2018年4月11日、厚労省の中医協・総会で新規医薬品の薬価が決定し、4月18日に薬価収載されました。
- エビリファイと比較してアカシジア等の副作用が少ないとされる新規統合失調治療薬レキサルティ
- ゼチーアと同じ薬価にも関わらずアトルバスタチンが配合されているアトーゼット配合錠
- 胆汁酸トランスポーターを阻害する新規抗便秘薬グーフィス
- 高力価とした上で小児適応を取得したシダキュア舌下錠
- レミカットカプセルの経皮吸収製剤アレサガテープ
この辺りが気になりますねー。
ちなみに、パルモディアは今回も見送りのようです。
承認されたのが昨年7月なんですが、いつ発売されるんでしょうね?(2018年5月22付でようやく薬価収載、6月1日に発売されました)
新規成分を使用する医薬品
まずは新規有効成分を有する医薬品からまとめます。
新規統合失調治療薬 レキサルティ
平成30年4月18日発売
レキサルティ錠 添付文書
レキサルティ錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- レキサルティ錠1mg:268.90円/錠
- レキサルティ錠2mg:509.20円/錠
- 成分名:ブレクスピプラゾール
- 申請者:大塚製薬
- 効能・効果:「統合失調症」
- 用法・用量:通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgから投与を開始した後、4日以上の間隔をあけて増量し、1日1回2mgを経口投与する。
- 一日薬価:509.20円
エビリファイの兄弟分
ブレクスピプラゾールはアリピプラゾールの構造変換を行うことで発見された医薬品です。
エビリファイと比較してアカシジア等の副作用が少なく、継続して服用しやすいと言われています。
※アカシジア:ドパミンD2受容体拮抗作用により引き起こされる錐体外路症状の一種。座っていることができない、じっとしていられなき、下肢のむずむず感などの症状。
レキサルティの有効成分であるブレクスピプラゾールはエビリファイの有効成分であるアリピプラゾールと比較して、セロトニン5-HT1A・5-HT2Aに対する親和性が高くなっていることから、錐体外路症状や高プロラクチン血症の軽減をはかりつつ、陰性症状に対する作用が高くなることが期待されます。
これらの背景からレキサルティはスーパーエビリファイとも言われています。
ですが、全く別物と考えてもいい気がするので、どちらかというと兄弟って感じなのかなあ?
用法・用量で気になるのが、「適宜増減」がないというところです・・・。
これはちょっと注意が必要かも。
セロトニン-ドパミン アクティビティ モデュレーター
ブレクスピプラゾールはその作用機序から、SDAMと呼ばれています。
SDAMとはSerotonin-Dopamine Activity Modulator(セロトニン-ドパミン アクティビティ モデュレーター)の略で、ドパミンD2受容体とセロトニン5HT1A受容体に対してはパーシャルアゴニストとして働き、セロトニン5HT2A受容体にはアンタゴニストとして働くという性質を持っています。
ちなみに、エビリファイの成分であるアリピプラゾールはDSS=Dopamine System Stabilizer(ドパミン・システムスタビライザー)と呼ばれており、脳内のドパミン放出量によって抑制的にも刺激的のも働く性質を持っています。
薬物相互作用・遺伝子多型により用法に注意が必要
レキサルティの有効成分であるブレクスピラゾールは肝代謝酵素CYP3A4及びCYP2D6で代謝されます。
この2つの分子種に影響する薬剤は多いので様々な薬物との相互作用が想定されますが、レキサルティは少し複雑な内容になっています。
併用注意(併用に注意すること)
- CYP2D6阻害作用を有する薬剤
キニジン、パロキセチン等- 強いCYP3A4阻害作用を有する薬剤
イトラコナゾール、クラリスロマイシン等
用法及び用量に関連する使用上の注意
- 本剤とCYP2D6阻害剤(キニジン、パロキセチン等)及び/又は強いCYP3A4阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を併用する場合及びCYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者(Poor Metabolizer)では、本剤の血漿中濃度が上昇するおそれがあるため、以下の表を参考に用法・用量の調節を行うこと。
- CYP2D6阻害剤又は強いCYP3A4阻害剤のいずれかを併用:1回1mgを1日1回
- CYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者:1回1mgを1日1回
- CYP2D6阻害剤及び強いCYP3A4阻害剤のいずれも併用:1回1mgを2日に1回
- CYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者が強いCYP3A4阻害剤を併用:1回1mgを2日に1回
併用薬のチェックをしっかり行わないといけないのはもちろんですが、「CYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者」についてどのように対応するかが問題ですね。
日本人のうちCYP2D6のPM(Poor Metabolizer)は1%程度とは言われていますが・・・。
参考薬価
参考薬価としてエビリファイの薬価をまとめておきます。
- エビリファイ錠1mg:29.50円/錠
- エビリファイ錠3mg/OD錠3mg:66.90円/錠
- エビリファイ錠6mg/OD錠6mg:127.30円/錠
- エビリファイ錠12mg/OD錠12mg:241.10円/錠
- エビリファイOD錠24mg:499.20円/錠
グーフィス錠
平成30年4月19日発売
グーフィス錠 添付文書
グーフィス錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- グーフィス錠5mg:105.80円/錠
- 成分名:エロビキシバット水和物
- 申請者:EAファーマ
- 効能・効果:「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」
- 用法・用量:通常、成人にはエロビキシバットとして10mgを1日1回食前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、最高用量は1日15mgとする。
- 一日薬価:215.20円
胆汁酸トランスポーター阻害薬
グーフィスの有効成分であるエロビキシバットは回腸末端部の上皮細胞に存在する胆汁酸トランスポーター(IBAT:Ileal Bile Acid Transporter)を阻害することで効果を発揮します。
この作用機序からもわかるように、元々は高脂血症治療薬としての効果が期待された薬剤ですが、そちらの方では思うような効果は発揮されず、慢性便秘症治療薬に切り替えて開発されたという経緯があります。
Dual Actionにより効果を発揮
グーフィスの売りとされているのが、「Dual Action」、つまり二種類の作用です。
IBATを阻害することで胆汁酸は再吸収を受けずに大腸に流入します。
その結果、
- 水分分泌
- 大腸運動促進
という2つの作用が発揮されるというわけです。
プラセボと比較して、自発排便だけでなく、完全自発排便(残便感のない排便)が優位に多くなるということで期待がもたれます。
ですが、効果発現時間の中央値が5時間程度ということに加えて、胆汁酸の分泌がないと薬剤の効果が十分に発揮されないため食前の服用となっていることから、どうしても効果が発現されるのが日中となってしまうのが少し残念な点かもしれません。
参考薬価
おそらく比較されるであろう以下の薬剤の薬価を載せておきます。
- アミティーザカプセル24μg:123.00円/カプセル(1日薬価:246.0円)
- リンゼス錠0.25mg:89.90円/錠(1日薬価:179.8円)
リムパーザ錠
平成30年4月18日発売
リムパーザ錠 添付文書
リムパーザ錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- リムパーザ錠100mg:3996.00円/錠
- リムパーザ錠150mg:5932.50円/錠
- 成分名:オラパリブ
- 申請者:アストラゼネカ
- 効能・効果:「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法」
- 用法・用量:通常、成人にはオラパリブとして300mgを1日2回、経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
- 一日薬価:23730円
日本初のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬
損傷した遺伝子を修復するための酵素の一つであるPARP(poly[ADP]- ribosepolymerase)を阻害することにより効果を発揮する薬剤です。
PARP以外の損傷した遺伝子を修復するための酵素としてBRCA(BReast CAncer susceptibility gene、乳がん感受性遺伝子)が存在します。
通常の(BRCAに変異がない)細胞にPARP阻害薬が作用したとしても、PARP以外の経路(BRCA)によりDNAの損傷は修復されるため、細胞死が引き起こされることはありませんが、BRCA1/BRCA2などに変異を持つ細胞に対してPARP阻害薬が作用すると、DNAの損傷が修復できず、細胞死が引き起こされるというわけです。
BRCA1/BRCA2はがん抑制遺伝子の一つとして知られており、ここに変異を起こすと損傷したDNAが修復できずに発ガンを起こしてしまいます。
PARPはその性質を弱点として攻める薬剤と言えます。
新規作用機序を有する薬剤ということで有用性加算(II)(A=5%)が付いています。
保険外併用療養費制度の対象
再発卵巣がんについては治療選択肢が極めて限られており、アストラゼネカは厚労省の「保険外併用療養費制度」のもとで薬価収載前日まで無償提供を実施しており、それも話題になった薬剤です。
サチュロ錠
平成30年5月8日発売
サチュロ錠 添付文書
サチュロ錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- サチュロ錠100mg:2万1872.50円/錠
- 成分名:ベダキリンフマル酸塩
- 申請者:ヤンセンファーマ
- 効能・効果
- 適応菌種:本剤に感性の結核菌
- 適応症:多剤耐性肺結核
- 通常、成人には投与開始から2週間はベダキリンとして1日1回400mgを食直後に経口投与する。その後、3週以降は、ベダキリンとして1回200mgを週3回、48時間以上の間隔をあけて食直後に経口投与する。投与に際しては、必ず他の抗結核薬と併用すること。
- 一日薬価:2万4476.40円
ジアリルキノリン系抗結核薬
従来の抗結核薬とは異なる作用機序を持つため、多剤耐性肺結核に対する適応を取得しています。
ベダキリンは結核菌のアデノシン5-三リン酸合成酵素を阻害することで、結核菌のエネルギー生成を抑制します。
その結果、増殖期及び休眠期の結核菌の全てに対して抗菌活性を示します。
ファセンラ皮下注
平成30年4月18日発売
ファンセラ皮下注 添付文書
ファンセラ皮下注 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- ファセンラ皮下注30mgシリンジ:35万1535円/筒
- 成分名:ベンラリズマブ(遺伝子組換え)
- 申請者:アストラゼネカ
- 効能・効果:気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)
- 通常、成人にはベンラリズマブ(遺伝子組換え)として1回30mgを、初回、4週後、8週後に皮下に注射し、以降、8週間隔で皮下に注射する。
- 一日薬価:6277円
ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤
好酸球の表面に発現するIL-5(インターロイキン-5)受容体αに作用し、ADCC(Antibody- Dependent-Cellular-Cytotoxicity、抗体依存性細胞傷害)活性を高めることで、好酸球を除去し症状を抑えます。
使い切りの製剤で初回、4週間後、8週間後と使用し、そのあとは8週間ごとの皮下注となる。
ベスポンサ点滴静注用
平成30年4月18日発売
ベスポンサ点滴静注用1mg 添付文書
ベスポンサ点滴静注用1mg インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- ベスポンサ点滴静注用1mg:130万7092円/瓶
- 成分名:イノツズマブオゾガマイシン(遺伝子組換え)
- 申請者:ファイザー
- 効能・効果:再発又は難治性のCD22陽性の急性リンパ性白血病
- 用法・用量:通常、成人にはイノツズマブ オゾガマイシン(遺伝子組換え)として1日目は0.8mg/m2(体表面積)、8及び15日目は0.5mg/m2(体表面積)を1日1回、1時間以上かけて点滴静脈内投与した後、休薬する。1サイクル目は21~28日間、2サイクル目以降は28日間を1サイクルとし、投与を繰り返す。投与サイクル数は造血幹細胞移植の施行予定を考慮して決定する。なお、患者の状態により適宜減量する。
抗体-薬物複合体
イノツズマブオゾガマイシンは抗体部分であるイノツズマブに薬物部分であるオゾガマイシンを結合させた抗体-薬物複合体(ADC:Antibody-Drug Conugate)です。
抗体部分のイノツズマブがB細胞性急性リンパ性白血病のがん細胞の表面に発現するCD22抗原を標的として結合し、細胞傷害性を有するオゾガマイシンが細胞を破壊することで効果を発揮します。
ベスポンサは日本初かつ唯一のCD22を標的とするADCになり、急速に悪化する再発・難治性の急性リンパ性白血病(ALL:Acute Lymphocytic Leukemia)に対する貴重な選択肢になります。
新規作用機序を有する薬剤ということで有用性加算(II)(A=10%)、また、希少病医薬品の指定を受けているため市場性加算(A=10%)が付いています。
イストダックス点滴静注用
平成30年4月18日発売
イストダックス点滴静注用 添付文書
イストダックス点滴静注用 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- イストダックス点滴静注用10mg:109753円/瓶
- 成分名:ロミデプシン
- 申請者:セルジーン
- 効能・効果:再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫
- 用法・用量:通常、成人にはロミデプシンとして14mg/m2(体表面積)を1、8、15日目に4時間かけて点滴静注した後、休薬(16~28日目)する。この28日間を1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
- 1日薬価:24694円
ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬
ロミデプシンはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC:Histone DeACetylase)阻害剤に分類されます。
DNAは二重らせんのまま存在するのではなく、ヒストンというタンパク質に絡みつき、コンパクトに折り畳まれたクロマチンという形で存在しています。
DNAがヒストンに絡みついていると転写因子等が働きにくく転写は抑制された状態です。
逆に、ヒストンから開放された状態であれば転写が活性化された状態になります。
DNAとヒストンの結合は、ヒストンがアセチル化されている(ヒストンアセチル化転移酵素)と弱くなり、脱アセチル化される(HDAC:ヒストン脱アセチル化酵素)と強くなります。
ある種の癌ではHDACが優位になっており、その結果、がん抑制遺伝子が活性化されず癌の増殖が進んでしまいます。
そのようなケースでは、HDAC活性を阻害することで、がん細胞の周期を停止させたり、細胞死を誘導し、腫瘍増殖を抑制することが期待できるといわれています。
参考薬価
国内ですでに発売されているHDAC阻害剤は以下のとおりです。
- ゾリンザカプセル(ボリノスタット):5618.9円/カプセル 皮膚T細胞性リンパ腫
- ファリーダックカプセル10mg(パノビノスタット):36583.9円/カプセル 再発又は難治性の多発性骨髄腫
- ファリーダックカプセル15mg(パノビノスタット):54875.8円/カプセル 再発又は難治性の多発性骨髄腫
ですが、末梢性T細胞リンパ腫の適応症を持つのはイストダックス点滴静注用が初めてです。
テセントリク点滴静注
平成30年4月18日発売
テセントリク点滴静注 添付文書
テセントリク点滴静注 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- テセントリク点滴静注1200mg:625567円/瓶
- 成分名:アテゾリズマブ(遺伝子組換え)
- 申請者:中外製薬
- 効能・効果:切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
- 用法・用量:通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを60分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。
- 1日薬価:29789円
国内2番目の抗PD-L1モノクローナル抗体
アテゾリズマブはがん免疫療法に用いる免疫チェックポイント阻害薬の一種の抗PD-L1モノクローナル抗体です。
癌細胞はPD-L1(Programmed cell Death Ligand 1:プログラム細胞死リガンド1)を多く発現しています。
PD-L1が多く発現していると、T細胞表面のPD-1(Programmed cell Death 1:プログラム細胞死1)という受容体に結合します。
その結果、T細胞の活動が抑制されます。
ちなみに、話題になったオプジーボはPD-1に対するモノクローナル抗体です。
デュピクセント皮下注
平成30年4月23日発売
デュピクセント皮下注 添付文書
デュピクセント皮下注 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- デュピクセント皮下注300mgシリンジ:81640円/瓶
- 成分名:デュピルマブ(遺伝子組換え)
- 申請者:サノフィ
- 効能・効果:既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎
- 用法・用量:通常、成人にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する。
アトピー性皮膚炎に対する初の抗体医薬品
アトピー性皮膚炎の病態に関与しているサイトカインとしてIL-4とIL-13が知られています。
活性化Th2細胞から産生されるIL-4、IL-13によって、皮膚組織の炎症が持続的に引き起こされることでアトピー性皮膚炎は悪化していきます。
デュピルマブは、IL-4とIL-13のシグナル伝達を特異的に阻害するヒトIgG4モノクローナル抗体です。
デュピルマブの投与により既存外用薬が使用できなかった中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者、既存外用薬で効果不十分な中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者の皮膚病変の有意な改善が示されています。
新規作用機序に加え、治療方法の改善が客観的に示されていることから有用性加算(I)(A=45%)がつけられています。
イブリーフ静注
平成30年6月14日発売
イブリーフ静注 添付文書
- 医薬品名と薬価
- イブリーフ静注20mg:13012円/瓶
- 成分名:イブプロフェンL-リシン
- 申請者:千寿製薬
- 効能・効果:未熟児動脈管開存症で保存療法(水分制限、利尿剤投与等)が無効の場合
- 用法・用量:通常3回、イブプロフェンとして初回は10mg/kg、2回目及び3回目は5mg/kgを15分以上かけて24時間間隔で静脈内投与する。
イブプロフェンの新たな使用方法
厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発要請されていた品目です。
未熟児動脈管開存症は、胎児の時に胎内でも酸素を取り込みやすくするため、大動脈と肺動脈をつなぐ動脈管が開存しているが、早産などで生後も閉鎖することなく開存し続ける疾患です。
しイブプロフェンを投与することで動脈管の収縮を促すことが期待されます。
既知医薬品の有効成分を使用する医薬品
既存の有効成分を使用した新医薬品についてまとめます。
アトーゼット配合錠
平成30年4月23日発売
アトーゼット配合錠 添付文書
アトーゼット配合錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- アトーゼット配合錠LD:177.00円/錠
- アトーゼット配合錠HD:177.00円/錠
- 成分名:エゼチミブ/アトルバスタチン
- 申請者:MSD
- 効能・効果:「高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症」
- 用法・用量:通常、成人には1日1回1錠(エゼチミブ/アトルバスタチンとして10mg/10mg又は10mg/20mg)を食後に経口投与する。
- 一日薬価:177.00円
国内初のLDLコレステロール低下薬2成分配合剤
アトーゼット配合錠は小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であるエゼチミブ(商品名:ゼチーア)とHMG-CoA還元酵素阻害薬であるアトルバスタチン(商品名:リピトール)の配合剤です。
アトルバスタチンを含有する配合剤にはカデュエット配合錠(アトルバスタチン/アムロジピン)がありますが、エゼチミブを含有する配合剤は他に存在しません。
そもそも、複数のLDL-C(LDLコレステロール)低下薬を組み合わせた配合剤の登場自体が国内初めてです。
処方を受ける前に押さえておきたいポイント
新薬投与制限はなし
新薬ではない医薬品の配合剤で、効能・効果、用法・用量の変化もないので、14日処方制限の対象ではありません。
一包化は不可
アトーゼット配合錠は一包化不可のようです。
【取扱い上の注意】
光及び酸化を避けるため、PTP シートのまま保存し、服用直前に PTP シー トから取り出すこと。
ゼチーア単剤からの切り替えは不可
ゼチーア単剤を使用している状態からアトーゼット配合錠に切り替えることはできないので注意が必要です。
用法及び用量に関連する使用上の注意用法及び用量に関連する使用上の注意
- 原則として、エゼチミブ10mg及びアトルバスタチンとして10mgを併用している場合、あるいはアトルバスタチンとして10mgを使用し効果不十分な場合に、本剤LD(エゼチミブ/アトルバスタチンとして10mg/10mg)の適用を検討すること。
- 原則として、エゼチミブ10mg及びアトルバスタチンとして20mgを併用している場合、あるいはアトルバスタチンとして20mg又はエゼチミブ/アトルバスタチンとして10mg/10mgを使用し効果不十分な場合に、本剤HD(エゼチミブ/アトルバスタチンとして10mg/20mg)の適用を検討すること。
まとめると以下のようになります。
- アトーゼット配合錠LD:ゼチーア(10)とアトルバスタチン10mg もしくは アトルバスタチン10mgからの切り替え
- アトーゼット配合錠HD:ゼチーア(10)とアトルバスタチン20mg もしくは アトルバスタチン20mgからの切り替え
どちらもゼチーア単剤もしくはアトルバスタチン以外のスタチン系薬からの切り替えはできません。
リピトールがタダで付いてくる!
アトーゼット配合錠の薬価はLD・HDともに177.00円/錠です。
- ゼチーア錠10mgの薬価:177.00/錠
- リピトール錠10mgが88.20円/錠(24.4~45.7円/錠)
- リピトール錠5mgが46.40円/錠(アトルバスタチン錠5mg:11.7~23.7円/錠)
- アトルバスタチン錠20mg:52.8円/錠
アトーゼット配合錠の薬価はゼチーア錠と同じです。
ということで、リピトールの薬価がそのままなしになってしまいます。
どう考えてもジェネリック対策だよなーと思ってしまいますが、この安さは魅力ですね。
っていうか、配合剤はジェネリック扱いにしてくれればいいのに・・・。
ネキシウム懸濁用顆粒分包
平成30年4月18日発売
ネキシウム懸濁用顆粒分包 添付文書
ネキシウム懸濁用顆粒分包 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- ネキシウム懸濁用顆粒分包10mg:80.60円/包
- ネキシウム懸濁用顆粒分包20mg:140.300円/包
- 成分名:エソメプラゾールマグネシウム水和物
- 申請者:アストラゼネカ
- 効能・効果
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症※、Zollinger-Ellison症候群、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制
(※非びらん性胃食道逆流症:10mgのみ) - 下記におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症※、Zollinger-Ellison症候群、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制
- 用法・用量
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群
- 成人:通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mgを用時水で懸濁して1日1回経口投与する。なお、通常、胃潰瘍、吻合部潰瘍では8週間まで、十二指腸潰瘍では6週間までの投与とする。
- 小児:通常、1歳以上の幼児及び小児にはエソメプラゾールとして、体重20kg未満では1回10mgを、体重20kg以上では症状に応じて1回10~20mgを用時水で懸濁して1日1回経口投与する。なお、通常、胃潰瘍、吻合部潰瘍では8週間まで、十二指腸潰瘍では6週間までの投与とする。
- 逆流性食道炎
- 成人:通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mgを用時水で懸濁して1日1回経口投与する。なお、通常、8週間までの投与とする。さらに再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法においては、1回10~20mgを用時水で懸濁して1日1回経口投与する。
- 小児:通常、1歳以上の幼児及び小児にはエソメプラゾールとして、体重20kg未満では1回10mgを、体重20kg以上では症状に応じて1回10~20mgを用時水で懸濁して1日1回経口投与する。なお、通常、8週間までの投与とする。
- 非びらん性胃食道逆流症(※10mgのみ)
- 成人:通常、成人にはエソメプラゾールとして1回10mgを用時水で懸濁して1日1回経口投与する。なお、通常、4週間までの投与とする。
- 小児:通常、1歳以上の幼児及び小児にはエソメプラゾールとして、1回10mgを用時水で懸濁して1日1回経口投与する。なお、通常、4週間までの投与とする。
- 非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制:通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mgを用時水で懸濁して1日1回経口投与する。
- 低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制:通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mgを用時水で懸濁して1日1回経口投与する。
- ヘリコバクター・ピロリの除菌の補助:通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mgを用時水で懸濁して、アモキシシリン水和物として1回750mg(力価)及びクラリスロマイシンとして1回200mg(力価)の3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。なお、クラリスロマイシンは、必要に応じて適宜増量することができる。ただし、1回400mg(力価)1日2回を上限とする。プロトンポンプインヒビター、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンの3剤投与によるヘリコバクター・ピロリの除菌治療が不成功の場合は、これに代わる治療として、 通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mgを用時水で懸濁して、アモキシシリン水和物として1回750mg(力価)及びメトロニダゾールとして1回250mgの3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群
- 1日薬価:140.30円
国内初の小児適応を有するPPI
日本で初めて小児適応を取得したPPI(Proton Pump Inhibitor:プロトンポンプ阻害薬)です。
逆流性食道炎などの酸関連疾患の患者の中には小児の患者も存在します。
ですが、これまで小児適応を取得しているPPIは存在しなかったため、日本小児栄養消化器肝臓学会からは小児適応の開発が要望されていました。
小児加算(A=5%)がついています。
小児適応があるのは「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症※、Zollinger-Ellison症候群」のみのようですね。
味は?小児以外への使用は?
ネキシウム懸濁用顆粒分包ですが、小児への使用は限られたケースかと思います。
むしろ高齢者や嚥下困難者への使用で期待している人が多いのではないでしょうか?
味なんですが甘酸っぱい味がついていますが後味は苦いです。
水に溶けますが少し時間がかかる感じで、お湯等だとダマになってしまうとのことでした。
胃瘻への使用についてもチューブに詰まる可能性が否定できないので推奨できないそうです。
うーん。。。やっぱりランソプラゾールOD錠かな。
シダキュアスギ花粉舌下錠
平成30年6月29日発売
シダキュアについては別記事で詳しくまとめています。
スギ花粉症に対する免疫療法薬 シダキュア舌下錠の特徴とシダトレン舌下液との違いについて – 薬剤師の脳みそ
シダキュアスギ花粉舌下錠 添付文書
シダキュアスギ花粉舌下錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- シダキュアスギ花粉舌下錠2000JAU:57.70円/錠
- シダキュアスギ花粉舌下錠5000JAU:144.10円/錠
- 成分名:スギ花粉エキス原末
- 申請者:鳥居薬品
- 効能・効果:スギ花粉症(減感作療法)
- 用法・用量:通常、投与開始後1週間は、シダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAUを1日1回1錠、投与2週目以降は、シダキュアスギ花粉舌下錠5,000JAUを1日1回1錠、舌下にて1分間保持した後、飲み込む。その後5分間は、うがいや飲食を控える。
- 1日薬価:144.10円
シダトレンよりも高力価で減感作療法が可能に
シダキュア舌下錠の力価は以下の通りです。
- シダキュアスギ花粉舌下錠2000JAU
- シダキュアスギ花粉舌下錠5000JAU
シダトレン舌下液の力価と比較してみます。
- シダトレンスギ花粉舌下液200JAU/mLボトル
- シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLボトル
- シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLパック
一目瞭然、シダキュアの導入期の力価はシダトレンの維持用量の力価と同じなんです。
導入初期のアレルギー反応のリスクは高まりそうですが、高力価での減感作療法が実現できます。
このことから、有用性加算(II)(A=5%)がついています。
冷所保存が不要になるのも嬉しいですね。
シダトレンにはなかった小児適応を取得
シダトレンは12歳以上しか使用できませんでしたが、シダキュアでは安全に舌下投与が可能であれば年齢制限はありません。
そのため、小児の早い段階からの舌下免疫療法が可能となり、アレルギーマーチを早い段階で食い止めることができるのではないかと期待されています。
そのため、小児加算(A=5%)がついています。
新医薬品の14日間処方日数制限の対象
シダトレンと同じなので新薬扱いじゃないと思う人もいるかもしれませんが、適応範囲も用量も異なるため、新医薬品扱いです。
薬剤の性質上、処方が拡大するのは一年後でしょうね。
ようやく発売日決定
シダキュアの発売日がようやく決定しました。
平成30年6月29日です。
薬価収載から2ヶ月遅れ、そもそも昨年9月に承認されていましたが、11月の薬価収載も見送っていました。
発売準備のため、と言うことでしたが、鳥居のMRさんと話した感じだと「どれだけ注文が来ても大丈夫!」と言う感じではなさそうでした。どうなのかな?
まあ、4月に即発売されても処方はできなかったはずなので薬価収載から発売までの期間はいいかな。
スギ花粉悲惨時期には新規投与が不可です。
<用法及び用量に関連する使用上の注意>
1 .スギ花粉飛散時期は新たに投与を開始しないこ と。〔スギ花粉飛散時期はスギ花粉アレルゲンに対 する患者の過敏性が高まっている場合が多い。〕
でも、承認から見ると9ヶ月かかってますからね。。。
参考薬価
シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLパック:131.00
ナルベイン注
平成30年5月16日発売
ナルベイン注 添付文書
- 医薬品名と薬価
- ナルベイン注2mg:725円/管
- ナルベイン注20mg:6340円/管
- 成分名:ヒドロモルフォン塩酸塩
- 申請者:第一三共プロファーマ
- 効能・効果:中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛
- 用法・用量:通常、成人にはヒドロモルフォンとして1日0.5~25mgを持続静脈内又は持続皮下投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。
- 1日薬価:7925円
μオピオイド受容体作動薬
ヒドロモルフォンはあへん系麻薬性鎮痛剤で、WHOのがん疼痛治療ガイドラインでは疼痛管理の標準薬に位置付けられています。
アレサガテープ
平成30年4月24日発売
アレサガテープ 添付文書
アレサガテープ インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- アレサガテープ4mg:67.50円/枚
- アレサガテープ8mg:93.10円/枚
- 成分名:エメダスチンフマル酸塩
- 申請者:久光製
- 効能・効果:アレルギー性鼻炎
- 用法・用量:通常、成人にはエメダスチンフマル酸塩として1回4mgを胸部、上腕部、背部又は腹部のいずれかに貼付し、24時間毎に貼り替える。なお、症状に応じて1回8mgに増量できる。
- 1日薬価:67.50円
レミカットカプセルと同成分
エメダスチンフマル酸塩はヒスタミンH1受容体拮抗薬です。
第二世代抗ヒスタミン薬に分類されますが、それでも眠気が強いとされている薬剤です。
レミカットカプセルとして以前から発売されています。
レミカットは1日2回の経口薬ですが、アレサガテープは1日1回貼付のテープ剤です。
適応はアレルギー性鼻炎のみ
レミカットは、眠気は強いけどその分蕁麻疹等に効果を発揮してくれる個人的なイメージがあります。
でも、アレサガテープの適応はアレルギー性鼻炎のみです。
(レミカットはアレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、痒疹)
普通に眠くなりそう
投与経路が異なるので副作用軽減のメリットとかあるかなと思いましたが、メリットと言えるレベルのものはなさそうですね。
実際に内服と血中濃度も同じくらいです。
ちなみに、アレサガの添付文書には以下のように記載されています。
重要な基本的注意
1.眠気を催すことがあるので、本剤使用中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること。更に、日常生活に支障がみられる場合があるので、本剤使用に際してはこのことを患者に十分説明しておくこと。
引用元:アレサガテープ 添付文書
運転禁止レベルか。。。
レミカット→アレサガテープのメリットって?
内服に対するメリットがなかなか思いつかないんですが、介護者が貼ることで飲み忘れを防ぐことができるとか、経口摂取が難しい場合とかに有効ってことでしょうか?
レミカットカプセルが1日2回のところ、1日1回の貼付で血中濃度を安定させることができるというのはメリットかもしれませんが、それがどの程度効果に影響するかは不明です。
血中濃度が安定することで眠気が少なくなるとかあればいいんですが、内服でも眠気の少ない薬が多く存在しますし・・・。
うーん・・・。