インターフェロンとリバビリンの併用療法について

C型肝炎シリーズもやっとここまでたどり着きました。
インターフェロン(IFN)とリバビリン(RBV)の2剤併用療法です。
プロテアーゼ阻害剤が発売されるまではこれがC型慢性肝炎治療のスタンダードでしたね。



  
  

  
  
現在はPEG-IFN+RBVにPI(プロテアーゼ阻害剤)を加えた3剤併用療法がスタンダードとなっていますが、2剤併用療法が始まった当時は、この方法の出現によってC型肝炎治療は大きく進歩しました。

C型肝炎のタイプ

C型肝炎にはセログループにとる分類とゲノタイプによる分類があります。
ジェノタイプとセログループ〜C型肝炎ウイルスの型について – 薬剤師の脳みそ
日本の保険診療ではセログループ検査しか承認されていませんが、治療方法に影響するのはゲノタイプです。
ですが、ゲノタイプ1型(genotype1a、genotype1b)はセログループ1に当てはまりますし、ゲノタイプ2型(genotype2a、genotype2b)はセログループ2にあてはまるので、分類上の意味(遺伝子型と血清型)は異なりますが、セログループ1とセログループ2という大別で判断して問題ないと思います。
そもそも日本人のほとんどがジェノタイプ1b(セログループ1)かジェノタイプ2a・2b(セログループ2)ですしね。

 

 

 

ジェノタイプ(国際分類)1a1b1c2a2b2c3a3b456
ジェノタイプ(okamoto)
セログループ

日本人の7割がジェノタイプ1bつまりセログループ1。
2割がジェノタイプ2a、1割がジェノタイプ2bつまり3割がセログループ2です。
日本人に最も多いジェノタイプ1bがインターフェロン抵抗性でしたね。
この分類とは別にHCV RNA高値つまり高ウイルス量もIFN抵抗性を示します。

2剤併用療法の保険適応

IFN+RBVの適応はどうなっていたでしょうか?
レベトールとコペガスの効能・効果を見てみましょう。
  

レベトールの効能・効果

1.インターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)、ペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)又はインターフェロン ベータとの併用による次のいずれかのC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善
(1)血中HCV RNA量が高値の患者
(2)インターフェロン製剤単独療法で無効の患者又はインターフェロン製剤単独療法後再燃した患者
2.ペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)との併用によるC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

  

コペガスの効能・効果

1.ペグインターフェロン アルファ-2a(遺伝子組換え)との併用による以下のいずれかのC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善
(1)セログループ1(ジェノタイプI(1a)又はII(1b))でHCV-RNA量が高値の患者
(2)インターフェロン単独療法で無効又はインターフェロン単独療法後再燃した患者
2.ペグインターフェロン アルファ-2a(遺伝子組換え)との併用によるC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

HCVの分類やウイルス量による治療方法

では、上の情報を元に細分化してみましょう。
  

初回治療

セログループ1+高ウイルス量
  • イントロンA(IFNα-2b)+レベトール(RBV)
  • ペグイントロン(PEG-IFNα-2b)+レベトール(RBV)
  • フエロン(IFNβ)+レベトール(RBV)
  • ペガシス(PEG-IFNα-2a)+コペガス(RBV)

  

セログループ1+低ウイルス量
  • 2剤併用療法の適応外→IFN単独療法

  

セログループ2+高ウイルス量
  • イントロンA(IFNα-2b)+レベトール(RBV)
  • ペグイントロン(PEG-IFNα-2b)+レベトール(RBV)
  • フエロン(IFNβ)+レベトール(RBV)

  

セログループ2+高ウイルス量
  • 2剤併用療法の適応外→IFN単独療法

  

再治療

  • イントロンA(IFNα-2b)+レベトール(RBV)
  • ペグイントロン(PEG-IFNα-2b)+レベトール(RBV)
  • フエロン(IFNβ)+レベトール(RBV)
  • ペガシス(PEG-IFNα-2a)+コペガス(RBV)

  

C型代償性肝硬変

  • ペガシス(PEG-IFNα-2a)+コペガス(RBV)
  • ペグイントロン(PEG-IFNα-2b)+レベトール(RBV)

  
  

レスポンスガイドセラピー

まず治療を開始し、その治療への反応性(レスポンス)つまりは効果を見て治療方針を決定する方法をレスポンスガイドセラピーと言います。
プロテアーゼ阻害剤を用いる3剤併用療法とは異なり、IFN+RBVの2剤併用療法では耐性のことをそこまで考慮しなくてもよいため、この方法が可能となります。
治療の初期段階でその患者の反応性に応じた治療方法を設計できるためSVR率の向上につながります。
また、SVRが見込めない症例を判断することも可能となるので、素早い治療中止により、患者の身体的、経済的負担を軽減することも可能となります。
  
  

ガイドラインとSVR

ガイドラインで推奨される治療方法と2剤併用療法の著効(Sustained Virological Response:SVR)率についてまとめます。
  

初回治療

セログループ1+高ウイルス量

第一選択はPIも含めた3剤併用療法です。
何らかの理由でPIを使用しない場合はPEG-IFN+RBVの2剤併用療法(ペグイントロン+レベトール、ペガシス+コペガス)となります。
  
PEG-IFN+RBV療法48週投与が基本となりますが、レスポンスガイドセラピーの考えが導入されています。
投与開始12週までにHCV RNAが陰性化した場合、70%以上においてSVRが認められたというデータがあります。
逆に12週以降に陰性化したケースでSVR率は低くなり、24週で陰性化しない症例ではSVRは認められません。
こういったデータをもとに以下のような投与設計が推奨されています。

 

 

 

 

HCV RNA陰性化投与期間
~12週48週
13~36週72週
9~12週高齢女性線維化進展48週(保険)+24週(保険外)

  
また、リアルタイムPCR法を用いることで治療開始4週時点でのHCV RNA減少量からSVR率を予測することも可能となっています。
4週で陰性化した場合はSVR率は100%。1log未満の減少だった場合はSVR率は4%未満です。
  
なお、SVRを目指した治療も重要ですが、高齢者や線維化進展例のような肝がんハイリスクではSVRは達成できなくてもIFN+RBV療法を行うことで生化学的効果が期待できるため、48週までは治療を中止せず継続する意義があります。
  
過去の記事にも書いたように、インターフェロン・リバビリンともに副作用が多く、IFN+RBV療法ではそれが問題となります。
なので、副作用に応じて投与量の調節、一時中断を行うケースもありますが、PEG-IFNやRBVの総投与量はSVR率に大きく影響します。
その証拠として、PEG-IFNとRBVの総投与量がともに80%以上だったケースとそれ以下のケースを比較すると、SVR率は51%と34%となっています。
また、早期陰性化(Early Virologic Response:EVR)率は投与開始後12週のPEG-IFN投与量に比例し、RBVは関係ないというデータがあります。
逆にウイルス陰性化後の再燃率に関してはRBVの投与量のみが影響するようです。
  
IFNαでうつの副作用が生じたケースやうつ病の合併例ではIFNβ+RBV(フエロン+レベトール)を用いるケースもありますが、この場合のSVR率は24週投与で19%、C型肝炎難治例に対する48週投与では22%です。
  

セログループ1+低ウイルス量

PEG-IFN単独療法(ペガシス)によりSVR率は50%以上とされています。
PEG-IFN+RBVの併用療法であればSVR率は80%以上とされていますが日本では適応外です。
  

セログループ2+高ウイルス量

PEG-IFN+RBV(ペグイントロン+リバビリン)の併用療法の効果が高いです。
4~8週でHCV RNAが陰性化した場合、SVR率は80%以上です。
ウイルス量によってはPEG-IFN単独療法でも効果が期待できます。
  

セログループ2+低ウイルス量

PEG-IFN単独療法(ペガシス)によるSVR率は90%以上です。
投与早期にHCV RNAが陰性化したケースでは治療期間を8~16週まで短縮することが可能です。
  

再治療

前回無効だった場合と再燃した場合に分けられ、さらに無効例において全く効果がなかった場合(null responder)とある程度効果があった場合(partial responder)に分けられます。
基本的にセログループ1の場合、3剤併用療法を行うか、新薬が登場するまで治療待機するかのどちらかになります。
IFN+RBVは耐性化を起こしにくいですが、プロテアーゼ阻害剤や今後登場予定のNS5A複製複合体阻害薬のような直接 作 用 型 抗 ウ イ ル ス 薬(Direct-acting Antiviral Agents:DAAs)では耐性化が問題となります。
なので、十分な効果、治療完了可能な条件(副作用など)が揃ってから治療待機するという考え方です。
もちろん、繊維化の進展などを考慮してのことです。
  
セログループ2の場合、全治療がIFNもしくはPEG-IFN単独療法、PEG-IFN+RBV併用療法のどちらだとしても、PEG-IFN+RBV併用療法(再治療)を行います。
  

C型代償性肝硬変

3剤併用療法は肝硬変への適応がないのでPEG-IFN+RBV併用療法が適応となります。
ペガシス+コペガスではセログループ1高ウイルス量でSVR率22%、それ以外でSVR率79%となっています。
線維化が進んでいる症例では投与量が制限されるため、長期間の併用療法を行うことでSVR率を向上させます。
また、貧血やうつの副作用が見られる場合はIFN単独療法(スミフェロン、フエロン)を行うことがあります。
  
  

最後に

よし!これでプロテアーゼ阻害剤についてまとめるための準備ができましたね。
いよいよです。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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