(うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例0例)】
  • 海外:26例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例3例)【死亡1例(うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例0例)】

※旧製剤(タゾバクタム:ピペラシリン水和物の力価比1:4の配合剤)での報告を含む

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