スローケーの製造中止〜カリウム製剤の切り替えについて考える

徐放性カリウム製剤であるスローケー錠が発売中止になりました。
販売中止のご案内(ノバルティスファーマ)
販売中止の時期は2019年1月以降で在庫がなくなり次第ってことでしたが、2019年4月で在庫がなくなったようです。
スローケー唯一の後発医薬品のケーサプライ錠600mgに切り替えたいところですが、注文が殺到した結果、出荷調整となっています。
スローケーの経過措置は2020年3月末なので、それまでに採用を検討できるように代替品などについてまとめておきます。

スローケーについて

スローケーは塩化カリウムを成分とする徐放性の錠剤です。
販売開始が1976年2月なので、かなり歴史のある薬剤です。

体内でクロール(塩素)が少なくなっている代謝性アルカローシスに伴う低カリウム血症に適した無機カリウム製剤です。
徐放性を持たせることで吸収効率を増加させるとともに、塩化カリウムによる粘膜刺激作用を軽減させています。
錠剤が大きくて飲みにくいこと、吸湿性があるため一包化できないなどの欠点はありましたが、貴重な無機カリウム製剤の錠剤(スローケーとその後発医薬品であるケーサプライのみ)でした。

2.販売中止時期
弊社からの出荷は 2019 年 1 月末以降、在庫が無くなり次第、終了させていただく予定です。なお、今後の出荷状況により若干の差異が生じることがございますので、その折はご容赦賜りますようお願い申し上げます。
3.経過措置期間満了日(予定)
2020 年 3 月末日

スローケー錠600mg 販売中止のご案内(ノバルティスファーマ)

スローケー以外のカリウム製剤

スローケー錠600mg 販売中止のご案内(ノバルティスファーマ)にも代替品が記載さてていますが、全ての代替品が記載されているわけではないので、その他のものも含めた経口薬について改めてまとめてみます。
各薬剤ごとのカリウム含有量(当量)も記載しました。

スローケーの代替品(経口薬)

  • 塩化カリウム製剤
    • スローケー錠600mg(1錠中 カリウムとして8mEq)
    • 塩化カリウム徐放錠 600mg「St」(1錠中 カリウムとして8mEq)(旧 ケーサプライ錠600mg)
    • K.C.L.エリキシル(10w/v%)(1mL中 カリウム(K)として1.34mEq)
    • 塩化カリウム「フソー」(1g中 カリウムとして13.4mEq)
    • 塩化カリウム「ヤマゼン」(1g中 カリウムとして13.4mEq)
    • 塩化カリウム「日医工」(1g中 カリウムとして13.4mEq)
  • L-アスパラギン酸カリウム製剤
    • アスパラカリウム錠300mg(1錠中 K+:1.8mEq)
    • L-アスパラギン酸K 錠300mg「アメル」(1錠中 K+:1.8mEq)(旧 アスケート錠300mg)
    • アスパラカリウム散50%(1g中 K+:2.9mEq)
  • グルコン酸カリウム製剤
    • グルコンサンK錠5mEq
    • グルコンサンK錠2.5mEq
    • グルコンサンK細粒4mEq/g

スローケーと同じ成分・同じ剤型の後発医薬品はケーサプライのみです。

カリウム製剤それぞれの適応・用法用量の違い

個別に見ていきます。
適応の違いについては大きな問題はないかと思います。
用法・用量の違いについては後でまた触れます。

スローケー・ケーサプライ
  • 効能・効果:低カリウム血症の改善
  • 用法・用量:通常成人には1回2錠(塩化カリウムとして1,200mg)を1日2回食後経口投与する。
K.C.L.エリキシル(10w/v%)・塩化カリウム「各社」
  • 効能・効果:
    • 下記疾患又は状態におけるカリウム補給
      • 降圧利尿剤、副腎皮質ホルモン、強心配糖体、インスリン、ある種の抗生物質などの連用時
      • 低カリウム血症型周期性四肢麻痺
      • 重症嘔吐、下痢、カリウム摂取不足及び手術後
    • 低クロール性アルカローシス
  • 用法・用量:塩化カリウムとして、通常成人1日2~10gを数回に分割し、多量の水とともに経口投与する。
アスパラカリウム・アスケート
  • 効能・効果:下記疾患又は状態におけるカリウム補給
    • 降圧利尿剤、副腎皮質ホルモン、強心配糖体、インスリン、ある種の抗生物質などの連用時
    • 低カリウム血症型周期性四肢麻痺
    • 心疾患時の低カリウム状態
    • 重症嘔吐、下痢、カリウム摂取不足及び手術後
  • 用法・用量:
    L-アスパラギン酸カリウムとして、通常成人1日0.9~2.7g(錠:3~9錠、散:1.8~5.4g)を3回に分割経口投与する。
    なお、症状により1回3g(錠:10錠、散:6g)まで増量できる。
グルコンサンK
  • 効能・効果:低カリウム状態時のカリウム補給
  • 用法・用量:1回カリウム10mEq相当量を1日3~4回経口投与。

 

スローケーの代替品について

スローケーの代替品としては後発品であるケーサプライが最も適しているのですが、予想通り出荷調整がかかっていて、しばらくの間、新規採用は難しそうです。
K.C.L.エリキシル(10w/v%)・塩化カリウム(散剤)については剤形が異なることと、徐放性がなくなることに注意が必要です。
徐放性なくなると吸収効率も変わりそうなので、用法を分けることと切り替え後の血中濃度測定は必須ですね。

以下にそれ以外のものを代替品とする場合についてまとめます。

グルコン酸カリウムも出荷調整に入ってしまっているようです。
「グルコンサン K」の供給について

カリウム製剤の切り替えには化学当量を用いるべきなのか?

カリウム製剤の一覧表にも書いていますが、カリウム製剤は単純にmg数で力価を比較することはできません
成分量として表示されるmg数はあくまでも成分であるカリウム塩の含有量であり、カリウム自体の含有量とは異なります
そのため、カリウムの量を製剤間で比較する場合は、カリウムの当量(mEq)を使用します。

各カリウム塩の成分1mgあたりのカリウムの当量mEqは以下のようになります。

  • 塩化カリウム:0.0134mEq/mg
  • L-アスパラギン酸カリウム:0.006mEq/mg
  • グルコン酸カリウム:0.004mEq/mg

(ちなみに、1日に必要とされるカリウムの量は20〜40mEqとされています。)

カリウム製剤を切り替える際にはmg数(カリウム塩の量)ではなく、mEq数(カリウム含有量)を合わせなければいけません。
ただ、それだけではダメなんです。

カリウム製剤の吸収の違い

mEq数だけに気をつければいいかというとそれだけではありません。
3つのカリウム塩のうち、L-アスパラギン酸カリウムには特に注意が必要です。
そのため、

  • L-アスパラギン酸カリウム→塩化カリウムorグルコン酸カリウム
  • 塩化カリウムorグルコン酸カリウム→L-アスパラギン酸カリウム

の切り替えの際には注意しなければいけません。

その理由は用法・用量をカリウム含有量に変換してみるとわかります。

成分名1日用量(カリウム塩)1日用量(K+
塩化カリウム徐放製剤(錠剤)2,400mg32.16mEq
塩化カリウム(散剤・水剤)2,000〜10,000mg26.8〜134mEq
L-アスパラギン酸カリウム0.9~2.7g(3g)5.4〜16.2mEq(18mEq)
グルコン酸カリウム30〜40mEq

塩化カリウム(散剤・水剤)の上限量こそ多くなっていますが、L-アスパラギン酸カリウム以外が1日の必要K+量(20〜40mEq)に近くなっているのに対し、L-アスパラギン酸カリウムはかなり少なくなっています。
アスパラカリウムの添付文書インタビュフォームを見ればこの理由がわかります。

薬効薬理
L-アスパラギン酸カリウムは組織移行性及び体内利用性のよいカリウム塩であることが認められている。
(檜垣 鴻 他:薬学研究 1963;35(6):209-225)
(Struck E. et al.:Arzneimittelforschung. 1969;19:113-115)

引用元:アスパラカリウム錠 添付文書

VII.薬物動態に関する項目
4.分布
5)その他の組織への移行性: 該当資料なし<参考>動物でのデータ
イヌにL-アスパラギン酸カリウムをKとして1mEq/kg/hrを2時間静脈内持続投与において、3時間後の体内保有率は約70%であり、塩化カリウム(約30%)より良好であった。
(檜垣 鴻 他:臨床と研究 1970;47(10):2389-2396)

引用元:アスパラカリウム錠 インタビューフォーム

つまりL-アスパラギン酸カリウムは塩化カリウムやグルコン酸カリウムなどの他のカリウム塩と比較して、生体内に効率よく吸収されるので、少ない用量でも効果を発揮するということです。

L-アスパラギン酸カリウムの切り替え

じゃあ、L-アスパラギン酸カリウムから他のカリウム塩、他のカリウム塩からL-アスパラギン酸カリウムに切り替える場合はどうすればいいのか?
これは添付文書の用量を基準とするしかありません。

成分名1日最低用1日最高用量
塩化カリウム(錠剤)2,400mg
塩化カリウム(散剤・水剤)2,000mg10,000mg
L-アスパラギン酸カリウム900mg2,700mg(3,000mg)
グルコン酸カリウム30mEq40mEq

塩化カリウム(散剤・水剤)に関しては上限量がかなり多くなっているので例外として、塩化カリウム(錠剤)とL-アスパラギン酸カリウムそれぞれの最低用量・最大用量を目安として切り替え、その後、血中カリウム濃度を測りながら用量を調節していくしかありません。

参考として、ニプロESファーマのホームページのQ&Aを掲載します。

Question
【アスパラカリウム】
他のカリウム製剤からアスパラKへ切り替える際の換算量は?
Answer
換算式はございません。また、臨床でのデータもございません。
<参考>
各カリウム製剤によって、常用量(添付文書で規定している用法・用量/1日量;K+のmEq数)は異なっています。
これは各製剤の生体内利用率や組織移行性等の違いによるものと考えられます。
切り替える際の確定された換算式はありませんが、常用量対比から計算する方法があります。
常用量対比で換算した用量を切替え時の目安の初回用量として、薬剤切替え後は、適切な期間内[処方医のご判断;例)概ね1~2週間]に血清カリウム濃度を測定し、用量調整をお願いします。
*常用量対比=それぞれの製剤の1日用量の上限同士を治療学的に等量と考え、以下を比例計算するという考え方

一部省略

②スローケー又はケーサプライからの切り替え
スローケー又はケーサプライで摂っているカリウムのmEq数の約半分を目安に開始し、血清カリウム値を見てその後の投与量を検討してください。
例)スローケー又はケーサプライ1錠からアスパラカリウム散50%へ変更する場合
スローケー又はケーサプライ1錠=カリウムとして8mEq
アスパラカリウム散50%1g=カリウムとして2.9mEq

アスパラカリウム散50%を用いて、4mEq(8mEqの半分)になる量を求めます。

4mEq/2.9mEq=約1.4g

主なカリウム製剤(経口剤)の常用量 (詳細は各製剤の添付文書をご参照ください。)

有効成分:アスパラギン酸カリウム
製品名:アスパラカリウム/ニプロES=ニプロ(製造販売会社=販売会社)
常用量の1日K量:錠 5.4~16.2mEq/日/散 5.2~15.7mEq/日

有効成分:(徐放性)塩化カリウム
製品名:スローケー錠600mg/ノバルティス(製造販売)[2021年3月末経過措置満了予定]
常用量の1日K量:32mEq/日
アスパラカリウムとのK量の常用量上限比 1:0.5
アスパラカリウムへの換算式(目安の初回) スローケーのmEq量×0.5=アスパラカリウムのmEq量

管理番号:50244

引用元:ニプロESファーマ

もし、間違って単純にカリウム含有量を合わせてしまうと、添付文書上のL-アスパラギン酸カリウムの用量を上回ってしまう可能性もあるので注意してください!
もちろん、常用量対比で換算すればそれでいいと言う訳ではなく、血清カリウム値を測定した上での調整を行う必要があります。

おまけ:カリウム製剤の一包化

スローケー錠(塩化カリウム)、アスパラカリウム錠(L-アスパラギン酸カリウム)はともに吸湿性が高く一包化は行わないように記載されています。

取扱い上の注意

  1. 吸湿性が極めて高いので、アルミピロー開封後は湿気を避けて保存のこと。
  2. PTPシートから取り出して調剤しないこと。
  3. 粉砕して調剤しないこと。

引用元:スローケー 錠 添付文書

取扱い上の注意
本剤は吸湿性が極めて高いため、開封後は湿気を避けて保存すること。
なお、錠剤については以下の点にも注意すること。

  1. PTPシートを破損しないよう注意すること。
  2. 服用直前までPTPシートから取り出さないこと。
  3. 錠剤は一包化に適さない薬剤である。ただし、一包化が必要な場合は気密性の高い容器で保存し、必要に応じて乾燥剤を入れるなど湿気に十分注意すること。

引用元:アスパラカリウム錠 添付文書

ですが、スローケー錠のジェネリックであるケーサプライ錠、アスパラカリウム錠のジェネリックであるアスケート錠の添付文書には一包化に関する記載がありません。

ケーサプライ錠 添付文書:特に記載なし

取扱い上の注意
2.本剤は吸湿性が強いので、開封後の保管にあたっては特に防湿に留意すること。

引用元:アスケート錠 添付文書

もちろん、吸湿性に気をつけて保管する必要があります(貯法:防湿、室温保存)が、一ヶ月未満であれば一包化は問題ないのではないかと思いますがどうでしょうか?
(アスパラカリウム錠も相対湿度42%以下であれば30日間は外観に変化なしとインタビューフォームに記載あり)
アスケートのインタビューフォームを見ると、温度25°C、湿度75%RHでは30日でダメになってますね。
なのでアスケートは一包化後の保存については少しシビアかな?

カリウム製剤の使い分け

アシドーシスやアルカローシスと言った酸・塩基障害を伴う場合、カリウム製剤の使い分けが行われることがあります。
カリウム製剤の切り替える際にはこのことも頭に置いておく必要があります。

3種類ある経口カリウム製剤ですが、塩基部分に注目すると以下の二種類に分けられます。

  • 無機カリウム製剤:塩化カリウム
  • 有機カリウム製剤:
    • L-アスパラギン酸カリウム
    • グルコン酸カリウム

酸・塩基障害と低カリウム血症

一般的にカリウム製剤は以下のように使い分けるのが合理的とされています。

  • アルカローシスを伴う低カリウム血症:無機カリウム製剤
  • アシドーシスを伴う低カリウム血症:有機カリウム製剤

カリウム製剤の使い分けを考える際に重要になるのが、クロライドイオン(Cl)と重炭酸イオン(HCO3)の関係です。
血中pHは重炭酸イオンにより調節されており、重炭酸イオンが増えるとアルカリ性に、重炭酸イオンが減ると酸性に傾きます。
腎臓は重炭酸イオンが過剰になった場合、重炭酸イオンを尿中のクロライドイオンと交換して排泄し、体内のpHを調節しています。

アルカローシスを伴う低カリウム血症

低カリウム血症は代謝性アルカローシスにより引き起こされることがあります。
代謝性アルカローシスではクロール(塩素)が少なくなっていることが多いです。
そのため、体内でカリウムイオン(K+)とクロライドイオン(Cl)に分離する無機カリウム製剤(塩化カリウム)を使用することで、カリウムと同時に塩素を補給することが合理的と考えられます。
そのため、K.C.L.エリキシル(10w/v%)や塩化カリウム「各社」の適応には「低クロール性アルカローシス」が記載されており、塩化カリウム「日医工」の添付文書の薬効薬理には以下のように書かれています。

薬効薬理
カリウムイオン及びクロルイオンは広く生体内に分布し重要な生体活動に関与している。カリウムイオンの成人体内総量は約3000mEqで体内最多イオンである。カリウムイオンは主として細胞内で細胞浸透圧維持に役立ち、細胞外液中のナトリウムイオンと拮抗的に作用する。グリコーゲン、たん白質の生合成及び分解機構に不可欠な要素であり、骨格筋、心筋及び胃腸平滑筋等の筋肉活動の生理に影響する。また酵素作用の増強、細胞の代謝調整及び機能調整に関与する。カルシウムイオンと拮抗し神経系統の興奮と緊張に大きく影響する。ステロイドホルモン、チアジド系利尿薬及びジギタリス製剤等の長期投与でカリウム欠乏が起こるが、低カリウム性アルカローシスでは同時に低クロル血症を伴うことが多く、クロルをカリウムと同時補給することにより速やかに低カリウム血症を是正することができる。
第十六改正日本薬局方解説書 C-931,廣川書店,東京(2011)

引用元:塩化カリウム「日医工」 添付文書

また、スローケー錠の添付文書にも以下の記載があります。

その他の注意
1.代謝性アシドーシスの場合、低カリウム血症の治療は塩基性塩によって行われることが望ましい。

引用元:スローケー錠 添付文

低カリウム性アルカローシスの場合、アスパラカリウムやグルコン酸Kではカリウム値がなかなか改善しない可能性があるということですね。

アシドーシスを伴う低カリウム血症

代謝性アシドーシスは高カリウム血症を伴うことが多いのですが、重炭酸イオンが低下している場合(尿細管アシドーシス)には低カリウム血症を伴います。
その場合は、体内でカリウムイオン(K+)と重炭酸イオン(HCO3)に分離する有機カリウム製剤(L-アスパラギン酸カリウム、グルコン酸カリウム)を使用することが望ましいとされています。

流通が問題なければスローケーからの切り替えはケーサプライ一択だが。。。

スローケーがなくなりますが、ジェネリックのケーサプライは残る(はず)なので、ケーサプライが使用できるならケーサプライへの切り替えで問題ありません。
ただ、ケーサプライに注文が集中すると、出荷調整がかかってしまう可能性があります。
と言うか、2018年10月10日から出荷調整中です。(2019年3月)
ケーサプライ以外のカリウム製剤に切り替えざるを得ないと思いますので、その際に今回の記事が参考になれば幸いです。

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