リグロス歯科用液キット〜2016年8月4日医薬品第一部会審議品目①

平成28年8月4日、厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会で6製品の承認が了承されました。
今回は、審議が行われた品目の中から、リグロス歯科用液キットについてまとめます。
薬局ではあまり馴染みがないかもしれませんが、進行した歯周炎による歯槽骨の欠損を再生する治療に使用される薬剤です。
フィブラストスプレーと同じ主成分といえば、馴染み深いのではないでしょうか?
なお、リグロス歯科用液キットは平成28年9月28日に製造販売が承認されました。

平成28年8月4日薬食審・医薬品第一部会での審議品目

今回審議され、承認が了承されたのは以下の通りです。

一つずつまとめていきたいと思います。

リグロス歯科用液キット

成分名:トラフェルミン(遺伝子組換え)

  • リグロス歯科用液キット600μg
  • リグロス歯科用液キット1200μg

申請者:科研製薬
効能・効果:歯周炎による歯槽骨の欠損
用法・用量:歯肉剥離掻爬手術時に歯槽骨欠損部を満たす量を塗布する

海外では承認されていない薬剤です。
トラフェルミンは日本国内ではフィブラストスプレーの主成分として使用されていますね。
今回審議されたリグロス歯科溶液は歯肉炎等の歯周炎が悪化した際の歯周組織再生治療に使用されます。

歯肉剥離掻爬手術

フラップ手術、フラップオペレーションと呼ばれている術式です。
歯周炎が進行した結果、歯茎の奥の方まで歯石がたまり、そこで炎症が悪化し、歯肉ポケットができてしまいます。
歯肉ポケットが進行してしまうと、炎症が広がった結果、歯槽骨が破壊されてしまいます。
そうなってくると、従来の方法では、十分に歯石の除去が行えません。
そこで、歯肉を切り開き、歯根を露出させるフラップ手術(歯肉剥離掻爬手術)が行われます。
歯肉を切開し、歯石除去後に歯肉を歯根部と結合させるのですが、切開後の歯肉は上皮性に付着するものの、歯槽骨などの結合組織を含む歯周組織の再生は期待できません。

従来の歯周組織再生治療

結合組織を含む歯周組織の再生を行うための治療が行われています。

骨移植法

骨誘導再生法(GBR法:Guided Bone Regeneration)では、骨を移植することで、元の歯槽骨の形を形成します。
移植された部分は、数ヶ月かけて新たに作られる新生骨に置き換わっていきます。
骨移植には幾つかの方法があります。
自身の骨を摂取して移植する自家骨移植。
自身の骨髄由来細胞から培養骨を作って用いる方法。
ハイドロキシアパタイトを用いる人工骨移植などです。

GTR法

歯周組織再生誘導法(GTR法:Guided Tissue Regeneration)
歯と歯肉の間の歯石や歯垢などを除去した後、歯槽骨を再生させたい部分を人口の膜で覆うことで歯周組織の再生を促す方法です。
何もしない状態だと、歯槽骨がなくなった部分に歯肉が入り込んでしまうのですが、人口膜で覆うことでそれを防ぎます。
以前は、歯槽骨が自己再生された後に人口膜を取り除く方法がとられていましたが、最近は、自然に吸収されていくタイプの人工膜が使用されています。

EMDの塗布

歯周組織再生誘導材料であるエナメルマトリックス抽出物(EMD:Enamel Matrix Derivative)を歯槽骨の失われた部分に塗布することで、組織再生を行う方法です。
EMDは歯の発生期において、重要な働きをするたんぱく質です。
ブタ歯胚組織使用歯周組織再生用材料として、エムドゲインが認可されていますが、これは幼若ブタの歯胚から抽出精製されたものです。

リグロス歯科用液のメリット

トラフェルミンはすでにフィブラストスプレーとして承認されているヒト塩基性線維芽細胞増殖因子製剤(bFGF:basic Fibroblast Growth Factor)です。
EMD法で用いられるエムドゲインはブタ由来の生物材料であるため、感染性伝播のリスクが0にはなりません。
それに対して、リグロスはそういったリスクなしに使用できるというメリットがあります。
フラップ手術時に患部に塗布することで、組織の修復を促すわけですが、トラフェルミンが局所にとどまり薬剤の効果を上がるよう製剤上の工夫も加えられているようです。

まとめ

歯科用剤というとあまり薬局で目にすることがないものになります。
が、フィブラストスプレーについてはご存知の方も多いと思います。
同じ有効成分が異なる分野で使用されていることを知っておくことも大事ですよね。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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