2022年6月17日に新規後発医薬品の薬価収載が行われました。
今回の薬価収載は2022年2月15日に承認された後発医薬品が中心となっています。
薬価基準収載の内容については令和4年6月16日の官報(号外 第128号)に掲載されています。
使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部を改正する件(厚生労働二〇三)
今回薬価収載された医薬品の承認時の記事は↓です。
令和4年2月15日に承認されたジェネリック医薬品【イグザレルト・エルカルチンFF・サムスカ・ジュリナ・スプリセル・トラマール・トレアキシン・ビダーザ・フェブリク・ヤーズ・ロゼレム・ロトリガ】
今回薬価収載された医薬品のポイント!
薬価収載された品目を紹介する前に、今回の薬価収載でポイントとなる部分をまとめておきます。
初登場のジェネリックは合計12成分(11成分)
今回、初登場となるジェネリック医薬品は以下の通りです。
内用薬 8成分
- オメガ-3脂肪酸エチル粒状カプセル(ロトリガ粒状カプセル)
- ダサチニブ錠(スプリセル錠)
- トラマドール塩酸塩OD錠(トラマールOD錠)
- トルパブタンOD錠/顆粒(サムスカOD錠/顆粒)
- ドロエチ配合錠(ヤーズ配合錠:ドロスピレノン・エチニルエストラジオールベータデクス)
- フェブキソスタット錠(フェブリク錠)
- ラメルテオン錠(ロゼレム錠)
- レボカルニチンFF錠(エルカルチンFF錠)
注射薬 4成分
- アザジチジン注射用(ビダーザ注射用)
- テリパラチド皮下注用(テリボン皮下注用)
- レボカルニチンFF静注シリンジ(エルカルチンFF静注シリンジ)
- ベンダムスチン塩酸塩点滴静注液(トレアキシン点滴静注液)
レボカルニチンFFを内服と注射で分ければ12成分、一緒にすれば11成分
今回追加されたAG
新規ジェネリックでAGが薬価収載されたのは以下の4つです。
- オメガ-3脂肪酸エチル粒状カプセル(ロトリガ):武田テバ
- トルバプタンOD錠7.5mg(サムスカ):オーツカ
- フェブキソスタット錠10mg/20mg/40mg(フェブリク):DSEP
- ラメルテオン錠8mg(ロゼレム):武田テバ
新規規格としてジエノゲスト錠0.5mgのAGが登場します。
- ジエノゲスト錠0.5mg(ディナゲスト):持田
また、統一名収載品であるため、薬価収載はされていませんが、同じタイミングで発売されるAGとして以下のものがあります。
- クラリスロマイシン錠200㎎/50㎎小児用/ドライシロップ10%小児用(クラリス):大正
- 炭酸リチウム錠100mg/200mg(リーマス):大正
10社以上参入したのはフェブキソスタットのみ
10社以上が参入し、薬価0.4掛けの対象となったのはフェブキソスタットのみです。
フェブキソスタットはフェブリクと比較して27.6〜28.1%と大幅に安い薬価になっています。
- フェブキソスタット錠10mg/OD錠10mg:28.1%
- フェブキソスタット錠20mg/OD錠20mg:28.1%
- フェブキソスタット錠40mg/OD錠40mg:27.6%
薬価収載が見送られた品目
- リバーロキサバン錠10mg/15mg「バイエル」(イグザレルトAG)
リバーロキサバンOD錠10mg/15mg「バイエル」(イグザレルトAG)
リバーロキサバン細粒分包10mg/15mg「バイエル」(イグザレルトAG) - エストラジオール錠0.5mg「F」(ジュリナ)
- エピナスチン塩酸塩LX点眼液0.1%「ニットー」(アレジオンLX)
イグザレルトは初めから薬価収載の申請を行わないって宣言してましたもんね。
それとAGとして承認を取得していた
- アザシチジン注射用100mg「シオエ」
が薬価収載されていないようですね。(AG以外のアザシチジン注射用は薬価収載)
適応違いが多いので注意!
今回、先発品と適応に違いが生じてしまっているものが多いので選択の際には注意が必要です。
- ダサチニブ:「慢性骨髄性白血病」の適応なし
- トルパブタン:「ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留」、「抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症の改善」、「腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性のう胞腎の進行抑制」の適応なし
- フェブキソスタット:一部メーカーは「がん化学療法に伴う高尿酸血症」の適応なし
- ベンダムスチン:「慢性リンパ性白血病」の適応なし
今回初登場となる後発医薬品
まずは今回の薬価収載の目玉。
ジェネリックが初めて登場するものについてまとめます。
内服
オメガ-3脂肪酸エチル粒状カプセル2g(ロトリガのGE)
オメガ-3脂肪酸エチル粒状カプセルは「高脂血症」治療薬であるロトリガ粒状カプセルの後発品で、AGを含む5社の製品が薬価収載されています。
以上5社 ※武田テバはAG
- オメガ-3脂肪酸エチル粒状カプセル2g:98.2円/包(44.8%)
- ロトリガ粒状カプセル2g:219.4円/包
同時収載を取得した企業数が10未満のため0.5掛けで算出されますが、ロトリガが新薬創出等加算の対象であるため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして後発品の薬価が算出されています。
各社の違い
イコサペント酸エチル顆粒状カプセルと同じようにMJTが粒子系を小さいものを出すかと思いましたがそんなことはなさそうです。(各社ともに直径約4mm)
生物学的同等性試験のデータを見る限り、
- 武田テバ
- トーワ
- MJT、YD、ニプロ
の3種類の製剤があるようです。
MJT、YD、ニプロのものには添加物に香料が含まれますのでオメガ-3脂肪酸エチル特有の匂いを軽減しているものと思われます。
ダサチニブ錠(スプリセルのGE) ※適応違い
ダサチニブ錠はスプリセル錠の後発品ですが、「再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病」の適応のみ取得で、4社の製品が薬価収載されています。
後発品は「慢性骨髄性白血病」の適応を取得できていないので注意が必要です。
以上4社
- ダサチニブ錠20mg:1,438.8円/錠(35.5%)
- ダサチニブ錠50mg★:3,380.4円/錠(35.5%) ★:汎用規格
- スプリセル錠20mg:4,047.4円/錠
- スプリセル錠50mg★:9,509.4円/錠 ★:汎用規格
同時収載を取得した企業数が10未満のため0.5掛けで算出されますが、ダサチニブが新薬創出等加算の対象であるため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして後発品50mg(汎用品)の薬価を算出、20mgは規格間比で算出しています。
各社の違い
生物学的同等性試験のデータを見る限り、
- NK、JG
- サワイ
- トーワ
の3種類の製剤があるようです。
トラマドールOD錠(トラマールのGE)
トラマドールOD錠は「疼痛を伴う各種癌」、「慢性疼痛」に対する鎮痛薬であるトラマールOD錠の後発品です。1社のみが薬価収載されています。
以上1社
- トラマドールOD錠25mg★:12.6円/錠(41.7%) ★:汎用規格
- トラマドールOD錠50mg:22.2円/錠(41.8%)
- トラマールOD錠25mg★:30.2円/錠 ★:汎用規格
- トラマールOD錠50mg:53.1円/錠
同時収載を取得した企業数が10未満のため0.5掛けで算出されますが、トラマールOD錠が新薬創出等加算の対象だったあるため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして後発品25mg(汎用品)の薬価を算出、規格間比を用いて50mgの薬価を算出しています。
トルバプタンOD錠/顆粒(サムスカのGE) ※適応違い
トルバプタンOD錠と顆粒は水利尿薬であるサムスカの後発品です。OD錠はAGを含む4社、顆粒は1社のみの製品が薬価収載されています。
先発品のサムスカはOD錠7.5mg、顆粒1%ともに、「ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留」、「ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留」、「抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症の改善」、「腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性のう胞腎の進行抑制」の適応を有していますが、AGを含む後発品は「ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留」の適応しか取得していないので注意が必要です。
顆粒1%:トーワ(東和薬品) 以上1社
- トルバプタンOD錠7.5mg:491.6円/錠(45.3%)
- サムスカOD錠7.5mg:1,084.7円/錠
- トルバプタン顆粒1%:743.7円/g(46.1%)
- サムスカ顆粒1%:1,613.0円/g
同時収載を取得した企業数が10未満のため0.5掛けで算出されますが、サムスカが新薬創出等加算の対象であるため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして後発品の薬価を算出しています。
トルバプタンとサムスカの適応
トルバプタンGEは一部の適応しか取得していませんが、そもそも、サムスカは剤形・規格ごとに適応が異なります。
各社の違い
生物学的同等性試験のデータを見る限り、
- オーツカ
- DSEP、ニプロ
- TE
の3種類の製剤があるようです。
ドロエチ配合錠(ヤーズのGE)
ドロエチ配合錠は「月経困難症」の適応を持つヤーズ配合錠の後発品です。成分名は「ドロスピレノン・エチニルエストラジオール」になりますが、配合剤の統一名称として「ドロエチ配合錠」が採用されています。1社のみの製品が薬価収載されています。
以上1社
- ドロエチ配合錠:2,823.0円/シート(45.5%)(102.9円/錠?)
- ヤーズ配合錠:6,328.5円/シート(226.0円/錠)
同時収載を取得した企業数が10未満のため0.5掛けで算出されますが、ヤーズ配合錠が新薬創出等加算の対象だったため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして後発品の薬価が算出されています。
ドロエチ配合錠の請求の考え方
ヤーズ配合錠はシート単位で薬価収載されていますが、請求上の不都合を解消するため、使用薬剤の薬価等の一部改正について(平成22年9月17日保医発第0917第1号)で例外的に1上当たりの薬価が定められている製品です。ドロエチ配合錠についても、実際に請求を行う際には、同様の考え方で算出した1錠当たりの薬価を用います。
使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(事務連絡 令和4年6月16日)
3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(1) ドロエチ配合錠「あすか」
① 本製剤の効能・効果は、「月経困難症」であること。
② 本製剤が避妊の目的で処方された場合には、保険給付の対象とはしないこと。
③ 本製剤は1シートに有効成分を含有する錠剤(実薬錠)を24錠及び有効成分を含有しない錠剤(プラセボ錠)を4錠、合計28錠を含む製剤であり、その用法・用量から、原則、シートの形態で処方されるものであるため、実薬錠及びプラセボ錠の区別無く、本製剤の1日あたりに算定した額を用いて、以下に示す例を参考に請求を行うこと。
例) ドロエチ配合錠「あすか」 1錠
1日1回 28日分
フェブキソスタット錠/OD錠(フェブリクのGE) ※一部適応違い
フェブキソスタット錠とOD錠は高尿酸血症治療剤であるフェブリク錠の後発品です。普通錠はAGを含む12社、先発品にはないOD錠は5社の製品が薬価収載されています。
先発品のフェブリクは「痛風、高尿酸血症」、「がん化学療法に伴う高尿酸血症」の適応を有していますが、一部の後発品は「痛風、高尿酸血症」の適応しか取得していないので注意が必要です。
OD錠:NPI(日本薬品工業)、ケミファ(日本ケミファ)、サワイ(沢井製薬)、日新(日新製薬)、明治(MeijiSeikaファルマ) 以上5社
- フェブキソスタット錠/OD錠10mg:7.6円/錠(28.1%)
- フェブリク錠10mg:27.0円/錠
- フェブキソスタット錠/OD錠20mg★:13.9円/錠(28.1%) ★:汎用規格
- フェブリク錠20mg★:49.5円/錠 ★:汎用規格
- フェブキソスタット錠/OD錠40mg:25.5円/錠(28.1%)
- フェブリク錠40mg:92.5円/錠
同時収載を取得した企業数が10を超すため0.4掛けで算出されますが、フェブリクが新薬創出等加算の対象であるため、累積変換分を差し引いた上で0.4掛けをして後発品20mg(汎用規格)の薬価を算出、他は規格間比を用いて算出さしています。
各社の違い
生物学的同等性試験のデータを見る限り、
普通錠については
- AFP、TCK、YD、日新、杏林
- JG
- ケミファ、明治
- サワイ
- トーワ
- ニプロ
の6種類があるようです。
また、OD錠については
- NPI、ケミファ、日新、明治
- サワイ
の2種類の製剤があるようです。
ラメルテオン(ロゼレムのGE)
ラメルテオン錠はメラトニン受容体アゴニストであるロゼレム錠の後発品です。AGのみ1社の製品が薬価収載されています。
AG 1社(武田テバファーマ)のみ
- ラメルテオン錠8mg:27.9円/錠(32.5%)
- ロゼレム錠8mg:85.9円/錠
1社のみのため0.5掛けで算出されますが、ロゼレムが新薬創出等加算の対象であるため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして後発品の薬価を算出しています。
レボカルニチンFF錠(エルカルチンFF錠のGE)
レボカルニチンFF錠はエルカルチンFF錠の後発品です。
- レボカルニチンFF錠100mg:45.5円/錠(56.4%)
- エルカルチンFF錠100mg:80.7円/錠
- レボカルニチンFF錠250mg★:113.7円/錠(47.9%) ★:汎用規格
- エルカルチンFF錠250mg★:237.5円/錠 ★:汎用規格
1社のみのため0.5掛けで算出されますが、エルカルチンFFが新薬創出等加算の対象であるため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして後発品250mg(汎用品)の薬価を算出、規格間比を用いて100mgの薬価を算出しています。
注射
アザシチジン注射用(ビダーザのGE)
アザシチジン注射用はビダーザ注射用の後発品です。
先発品にはない150mgの規格も薬価収載されています。
150mg:NK(日本化薬)、オーハラ(大原薬品工業) 以上2社
- アザジチジン注射用100mg:15,425円/瓶(37.0%)
- ビダーザ注射用100mg:41,714円/瓶
- アザジチジン注射用150mg:23,138円/瓶
同時収載を取得した企業数が10未満のため0.5掛けで算出されますが、ビダーザ注射用が新薬創出等加算の対象のため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして後発品の薬価が算出されています。
テリパラチド皮下注用(テリボン皮下注用のGE)
テリパラチド皮下注用は骨粗鬆症治療薬であるテリボン皮下注用の後発品です。
1社のみ
- テリパラチド皮下注用56.5μg:5,194円/瓶(47.4%)
- テリボン皮下注用56.5μg:10,967円/瓶
1社のみのため0.5掛けで算出されますが、テリボンが新薬創出等加算の対象のため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして後発品の薬価が算出されています。
レボカルニチンFF静注シリンジ(エルカルチンFF静注のGE)
レボカルニチンFF静注シリンジはエルカルチンFF静注シリンジの後発品です。
- レボカルニチンFF静注1000シリンジ:466円/筒(48.1%)
- エルカルチンFF静注1000シリンジ:969円/筒
参入が10社に満たないため0.5掛けで算出されますが、エルカルチンFF静注が新薬創出等加算の対象であるため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして後発品の薬価が算出されています。
ベンダムスチン塩酸塩点滴静注液(トレアキシン点滴静注のGE) ※適応違い
ベンダムスチン塩酸塩点滴静注液はトレアキシン点滴静注液の後発品です。
1社のみ
- ベンダムスチン塩酸塩点滴静注液25mg/1mL:12,565円/瓶
- ベンダムスチン塩酸塩点滴静注液100mg/4mL:41,356円/瓶(43.3%)
- トレアキシン点滴静注液100mg/4mL:95,515円/瓶
1社のみなので0.5掛けで算出されますが、トレアキシンが新薬創出等加算の対象であるため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして後発品の薬価が算出されています。
そのほか気になる製品
その他、今回の薬価収載で気になる製品をまとめます。
規格違いとして新規参入した製品
アリピプラゾール錠1mg/内用液1mg分包(エビリファイのGE 新規格)
アリピプラゾール錠3mg、6mg、12mg、24mgはすでに発売されていましたが、1mg錠が追加になりました。沢井製薬1社のみが承認、薬価収載されます。
また、これに合わせてアリピプラゾール内用液1mg分包(先発品には分包の剤形はなし)も薬価収載されています。
- アリピプラゾール錠1mg「サワイ」(沢井製薬) 1社のみ
- アリピプラゾール内用液1mg分包「サワイ」(沢井製薬) 1社のみ
ジエノゲスト錠0.5mg(ディナゲストのGE 新規格)
ジエノゲスト錠1mg/OD錠1mgはすでに発売されていましたが、0.5mg錠が追加になりました。
- ジエノゲスト錠0.5mg「持田」(持田製薬販売)
0.5mg(月経困難症)は1mg(子宮内膜症、子宮腺筋症に伴う疼痛の改善)とは適応が異なります。