平成30年度調剤報酬改定についての情報まとめ

あけましておめでとうございます。
遅くなりましたが、今年もどうぞよろしくお願いします。

さて、今年は診療報酬改定の年ですね。
昨年秋から議論が進んでいる診療報酬改定について、これから一気に詳細が決定して行くと思われます。
今回の改定はかなり厳しいものになりそうだ・・・とみなさん思っているはずです。
どうなるかは蓋を開けて見るまでわからないところもありますが、現時点で議題に上がっていることについて簡単にまとめてみました。

改定率の決定

平成29年12月18日に決定しています。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000188780.pdf

診療報酬本体:+0.55%

各科の改定率は以下の通りです。

  • 医科:+0.63%
  • 歯科:+0.69%
  • 調剤:+0.19%

「医科:歯科:調剤」の引き上げ率は、「1:1.1:0.3」が維持されています。
本体の改定率を見ると、前回(平成28年度改定)の改定率:+0.49%を0.06%上回る形となっています。
ただし、薬価と医療材料を含めたネットで見ると改定率は-1.19%(財務省は-0.9%と主張)となっており、前回よりも引き下げられています。

薬価等:-1.1%

元々、診療報酬本体もマイナス改定となると言われていた今回の2018年度改定ですが、薬価剥離率(9.1%)が前回(8.8%)を上回ったことにより、薬価引き下げによる財源が確保され、プラス改定に転じました。
また、薬価制度の抜本改革も財源確保に大きく影響しています。
毎年の薬価改定もほぼ決まっており、製薬会社・医薬品卸にとってかなり厳しい改定となっています。

  1. 薬価:▲1.65%
    • 実勢価等改定:▲1.36%
    • 薬価制度の抜本改革:▲0.29%
  2. 材料価格:▲0.09%

 

大型門前薬局に対する評価の適正化

最も注目したいのはこの部分です。

なお、上記のほか、いわゆる大型門前薬局に対する評価の適正化の措置を講ずる。

各科の改定率とは別にこの項目が記載されており、「国費でマイナス56億円」(当初は60億円でした)と明言されています。
なので、+0.19%と言っても、薬価改定による薬価差益の減、この適正化でのマイナスを考えると調剤報酬全体は大きくマイナスになるのが確実なのではないでしょうか。

薬局に対する厳しい評価

診療報酬(調剤報酬)改定前に薬局に関しては厳しい声が集まっているのが現状です。
最も印象的だったのは、平成29年11月16日、内閣官房行政改革推進会議の「秋の年次公開検証(秋のレビュー)」ではないでしょうか?

秋のレビューからの抜粋

www.youtube.com
要点をまとめます。

  • 院内に比べて院外の調剤料が3倍にみあう価値というのが検証されていない
  • 調剤技術料が医科・歯科の費用に比べて伸びてる現状を踏まえると、調剤技術料の全体的な報酬水準引き下げを含めて、メリハリのある調剤技術料体系を作っていく必要がある
  • 特に調剤基本料については医薬分業が定着していることから、その役割を終えているということも含めて見直しが必要
  • 門前薬局や大型チェーン薬局については、調剤技術料については一層引き下げの余地がある
  • 証拠に基づく政策形成つまりEBPMの視点による調剤報酬の改定が急がれる

気になる発言も多く投げかけられました。

技術料の1.8兆円の算定のうちまぁ8割ほどが、あの調剤基本料、調剤料という項目で、さきほどありましたけれども処方せんをサバくほど、薬をたくさん出すほど算定が増える仕組みになっておりまして、一方薬剤師さんならではの指導業務、管理業務というのは診療報酬全体の2割に満たない。と。
つまり、薬局としてはまぁ数を出しておく方が、てっとりばやくあのまぁ収入が入るというようなことになります。

算定根拠っていうのは、まぁなかなか透明化は難しいのかと思うんですけど、そもそもそのこれ調剤に限りませんけれども報酬っていう用語自体が非常に提供者目線で、まぁ「我々はこれだけかけてサービスをしてるんだからこれだけくれ」っていうような語感がありますよね。
まぁ我々からしてみればそれは払っている料金なので、決して報酬という形での医療機関を生かすために払うものではないわけなので、その辺の発想と言いますか、まぁ提供者から見てこれくらいかかるからこうだよねっていう見方ももちろんあるとは思いますが、我々から見てまぁそのサービスにはこれだけ払えるんだったらまぁこれくらいの負担はいいかなというような、その観点て言うのもぜひ今後の診療報酬に反映していただきたいなという風に考えています。

意見は色々あると思います。

日医総研レポートの内容

平成29年12月14日、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)からワーキングペーパー「調剤報酬の現状について」が公表されました。
http://www.jmari.med.or.jp/download/WP397.pdf
気になる部分を抜粋します。

国民、被保険者、患者の納得を超える利益を得ている薬局に対しては、大胆な適正化が必要であろう

調剤関連技術料は院内、院外あわせて2兆5,000億円を超えているが、仮にすべての処方を院内処方の点数で対応したとした場合の費用は約8,000億円である。この差に見合う機能を果たしているのか、医薬分業の成果についての検証は十分ではない。

 

調剤報酬改定に関する議論

具体的に議論されている、もしくは、今後、議論されて行くであろう内容についてまとめます。

調剤基本料

調剤基本料の見直しについては今回の大きなテーマになっています。

調剤基本料3について

チェーン薬局を対象とした調剤基本料3の見直しが検討されています。
現在の内容ではハードルが低く、点数も高いと指摘されています。

調剤基本料3(20点):同一法人グループ内の処方せんの合計が月40,000回超かつ次のいずれかに該当

  • イ)集中率95%超
  • ロ)特定の保険医療機関と不動産の賃貸借関係あり

健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏

  • 「95%超の集中率がなければ、調剤基本料1を取れるのはハードルが低すぎる。例えば、75%とか、ハードルを厳しくすべき。」
  • 「(同一敷地内薬局は)敷地内であるということだけで調剤基本料を設定すべき。」

財政制度等審議会財政制度分科会

  • 「大型門前薬局に対する調剤基本料の減額など前回改定は不十分なものにとどまっている。」
  • 「平均以上の規模の門前・マンツーマン薬局に対象範囲を拡大すべき。」
  • 「平均以下の規模でも、門前・マンツーマン薬局の機能やグループへの所属などを踏まえつつ、適正化を進めていくべき。」

 

調剤基本料の特例除外は撤廃に

現在、調剤基本料1以外に該当する場合でも、以下の施設基準に適合する場合は、調剤基本料1を算定することが可能です。

1 次のすべてに該当する保険薬局であること。
(1) 当該保険薬局に勤務している保険薬剤師の5割以上が、かかりつけ薬剤師指導料の施設基準に適合している薬剤師であること。
(2) 区分番号13の2かかりつけ薬剤師指導料又は区分番号13の3かかりつけ薬剤師包括管理料に係る業務について、相当の実績を有していること。

ですが、大手チェーン薬局等の抜け道になっていると指摘され、この施設基準の撤廃が検討されています。

厚生労働省

  • 特例対象を除外するための施設基準について、「廃止を含めて要件の見直しを検討してはどうか」と提案

日本医師会

  • 20店舗以上のチェーン調剤は高収益。かかりつけ薬剤師指導料を月100件以上算定して調剤基本料1に復活している薬局も少なくない。

 

薬剤服用歴管理指導料

平成29年9月14日に健康保険組合連合会が公表した「政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究III」の結果を元に提案が行われています。

「策立案に資するレセプト分析に関する調査研究III」 ―調査結果報告の要旨―
  • 40歳以上の年齢階級の患者は40歳未満の年齢階級の患者と比較して処方日数の長い薬が多く処方される患者が多い
  • 40歳以上の年齢階級の7~9割は何らかの生活習慣病を始めとする慢性的な疾患を抱えている

→40歳未満の年齢階級患者は40歳以上の年齢階級患者と比較して重複調剤の発生に対するお薬手帳の効果が低い

分析結果に基づく政策提言:「薬剤服用歴管理指導料は、全年齢階級の患者について算定が可能であるが、 薬剤服用管理をより必要とする患者層に限定すべきである。」

より低い点数の薬剤服用歴管理指導料が設置される?

「少ない種類(1種類か2種類)の薬を、1ヵ月ごとに取りに来る方に、同じ指導を毎回毎回行うとは思えない。もっと低い点数があっていいのでは。」
「薬剤服用歴管理指導料については、服薬指導により重複投薬や不適切な多剤投薬を減らすことが重要であり、服薬指導の必要性に対応した点数設計が求められる。」

調剤基本料の特例対象の薬剤服用歴管理指導料について見直し

「16年度の処方せん1枚当たり薬学管理料が前年度比14.8%増加したのは、お薬手帳を持参しても、調剤基本料1又は4以外のところは50点を算定となっていることが、大きく左右したのではないか。この制度設計は改めるべき。」

調剤基本料の特例対象(調剤基本料1以外)の場合、お薬手帳の有無に関わらず、50点が算定できるようになっていますが、調剤基本料1の場合と同様(以下)になりそうですね。

  • ① 6カ月以内に再来局かつ手帳による情報提供あり:38点
  • ② ①または③以外:50点
  • ③ 特別養護老人ホーム入所者:38点

 

調剤料

財政制度等審議会財政制度分科会

  • 「調剤料(内服薬)は水準を全体として引き下げるべき。」
  • 「内服薬の調剤料及び一包化加算については、院外調剤業務の機械化や技術進歩を踏まえれば、投与日数や剤数に応じてコストが増える仕組みを

見直し、適正化する必要がある。」

調剤料については前回改定でも「対物から対人へ」ということで引き下げが宣言されていましたが、大幅に削減はされていませんでした。

  • 内服薬(2014改定→2016改定)
    • 15日以上21日分以下の場合:71点 → 70点
    • 22日分以上30日以下の場合:81点 → 80点
    • 31日分以上の場合:89点 → 87点
  • 一包化加算
    • イ 56日分以下の場合投与日数が7又はその端数を増すごとに32点を加算して得た点数→42日分以下の場合(略)
    • ロ 57日分以上の場合290点→43日分以上の場合220点

 

後発医薬品調剤体制加算について

これはハードルが上がるのはほぼ決定とみなさん、わかりきっていますよね。
財政制度等審議会財政制度分科会

  • 「後発品調剤体制加算は基準引き上げ(65→75%?80%?、75→85%)を行うべき。」
調剤割合が低い場合は減点も?
  • 「調剤割合50%未満などの基準を満たさない薬局には減算も検討すべき。」
処方箋の様式はさらなる変更へ?

処方せんの「後発医薬品への変更不可欄を削除」し、「変更不可の理由を記載する様式」へと見直すべきとの意見も出ています。

かかりつけ薬剤師

前回2016年改定で新たに新設されたかかりつけ薬剤師ですが、見直し意見が多く出されています。

日本医師会

  • 「『週32時間以上勤務』・『6月以上在籍』の要件は短すぎる。」
  • 「『地域活動の取組に参画』についてはもっと具体的にするべきではないか。」
  • 「地域に根付いたかかりつけ薬剤師をしっかりと評価して行くべき。」

中医協での議論

  • 「年齢、服用薬剤数、周産期でなど、ある程度対象を絞るべきではないか。」
  • 「かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料に係る同意書については様式を統一すべき」
  • 「(政府の働き方改革を踏まえて)薬剤師は女性が多く、子育て世代の割合も高いため、育児・介護休業法に基づいて短時間勤務する薬剤師もかかりつけとして働けるように、一定の条件で週32時間を緩和することも検討」

 

ポリファーマシー・残薬対策

厚生労働省から、薬剤師の積極的な処方提案により減薬を評価すべきではないかと提案があったようです。
疑義照会による減薬については重複投薬・相互作用等防止加算で評価されているため、それ以外の部分での医師との連携が評価されることになるのではないかと期待しています。
ですが、日本医師会からは、「調剤報酬で評価しなくても処方提案はできる」、「薬剤師の本来業務として取り組むべき業務ではないか」などの意見もあったようです。
はあ・・・。

ついに残薬調整は事後報告に?

前回改定で実現するかと思われた、残薬の事後報告。
今回も同じ提案が検討されています。

  • 「処方せんのチェック欄で事後報告で良いとしてあれば、残薬を確認した上で薬剤師が調整し、医師に事後報告する」

これは今度こそ通して欲しいですよね。
近隣医院との取り決めですでにそうなっている薬局も多数でしょうから・・・。

そのほか

薬剤師からの処方提案を促す目的で、検査値を処方箋に記載する案もありましたが、個人情報の問題等もあり、どうなるかははっきりしていません。

分割調剤を促す方法も検討されているようです。
一気にリフィル処方を検討すべきだと思うんですけどね・・・。

基準調剤加算の算定要件に、医師と薬剤師共同の副作用報告が加わるって話もありましたね・・・。

平成30年度診療報酬改定の基本方針

平成29年12月11日の時点で、基本方針は決定していますので、最後にそれを掲載しておきます。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000187740.pdf

改定に当たっての基本認識

  • 人生100年時代を見据えた社会の実現
  • どこに住んでいても適切な医療・介護を安心して受けられる社会の実現(地域包括ケアシステムの構築)
  • 制度の安定性・持続可能性の確保と医療・介護現場の新たな働き方の推進

改定の基本的視点と具体的方向性
1、地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進
【具体的方向性の例】

  • 地域包括ケアシステム構築のための取組の強化
  • かかりつけ医の機能の評価
  • かかりつけ歯科医の機能の評価
  • かかりつけ薬剤師・薬局の機能の評価
  • 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価
  • 外来医療の機能分化、重症化予防の取組の推進
  • 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
  • 国民の希望に応じた看取りの推進

2、新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実
【具体的方向性の例】

  • 緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価
  • 認知症の者に対する適切な医療の評価
  • 地域移行・地域生活支援の充実を含む質の高い精神医療の評価
  • 難病患者に対する適切な医療の評価
  • 小児医療、周産期医療、救急医療の充実
  • 口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進
  • イノベーションを含む先進的な医療技術の適切な評価
  • ICT等の将来の医療を担う新たな技術の導入、データの収集・利活用の推進
  • アウトカムに着目した評価の推進

3、医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進
【具体的方向性の例】

  • チーム医療等の推進等(業務の共同化、移管等)の勤務環境の改善
  • 業務の効率化・合理化
  • ICT等の将来の医療を担う新たな技術の導入(再掲)
  • 地域包括ケアシステム構築のための多職種連携による取組の強化(再掲)
  • 外来医療の機能分化(再掲)

4、効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上
【具体的方向性の例】

  • 薬価制度の抜本改革の推進
  • 後発医薬品の使用促進
  • 医薬品の適正使用の推進
  • 費用対効果の評価
  • 効率性等に応じた薬局の評価の推進
  • 医薬品、医療機器、検査等の適正な評価
  • 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価(再掲)
  • 外来医療の機能分化、重症化予防の取組の推進(再掲)

下線部は特に薬局に関係するであろう部分です。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

最新情報をチェックしよう!