アビガン錠 インフルエンザ新薬 承認間近

近く発売と言われながらもなかなか登場しなかった新規インフルエンザ治療薬。
平成26年2月3日の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会で富山化学工業のT-705ことファビピラビル、商品名 アビガン錠200mgの承認が了承されました。
ファビピラビルはこれまでの抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)とは異なる作用機序を持ちます。

エボラとファビヒラビルについてもまとめました。
作用機序についてもくわしくまとめていますのでこちらもどうぞ。
アビガン錠(ファビピラビル)がエボラ出血熱の治療薬に!? – 薬剤師の脳みそ

ノイラミニダーゼ阻害剤

現在日本で主に使用されているインフルエンザ治療薬にはタミフル(一般名:オセルタミビル)、リレンザ(一般名:ザナミビル)、イナビル(一般名:ラニナミビル)、ラピアクタ(一般名:ペラミビル)がありますが、これらは全てノイラミニダーゼ阻害剤(アマンタジンはM2蛋白阻害剤)です。
ノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)は人間を含む多くの生物が持っている酵素で、ノイラミン酸のグリコシド結合を切断します。
ちなみに、ノイラミン酸の一部が置換されたものの総称をシアル酸と言います。
シアル酸に対しても同様に働くのでシアリダーゼとも言います。
インフルエンザウイルスの表面にはウイルス・ノイラミニダーゼが存在しています。
インフルエンザウイルスの亜種をH○N○と分類しますが、このNはノイラミニダーゼ(NA)の種類です。(HAは赤血球凝集素)
細胞内で増殖したインフルエンザウイルスはノイラミニダーゼの働きにより感染細胞内から溶出します。
このノイラミニダーゼの働きを阻害し、インフルエンザを感染細胞に封じ込め、感染の拡大を抑えるのがノイラミニダーゼ阻害剤です。
人体への感染を防ぐのではなく、あくまでも悪化を防ぐというイメージの作用ですね。
ちなみに、ノイラミニダーゼを持たないC型インフルエンザには効果がありません。
人間にもシアリダーゼが存在しますが、NA阻害剤はウイルス・ノイラミニダーゼを選択的に阻害するようです。

RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤

今回の新薬ファビピラビルはRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬です。
RNA依存RNAポリメラーゼとはインフルエンザウイルスのようなRNAウイルスが増殖する際にRNAを複製するために働く酵素です。
RNAレプリカーゼとかRNA複製酵素とも言います。
ファビピラビルは、RNAを構成するシトシンやウラシルに、一部類似の構造をもっています。
そのため、RNA依存性RNAポリメラーゼはシトシンやウラシルと勘違いしてファビピラビルを取り込んでしまいますが、一度取り込まれたファビピラビルはRNA依存性RNAポリメラーゼと強く結合し、その働きを阻害します。
結果、ファビピラビルはRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害することでインフルエンザウイルスの増殖自体を抑えることができます。
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ちなみにこの作用、C型肝炎治療に使用されているリバビリン(レベトール/コペガス)と同じですね。
レベトールとコペガス – 薬剤師の脳みそ

ファビピラビルへの期待

既存の抗インフルエンザウイルス薬とは異なる、インフルエンザウイルスの増殖に必須の酵素を抑制する作用機序を持つことからファビピラビルへの期待は高まってしまいます。
ウイルスの殻に存在するNAは型により種類が異なりますが、RNA依存RNAポリメラーゼは共通と思われます。
そこに作用するということはどんな型のインフルエンザに対しても効果を示すのではないかと予想されます。
実際に、非臨床試験において、広範な型のインフルエンザウイルスにも、タミフル耐性のインフルエンザウイルスに対しても効果を示したようです。
現在、中国や韓国で流行している鳥インフルエンザ H7N9型やH5N8型、H5N1型、アメリカでの豚インフルエンザ H3N2v型が、人から人へ感染できるようになった時、それに対抗する薬剤となるのは間違いありません。
特にH7N9型は既存のNA阻害剤のいずれに対しても耐性を持っているようですが、ファビピラビルは効果があることが確認されています。

インフルエンザ以外のウイルスにも効果が?

ファビピラビル(T-705)はin vitroでノロウイルスの複製を阻害する | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
リンク先を参照してください。
in vitroのデータですが、ファビピラビルがノロウイルスの複製を抑制したというデータもあるようです。
ノロウイルスも一本鎖RNAウイルスですから、RNAポリメラーゼ阻害剤であるファビピラビルが効果をもつのは当然なのかもしれません。
抗インフルエンザ薬としてだけでなく、様々な・・・は言いすぎかもしれませんが、複数のウイルスに効果を示す抗ウイルス薬としても期待できるのかもしれませんが、また新たな耐性との戦いの火種になるのかもしれませんね。

ちなみに同じ作用機序のリバビリンは今はC型肝炎、古くはRSウイルスなど様々なウイルスに使用していました。

アビガン錠承認への条件

承認間近となったアビガン錠ですが、厳しい条件の下での承認となるようです。
承認条件を詳しく見てみると・・・。
「通常のインフルエンザウイルス感染症に使用されることのないよう厳格な流通管理(パンデミック発生まで、一般に流通させない。)及び安全対策(妊娠及び妊娠の可能性がある女性への投与の回避する管理措置並びに男女とも投与中及び投与後7日間の避妊措置の徹底)の実施」
とあります。
パンデミック発生まで流通させない。という文章に近い将来起こるかもしれないパンデミックに対する警戒が現れています。
パンデミックが起きる時に身を守る薬剤を確保しておくことが大切です。
その前に耐性を獲得されてしまっては意味がないですもんね。
流通はしなくても、自治体などへの在庫はあらかじめ進められるのだと思います。

妊婦への投与禁忌

アビガン錠は妊娠中の患者さんへの投与は禁忌となりそうです。
シトシン・ウラシルなどと類似構造を持つことによる作用なので、生体内の細胞分裂への影響があるのはやむを得ないのかもしれません。
非臨床試験の段階ですでに催奇形性が確認されているようです。
胎児毒性がある以上、妊娠中禁忌は避けられません。
投与後一週間は避妊とあるので、7日間間隔を開ければ体内から完全に消失するのだと思います。

アビガン錠承認内容

効能・効果は「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)」
用法・用量は「通常、成人にはファビピラビルとして1日目は1回1600mgを1日2回、2日目から5日目は1回600mgを1日2回経口投与する。総投与期間は5日間とすること。」とされています。

申請日である平成23年3月30日から3年もの月日を要しましたが、胎児毒性などの問題があったからのようですね。
ハイリスクである妊婦に使えないのが何よりの欠点ですが、パンデミック発生時に備える心強い薬剤となりそうですね。
承認が待ち遠しいです。

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