【令和3年12月17日付】ブロナンセリン、スボレキサント、ポサコナゾール、フィンゴリモド、解凍人赤血球液(放射線を照射しない製剤)の添付文書改訂指示

令和3年12月17日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品等について、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回は大きく分けて3つの改訂指示が出されています。

※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。

PMDAへのリンクを貼っておきます。

令和3年12月17日 薬生安発1217第2号

pmdaが発出する改定案の一部は旧記載要領と新記載要領の両方が掲載されるようになっています。

ブロナンセリン・スボレキサントとポサコナゾールの併用禁忌

対象となるのは以下の薬剤です。

  • ブロナンセリン経口剤:ロナセン錠2mg/4mg/8mg、ロナセン散2%
  • ブロナンセリン貼付剤:ロナセンテープ20mg/30mg/40mg
  • スボレキサント:ベルソムラ錠10mg/15mg/20mg
  • ポサコナゾール経口剤:ノクサフィル錠100mg
  • ポサコナゾール注射剤:ノクサフィル点滴静注300mg

ブロナンセリンとスボレキサントがCYP3Aを強く阻害する薬剤としてポサコナゾールを併用禁忌に加えたことに伴い、ポサコナゾールもそれに対応しました。
(ポサコナゾールの添付文書では併用注意だったブロナンセリンとスボレキサントが併用禁忌に変更)

類似した内容になりますが、医薬品ごとにまとめていきます。

ブロナンセリン経口剤・貼付剤の改訂指示の内容

【新記載要領】に従ってまとめます。
下線部が追記、打消線が削除された部分です。

まずは、添付文書の「禁忌」について、以下の通り改訂が指示されています。

2.禁忌
2.4 アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ボリコナゾール、ミコナゾール(経口剤、口腔用剤、注射剤)、フルコナゾール、ホスフルコナゾール、ポサコナゾール)、HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビル、ロピナビル・リトナビル配合剤、ネルフィナビル、ダルナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル)、コビシスタットを含む製剤を投与中の患者
引用元:ロナセン錠2mg/錠4mg/錠8mg/散2% 等 使用上の注意改訂のお知らせ

同様に「相互作用」についても以下の通り改訂が指示されています。

10.相互作用
10.1 併用禁忌(併用しないこと)
CYP3A4を強く阻害する薬剤
アゾール系抗真菌剤
イトラコナゾール(イトリゾール)
ボリコナゾール(ブイフェンド)
ミコナゾール(経口剤、口腔用剤、注射剤)(フロリード、オラビ)
フルコナゾール(ジフルカン)
ホスフルコナゾール(プロジフ)
ポサコナゾール(ノクサフィル)
引用元:ロナセン錠2mg/錠4mg/錠8mg/散2% 等 使用上の注意改訂のお知らせ

改訂理由

過去3年間に症例報告はありませんが、ブロナンセリン及びポサコナゾールの「使用上の注意」の改訂についてには以下のように記述されています。

In vivo 試験より得られたパラメータによる静的薬物速度論(MSPK)モデルを用いた予測により、ブロナンセリンとポサコナゾールを併用した場合において、ブロナンセリンの血漿中曝露量が、安全性の懸念が生じる程度以上の曝露量まで増加するとの推定結果が得られ、リスクがベネフィットを上回ると考えられることから、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。
引用元:ブロナンセリン及びポサコナゾールの「使用上の注意」の改訂について

自主改訂

今回の改訂指示とは関係ありませんが、このタイミングに合わせて自主改訂が行われています。

9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.6
脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者
悪性症候群(Syndrome malin)が起こりやすい。
引用元:ロナセン錠2mg/錠4mg/錠8mg/散2% 等 使用上の注意改訂のお知らせ

11.副作用
11.1 重大な副作用
11.1.1
悪性症候群(Syndrome malin)(5%未満/頻度不明)
引用元:ロナセン錠2mg/錠4mg/錠8mg/散2% 等 使用上の注意改訂のお知らせ

Syndrome malinの表記が削除されています。
理由は記載整備としか書かれていませんが、サンドローム・マラン(仏語)って言わなくなったの?

スボレキサントの改訂指示の内容

【旧記載要領】に従ってまとめます。
下線部が追記、打消線が削除された部分です。

まずは、添付文書の「禁忌」について、以下の通り改訂が指示されています。

2.禁忌
(2) CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、ネ ルフィナビル)を投与中の患者
引用元:ベルソムラ錠10mg・15mg・20mgの使用上の注意改訂のお知らせ

同様に「相互作用」についても以下の通り改訂が指示されています。

3.相互作用
併用禁忌(併用しないこと)
CYP3A4を強く阻害する薬剤
イトラコナゾール:イトリゾール
ポサコナゾール:ノクサフィル
ボリコナゾール:ブイフェンド
クラリスロマイシン:クラリシッド
リトナビル:ノービア
ネルフィナビル:ビラセプト
引用元:ベルソムラ錠10mg・15mg・20mgの使用上の注意改訂のお知らせ

改訂理由

過去3年間に症例報告はありませんが、スボレキサント及びポサコナゾールの「使用上の注意」の改訂についてには以下のように記述されています。

In vivo 試験より得られたパラメータによる静的薬物速度論(MSPK)モデルを用いた予測により、スボレキサントとポサコナゾールを併用した場合において、スボレキサントの血漿中曝露量が、安全性の懸念が生じる程度以上の曝露量まで増加するとの推定結果が得られ、リスクがベネフィットを上回ると考えられることから、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。
引用元:スボレキサント及びポサコナゾールの「使用上の注意」の改訂について

ポサコナゾール経口剤・注射剤の改訂指示の内容

【新記載要領】に従ってまとめます。
下線部が追記、打消線が削除された部分です。

まずは、添付文書の「禁忌」について、以下の通り改訂が指示されています。

2.禁忌
2.1 エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、ジヒドロエルゴタミン、メチルエルゴメトリン、エルゴメトリン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ピモジド、キニジン、ベネトクラクス[再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期]、スボレキサント、ルラシドン塩酸塩、ブロナンセリンを投与中の患者
引用元:ノクサフィル錠100mg・点滴静注300mgの使用上の注意改訂のお知らせ

同様に「相互作用」についても以下の通り改訂が指示されています。

10.相互作用
10.1 併用禁忌(併用しないこと)
スボレキサント(ベルソムラ):スボレキサントの作用を著しく増強させるおそれがある。
ルラシドン塩酸塩(ラツーダ) ブロナンセリン(ロナセン)これらルラシドン塩酸塩の薬剤の作用を増強させるおそれ がある。
引用元:ノクサフィル錠100mg・点滴静注300mgの使用上の注意改訂のお知らせ

改訂理由

過去3年間に症例報告はありませんが、ブロナンセリン及びポサコナゾールの「使用上の注意」の改訂についてスボレキサント及びポサコナゾールの「使用上の注意」の改訂についてには以下のように記述されています。

In vivo 試験より得られたパラメータによる静的薬物速度論(MSPK)モデルを用いた予測により、ブロナンセリンとポサコナゾールを併用した場合において、ブロナンセリンの血漿中曝露量が、安全性の懸念が生じる程度以上の曝露量まで増加するとの推定結果が得られ、リスクがベネフィットを上回ると考えられることから、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。
引用元:ブロナンセリン及びポサコナゾールの「使用上の注意」の改訂について

In vivo 試験より得られたパラメータによる静的薬物速度論(MSPK)モデルを用いた予測により、スボレキサントとポサコナゾールを併用した場合において、スボレキサントの血漿中曝露量が、安全性の懸念が生じる程度以上の曝露量まで増加するとの推定結果が得られ、リスクがベネフィットを上回ると考えられることから、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。
引用元:スボレキサント及びポサコナゾールの「使用上の注意」の改訂について

フィンゴリモド塩酸塩(イムセラカプセル/ジレニアカプセル)の血小板減少と中止後の重度の疾患憎悪

対象となるのは以下の薬剤です。

  • イムセラカプセル0.5mg
  • ジレニアカプセル0.5mg

日本初の再発寛解型の多発性硬化症(MS:Multiple Sclerosis)に対する経口剤で効能・効果は「多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制」と記載されています。
フィンゴリモドは冬虫夏草に含まれる物質を元に合成された成分で、開発コードであるFTY720は京大の藤多哲朗教授(F)、台糖(現 三井製糖)(T)、吉富製薬(Y)に由来しています。

フィンゴリモド塩酸塩の改訂指示の内容

【新記載要領】に従ってまとめます。
下線部が追記、打消線が削除された部分です。

まずは、添付文書の「重要な基本的注意」について、以下の通り改訂が指示されています。

8.重要な基本的注意
8.6 血小板減少があらわれることがあるため、本剤投与開始前及び投与中は定期的に血液検査(血球数算定等)を行うこと。
8.8 本剤の投与中止後に、投与開始前より重度の疾患増悪が報告されており、投与中止後概ね24週までに認められている。投与を中止する場合には、重度の疾患増悪に留意すること。
引用元:「ジレニアカプセル0.5mg」の<添付文書改訂のお知らせ>

次に「重大な副作用」について、以下の通り改訂が指示されています。

11.副作用
11.1 重大な副作用
11.1.9 血小板減少(0.1%)
引用元:「ジレニアカプセル0.5mg」の<添付文書改訂のお知らせ>

ジレニアカプセルについての情報を参照しましたが、イムセラカプセルも同様の内容です。

改訂理由

血小板減少については過去3年度で症例報告はありませんが、海外症例が集積したことから、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断されました。

投与中止後の重度の疾患憎悪については過去3年度で以下の通り国内での症例報告が集積されたため、改訂が望ましいと判断されています。

  • 投与中止後の重度の疾患増悪関連症例:20例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例18例)
    【死亡0例】

解凍人赤血球液(放射線を照射しない製剤)のGVHD予防に係る注意喚起

対象となるのは以下の薬剤です。

  • 洗浄人赤血球液
  • 合成血
  • 人血小板濃厚液
  • 人全血液
  • 人赤血球液
  • 解凍人赤血球液

解凍人赤血球液(放射線を照射しない製剤)の改訂指示の内容

まずは、添付文書の「警告」について、以下の通り、放射線照射の対象者を限定する旨の記載を削除する改訂指示が出されています。

警告
本剤の使用による移植片対宿主病(GVHD:graft versus hostdisease)発症の可能性を否定できないので、発症の危険性が高いと判断される患者に輸血する場合は、あらかじめ本剤に15~50Gyの放射線を照射すること。

続いて「用法及び用量に関連する使用上の注意」が新設されています。

用法及び用量に関連する使用上の注意
放射線照射:あらかじめ本剤に15~50Gyの放射線を照射すること。

さらに「重大な副作用及び感染症」について、「GVHD」に関して、 GVHD発症の危険性が高いと判断される患者に輸血する場合はあらかじめ放射線を照射する旨の記載を削除する指示が出されています。

副作用及び感染症
重大な副作用及び感染症
GVHD:本剤の使用によるGVHD発症の可能性を否定できないので、発症の危険性が高いと判断される患者に輸血する場合は、あらかじめ本剤に15~50Gyの放射線を照射すること。

改訂理由

放射線未照射の輸血用血液製剤(新鮮凍結人血漿を除く)の「使用上の注意」の改訂についてには以下のように記載されています。

「警告」及び「重大な副作用及び感染症」の項における GVHD 予防に係る注意喚起において、あらかじめ放射線照射が必要とされる対象は「GVHD発症の危険性が高いと判断される患者」とされているが、「輸血療法の実施に関する指針(平成17年9月(令和2年3月一部改正) 厚生労働省医薬・生活衛生局血液対策課)」、「血液製剤の使用指針(平成29年3月 厚生労働省医薬・生活衛生局)」及び「輸血によるGVHD予防のための血液に対する放射線照射ガイドラインⅤ(平成22年1月1日 日本輸血・細胞治療学会「輸血後 GVHD 対策小委員会報告」)」では、「すべての患者」が対象とされており、使用上の注意と齟齬が生じていることが確認されたことから、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。
引用元:放射線未照射の輸血用血液製剤(新鮮凍結人血漿を除く)の「使用上の注意」の改訂について

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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