アルチバ静注用の小児適応〜2016年8月4日医薬品第一部会審議品目⑤

平成28年8月4日、厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会で6製品の承認が了承されました。(アルチバの適応は平成28年8月26日に正式に承認されましたが他は未定)
今回は、審議が行われた品目の中から、アルチバ静注用(審議内容は小児への適応拡大)についてまとめます。
有効成分のレミフェンタニルは、フェンタニルの改良型、長短時間作用性のオピオイド鎮痛剤です。

平成28年8月4日薬食審・医薬品第一部会での審議品目

今回審議され、承認が了承されたのは以下の通りです。

一つずつまとめていきたいと思います。

アルチバ静注用

成分名:レミフェンタニル塩酸塩

  • アルチバ静注用2mg
  • アルチバ静注用5mg

申請者:ヤンセンファーマ
追加予定の効能・効果:(小児)全身麻酔の維持における鎮痛
用法・用量:1歳以上の小児では他の全身麻酔剤を必ず併用し、下記用量を用いる。麻酔維持:通常、レミフェンタニルとして0.25μg/kg/分の速さで持続静脈内投与する。なお、投与速度については、患者の全身状態を観察しながら、2〜5分間隔で25〜100%の範囲で加速又は25〜100%の範囲で減速できるが、最大でも1.3μg/kg/分を超えないこと。浅麻酔時には、レミフェンタニルとして1.0μg/kgを2〜5分間隔で追加単回静脈内投与することができる。

小児の全身麻酔の維持における鎮痛に関する効能・効果は、欧州、米国等など20カ国以上ですでに承認済です。

レミフェンタニルの特徴

レミフェンタニルは消失半減期が非常に短い、長短時間型のオピオイドμ受容体作動薬です。
血液中、組織内の非特異的エステラーゼにより速やかな代謝を受けるため蓄積性がありません。
また、レミフェンタニルは、フェンタニルと比べてpKaが低いため、血液中での非イオン型の割合が高くなっています。
そのため、血液脳関門を通過して、脳内に移行しやすくなっているため、効果発現も早くなります。
効果発現と消失が速やかであるという特徴から、麻酔手術中の侵襲刺激に応じて鎮痛コントロールを行うのが容易になり、術後の覚醒にも影響が少なくなります。

フェンタニルとレミフェンタニルの比較

レミフェンタニルの特徴をフェンタニルと比較してみます。

  • 代謝
    • レミフェンタニル:血中・組織内の非特異的エステラーゼによる加水分解
    • フェンタニル:肝臓にてチトクロムP450のCYP3A4にて代謝

レミフェンタニルの代謝は肝機能の影響を受けないため、肝機能障害時であっても、通常用量で使用することが可能です。
また、レミフェンタニルの代謝物であるレミフェンタニル酸は腎排泄を受けるのですが、その活性はレミフェンタニルの1/800〜1/2000倍とされており、作用を発揮することはありません。
ちなみに、フェンタニルも腎排泄は10%程度とされており、腎機能の影響は極めて少ない薬剤です。

  • 半減期
    • レミフェンタニル:4〜8分
    • フェンタニル:10〜30分
  • 作用発現時間
    • レミフェンタニル:1.5分
    • フェンタニル:3〜5分
  • 作用持続時間
    • レミフェンタニル:3〜10分
    • フェンタニル:20〜30分

速やかな効果発現、速やかな効果消失がレミフェンタニルの最大の特徴です。
レミフェンタニルの分布容積はフェンタニルの1/10程度となっており、それも効果消失が早い要因です。

注意点

今回、小児に対する適応拡大が了承されたのは、あくまでも全身麻酔の「維持」の部分のみです。
成人の場合は、「導入」と「維持」の両方の適応がありますが、小児は「維持」だけとなっていることに注意が必要です。

薬剤の性質としての注意点も復習しておきます。
アルチバ静注用は添加物としてグリシンが使用されています。
そのため、硬膜外投与やくも膜下への投与は禁忌とされています。

また、アルチバ静注用は等張化剤が添加されていません。
そのため、希釈する際には、等張である生理食塩水か5%ブドウ糖注射液を使用する必要があります。

まとめ

今回の効能・効果の追加には全身麻酔の「導入」は含まれていませんが、小児の麻酔導入には効果の長いフェンタニル製剤の方が適しており、実際に使用されています。
ですが、レミフェンタニルの効果発現・効果消失の速さは全身麻酔の維持時に調節して使用することに関しては非常に優れています。
薬局では扱うことのない薬剤ですが、成分であるレミフェンタニルの特徴は知っておきたいところですね。

そういえば、今年の2月にアルチバ静注用のジェネリック医薬品(後発医薬品)であるレミフェンタニル静注用「第一三共」が承認されています。
ですが、まだ販売どころか、薬価収載もされていませんね。
こちらも同様の適応拡大を取得することを目指しているのでしょうか?

参考

槇田浩史(2007)「レミフェンタニル-薬物動態における特徴」,『Anesthesia 21 Century』Vol.9 No.2-28
湯川久信(2007)「フェンタニルとアルチバ(レミフェンタニル)の特徴について」,『鹿児島市医報』第46巻第6号(通巻544号)

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