インターフェロンとリバビリンの併用療法についてまとめるつもりだったのですが、その前に再度、C型肝炎治療に使用するインターフェロンをまとめておこうと思います。
自分も不勉強な部分が多かったので、できるだけすっきりまとめようと思います。
以前の記事と重複する部分もあります。
インターフェロンによるC型肝炎治療 – 薬剤師の脳みそ
今回は現在、C型慢性肝炎治療に承認されているインターフェロンの違いや特徴がわかりやすいように、比較しながらまとめてみます。
IFNの分類
C型慢性肝炎治療で承認されているインターフェロンにはアルファ型とベータ型があります。
インターフェロンアルファ
- 天然型:IFNα(オーアイエフ、スミフェロン)
- 遺伝子組換型:IFNα 2b(イントロンA)
- 遺伝子組換PEG化:PEG-IFN α-2a(ペガシス)、PEG-IFN α-2b(ペグイントロン)
インターフェロンベータ
- 天然型:IFNβ(フエロン)
インターフェロンによる副作用
インターフェロン治療の最大の障壁が副作用の多さと頻度です。
- 初期:インフルエンザ様症状、食欲不振、皮膚症状
- 中期:全身症状(微熱・倦怠感)、消化器症状
- 後期:脱毛
間質性肺炎やうつ症状、味覚異常、貧血、血小板減少、自己免疫現象、心筋症、眼底出血にも注意が必要です。
通常(PEG化でない)インターフェロンは非常に不安定です。
血中半減期は3~8時間で、24時間経てば検出感度以下になってしまいます。
そのため、週に3回以上の投与のための通院必要となります。
また、血中濃度の変動を繰り返すため、それが発熱・悪寒・頭痛などの副作用が起こりやすくなります。
遺伝子組み換え型インターフェロンアルファ
- イントロンA(IFN α-2b)
筋注で使用します。
単剤での使用もリバビリンとの併用療法も認められていますが、肝硬変に対しては使用できません。
低ウイルス量→単剤
高ウイルス量またはIFN単独療法無効またはIFN単独療法後再燃→リバビリン併用療法
となっています。
単独療法・併用療法ともに用法は「を週6回又は週3回筋肉内に投与」となっています。
天然型インターフェロンアルファ
天然型IFN αの方が遺伝子組み換え型IFN αに比べて、副作用が少ないと言われています。
- オーアイエフ(BALL-1)
- スミフェロン(NAMALWA)
BALL-1とNAMALWAはインターフェロンアルファの産生に用いる細胞株(ヒトリンパ芽球細胞)の名前です。
オーアイエフ、スミフェロンともに皮下注・筋注で使用します。
リバビリンとの併用療法は認められていません。
オーアイエフ、スミフェロンともにC型慢性肝炎の治療に使用する場合の用法は「連日又は週3回皮下又は筋肉内注射する」となっています。
オーアイエフは小児のC型慢性肝炎に対する用法・用量が定められています。
小児に対しては皮下注射のみが投与経路として使用されます。
スミフェロンはセログループ1の高ウイルス量には使用できません。
C型代償性肝硬変へ使用することが可能です。
その場合、投与開始後2週間は連日投与となっています。
副作用と週3回の通院がIFN治療の欠点ですが、IFN製剤の中で天然型IFN αだけは自己注射が認められています。
それにより、通院回数を減らすことが可能ですし、夜間に注射を行うことで体内のコルチコステロイドのリズムに適応させ、発熱などの副作用を減らすことも可能です。
インターフェロンベータ
C型肝炎治療に使用されるのは天然型のみ、PEG化製剤も存在しません。
フエロン(IFN β)
ヒト繊維芽細胞によって産生されたものを使用した製剤です。
静脈内投与または点滴静注で使用します。
単剤での使用もリバビリン(RBV)との併用療法も認められており、肝硬変に対しても使用可能です。
単剤での使用に特に縛りはありませんが、リバビリン併用療法は「高ウイルス量」または「IFN単独療法無効」または「IFN単独療法後再燃」に対してとなっています。
また、C型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善については、HCVセログループ1の高ウイルス量に対しては使用できません。
単独療法では連日投与、併用療法では「投与後4週間までは連日、以後週3回投与」となっています。
抗ウイルス効果はIFN αと同等ですが、副作用の起こり方が異なります。
PEG-IFN α+RBV併用療法と比べて、天然型IFN β+RBV併用療法の方が副作用中止は少なく、血小板減少の程度が軽微だというデータがあります。
また、IFNα治療をうつ症状で中止したことがある患者に対しても、天然型IFN β+RBV併用療法ではうつに対する認容性が高いというデータもあります。
PEG-IFN α+RBV併用療法が無効な患者の15%はIFNαに対する中和抗体が検出されたというデータがありますが、IFN βはIFN α中和抗体によって阻害されません。
以上より、PEG-IFN α+RBV併用療法が無効だったり副作用で中止した患者に対しては天然型IFN βへの切り替えが推奨されます。
1日2回で投与した方が1日1回に比べて抗ウイルス効果が強力になるというデータがあります。
IFN β 1日2回投与を継続する方法や、IFN β 1日2回投与を2週間行った後、PEG-IFN α+RBV併用療法を開始する方法が試みられています。
ペグ化インターフェロンアルファ(遺伝子組換)
水溶性の中性分子であるポリエチレングリコールを結合させることで、体内での薬物動態を変化させ、免疫系から保護することを目的とした製剤です。
血中濃度の変動が少ないため、発熱・悪寒・頭痛などの副作用の頻度が少ないのと、週に1回の投与=通院で治療が可能なため、PEG-IFN製剤の出現で多くの患者さんが治療に参加できるようになりました。
結合したPEGが異なる二つの製剤が認可されていますが、どちらも皮下注で投与されます。
PEGの分子量の違いにより、体内動態が異なります。
分子量が大きくなると体内貯留時間が長くなるが、IFN活性は低くなります。
抗ウイルス効果は、体内貯留時間、IFN活性のバランスで変わってきます。
ペガシス(PEG-INF α-2a)
INF α-2aに40kDaの分岐鎖PEGを共有結合させたものです。
Tmaxが72~96時間、有効血中濃度は168時間、IFN活性はIFN α-2aの7%です。
単剤での使用、リバビリンとの併用療法、肝硬変に対しての使用が可能です。
単独療法は特に縛りはありませんが、リバビリンとの併用療法は、「セログループ1で高ウイルス量」または「IFN単独療法で無効」または「IFN単独療法後再燃」または「C型代償性肝硬変」です。
ペグイントロン(PEG-INF α-2b)
INF α-2bに12kDaの一本鎖PEGをウレタン結合させたものです。
Tmaxが15~44時間、有効血中濃度は80時間、IFN活性はIFN α-2bの28%です。
リバビリンの併用療法のみしか認められておらず、単独療法はできません。
肝硬変に対しても使用できます。
治療の対象は「高ウイルス量」または「IFN単独療法で無効」または「IFN単独療法後再燃」または「C型代償性肝硬変」です。
それぞれを比較した論文が出ており、一説によるとPEG-INFα-2aの方が効果がよいといわれていますが、現時点では、一般的に効果は同程度とされています。
まとめ
可能な範囲で表にしてみます。
薬品名 | 種類 | IFN名 | 投与経路 | RBV併用 | 肝硬変 | 自己注 |
---|---|---|---|---|---|---|
オーアイエフ | 天然型 | IFN α | 皮下/筋 | × | × | ○ |
スミフェロン | 天然型 | IFN α | 皮下/筋 | × | ○ | ○ |
イントロンA | 遺伝子組換 | IFNα-2b | 筋注 | ○ | × | × |
ペガシス | 遺伝子組換 | PEG-IFN α-2a | 皮下注 | ○ | ○ | × |
ペグイントロン | 遺伝子組換 | PEG-IFN α-2b | 皮下注 | ○のみ | ○ | × |
フエロン | 天然型 | IFN β | 静注 | ○ | ◯ | × |
インターフェロンについてはこんなところ。
今度こそリバビリン併用療法です。