レベトールカプセル200mg(MSD)とコペガス錠200mg(中外製薬)。
どちらもリバビリンを有効成分とし、
インターフェロンとの併用で今やC型肝炎の標準治療として用いられる薬剤です。
でも実は、1970年くらいからある薬ってことご存知ですか?
ちなみに、レベトール(MSD)が2001年、コペガス(中外製薬)が2007年に発売されています。
リバビリンの開発
リバビリンの発見は1970年のことです。
プリンヌクレオシドアナログ(核酸類縁体)として合成されたリバビリンは体内で代謝を受けた後、RNA依存型RNAポリメラーゼ阻害剤として働きます。
この作用機序によりRNAウイルスの遺伝子複製を阻害し、増殖を抑制することが可能なため、抗ウイルス剤として期待されました。
実際にC型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなどの治療薬として開発が進められてきました。
海外では発売されており、米国ではRSウイルスに対する吸入薬が販売されています。
リバビリンは抗インフルエンザ薬?
先日、話題になった新規インフルエンザ治療薬アビガン(一般名:ファビピラビル)も同じ作用機序ですね。
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どちらもRNA依存型RNAポリメラーゼ阻害剤です。
そのため、リバビリンもインフルエンザ治療薬として開発が進められたようですが、催奇形性(これはファビピラビルも同様ですね)や溶血性貧血、それに伴う心疾患の悪化などの副作用が問題となり断念されています。
抗HCV薬としてのリバビリン
リバビリンがC型肝炎治療薬として使用され始めたのは1995年になってからでした。
ちなみに、日本国内でリバビリンとインターフェロンの併用療法が認可されたのは、さらに遅れて2001年です。
単独では効果がなかったリバビリンですが、インターフェロンと併用することで、HCVに対し、IFN単独よりも強い効果を発揮することが発見されました。
リバビリンは、基本的にはウイルスの増殖を抑えるメカニズムなので、単剤では効果が薄いようです。
ですが、インターフェロンのようなウイルスを直接叩く薬剤と組み合わせれば効果発揮というイメージでしょうか?
C型肝炎ウイルスがそれだけ手強いということですね。
リバビリンの作用機序
リバビリンは様々な機序により抗HCV作用を発揮します。
1、RNA依存型RNAポリメラーゼ阻害作用
RNAウイルスであるHCVの遺伝子複製を阻害し、増殖を抑制します。
2、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)阻害作用
リバビリンは細胞内のIMPDH(イノシン一リン酸脱水素酵素)を阻害することで、細胞内GTP濃度を下げます。
その結果、遺伝子を複製するための原料を失ったウイルスは増殖ができなくなります。
3、Tヘルパー1細胞増強作用
ヘルパーT細胞の増強作用を介した免疫調節機構も備えていると言われています。
インターフェロンの効果をさらに増強するメカニズムとも言えますね。
4、ウイルスの感染能低下作用?
最近では、ポリオウイルスを用いた研究で、感染能を激減させるという研究結果も報告されています。
リン酸化されたリバビリンがウイルスRNAに取り込まれ、結果、ウイルスの突然変異を引き起こすということです。
2の作用はアザチオプリン(イムラン、アザニン)との相互作用にも影響しています。
IMPDHが阻害された結果、代謝産物のメチルチオイノシン一リン酸(meTIMP)が蓄積し、骨髄機能抑制を引き起こす可能性があります。
リバビリンの体内動態
食後に服用したリバビリンは1〜2時間後には血中濃度が最大になりますが、蓄積性が高く、半減期が長いため、定常状態に入るには4〜8週間かかります。
肝臓や赤血球、筋肉に長期残存します。
排泄は主に腎臓で行われるため、クレアチニンクリアランスが50mL/min以下(慢性腎不全)の症例には原則禁忌となっています。
リバビリンの副作用
主な副作用は溶血性貧血です。
元々、貧血があったり、心筋梗塞、腎不全、不整脈などの心疾患がある患者さんには慎重に使用する必要があります。
貧血による副作用に注目すると、PEG-INFα-2b+RVBの併用療法のうち20%の患者でリバビリンの減量、約10%の患者でリバビリンの中断が必要となっています。
投与開始前のヘモグロビン濃度、好中球数、血小板数が低い場合や女性の場合は貧血の頻度が高くなることが知られています。
腎機能の悪化や脂肪組織が増える高齢者についても注意が必要です。
特に、65歳以上でヘモグロビン(Hb)が13g/dL未満のケースでは80%以上でINFかRVBの減量が必要となっています。
治療開始2週間でHbが2g/dL以上減少した場合は貧血による治療中止率が高いため、この時点でリバビリンを200mg減量することがすすめられます。
貧血に関しては遺伝子的な解析も行われています。
イノシントリホスファターゼ(ITPA)という酵素の遺伝子多型(アジア人に多く見られる)が野生型に比べて貧血を起こしにくくすることがわかっています。
その他の副作用としては、リンパ球減少、高尿酸血症、掻痒感、皮疹、咳嗽、鼻閉などがあります。
催奇形性については、動物実験で認められています。
妊娠中、妊娠の可能性、授乳中の女性は禁忌。
精液中への移行も否定できないため、男女ともに治療中、治療中止後半年は避妊する必要があります。
レベトールとコペガス
リバビリンは日本国内ではレベトールとコペガスという二つの薬品として販売されています。
どちらも同一成分、C型肝炎に用いられますが、細かい適応などが異なります。
効能・効果を比較してみます。
レベトールカプセル200mg(MSD)
薬価:643.7円
1、インターフェロンアルファ-2b(イントロンA)、ペグインターフェロンアルファ-2b(ペグイントロン)又はインターフェロンベータ(フエロン)との併用による次のいずれかのC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善
(1)血中HCV RNA量が高値の患者
(2)インターフェロン製剤単独療法で無効の患者又はインターフェロン製剤単独療法後再燃した患者
2、ペグインターフェロンアルファ-2b(ペグイントロン)との併用によるC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善
コペガス錠200mg(中外製薬)
薬価:767.3円
1、ペグインターフェロンアルファ-2a(ペガシス)との併用による以下のいずれかのC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善
(1)セログループ1(ジェノタイプI(1a)又はII(1b))でHCV-RNA量が高値の患者
(2)インターフェロン単独療法で無効又はインターフェロン単独療法後再燃した患者
2、ペグインターフェロン アルファ-2a(ペガシス)との併用によるC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善
用量は体重ごとに設定されており、どちらも同じです。
60kg以下:600mg/日 朝食後200mg 夕食後400mg
60kg〜80kg:800mg/日 朝食後400mg 夕食後400mg
80kg以上:1,000mg/日 朝食後400mg 夕食後600mg
ただし、貧血の副作用などが発生した場合、減量が必要となります。
同じ薬のはずなんですが、インターフェロンとリバビリンの2剤併用療法に関する特許のからみで別々に販売されているというのが何とも言えませんね。
とりあえず、後発のコペガスは剤形を錠剤にして飲みやすくはしていますが薬価が・・・。
使うインターフェロンによってリバビリンも変わるということですが、なかなか何とも言えない部分です。
リバビリンを用いたテーラーメイド治療?
リバビリンの効果には個人差が大きいと言われています。
これが貧血の副作用の出方に影響しています。
最近の研究では、リバビリンが体内のアデノシンキナーゼによりリン酸化されることで作用を発揮することがわかってきました。
貧血などの副作用が問題となるリバビリンですが、患者のアデノシンキナーゼ活性を測定することで、適切な投与量を決定することが可能となるかもしれません。
また、副作用の原因を赤血球へのリバビリンの蓄積と考えて、リバビリンをプロドラッグ化、肝臓への選択性を高めたものにしたものも開発中のようです。
いかがでしょうか?
けっこうマニアックな話になったかもしれません。
次はいよいよプロテアーゼ阻害剤。
ソブリアードと合わせてテラビックも!
と言いたいところですが、インターフェロンとリバビリンの併用療法についてまとめておきたいと思います。