セログループ2のC型肝炎に対するヴィキラックスとレベトールの併用療法の承認了承〜2016年9月9日医薬品第二部会報告品目②

平成28年9月9日、厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会が行われました。
10製品について審議が行われ、すべての承認が了承されています。また、平成28年9月28日には正式に承認されました。
今回はヴィキラックスとレベトールの適応拡大についてまとめます。

平成28年9月9日薬食審医薬品第二部会での審議品目

今回審議され、承認が了承されたのは以下の通りです。

  • ヒュミラ皮下注シリンジ:「非感染性の中間部、後部または汎ぶどう膜炎」の適応追加
  • ヴィキラックス配合錠とレベトールカプセル:「セログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善」の適応追加
  • ビラノア錠:新規ヒスタミンH1受容体拮抗薬
  • グラジナ錠:HCVに対する新規DAA NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤
  • エレルサ錠:HCVに対する新規DAA NS5A阻害剤
  • イデルビオン静注用:遺伝子組換えアルブミンと、遺伝子組換え血液凝固第IX因子の融合タンパク質
  • キイトルーダ点滴静注:新規免疫チェックポイント阻害薬、2剤目の抗PD-1抗体
  • エムプリシティ点滴静注用:ヒトCD319に対するIgG1サブクラスのヒト化モノクローナル抗体
  • アイクルシグ錠:BCR-ABLを阻害する白血病治療薬
  • コルヒチン錠0.5mg「タカタ」:「家族性地中海熱」の適応追加(報告品目)

一つずつまとめていきたいと思います。

ヴィキラックス配合錠とレベトールカプセルにセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎に対する適応追加

これまでヴィキラックス(オムビタスビル水和物/パリタプレビル水和物/リトナビル、OBV/PTV/r:OmBitasVir/PariTapreVir/ritonavir)は単剤でセログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎に対する適応を持っていましたが、レベトール(リバビリン、RBV:RiBaVirin)との併用でセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎に対する適応を取得しています。
セログループとジェノタイプの違いについては過去記事を参照してください。
まあ、簡単にいうと、日本の保険適応上、検査で使用されるのがセログループ、国際的・医学的に使用されるのがジェノタイプですね。

ヴィキラックス配合錠のセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎に対する適応追加

  • 成分名:オムビタスビル水和物/パリタプレビル水和物/リトナビル
  • 販売名:ヴィキラックス配合錠
  • 申請者:アッヴィ合同会社
  • 追加された効能・効果:「セログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善」
  • 追加された用法・用量:「リバビリンとの併用において、通常、成人には1日1回2錠(オムビタスビルとして25mg、パリタプレビルとして150mg及びリトナビルとして100mg)を食後に経口投与し、投与期間は16週間とする。」

レベトールカプセルのセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎に対する適応追加

  • 成分名:リバビリン
  • 販売名:レベトールカプセル200mg
  • 申請者:MSD
  • 追加された効能・効果:「オムビタスビル水和物・パリタプレビル水和物・リトナビル配合剤との併用によるセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善」
  • 追加された用法・用量:
    • 60kg以下:600mg/日(朝食後200mg、夕食後400mg)
    • 60kgを超え80kg以下:800mg/日(朝食後400mg、夕食後400mg)
    • 80kgを超える:1,000mg/日(朝食後400mg、夕食後600mg)

セログループ1と2の両方に適応を持つC型肝炎IFNフリー療法薬

ヴィキラックスはすでに、「セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」の適応を持っているので、これでセログループ1(ジェノタイプ1)とセログループ2(ジェノタイプ2)の両方に対する適応を持つことになります。
インターフェロンの併用を必要としないIFNフリーC型肝炎経口治療薬で、セログループ1と2の両方に適応を持つのはヴィキラックス配合錠が初めてになります。
(成分としてはソホスブビルが両方に対する適応を持つが薬剤としてはソバルディとハーボニーとで別々)

ヴィキラックスのセログループ2(ジェノタイプ2)に対する適応は世界初

ヴィキラックスのC型肝炎ウイルス(HCV:Hepatitis C Virus)セログループ2(ジェノタイプ2)に対する適応は海外では未承認のようです。
ですので今回の日本での承認が、世界で初めて承認されたOBV/PTV/r+RBV療法ということになります。

併用するリバビリンはレベトールカプセルのみ

リバビリンとの併用になりますが、適応を取得したのはレベトールカプセルのみです。
ソバルディの時は先にコペガス錠が適応を取得、後からレベトールカプセルも適応を取得したので、今回も後からコペガス錠が適応取得ということになるのでしょうか?

治療期間は約4ヶ月間

セログループ2(ジェノタイプ2)に対するヴィキラックスとレベトールとの併用療法の期間は16週間となっています。
セログループ1(ジェノタイプ1)に対するヴィキラックスの治療期間である12週間よりも4週間長いということになりますね。
また、同じくセログループ2(ジェノタイプ2)に対する適応を持つソバルディとコペガス・レベトールの併用療法も12週間なので、それよりも4週間長いということになります。

SVR(率)とは?

SVRとはSustained Virological Response(ウイルス学的著効)の略です。
血液検査の結果、血液中のHCV RNAが陰性になることを指します。
SVRとだけ表記された場合、SVR24を指し、治療終了後24週(約半年)後にHCV RNAが陰性になることを示します。
また、SVR12率も良く用いられますが、これは治療終了12週後の血液検査でHCV RNAが陰性になった割合のことです。

ヴィキラックス配合錠とソバルディのセログループ2に対する適応の比較

ヴィキラックス配合錠とソバルディ錠はどちらもリバビリンと併用することで、セログループ2に対するIFNフリー療法を可能とする薬剤です。
ですが、ヴィキラックス配合錠のセログループ2に対する適応はソバルディの適応と比較するといくつかの制限があります。
ここが一番の注意点なので比較してまとめておきます。

効能・効果、用法・用量の違い

ソバルディ錠のセログループ2に対する効能・効果は以下の通りです。

ソバルディ錠
効能又は効果

  • セログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

効能又は効果に関連する使用上の注意

  • 本剤の使用に際しては、HCV RNAが陽性であることを確認すること。また、肝予備能、臨床症状等により非代償性肝硬変でないことを確認すること。

用法及び用量

  • リバビリンとの併用において、通常、成人にはソホスブビルとして400mgを1日1回、12週間経口投与する。

これに対して、ヴィキラックス配合錠のセログループ2に関する添付文書の記載は以下の通りです。

ヴィキラックス配合錠
効能又は効果

  • 2.セログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善

効能又は効果に関連する使用上の注意

  • 2.セログループ1(ジェノタイプ1)においては、肝予備能、臨床症状等により非代償性肝硬変でないことを確認すること。また、セログループ2(ジェノタイプ2)においては、組織像又は肝予備能、血小板数等により肝硬変でないことを確認すること。
  • 3.セログループ2(ジェノタイプ2)においては、IFN製剤による治療経験の有無等により、有効性が異なるため、本剤によるベネフィット・リスクを考慮したうえで、投与の可否を判断すること。

用法及び用量
2. セログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善の場合:リバビリンとの併用において、通常、成人には1日1回2錠(オムビタスビルとして25mg、パリタプレビルとして150mg及びリトナビルとして100mg)を食後に経口投与し、投与期間は16週間とする.

下線部が注目して欲しい部分です。

適応の違い

ソバルディがC型慢性肝炎とC型代償性肝硬変に対する適応(C型非代償性肝硬変は適応外)を有するのに対して、
ヴィキラックスはC型慢性肝炎のみに対する適応(C型肝硬変=C型代償性肝硬変・C型非代償性肝硬変は適応外)

前治療有無でのSVR率の変化

さらに、ヴィキラックスは「過去のIFN製剤による治療経験の有無等で有効性が異なる」と記載されています。
ソバルディが前治療の有無でほとんど差がないのに対し、ヴィキラックスは前治療があると大きく効果が下がります。
具体的なデータは以下の通りです。

ソバルディが

  • 未治療(全体):SVR12率=97.6%
  • 前治療あり(全体):SVR12率=94.7%

なのに対し、
ヴィキラックスは

  • 未治療(全体):SVR12率=91.5%
  • 前治療あり(全体):SVR12率=75.8%

となっています。
特に、ヴィキラックスで前治療のある場合、

  • ジェノタイプ2a(前治療あり):SVR12率=93.8%
  • ジェノタイプ2b(前治療あり):SVR12率=56.3%

となっています。

服用期間

ソバルディが12週間投与のところ、ヴィキラックスは16週間投与

まとめ

こうしてまとめてみると、基本的にはソバルディに対する優位性は持たないということになりますね。
ソバルディの成分であるソホスブビルは核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害薬。
これに対し、ヴィキラックスの成分を見てみると、オムビタスビルはHCV-NS5A複製複合体阻害薬、パリタプレビルはNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬。
単純に、効果のみを考えるとソバルディにはかなわないようにも思えますが、作用機序が異なるため、どちらかの薬剤に耐性を獲得してしまったいる場合や一方が副作用等で使用できない場合の選択肢としての役割は大きいと思います。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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