ロチゴチンによる横紋筋融解症、アロプリノールによる無菌性髄膜炎、DAAの重要な基本的注意改訂など〜2020年2月25日添付文書改訂指示

令和2年2月25日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品等について、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回は大きく分けて6つの改訂指示が出されています。

※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。

使用上の注意の改訂指示(令和2年2月25日)

PMDAへのリンクを貼っておきます。
令和元年度指示分 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

添付文書の改訂が実施されたのは大きく分けて以下の5つです。

  • ロチゴチン(ニュープロパッチ):横紋筋融解症
  • アロプリノール(ザイロリック錠 等):無菌性髄膜炎
  • 三酸化二ヒ素(トリセノックス注):ウェルニッケ脳症
  • 抗HCV DAA:ワルファリン、タクロリムス、インスリンなどの併用薬の用量調節に関する注意喚起
  • ホスラブコナゾールL-リシンエタノール付加物(ネイリンカプセル):多形紅斑
  • アミノレブリン酸塩酸塩( アラグリオ顆粒剤分包、 アラベル内用剤):低血圧

ちなみに、今年度からpmdaが発出する改定案の一部は旧記載要領と新記載要領の両方が掲載されるようになっています。

現時点で各医薬品が採用している記載方式に従ってまとめます。

ロチゴチン貼付剤による横紋筋融解症

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

  • ロチゴチン
    • ニュープロパッチ

改訂指示の内容

【旧記載要領】に従ってまとめます。
添付文書の重大な副作用に以下の内容が追加されます。

11.副作用
重大な副作用
横紋筋融解症:筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、横紋筋融解症による急性腎障害の発症に注意すること。
引用元:添付文書改訂のお知らせ(ニュープロ パッチ2.25mg、4.5mg、9mg、13.5mg、18mg)

改訂理由

過去3年度で以下の通り国内での症例報告が集積されています。

  • 横紋筋融解症関連症例:4例(因果関係が否定できないもの3例)、死亡例なし

国内症例が集積したため、今回の改訂が望ましいと判断されました。

使用上の注意改訂のお知らせ

お知らせへのリンクです。

アロプリノールによる無菌性髄膜炎

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

  • アロプリノール
    • ザイロリック錠
    • アノプロリン錠
    • アロプリノール錠「各社」
    • サロベール錠
    • ノイファン錠

改訂指示の内容

【新記載要領】に従ってまとめます。
添付文書の11.重大な副作用に以下の内容が追加されます。

11.1 重大な副作用
11.1.9 無菌性髄膜炎(頻度不明)
項部硬直、発熱、頭痛、悪心・嘔吐又は意識障害等の症状を伴う無菌性髄膜炎があらわれることがある。なお、本剤投与後数時間で発症した例も報告されている。
引用元:ザイロリック錠50、ザイロリック錠100の使用上の注意改訂のお知らせ

改訂理由

過去3年度で国内での無菌性髄膜炎関連症例の報告はありませんでしたが、海外症例が集積したことから今回の改訂が望ましいと判断されました。

使用上の注意改訂のお知らせ

お知らせへのリンクです。

三酸化ヒ素による無菌性髄膜炎

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

  • 三酸化ヒ素
    • トリセノックス注10mg

改訂指示の内容

【旧記載要領】に従ってまとめます。
添付文書の重大な副作用に以下の内容が追加されます。

重大な副作用
5) ウェルニッケ脳症(頻度不明)
ウェルニッケ脳症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、意識障害、運動失調、 眼球運動障害等の症状が認められた場合には、ビタミンB1の測定、MRIによる画像診断等を行うとともに、ビタミンB1の投与、本剤の中止等の適切な処置を行うこと。
引用元:トリセノックス注10mg「使用上の注意」改訂のお知らせ

改訂理由

過去3年度で国内でのウェルニッケ脳症関連症例の報告はありませんでしたが、

  • 安全性プロファイルに国内外の民族差があるとの知見は現時点で得られていない
  • 本邦における効能・効果は「再発又は難治性の急性前骨髄球性白血病」であり、国内で投与される患者数は極めて少ない

以上2点に加え、海外症例が集積したことから今回の改訂が望ましいと判断されました。

使用上の注意改訂のお知らせ

お知らせへのリンクです。

抗HCV*1 DAA服用時のワルファリン、タクロリムス、インスリンなどの併用薬の用量調節に関する注意喚起

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

  • アスナプレビル:スンベプラカプセル
  • エルバスビル:エレルサ錠
  • グラゾプレビル水和物:グラジナ錠
  • グレカプレビル水和物・ピブレンタスビル:マヴィレット配合錠
  • ソホスブビル:ソバルディ錠
  • ソホスブビル・ベルパタスビル:エプクルーサ配合錠
  • ダクラタスビル塩酸塩:ダクルインザ錠
  • ダクラタスビル塩酸塩・アスナプレビル・ベクラブビル塩酸塩:ジメンシー配合錠
  • レジパスビル アセトン付加物・ソホスブビル:ハーボニー配合錠

※C型肝炎又はC型代償性肝硬変に対する直接型抗ウイルス薬(DAA*2

改訂指示の内容

【旧記載要領】に従ってまとめます。
添付文書の 使用上の注意 > 2. 重要な基本的注意 に以下の内容が追加されます。

使用上の注意
2. 重要な基本的注意
C型肝炎直接型抗ウイルス薬を投与開始後、ワルファリンやタクロリムスの増量、低血糖によりインスリン等の糖尿病治療薬の減量が必要となった症例が報告されており、本剤による抗ウイルス治療に伴い、使用中の併用薬の用量調節が必要になる可能性がある。特にワルファリン、タクロリムス等の肝臓で代謝される治療域の狭い薬剤や糖尿病治療薬を使用している患者に本剤を開始する場合には、原則、処方医に連絡するとともに、PT-INRや血中薬物濃度、血糖値のモニタリングを頻回に行うなど患者の状態を十分に観察すること。
引用元:マヴィレット 使用上の注意改訂のお知らせ

改訂理由

症例報告に基づくものではなく、文献報告から検討が勧められ改訂に至りました。

C型慢性肝炎又はC型代償性若しくは非代償性肝硬変に対する直接型抗ウイルス薬を投与開始後、ワルファリン、タクロリムス、インスリン等の併用薬の用量調節が必要になる可能性が複数の文献にて報告されていること等*から、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。

:本検討に関連し、MID-NET®を用いた調査を行った。

引用元:

ワルファリン服用患者におけるC型肝炎治療薬による血液凝固能への影響に関する調査についても報告されています。
ワルファリン服用患者におけるC型肝炎治療薬による血液凝固能への影響に関する調査

使用上の注意改訂のお知らせ

お知らせへのリンクです。

ホスラブコナゾールによる多形紅斑

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

  • ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物
    • ネイリンカプセル100mg

改訂指示の内容

【旧記載要領】に従ってまとめます。
添付文書の重大な副作用に以下の内容が追加されます。

重大な副作用
2)多形紅斑(頻度不明):多形紅斑があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
引用元:ネイリン®カプセル100mg 使用上の注意改訂のお知らせ

改訂理由

過去3年度(といってもネイリンは2018年7月に販売開始)で以下の通り国内での症例報告が集積されています。

  • 多形紅斑関連症例:8例(因果関係が否定できないもの5例)、死亡例なし

国内症例が集積したため、今回の改訂が望ましいと判断されました。

使用上の注意改訂のお知らせ

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アミノレブリン酸塩酸塩による多形紅斑

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

  • アミノレブリン酸塩酸塩
    • アラグリオ顆粒剤分包1.5g
    • アラベル内用剤1.5g

改訂指示の内容

【旧記載要領】に従ってまとめます。
添付文書の重大な副作用に以下の内容が追加されます。

重大な副作用
2) 低血圧(頻度不明):低血圧があらわれることがあるので、十分に観察を行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。手術後も、低血圧が遷延し、昇圧剤の持続投与が必要な症例が報告されている。
引用元:アラベル®内用剤1.5g 使用上の注意改訂のお知らせ

改訂理由

過去3年度で以下の通り国内での低血圧関連症例が集積されています。

  • アラグリオ顆粒剤分包1.5g(経尿道的膀胱腫瘍切除術時における筋層非浸潤性膀胱癌の可視化):24例(因果関係が否定できないもの15例)、死亡例なし
  • アラベル内用剤1.5g(悪性神経膠腫の腫瘍摘出術中における腫瘍組織の可視化):2例(因果関係が否定できないもの2例)、死亡例なし

※アラグリオ顆粒剤分包1.5gは2017年12月からの発売
国内症例が集積したため、今回の改訂が望ましいと判断されました。

使用上の注意改訂のお知らせ

お知らせへのリンクです。

*1:Hepatitis C Virus

*2:Direct-Acting Antiviral

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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