2023年6月16日に新規後発医薬品の薬価収載が行われました。
今回の薬価収載は2023年2月15日に承認された後発医薬品が中心となっています。
薬価基準収載の内容については令和5年6月15日の官報(号外 第126号)に掲載されています。
使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部を改正する件(厚生労働二一三)
今回薬価収載された医薬品の承認時の記事は↓です。
令和5年2月15日に承認された後発品等【アジルバ・アトーゼット・イムセラ/ジレニア・セララ・タプロス・タプコム・タルセバ・ノベルジン・ムコスタ点眼・レブタミド・ロゼックス】
- 1 2023年6月16日GE薬価収載のポイント!
- 2 今回初登場となる後発医薬品
2023年6月16日GE薬価収載のポイント!
薬価収載された品目を紹介する前に、今回の薬価収載でポイントとなる部分をまとめておきます。
初登場のジェネリックは合計8製品
今回、初登場となるジェネリック医薬品は以下の通りです。
内服薬(先発5製品)
- アジルサルタン錠/OD錠(アジルバ錠)※OD錠は新剤形
- エゼアト配合錠(アトーゼット配合錠)
- エプレレノン錠(セララ錠)
- エルロチニブ錠(タルセバ錠)
- 酢酸亜鉛錠(ノベルジン錠)
外用薬(先発3製品)
- タフチモ配合点眼液(タプコム配合点眼液)
- タフルプロスト点眼液(タプロス点眼液)
- レバミピド点眼液(ムコスタ点眼液UD)※包装違い
今回新規収載されたAG
新規ジェネリックでAGが薬価収載されたのは以下の4つです。
- アジルサルタン錠10mg/20mg/40mg「武田テバ」
- ビソプロロールフマル酸塩錠0.625mg/2.5mg/5mg「DSEP」
- フルチカゾンフランカルボン酸エステル点鼻液27.5µg「武田テバ」56噴霧用/120噴霧用(2021年8月承認)
10社以上参入したのはアジルサルタンのみ
10社以上が参入し、薬価0.4掛けの対象となったのはアジルサルタンのみです。
アジルサルタンは先発のアジルバの26.4%と大幅に安い薬価になっています。
- アジルサルタン錠/OD錠10mg:26.4%
- アジルサルタン錠/OD錠20mg:26.4%
- アジルサルタン錠/OD錠40mg:26.4%
薬価収載が見送られた品目
以下は2023年2月15日に承認された後発医薬品のうち、薬価収載が見送られたものです。
- フィンゴリモドカプセル(イムセラカプセル/ジレニアカプセル)
- フルベストラント(フェソロデックス筋注)
- メトロニダゾールゲル(ロゼックスゲル)
- ランジオロール塩酸塩(オノアクト点滴静注用)
- ルリコナゾール外用液(ルリコン液)
- レナリドミド(レブラミドカプセル)
今回初登場となる後発医薬品
まずは今回の薬価収載の目玉。
ジェネリックが初めて登場するものについてまとめます。
アジルサルタン錠10mg/20mg/40mg・同OD錠10mg/20mg/40mg(アジルバ錠のGE)
アジルサルタン錠/OD錠は「高血圧症」治療薬であるアジルバ錠の後発品で、AGを含む12社の製品が薬価収載されています。
先発医薬品には存在しないOD錠も薬価収載されており、普通錠が6社、OD錠が7社です。(沢井製薬は普通錠とOD錠の両方を発売)
以上6社※武田テバはAG
以上7社
規格 | アジルバ錠 薬価 | アジルサルタン錠/OD錠 薬価 | 後発薬価/先発薬価 |
---|---|---|---|
10mg | 93.70円/錠 | 24.70円/錠 | 26.4% |
20mg★ | 140.10円/錠 | 37.00円/錠 | 26.4% |
40mg | 210.10円/錠 | 55.50円/錠 | 26.4% |
★:汎用規格
同時収載を取得した企業数が10を超すため0.4掛けで算出されますが、アジルバ錠が新薬創出等加算の対象であるため、累積変換分を差し引いた上で0.4掛けをしてアジルサルタン錠20mg(汎用規格)の薬価を算出、他は規格間比を用いて算出されています。
新薬創出等加算の累積変換があることに加えて、10社超えなので安くはなるだろうと思っていましたが、26.4%は衝撃ですね・・・。
普通錠の違い
まず、普通錠についてですが、「サワイ」と「ニプロ」については共同開発であることが公表されています。
後発医薬品として、沢井製薬株式会社、ニプロ株式会社の計2社が共同開発を実施した。下記通知に基づき、製造方法並びに規格及び試験方法を設定、安定性試験、生物学的同等性試験を実施のうえ、共同開発グループとして実施したデータを共有し、承認を得て上市に至った。
アジルサルタン錠「サワイ」 インタビューフォーム
アジルサルタン錠20mg「サワイ」については薬価基準収載日・発売日(2023年6月16日)に包装変更の案内が出るという不思議な現象が起きています。
アジルサルタン錠20mg「サワイ」 包装変更[PTPシート、ラベル、製品箱]のお知らせ
PTP100錠包装のPTPシートの変更(サイズがPTP500錠包装のものと統一される)、バラ500錠包装の包装ラベルの変更が行われるようですが、PTPシートの変更については製剤製造企業が沢井製薬とニプロファーマの2企業となっていることから、発売前の製造に何か不具合があって、初期ロットの製造を進める上で本来想定したものと異なる包装で発売するしかなかったのではないかと想像しています。
OD錠の違い
OD錠については「サワイ」以外の6社は全て共同開発のようです。
本剤は、後発医薬品として、キョーリン リメディオ株式会社、第一三共エスファ株式会社、ダイト株式会社、日新製薬株式会社、日本ケミファ株式会社、Meiji Seika ファルマ株式会社の 6 社で共同開発を実施し、共同開発グループとして実施したデータを共有し、承認を得て上市に至った。
アジルサルタンOD錠「杏林」 インタビューフォーム
エゼアト配合錠LD/HD(アトーゼット配合錠のGE)
エゼアト配合錠は「高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症」治療薬であるアトーゼット配合錠の後発品で、「JG」(日本ジェネリック)1社のみが薬価収載されています。
エゼアト配合錠という名称は配合剤ジェネリック医薬品の統一ブランド名称ですが、エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム水和物配合錠なので比較的わかりやすい方ですね。(気持ち的にはアトエゼですが・・・)
1社のみ
規格 | アトーゼット配合錠 薬価 | エゼアト配合錠「JG」 薬価 | 後発薬価/先発薬価 |
---|---|---|---|
LD★ | 137.90円/錠 | 69.00円/錠 | 50.0% |
HD | 134.20円/錠 | 69.00円/錠 | 51.4% |
★:汎用規格
エゼアト配合錠はLD/HDのどちらも同じ薬価となりました。
同時収載を取得した企業数が1社のみ(10未満)のため、アトーゼット配合錠LDの0.5掛けでエゼアト配合錠LD(汎用規格)の薬価が算出され、それに合わせる形でHDの薬価も決定したようです。
エゼアト配合錠「JG」の発売日は?
薬価収載同時発売(2023年6月16日)です。
https://www.nihon-generic.co.jp/a.php?id=44
エプレレノン錠25mg/50mg/100mg(セララ錠のGE)
エプレレノン錠は「高血圧症、慢性心不全」治療薬であるセララ錠の後発品で、「杏林」(キョーリンリメディオ)1社のみが薬価収載されています。
1社のみ
規格 | セララ錠 薬価 | エプレレノン錠「杏林」 薬価 | 後発薬価/先発薬価 |
---|---|---|---|
25mg | 34.70円/錠 | 12.80円/錠 | 36.9% |
50mg★ | 67.00円/錠 | 24.70円/錠 | 36.9% |
100mg | 124.20円/錠 | 47.70円/錠 | 38.4% |
★:汎用規格
同時収載を取得した企業数が1社のみ(10未満)のため0.5掛けで算出されますが、セララ錠が新薬創出等加算の対象のため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをしてエプレレノン錠50mg(汎用品)の薬価を算出、他は規格間比を用いて算出されています。
エプレレノン錠「杏林」の発売日は?
薬価収載同時発売(2023年6月16日)です。
https://www.med.kyorin-rmd.com/news/pdf/2023/230615tsuiho.pdf
エルロチニブ錠(タルセバ錠のGE)
エルロチニブ錠は「非小細胞肺癌、膵癌(25mg/100mgのみ)」治療薬であるタルセバ錠の後発品で、「NK」(日本化薬)1社のみが薬価収載されています。
1社のみ
規格 | タルセバ錠 薬価 | エルロチニブ錠「NK」 薬価 | 後発薬価/先発薬価 |
---|---|---|---|
25mg | 1875.40円/錠 | 586.70円/錠 | 31.3% |
100mg★ | 6916.40円/錠 | 2147.70円/錠 | 31.3% |
150mg | 10109.20円/錠 | 3139.10円/錠 | 31.3% |
★:汎用規格
同時収載を取得した企業数が1社のみ(10未満)のため0.5掛けで算出されますが、タルセバ錠が新薬創出等加算の対象のため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをしてエルロチニブ錠100mg(汎用品)の薬価を算出、他は規格間比を用いて算出されています。
エルロチニブ錠「NK」の発売日は?
薬価収載同時発売(2023年6月16日)です。
https://mink.nipponkayaku.co.jp/product/di/ot_file/o283.pdf
酢酸亜鉛錠(ノベルジン錠のGE)
酢酸亜鉛錠は「ウィルソン病(肝レンズ核変性症)、低亜鉛血症」治療薬であるノベルジン錠の後発品で、「サワイ」(沢井製薬)1社のみが薬価収載されています。
承認時、酢酸亜鉛錠はウィルソン病(肝レンズ核変性症)の適応しか有していませんでしたが、2023年6月7日に「低亜鉛血症」の適応を取得しています。
ただし、酢酸亜鉛錠については、ノベルジン錠に関する特許を侵害しているとしてノーベルファーマが沢井製薬に対して訴訟を提起しているので、その点に留意しておく必要があります。
1社のみ
規格 | ノベルジン錠 薬価 | 酢酸亜鉛錠「サワイ」 薬価 | 後発薬価/先発薬価 |
---|---|---|---|
25mg | 230.40円/錠 | 100.60円/錠 | 43.7% |
50mg★ | 361.00円/錠 | 157.60円/錠 | 43.7% |
★:汎用規格
同時収載を取得した企業数が1社のみ(10未満)のため0.5掛けで算出されますが、ノベルジン錠が新薬創出等加算の対象のため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして酢酸亜鉛錠50mg(汎用品)の薬価を算出、25mgについては規格間比を用いて算出されています。
酢酸亜鉛錠「サワイ」の発売日は?
2023年8月発売予定です。
https://med.sawai.co.jp/file/pr28_4814_1.pdf
タフチモ配合点眼液(タプコム配合点眼液のGE)
タフチモ配合点眼液は「緑内障、高眼圧症」治療薬であるタプコム配合点眼液の後発品で、「NIT」(日東メディック)1社のみが薬価収載されています。
タフチモ配合点眼液という名称は配合剤ジェネリック医薬品の統一ブランド名称ですが、タフルプロスト・チモロールマレイン酸塩点眼液なので、これも比較的わかりやすい方ですね。(いつもタフルプロストをタプルプロストと間違えます)
1社のみ
タプコム配合点眼液 薬価 | タフチモ配合点眼液「NIT」 薬価 | 後発薬価/先発薬価 |
---|---|---|
781.00円/mL | 390.50円/mL | 50.0% |
同時収載を取得した企業数が1社のみ(10未満)のため0.5掛けで算出されています。
タフチモ配合点眼液「NIT」の発売日は?
2023年9月1日発売予定です。
https://info.nittomedic.co.jp/fileview.php?id=135&view=notice2
タフルプロスト点眼液(タプロス点眼液のGE)
タフルプロスト点眼液は「緑内障、高眼圧症」治療薬であるタプロス点眼液の後発品で、「NIT」(日東メディック)1社のみが薬価収載されています。
1社のみ
タプロス点眼液0.0015% 薬価 | タフルプロスト点眼0.0015%「NIT」 薬価 | 後発薬価/先発薬価 |
---|---|---|
825.60円/mL | 331.00円/mL | 40.1% |
同時収載を取得した企業数が1社のみ(10未満)ですが、タプロス点眼液が新薬創出等加算の対象のため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして算出されています。
タフルプロスト点眼液0.0015%「NIT」の発売日は?
2023年7月18日発売予定です。
https://info.nittomedic.co.jp/fileview.php?id=134&view=notice2
レバミピド懸濁性点眼液(ムコスタ点眼液UDのGE)
レバミピド懸濁性点眼液は「ドライアイ」治療薬であるムコスタ点眼液UDの後発品で、「参天」(参天製薬)1社のみが薬価収載されています。
1社のみ
ムコスタ点眼液2%UD 薬価 | レバミピド懸濁性点眼液2%「参天」 薬価 | 後発薬価/先発薬価 |
---|---|---|
27.20円/本 | 460.50円/mL | 33.9%(概算) |
同時収載を取得した企業数が1社のみ(10未満)ですが、ムコスタ点眼液UD2%が新薬創出等加算の対象のため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをして算出されています。
ただし、ムコスタ点眼液2%UD(ユニットドーズ、1回使い切り)と通常の点眼液であるため直接の比較ができません。(ムコスタ点眼液UD2%は薬価収載時にUDであることが評価され有用性加算(Ⅱ)(A=5(%))の対象にもなっています)
ムコスタ点眼液UD2%を1日4本、レバミピド懸濁性点眼液2%を12.5日分として薬価比の概算としています。
ムコスタ点眼液UDとは剤形が違うけど本当にジェネリックなの?代替調剤は?
気になるのでメーカー(参天製薬)に確認しました。
レバミピド懸濁性点眼液2%「参天」はムコスタ点眼液UD2%のジェネリック医薬品という位置付けではありますが、剤形が異なるため、ムコスタ点眼液UD2%の代替調剤としてレバミピド懸濁性点眼液2%「参天」を調剤することはできません。
処方箋で直接レバミピド懸濁性点眼液2%「参天」が指定されている場合か、患者さんの希望等により疑義照会を行い変更となった場合に調剤可能です。
後発医薬品調剤体制加算等の計算については、
- ムコスタ点眼液UD2%は「1:後発医薬品がない先発医薬品(後発医薬品の上市前の先発医薬品等)」
- レバミピド懸濁性点眼液2%「参天」は「3:後発医薬品」
となってます。
薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和5年6月16日適用) 5.その他(各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報)
ムコスタ点眼液UDに比べて角膜刺激性が高いのでは?
ムコスタ点眼液UDは1回使い切りのユニットドーズ(UD:Unit Dose)とすることで保存剤を使用しない形で製剤化していますが、レバミピド懸濁性点眼液2%「参天」は通常の点眼液であり、開封後1ヶ月使用可能な形をとっています。
そこで気になるのが添加物・・・ということで比較してみました。
- ムコスタ点眼液UD2%:クエン酸ナトリウム水和物、塩化ナトリウム[等張化剤]、塩化カリウム[等張化剤]、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、塩酸[pH調整剤]、水酸化ナトリウム[pH調整剤]、精製水
- レバミピド懸濁性点眼液2%「参天」:クエン酸ナトリウム水和物、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポビドン、カルボキシビニルポリマー、硝酸銀、pH調節剤
レバミピド懸濁性点眼液2%「参天」は防腐剤として硝酸銀が使用され、ベンザルコニウム塩化物(防腐剤)を使用していないBAKフリー製剤になります。
ウサギに対する反復投与毒性試験が行われており、レバミピド懸濁性点眼液2%、レバミピド懸濁性点眼液2%(硝酸銀濃度1.75倍)と基剤(硝酸銀濃度1.75倍)を用いて、50μL/眼/回、6回/日を26週間+回復期2週間で検討を行っていますが、いずれの群でも眼毒性初見は見られなかったようです。
レバミピド懸濁性点眼液2%「参天」の発売日は?
2023年9月1日発売予定です。
https://www.santen.co.jp/medical-channel/di/information/2023/DJ195_sdi551.pdf
フルチカゾンフランカルボン酸エステル点鼻液27.5µg(アラミスト点鼻液27.5µgのGE)
フルチカゾンフランカルボン酸エステル点鼻液は「アレルギー性鼻炎」治療薬であるアラミスト点鼻液の後発品で、AGを含む5社が薬価収載されています。
5社※武田テバはAG
規格 | アラミスト点鼻液 薬価 | フルチカゾンフランカルボン酸エステル点鼻液 薬価 | (武田テバ) | 後発薬価/先発薬価 |
---|---|---|---|---|
56噴霧用 | 1555.00円/瓶 | 572.00円/瓶 | 628.20円/瓶 | 36.8% |
120噴霧用 | 3268.40円/瓶 | 1225.00円/瓶 | 1281.90円/瓶 | 37.5% |
外用薬なので0.5掛けで算出されますが、アラミスト点鼻液が新薬創出等加算の対象のため、累積変換分を差し引いた上で0.5掛けをしてフルチカゾンフランカルボン酸エステル点鼻液の薬価を算出しています。
ただし、武田テバのみ薬価が異なるのがポイントです。
これはデバイスの差だと思われます。(武田テバのみアラミスト点鼻液と同じデバイスで、他社は通常の点鼻液のデバイス)
実際、アラミスト点鼻液が薬価収載された際には、「キット特徴部分原材料費」が薬価に上乗せされています。同様の対応がフルチカゾンフランカルボン酸エステル点鼻液「武田テバ」には適用されたものと思われます。
フルチカゾンフランカルボン酸エステル点鼻液27.5µgの発売日は?
薬価収載同時発売(2023年6月16日)です。