平成26年3月5日、2014診療報酬改定の官報が告示されました。
厚生労働省のホームページには資料と通知が掲載されています。
平成26年度診療報酬改定説明会(平成26年3月5日開催)資料等について
疑義解釈が公表されるまでは詳細不明な部分もありますが、調剤報酬点数表の通知に従ってまとめてみようと思います。
調剤報酬関連の最新記事はこちらです。
平成26年度調剤報酬改定 疑義解釈資料(その1)公開 – 薬剤師の脳みそ
一般名処方で先発医薬品を選択した際のレセプト摘要欄記載方法~平成26年度調剤報酬改定 – 薬剤師の脳みそ
目次
今回はかなり長いので目次を作ってみました。
1、平成26年度診療報酬改定率について
概要
改定率(診療報酬全体、医科、歯科、調剤)
2、調剤基本料の改定
調剤基本料の特例に関する改定(24時間開局)
妥結率が低い保険薬局の適正化
3、基準調剤加算の改定
大型門前薬局を対象とした見直し
在宅療養を支援する薬局における基準調剤加算の見直し(24時間調剤等体制)
通則の改定
基準1の改定
基準2の改定
改定後の基準調剤加算まとめ
4、後発医薬品調剤体制加算の改定
後発医薬品の新指標
後発医薬品調剤体制加算の適正化
後発医薬品調剤体制加算の改定内容
5、改定前後の調剤基本料+加算のまとめ
現行の調剤基本料一覧表
改定後の調剤基本料一覧表
6、調剤料の改定
一包化加算の増税対応
在宅医療において使用できる注射薬の拡大
無菌製剤処理加算の対象範囲の評価・見直し
在宅患者調剤加算の改定
7、薬剤服用歴管理指導料の改定
お薬手帳に関する改定
服薬状況等の確認のタイミングの明確化
一般名処方における後発医薬品選択の明確化
8、在宅患者訪問薬剤管理指導料の改定
在宅患者訪問薬剤管理指導料の見直しによる適正化
在宅における特定保険医療材料・衛生材料の供給体制の整備
過去にも何度もまとめているので重複する部分も多いとは思いますが、頑張ってまとめます!
調剤報酬点数表の改正案公開~平成26年度調剤報酬改定 その5 – 薬剤師の脳みそ
後発医薬品調剤体制加算に関する改定~平成26年度調剤報酬改定その4 – 薬剤師の脳みそ
薬剤服用歴管理指導料に関する改定~平成26年度調剤報酬改定その3 – 薬剤師の脳みそ
基準調剤加算・在宅の改定~平成26年度調剤報酬改定 その2 – 薬剤師の脳みそ
平成26年度調剤報酬改定その1 – 薬剤師の脳みそ
1、平成26年度診療報酬改定率について
概要
・2025年(平成37)年に向けて、医療提供体制の再構築、地域包括ケアシステムの構築を図る。
・入院医療・外来医療を含めた医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等に取り組む。
改定率
診療報酬全体
合計 本体部分 増税部分 診療報酬本体部分 +0.73%(3,000億円) +0.10%(400億円) +0.63%(2,600億円) 薬価部分 -0.58%(-2,400億円) -1.22%(-5,000億円) +0.64%(2,600億円) 医療材料部分 -0.05%(-200億円) -0.14%(-600億円) +0.09%(400億円) 診療報酬全体(ネット) +0.10%(400億円) -1.26%(-5,200億円) +1.36%(5,600億円) 医科
合計 本体部分 増税部分 医科 +0.82%(2,600億円) +0.11%(400億円) +0.71%(2,200億円) 歯科
合計 本体部分 増税部分 歯科 +0.99%(300億円) +0.12%(100億円) +0.87%(200億円) 調剤
合計 本体部分 増税部分 調剤 +0.22%(200億円) +0.04%(100億円) +0.18%(100億円) 別途、後発医薬品の価格設定の見直し、うがい薬のみの処方の保険適用除外などの措置を講ずる。
薬局は特に増税による負担が大きいと思いますので、増税対応は除外して考えないといけませんね。
調剤本体部分はかろうじて+改定となっていますが、薬価の大幅減を考えると・・・。
厳しい改定となりましたね。
2、調剤基本料の改定
調剤基本料の特例に関する改定
調剤基本料の特例:「処方せん受付回数月2,500回超かつ集中率90%超の薬局」が適用対象に追加
特例の適用除外:24時間開局を行っている場合
現行 → 改定後 調剤基本料 40点 41点(増税対応1点) 調剤基本料の特例 処方せん月4,000回超かつ集中率70%超 24点 処方せん月4,000回超かつ集中率70%超処方せん月2,500回超かつ集中率90%超 25点(増税対応1点) 特例除外の施設基準 24時間開局 特例の適用の判断:前年3月1日から当年2月末日までの12か月の受付回数
※前年3月1日~前年11月30日の新規開局:指定の翌月1日~当年2月末日で判断
※前年12月1日以降の新規開局:指定の翌月1日から3か月間で判断(それまでは41点)
新たに特例の適用対象が加わりました。
今までは大型病院の門前薬局のみが考えないといけない特例でしたが、診療所の門前でも受付2500回を越す薬局はありそうですね・・・。
個人薬局でも厳しいケースがあるかもしれません。
24時間開局
・保険薬剤師が当直を行う等保険薬剤師を24時間配置し、来局した患者の処方せんを直ちに調剤できる体制を有していること。
・当該保険薬局が客観的に見て24時間開局していることがわかる表示又はこれに準ずる措置を講じること。なお、防犯上の観点から必要であれば、夜間休日においては、夜間休日専用出入口又は窓口で対応することで差し支えない。
24時間開局の内容も詳しく述べられています。
夜間対応窓口も可能ということで、ほぼ病院の夜間対応と同じイメージということになりそうですね。
24時間開局すれば調剤基本料の特例を回避できる!とは言っても、それがコストに見合うかどうかという話だと思います。
調剤基本料の特例除外で得られる利益は、
受付回数2,500回の場合で月400,000円(基準1算定で700,000円)
受付回数4,000回の場合で月640,000円(基準1算定で1,120,000円)
どの程度の受付回数で人件費などを回収できるかははっきりとはわかりませんが、基準1まで算定できることを考えれば、24時間開局を行う薬局は出てくると思います。
おそらく、国としてもすべての薬局に24時間開局を目指して欲しいとまで思っているわけではないと思います。
ですが、地域包括ケアシステムの構築のためには、各地域に少なくとも一つは24時間開局薬局が必要なのではないでしょうか?
24時間開局薬局を拠点として、24時間対応薬局がそれをカバーするという形になっていくのかもしれません。
妥結率が低い保険薬局の適正化
保険薬局において、妥結率が低い場合は、調剤基本料の評価を引き下げる。
調剤基本料:41点 → 31点(増税対応1点)(妥結率50%以下の場合)
調剤基本料の特例:25点 → 19点(増税対応1点)(妥結率50%以下の場合)
毎年10月に妥結率の割合を地方厚生(支)局長へ報告(初回は平成26年10月)
取引価格の決定に係る契約書の写し等妥結率の根拠となる資料を添付する。
妥結:取引価格が決定しているもの。契約書等の遡及条項により、取引価格が遡及することが可能な場合は未妥結。
「妥結率」 = 「卸売販売業者との間で取引価格が定められた医療用医薬品の薬価総額(各医療用医薬品の規格単位数量×薬価を合算したもの)」 / 「購入した医療用医薬品の薬価総額」
妥結率の実績の算定期間:4月1日~9月30日
当該期間の妥結率の実績が基準を上回る場合には、11月1日~翌年10月31日まで妥結率が低い保険薬局とはみなされない。
報告年度の当年10月1日以降に新規に保険薬局に指定された薬局においても翌年10月31日まで妥結率が低い保険薬局とはみなされない。
妥結率についても詳しい内容が公表されました。
「取引価格が遡及することが可能な場合は未妥結」ということで、いわゆる遡っての値引きはダメということですね。
「契約書の写し等妥結率の根拠となる資料」とは具体的にどういうものなんでしょう?
これは値引き交渉の盛んな薬局は大変かもしれませんが、それよりも卸さんが大変なのでは・・・?
3、基準調剤加算の改定
大型門前薬局を対象とした見直し
調剤基本料の特例の適用対象の薬局は基準調剤加算1を算定不可
ただし、今回追加となる「処方せん月2,500回超かつ集中率90%超」で24時間開局した場合は基準調剤加算1のみ算定可能
特例除外のうち、新規の適用条件の方のみは24時間開局すれば基準1を算定可能・・・。
「処方せん月4,000回超かつ集中率70%超」の方はそもそも基準1の施設基準だからってことですね。
在宅療養を支援する薬局における基準調剤加算の見直し
地域において在宅医療を支える在宅療養支援診療所(又は在宅療養支援病院)による在宅医療に貢献する薬局として、24時間調剤及び在宅患者に対する薬学的管理指導を提供する薬局を中心に評価するように見直していく。
現行 → 改定後 基準1 10点 近隣薬局と連携して24時間調剤・在宅体制 12点 基準2 30点 自薬局のみで24時間調剤・在宅体制 36点
この後、詳しく書きますが、24時間体制以外にも基準加算の要件は以前より厳しくなっています。
ただ、算定可能な薬局にとって、基準1で+2点、基準2で+6点はなかなか大きいのではないでしょうか?
24時間調剤体制に関しては算定する以上、きちんと患者さんに利用してもらえるよう行なわないといけませんね。
24時間調剤等体制
・保険薬剤師が患者の求めに応じて24時間調剤等が速やかに実施できる体制を整備していること。
・当該保険薬局は、原則として初回の処方せん受付時に(記載事項に変更があった場合はその都度)、当該担当者及び当該担当者と直接連絡がとれる連絡先電話番号等、緊急時の注意事項等について、事前に患者又はその家族等に対して説明の上、文書(これらの事項が薬袋に記載されている場合を含む。)により交付していること。
初回の処方せん受付時に患者に24時間体制を説明することとなっています。
文書の交付は薬情ではなく、薬袋なんですね。
薬情でもいいんだと思いますが、どうなんでしょう?
通則の改定
現行
イロハ 略
ニ 開局時間以外の時間において調剤を行うにつき必要な体制が整備されていること。
ホ 適切な薬学的管理及び服薬指導を行うにつき必要な体制が整備されていること。改定後
ニ 適切な薬学的管理及び服薬指導を行うにつき必要な体制及び機能が整備されており、患者に対し在宅に係る当該薬局の体制の情報を提供していること。
ホ 麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)第3条の規定による麻薬小売業者の免許を受けていること。<施設基準通知>
・在宅患者訪問薬剤管理指導を行う薬局であることを記載した薬剤情報提供文書を交付すること。
・「薬局の求められる機能とあるべき姿」の公表について(平成26年1月21日薬食総発0121第1号)の別添に掲げる機能について、整備するよう努めること。
特に次に掲げる機能について可能な限り整備するよう努めること。
ア 薬学管理等の内容が他の患者に漏れ聞こえる場合があることを踏まえ、患者との会話のやりとりが他の患者に聞こえないようパーテーション等で区切られた独立したカウンターを有すること。
イ 一般用医薬品を販売していること。なお、一般用医薬品の販売の際には、購入される一般用医薬品のみに着目するのではなく、購入者の薬剤服用歴の記録に基づき、情報提供を行い、必要に応じて医療機関へのアクセスの確保を行っていること。
ウ 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、こころの健康づくり、飲酒、喫煙など生活習慣全般に係る相談についても応需・対応し、地域住民の生活習慣の改善、疾病の予防に資する取組みを行うといった健康情報拠点としての役割を果たすこと。
開局時間以外の調剤体制は削除となりました。
1・2ともに24時間調剤・在宅体制が求められているのでこれは当然ですね。
在宅体制の情報提供という項目が追加になっています。
これは通知の方で「薬情に記載」となっていますね。
パーテーション等で区切られた独立したカウンターはどうなんでしょう?
すべての薬局でこれが必要というわけではないとは思いますが。(構造にもよるので)
それよりも隔離室や相談室の設置の方が大事なんじゃないかな?と個人的には思ったりします。
通知のイ、ウはどこでもやっていること・・・ですよね?
基準1の改定
現行
十分な数の医薬品を備蓄していること。改定後
イ 十分な数の医薬品を備蓄していること。
ロ 当該保険薬局のみ又は当該保険薬局を含んだ連携する近隣の保険薬局において、24時間調剤並びに在宅患者に対する薬学的管理及び服薬指導を行うにつき必要な体制が整備されていること。
ハ 処方せんの受付回数が月に4,000回以下かつ集中率70%以下であること。<施設基準通知>
・単独の保険薬局又は近隣の保険薬局との連携により24時間調剤及び在宅業務が速やかにできる体制を整備していること。
・連携体制を構築する複数の保険薬局の数は、当該薬局を含めて10未満とする。
十分な数の医薬品はこれまで通り700品目ですね。
「速やか」というのがどの程度なのか?また、それがどのように評価されるのかが気になります。「速やか」の解釈ですが、説明会の質疑応答では、「オンコールにて速やか。従来のものと同様と考えてよい。」と言うことなので、単純に在宅が加わった形でしょうか?
疑義解釈等で指標のようなものが出てくるのでしょうか?
もちろん、例外はあるとは思います。
在宅を行っている薬局であれば、緊急時の対応も当然と思いますのでこれまで通りと言ったところでしょうか。
連携薬局は自薬局を含めて10未満・・・ということは8薬局までってことですね。
そんなに連携するケースって・・・地方チェーン薬局くらいじゃないですか?
薬剤師会で連携薬局を募るケースも出てくるとは思いますが、どのようなルールになるんでしょうか?
基準2の改定
現行
イ 処方せんの受付回数が一月に六百回を超える保険薬局については、当該保険薬局の調剤のうち特定の保険医療機関に係る処方によるものの割合が七割以下であること。
ロ 麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)第3条の規定による麻薬小売業者の免許を受けていること。
ハ 十分な数の医薬品を備蓄していること。改定後
イ 処方せんの受付回数が一月に六百回を超える保険薬局については、当該保険薬局の調剤のうち特定の保険医療機関に係る処方によるものの割合が七割以下であること。
ロ 十分な数の医薬品を備蓄していること。
ハ 当該薬局のみで24時間調剤並びに在宅患者に対する薬学的管理及び指導を行うのに必要な体制が整備されていること。
ニ 在宅患者に対する薬学的管理及び指導について、相当の実績を有していること。
ホ 当該地域において、在宅療養の支援に係る診療所又は病院及び訪問看護ステーションとの連携体制が整備されていること。
ヘ 当該地域において、他の保健医療サービス及び福祉サービスとの連携調整を担当する者との連携体制が整備されていること。<施設基準通知>
・当該保険薬局のみで24時間調剤及び在宅業務に対応できる体制が整備されていること。
・在宅患者に対する薬学的管理及び指導の実績としては、当該加算の施設基準に係る届出時の直近1年間の以下の在宅業務を合算して計10回以上であること。在宅患者訪問薬剤管理指導、居宅療養管理指導及び介護予防居宅療養管理指導の実施回数(在宅患者訪問薬剤管理指導料、居宅療養管理指導費及び介護予防居宅療養管理指導費を算定したもの並びに各算定要件を満たしているが、算定はしていない場合を含む。)
・地方公共団体、医療機関及び福祉関係者等に対して、在宅業務実施体制に係る周知を自ら又は地域の薬剤師会等を通じて十分に行っていること。
・在宅療養の支援に係る診療所又は病院及び訪問看護ステーションと円滑な連携ができるよう、あらかじめ患家の同意が得られた場合には、訪問薬剤管理指導の結果、当該医療関係職種による当該患者に対する療養上の指導に関する留意点等の必要な情報を関係する、診療所又は病院及び訪問看護ステーションの医師又は看護師に文書(電子媒体を含む。)により随時提供していること。
・当該地域において、他の保健医療サービス及び福祉サービスとの連携調整を担当する者と連携していること。
・医療材料及び衛生材料を供給できる体制を有していること。
また、当該患者に在宅患者訪問薬剤管理指導を行っている薬局に対し保険医療機関から衛生材料の提供を指示された場合は、原則として衛生材料を患者に供給すること。なお、当該衛生材料の費用は、当該保険医療機関に請求することとし、その価格は保険薬局の購入価格を踏まえ、医療機関と保険薬局との相互の合議に委ねるものとする。
十分な数の医薬品は1000品目です。
在宅に関する相当の実績は直近1年間で10件。
在宅患者調剤加算の算定要件と同じですね。
これは思ったよりもゆるいかな?
算定要件を満たしており、算定していない場合を含む・・・ってのは?
そのようなケースあるんでしょうか?
報告書も出している状態で算定しないってのはかなりレアなケースな気もします。
それとも報告書までは求めない?
いわゆる配達の状態のものも含めていいんでしょうか?
ここの解釈は気になります。
在宅の報告は処方医のみでなく、ケアマネージャーに対しても行うようになっていましたが、訪問看護ステーションの医師・看護師が加わっていますね。
これは基準2の算定に関係なく、在宅を行う薬局は常に行うべきことですね。
地域連携や情報の公開も同様だと思います。
衛生材料の提供も加わりました。
請求は医療機関に行うという点がポイントです。
どのような形で請求を行うかの話し合いが大事です。
ここがしっかりできる薬局は医療機関から評価される薬局になるチャンスかも?
予め在宅担当医が必要とする衛生材料を確認し、準備しておく必要がありますね。
改定後の基準調剤加算まとめ
基準調剤加算 「麻薬小売業者の許可」「地域の保険医療機関や患者の需要に対応できる開局時間」「在宅を行う旨の薬局内掲示及び薬剤情報提供文書への記載」「かかりつけ薬局が満たすべき事項」・プライバシーに配慮したパーテーション等で区切られたカウンター・薬剤服用歴の記録に基づいた一般用医薬品の販売・健康相談等による地域健康情報拠点
基準1(12点) 基準2(36点) ①連携による24時間調剤・在宅体制の整備②処方せん受付回数月4,000回超かつ集中率70%以下③700品目以上の医薬品の備蓄 ①単独薬局で24時間調剤・在宅体制の整備②処方せん受付回数月600回超かつ集中率70%以下③1,000品目以上の医薬品の備蓄④在宅業務を行うにつき必要な体制(医療材料、衛生材料を供給できる体制、在宅実施体制の周知)の整備⑤10件以上の過去1年間の在宅の実績⑥在宅療養支援診療所(又は在宅療養支援病院)、訪問看護ステーションとの連携体制の整備⑦ケアマネージャーとの連携体制の整備
4、後発医薬品調剤体制加算の改定
平成30年3月までに後発医薬品のある先発医薬品及び後発医薬品をベースとした数量シェアを60%以上とすることを目標を定め、総合的な取組を行う。
2年間ではなく4年間での数値目標なんですね。
ってことは、平成28年度の改定では後発医薬品調剤体制加算に関しては変更はないかも・・・。
というより、極端に後発医薬品の使用率が低い薬局においては減点の可能性が想像できますね。
後発医薬品の新指標
旧指標
後発医薬品/全医薬品新指標
後発医薬品/(後発医薬品あり先発医薬品+後発医薬品)
注)ただし、先発医薬品と同額又は高額な後発医薬品、全ての後発医薬品より同額又は低額な先発医薬品は対象から外す。
要するに新薬は計算から除外するということですね。
今回の改訂で後発医薬品の使用割合についての考え方は最終的なものになったと思います。
後発医薬品調剤体制加算の適正化
調剤割合に極端な偏りがある保険薬局においては、指標変更によって、後発医薬品調剤体制加算が受けられることがないよう適正化を図る。
<施設基準の追加項目>
当該保険薬局において調剤した薬剤の規格単位数量に占める後発医薬品のある先発医薬品及び後発医薬品を合算した規格単位数量の割合が50%以上であること。新指標のカットオフ値
(後発医薬品あり先発医薬品+後発医薬品)/全医薬品
分母から除外する医薬品:経腸成分栄養剤、特殊ミルク製剤、生薬、漢方製剤、その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品
つまりは調剤している医薬品のうち、新指標の分母に当てはまる医薬品が半分以上(カットオフ値が50%以上)ない薬局は除外ということですね。
除外となる薬局はどの程度存在するんでしょうか?
後発医薬品調剤体制加算の改定内容
現行 → 改定後 旧指標 加算 新指標 加算 後発医薬品調剤体制加算1 22%以上 5点 55%以上 18点 後発医薬品調剤体制加算2 30%以上 15点 65%以上 22点 後発医薬品調剤体制加算3 35%以上 19点 –
厚生労働省の発表によると後発医薬品の使用率の平均値は、
旧指標:30.2%、新指標:46.4%
ということです。
単純計算すると、新指標65%以上は旧指標42.3%以上、新指標55%以上は旧指標35.8%以上となります。
こう考えるとかなり厳しいものとなりますが、22点を取れる薬局にとってはかなり大きい点数ですね!
後発医薬品の推進に関しては色々思うところもありますが、医療費削減のためには必須の部分とも言えると思います。
生活保護受給者に関する後発医薬品使用の推進もありますし、今回の改訂では一般名処方の場合も原則後発医薬品となっています。
どのように勧めていけば、患者さんの治療や生活の質を落とさずに後発医薬品の使用を増やしていけるか。
ここでもう一度見つめ直したいところです。
5、改定前後の調剤基本料+加算のまとめ
現行の調剤基本料一覧表
基準 – 1 2 後発 – 1 2 3 – 1 2 3 – 1 2 3 通常 40点 45点 55点 59点 50点 55点 65点 69点 70点 75点 85点 89点 特例 24点 29点 39点 43点 34点 39点 49点 53点 – 改定後の調剤基本料一覧表
基準 – 1 2 後発 – 1 2 – 1 2 – 1 2 妥結率50%以上 通常 41点 59点 63点 53点 71点 75点 77点 95点 99点 特例 25点 43点 47点 37点 55点 59点 – 妥結率50%以下 通常 31点 49点 53点 43点 61点 65点 67点 85点 89点 特例 19点 37点 41点 31点 49点 53点 –
こんな表を作ってみましたがどうでしょうか?
改定前は最大89点、最低24点だったものが、改定後は最大99点、最低19点となっています。
改定後は薬局によって受付1回で800円もの差が生じることになります。
患者さんの自己負担を考えても薬局による差は大きくなりますね。
6、調剤料の改定
一包化加算の増税対応
一包化加算(56日分以下):一包化を行った投与日数が7又はその端数を増すごとに32点(+2点)
一包化加算(57日分以上):投与日数にかかわらず290点(+20点)
在宅医療において使用できる注射薬の拡大
保険医療機関の医師が処方できる注射薬及び処方せんに基づき保険薬局で交付することができる注射薬として「電解質製剤」及び「注射用抗菌薬」が追加。
「電解質製剤」:経口摂取不能又は不十分な場合の水分・電解質の補給・維持を目的とした注射薬(高カロリー輸液を除く。)をいい、電解質製剤以外に電解質補正製剤(電解質製剤に添加して投与する注射薬に限る。)、ビタミン剤、高カロリー輸液用微量元素製剤及び血液凝固阻止剤を投与することができる。
※「注射用抗菌薬」:病原体に殺菌的又は静菌的に作用する注射薬
無菌製剤処理加算の対象範囲の評価・見直し
無菌製剤処理加算:2以上の注射薬を無菌的に混合(麻薬の場合は希釈)した場合、1日分毎に加算(1日につき1回、主たるもののみ加算)
現行 → 改定後 乳幼児以外 乳幼児(新) 中心静脈栄養法用輸液 40点 65点 130点 抗悪性腫瘍剤 50点 75点 140点 麻薬 – 65点 130点 ※乳幼児=6歳未満
無菌調剤室を借りて無菌調剤した場合の算定要件を緩和
医療用麻薬も無菌製剤処理加算の対象に
高齢社会において各薬局の一包化算定率は増加傾向にあると思うのでうれしい改定ですね。
無菌製剤に関しては今後どんどん増えていくのかもしれません。
在宅患者調剤加算の改定
<在宅患者調剤加算の施設基準の通知>
医療材料及び衛生材料を供給できる体制を有していること。
また、当該患者に在宅患者訪問薬剤管理指導を行っている薬局に対し保険医療機関から衛生材料の提供を指示された場合は、原則として衛生材料を患者に供給すること。なお、当該衛生材料の費用は、当該保険医療機関に請求することとし、その価格は保険薬局の購入価格を踏まえ、医療機関と保険薬局との相互の合議に委ねるものとする。
基準2と同様に衛生材料の供給体制が求められています。
基準2も在宅患者調剤加算も在宅の実績を求められていますが、衛生材料もその一部といった形ですね。
ちなみに、衛生材料の提供を行えるのは、基準2か在宅調剤加算を算定できる在宅薬局のみです。
ここは紛らわしいポイントですね!
7、薬剤服用歴管理指導料の改定
お薬手帳に関する改定
現行
薬剤服用歴管理指導料:41点
・お薬手帳の記載
・薬剤情報提供文書の提供と説明
・薬剤服用歴の記録とそれに基づく指導
・残薬確認
・後発医薬品に関する情報の提供改定後
薬剤服用歴管理指導料:41点
・お薬手帳の記載
・薬剤情報提供文書の提供と説明
・薬剤服用歴の記録とそれに基づく指導
・残薬確認
・後発医薬品に関する情報の提供
薬剤服用歴管理指導料の特例(お薬手帳を交付しない場合):34点
・薬剤情報提供文書の提供と説明
・薬剤服用歴の記録とそれに基づく指導
・残薬確認
・後発医薬品に関する情報の提供<留意事項通知>
所有している手帳を持参しなかった患者に対して必要な情報が記載された簡潔な文書(シール等)を交付した場合は、薬剤服用歴管理指導料のただし書きにかかる所定の点数(34点)を算定する。
年齢が低くなるほどお薬手帳を利用している患者の割合が低くなっていることから、不要と判断した場合はお薬手帳を交付せず、薬歴管理料の特例の対象となるという話にはなっていますが・・・。
実際のところ、平成24年度改定以降、お薬手帳を持参してもらおうがなかろうが、シールを渡すだけの対応となってしまっていた薬局への減点というところでしょうか?
これは辛い改訂、残念な評価ですね。
これからの2年間、どのような対応をしていくかで次の改訂でまた評価される部分だと思います。
説明会ではお薬手帳を忘れた患者さんにお薬手帳を再発行、次回受信時にお薬手帳を持って来てもらって一つにまとめる場合は算定可能とのことでした。
簡易型のお薬手帳を作成してそれに貼る薬局が増えそうですが、それに貼ったら算定可能と、今までのシールを渡すだけのような対応にならないことを祈りたいですね。
もう一つのポイントとして、今回より病院•診療所は地域包括診療科(加算)の算定が始まります。
地域包括診療~薬剤師も気になる診療報酬改定 – 薬剤師の脳みそ
その場合、お薬手帳が必須となるので、対象となる患者さんについてはお薬手帳を病院とともに啓蒙することになり、持参率はかなり上がると思います。
これが最後のチャンスと思ってやらないといけないですね。
個人的にはお薬手帳に点数は不要、お薬手帳を活用した場合の加算、服薬管理上の必要に迫られてお薬手帳を持っていない人の併用薬を調べた場合の加算が欲しいです。
服薬状況等の確認のタイミングの明確化
服薬状況並びに残薬状況の確認及び後発医薬品の使用に関する患者の意向の確認のタイミングを、調剤を行う前の処方せん受付時とするよう見直す。
<薬剤服用歴管理指導料の留意事項通知>
次の事項については、処方せんの受付後、薬を取りそろえる前に患者等に確認すること。
・患者の体質・アレルギー歴・副作用歴等の患者についての情報の記録
・患者又はその家族等からの相談事項の要点
・服薬状況
・残薬の状況の確認
・患者の服薬中の体調の変化
・併用薬等(一般用医薬品、医薬部外品及びいわゆる健康食品を含む。)の情報
・合併症を含む既往歴に関する情報
・他科受診の有無
・副作用が疑われる症状の有無
・飲食物(現に患者が服用している薬剤との相互作用が認められているものに限る。)の摂取状況等
・後発医薬品の使用に関する患者の意向
今回最も衝撃であろう改定がこれだと思っています。
残薬・後発の意向を受付時に確認するだけでも業務の流れを見直さないといけなかったのに、薬歴の算定要件ほとんどを調剤の前に確認するように通知されています。
ちなみに、今までは「処方せんの受付後、薬を取りそろえる前に、患者等に確認するよう努めること。」でした。
努力義務から義務へ変更といったところでしょうか?
理由としては、病院や診療所で医師は診察、患者の問診やカルテの確認等を行った上で治療を開始するのだから、薬局において薬剤も処方せん内容の確認、患者の問診(服薬状況、残薬状況、後発品の意向確認等)や薬剤服用歴の確認等を行った上で調剤を開始するべきだということです。
たしかにそうなんですが、多くの薬局でこれをそのまま実施すると待ち時間の増加に加え、患者さんの混乱も招きますね。
さあ、どのように対応していくべきか今回一番のポイントとなるべきところではないでしょうか?
一般名処方における後発医薬品選択の明確化
一般名処方が行われた医薬品については、原則として後発医薬品が使用されるよう、患者に対し後発医薬品の有効性、安全性や品質について懇切丁寧に説明をし、後発医薬品を選択するよう努める旨を規定する。
<薬剤服用歴管理指導料の留意事項通知>
一般名処方が行われた医薬品について、原則として後発医薬品が使用されるよう、患者に対し後発医薬品の有効性、安全性や品質について懇切丁寧に説明をした場合であって、後発医薬品を調剤しなかった場合は、その理由を調剤報酬明細書の摘要欄に記載する。
一般名処方は原則後発医薬品となりました。
この部分を薬剤師がどのように説明していくかがポイントとなります。
処方元の医師はこのことをご存知でしょうか?
今までの一般名処方では「後発医薬品」=「先発医薬品」と対等だったものが、「後発医薬品」>>「先発医薬品」となるわけです。
処方医にも理解してもらった上で、患者さんの理解、そして安心して服用してもらうべく準備が必要となりますね。
ちなみに、レセプトの摘要欄に記載を行わずに先発医薬品を選択した場合は返戻や減点の対象となるのでしょうか?
そもそも、それ以前に、レセプトで一般名処方かどうかはチェックされているのでしょうか?
医科の話になりますが、一般名処方を発行することにより、205円ルールによる実質的な優遇があります。
※一般名処方による処方薬の種類数計算は最低薬価を用いて計算する。
※1剤1日の薬価が205円以下の場合は、1種類と考える。
※処方せん料 6種類以下:68点、7種類以上:40点
ということは、医科レセプトでは処方内容のうち、一般名で発行したものがわかるようになっている?
それであれば、薬局のレセプトと突合点検を行うことで先発か後発のどちらを調剤したかがわかる・・・ということでいいのでしょうか?
気になることだらけです。
在宅患者訪問薬剤管理指導料の改定
在宅患者訪問薬剤管理指導料の見直しによる適正化
現行 → 改定後 同一建物居住者以外 500点 650点 同一建物居住者 350点 300点 同一建物居住者以外の評価を引き上げ、同一建物居住者の評価を引き下げる。
在宅医療を担う保険薬局を確保し、質の高い在宅医療を提供するため、保険薬剤師1人につき1日に5回に限り算定することを要件とする。
在宅に関する改訂です。
同一建物居住者とそれ以外の場合の点数に倍以上差がつきました。
高齢者の二人暮らしであれば別の日に訪問という形を行うことで減点はまぬがれますが、施設系居住者をまとめて訪問している場合は300点で算定するしかないと思います。
施設とまとめて契約することに対する減点と言ってもいいのかもしれません。
個人的に辛いのは薬剤師1人につき5回までという改定。
今回の改定は医療保険に対するものですが、通常の流れでは2年後の介護の改定で算定要件などを揃えてきます。
介護による居宅療養管理指導も1人につき5回までとなってしまうのは辛いですね・・・。
1日5回までというのは少なすぎる気がします。
施設にまとめて訪問するメリットが減ると、せっかく進んできた在宅医療を抑制するケースがあるんじゃないかとも思えます。
ただ、基準の改訂等、在宅を促す形になっているのは間違いありません。
同一居住者以外の場合はかなりのプラス改定です。
今後在宅を積極的に行いたい薬局は多いと思います。
もし、今までまとめて訪問してきた薬局がコストの関係上、訪問する患者さんを絞るとすると、そこから外れてしまった患者さんには他の薬局が訪問する形になっていくことが期待できます。
そうなれば、施設に単独の薬局・薬剤師が訪問する形ではなく、複数の薬局・薬剤師が複数の日に訪問するような形です。
そう考えると、基準の改定もそうですが、在宅を行う薬局の増加につながりますし、それは質の向上にもつながっていくはずですね。
保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則等の改正による適正化
患者の誘引の禁止(在宅医療の不適切事例への対応)
保険薬局等が、事業者等に対して、金品を提供し、患者を誘引することを禁止
特定の保険薬局への誘導について(地域包括診療加算、地域包括診療料など)
地域包括診療加算、地域包括診療料を算定する保険医療機関が、患者に対して、
①連携薬局の中から患者自らが選択した薬局において処方を受けるよう説明をすること
②時間外において対応できる薬局のリストを文書により提供すること
保険医療機関が在宅で療養を行う患者に対して、在宅患者訪問薬剤管理指導の届出を行った薬局のリストを文書により提供すること
については、療担規則で禁止する「特定の保険薬局への誘導」に該当しないことを明確化
残念ながら行われていたであろう、在宅患者紹介ビジネスが明確に禁止されました。
病院・診療所が提供する薬局のリストはどのようなものなのでしょう?
各医療機関に任せてしまうと偏りがある気がするので、薬剤師会など外部機関が作成するのでしょうか?
在宅における特定保険医療材料・衛生材料の供給体制の整備
処方せんに基づき保険薬局で交付できる特定保険医療材料として、病院・診療所で支給できる在宅医療に用いる特定保険医療材料を追加する。
追加された特定保健医療材料
「在宅寝たきり患者処置用気管内ディスポーザブルカテーテル」、「在宅寝たきり患者処置用膀胱留置用ディスポーザブルカテーテル」、「在宅血液透析用特定保険医療材料(回路を含む。)」、「携帯型ディスポーザブル注入ポンプ(一般用)」、「皮膚欠損用創傷被覆材」、「非固着性シリコンガーゼ」、「水循環回路セット」
※病院・診療所で支給できる在宅医療に用いる特定保険医療材料のうち、「腹膜透析液交換セット」、「在宅中心静脈栄養用輸液セット」、「在宅寝たきり患者処置用栄養用ディスポーザブルカテーテル」、「携帯型ディスポーザブル注入ポンプ(化学療法用)」は現行でも支給可能
基準2と在宅患者調剤加算で在宅医療における保険医療機関の求めに応じた衛生材料の提供が加わっていますから、これらを扱えるようになるのは当然ということですね。
診療報酬改定全体を見るとその目玉は入院から在宅医療を促す主治医機能です。
今回の改定では薬局はそのサポートをするべく求められている気がします。
長くなりましたが、とりあえず調剤報酬改定のすべてを網羅したつもりです。
個人的にはやはり、「薬剤服用歴管理指導料の留意事項通知」が気になります。
受付時にどのように患者さんと会話を行っていくか。
自分が思い描く理想の薬局のスタイルではあるのですが、各薬局がどのように対応していくか興味津々です。
そろそろ各厚生局や薬剤師会主催の説明会も開催されていくはずです。
細かい部分、どのように解釈されていくかが楽しみですね!
4月までもう一ヶ月を切ってます。
頑張って準備していきましょうね!