平成26年2月24日の厚生労働省薬食審第一部会で「グラッシュビスタ外用液剤」の承認が了承されました。
承認された効能・効果は「睫毛貧毛症」。要はまつ毛を伸ばす薬と言う訳です。
有効成分はビマトプロスト。
ビマトプロストと言えば・・・わかる人はすぐにわかりますよね。
そうです。
緑内障治療薬のルミガン点眼液と同じ成分です。
グラッシュビスタとルミガン
グラッシュビスタとルミガン点眼液。どちらもビマトプロストを有効成分とする薬剤です。
ビマトプロストの特徴
ビマトプロストはPG関連薬(プロスタグランジン関連薬)の一種ですが、他のPG関連薬とは異なる特徴を持つ薬剤です。
一つは作用する受容体です。
他のPG関連薬はプロスタノイド受容体に結合することで効果(主に眼圧効果作用)を発揮しますが、ビマトプロストはプロスタマイド受容体に結合することで効果を発揮します。
次にプロドラッグかどうかということです。
他のPG関連薬は角膜を通過する際にエステラーゼによる加水分解を受けて活性化されますが、ビマトプロストはそのままの形で活性を持つ、PG関連薬で唯一プロドラッグではないという特徴を持っています。
緑内障治療薬として使用される場合、ビマトプロストは眼房水の排出を促進することで眼圧を低下させます。
グラッシュビスタとルミガン点眼液の違いは?
グラッシュビスタとルミガン点眼液はどちらもビマトプロストを有効成分とする薬剤です。同じ成分を持つ2つの薬剤を比較してみます。
商品名 | グラッシュビスタ外用液剤0.03%5mL | ルミガン点眼液0.03% |
---|---|---|
成分名 | ビマトプロスト | ビマトプロスト |
効能・効果 | 睫毛貧毛症 | 緑内障 高眼圧症 |
用法・用量 | 片眼ごとに、1滴を本剤専用のアプリケータに滴下し、1日1回就寝前に上眼瞼辺縁部の睫毛基部に塗布する。 | 1回1滴、1日1回点眼する。 |
グラッシュビスタもルミガン点眼液もビマトプロストを0.03%、含みます。つまり、同じ成分を同じ量だけ含む薬剤です。
ですが、適応は異なります。ルミガンの適応が緑内障と高眼圧症なのに対して、グラッシュビスタの適応は睫毛貧毛症となっています。同じ成分なのに使用目的が違うということですね。
これは用法・用量にも現れています。ルミガン点眼液はその名の通り点眼して使用しますが、グラッシュビスタは専用のアプリケータという刷毛のようなもので睫毛の根元に塗って使用します。
ルミガンの副作用がグラッシュビスタの効能?
さて、グラッシュビスタの効能を理解するのに大事になるのがルミガンの副作用です。
副作用等発現状況の概要
眼瞼の多毛症17例(5.26%)
その他の副作用
眼 5%以上
睫毛の異常(睫毛が長く、太く、濃くなる等)、眼瞼の多毛症
まぶた(眼瞼)の多毛、まつ毛が長く・・・。
眼圧を下げる緑内障治療薬においては副作用となりますが、これを利用すればまつ毛を伸ばす薬ができる?
その発想から生まれた薬剤がグラッシュビスタです。
グラッシュビスタの作用機序
毛包(毛の元となる毛根を包みこんでいる組織)に作用することで、毛周期(毛が生える周期)における成長期を延長することで、毛が長くなったり、太くなる作用を発揮します。
また、毛幹数を増やすことで毛の本数を増やす効果もありますが、毛包の数自体を増やすことはできないので、発毛の効果はなく、あくまでも育毛の効果となります。
lattiseとグラッシュビスタ
海外で発売されているlattise(ラティース、ラティス、ラティッセ)がグラッシュビスタに相当する薬剤です。
lattiseとは?
ビマトプロストはすでにアメリカではlattiseという名前でまつ毛育毛剤として販売されています。
他にケアプロストという商品もあるようです。
添加物までは確認できませんが、ルミガンとの違いはアプリケーターという専用のアイブラシが付属する点です。
それ以外はルミガンと同じようなので、ルミガンを自由診療で綿棒にて使用するケースもあるようです。
lattiseに関しては以前、このブログのコメント欄でも話題にさせていただきました。
検索すると紹介しているページが色々出てきますね。
使用後のまつ毛の変化の写真などもあったので興味ある方は「ラティス まつ毛」などで検索してみてください。
グラッシュビスタ
グラッシュビスタはlattiseとほぼ同じ商品のようです。
ルミガンと同じ成分・量でアプリケーターが付属します。
「片眼ごとに、1滴を本剤専用のアプリケータに滴下し、1日1回就寝前に上眼瞼辺縁部の睫毛基部に塗布する。」という使用方法ですが、かなり塗るのが難しそう。慣れるまでは時間がかかりそうですね。
グラッシュビスタの副作用
アプリケータを使って、まつ毛の根元だけに上手に塗らないと、まぶたや目に副作用が出やすくなってしまいそうです。グラッシュビスタ外用液の添付文書には以下のような副作用が記載されています。
重大な副作用
虹彩色素過剰
眼瞼溝深化その他の副作用
1.眼 2%以上:結膜充血、眼脂、眼乾燥、点状角膜炎、眼瞼紅斑、眼瞼そう痒症、眼瞼刺激、眼刺激
2.眼 2%未満:結膜濾胞、眼瞼障害、睫毛乱生、眼瞼炎、麦粒腫
4.皮膚 2%以上:皮膚色素過剰
5. 2%未満:毛質異常、睫毛眉毛脱落症
虹彩色素過剰や眼瞼溝深化、結膜充血などルミガンと共通する副作用が多くなっています。
グラッシュビスタの販売と価格
睫毛貧毛症に対する初の治療薬と言う事で、今まで使いたくても使えない人には嬉しい知らせなんだと思います。
ですが、睫毛貧毛症という適応では治療薬として認められるのは難しく、薬価収載は無理だったようで、薬価未収載のまま平成26年9月29日に販売開始となりました。なので自由診療による処方となり、保険適応外、つまり10割負担です。
包装は5mLのみの発売のようですが、気になる値段はどうなるんでしょう?
ルミガンが933円/mLなので1本2.5mLが2332.5円です。
ラティース(海外)は1本3mLが1万円〜1万5千円で売られており、日本で発売される1本5mLに換算すると約2万円になります。
実売価格は1万5千円〜2万円といったところが相場のようですね。
他のプロスト系では効果なし?
ちなみにプロスト系(キサラタン、トラバタンズ、タプロス)で同様の薬が開発されていないのはプロドラッグであることが理由なんでしょうか?
ビマトプロストは角膜を通過しなくてもそのままで薬効を持つのでまつ毛の根元に塗るだけで効果が出るのだと思います。