適切な向精神薬使用の促進~薬剤師も気になる診療報酬改定

2014年度(平成26年度)調剤報酬改定で検索して来てくださる方が多いみたいで驚いています。
ありがとうございます。
今日は調剤報酬部分でなく、診療報酬改定(医科)の部分で気になったところを挙げてみようと思います。
調剤報酬が変われば薬局が変わるのは当たり前ですが、診療報酬で病院が変わっても薬局は変わらないといけません。
今回は向精神薬の処方に関する部分です。

向精神薬に係る改定

他の先進国と比べて日本では向精神薬の処方数が多いことがかねてから問題となっていました。
このことを踏まえ、適切な向精神薬の処方を推進する観点から、見直しが行われます。

非定型抗精神病薬加算の見直し

非定型抗精神病薬加算のうち、剤数制限のない非定型抗精神病薬加算2を削除

非定型抗精神病薬加算は精神科救急入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科救急・合併症入院料、精神療養病棟入院料への加算です。
統合失調症の入院患者に計画的な医学管理のもとに非定型抗精神病薬による治療を行い療養上必要な指導を行った場合に算定できます。
2010年の改定から使用する精神病薬(非定型抗精神病薬のみでなく精神病薬すべてを含めて判断)の数により非定型抗精神病薬加算1(使用する精神病薬が2種類以下)と非定型抗精神病薬加算2(1以外)に分かれていました。
今回の改訂では非定型抗精神病薬加算2が削除され、抗精神病薬を3剤以上使用する場合は算定できなくなる予定です。

精神科継続外来支援・指導料の見直し

今まで唯一精神科に関する点数で多剤投与による減点が定められていた精神科継続外来支援・指導料ですが、それがさらに厳しく改定されるようです。

2012年改定

入院中の患者以外の患者について、精神科を担当する医師が、患者又はその家族等に対して、病状、服薬状況及び副作用の有無等の確認を主とした支援を行った場合に、患者1人につき1日に1回に限り算定する。
2 当該患者に対して、1回の処方において、3剤以上の抗不安薬又は3剤以上の睡眠薬を投与した場合には、所定点数の100分の80に相当する点数により算定する。
3 医師による支援と併せて、精神科を担当する医師の指示の下、保健師、看護師、作業療法士又は精神保健福祉士が、患者又はその家族等に対して、療養生活環境を整備するための支援を行った場合は、所定点数に40点を加算する。
4 抗精神病薬を服用している患者について、客観的な指標による当該薬剤の副作用の評価を行った場合は、特定薬剤副作用評価加算として、月1回に限り所定点数に25点を加算する。ただし、区分番号I002に掲げる通院・在宅精神療法の注4に規定する加算を算定する月は、算定しない。
5 他の精神科専門療法と同一日に行う精神科継続外来支援・指導に係る費用は、他の精神科専門療法の所定点数に含まれるものとする。

2014改定後

2 当該患者に対して、1回の処方において、3剤以上の抗不安薬3剤以上の睡眠薬、4剤以上の抗精神病薬を投与した場合は算定しない

剤数の制限に抗精神病薬が加わり、規定の在数を超える場合は減点ではなく算定不可となるようです。

処方料の見直し

これまで、処方料については7種類以上の投薬についてのみ規制がありましたが、新たに向精神薬の使用に関する規制が加わります。(以下の薬剤料、処方せん料についても同様です)

1 7種類以上の内服薬の投薬(臨時の投薬であって、投薬期間が2週間以内のものを除く。)を行った場合 29点
2 1以外の場合 42点

でしたが、

1 3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬又は4種類以上の抗精神病薬の投薬を行った場合 20点
2 1以外の場合で、7種類以上の内服薬の投薬(臨時の投薬であって、投薬期間が2週間以内のものを除く。)を行った場合 29点
3 1または2以外の場合 42点

処方料と処方せん料は異なります。
処方料は院内処方に対する点数ですね。

 

薬剤料の見直し
これまでは、

注 7種類以上の内服薬の投薬(臨時の投薬であって、投薬期間が2週間以内のものを除く。)を行った場合には、所定点数の100分の90に相当する点数により算定する。

でしたが改定後は、

1 3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬又は4種類以上の抗精神病薬の投薬を行った場合には、所定点数の100分の80に相当する点数により算定する。
2 注1以外の場合で、7種類以上の内服薬の投薬(臨時の投薬であって、投薬期間が2週間以内のものを除く。)を行った場合には、所定点数の100分の90に相当する点数により算定する。

となります。2割減か~・・・。
これは薬局での薬剤料ではなく、院内における薬剤料ですので念のため。

 

処方せん料の見直し
これまでは、

1 7種類以上の内服薬の投薬(臨時の投薬であって、投薬期間が2週間以内のものを除く。)を行った場合 40点
2 1以外の場合 68点

でしたが改定後は、

3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬又は4種類以上の抗精神病薬の投薬を行った場合
2 1以外の場合で、7種類以上の内服薬の投薬(臨時の投薬であって、投薬期間が2週間以内のものを除く。)を行った場合 40点
3 1または2以外
の場合 68点

薬局に一番関わってくるのはこの改訂ですね。
3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬又は4種類以上の抗精神病薬。
当てはまる患者さんはいるでしょうか?
4月から処方数が減るかもしれません。
「先生から『ちょっと薬を減らしていこう』って言われたのよ」なんて相談を受ける可能性がありますね。

 

向精神薬の多剤処方に関する見直しの経過措置
急に向精神薬を減らせって言われても無理です。
と言うか、診療報酬の改訂に従い、医師が無理やり減らさざるを得ない状況となれば患者さんの体に負担がかかるケースが想定されます。
というわけで、これらの改訂には経過措置(平成26年9月30日まで)が設けられ、平成26年10月1日より導入されます。

日本は向精神薬を使いすぎ?

日本は諸外国と比べて向精神薬の処方数が多いという事は以前から言われていました。
たしかに、睡眠薬や向精神薬が複数処方されたり、それらの副作用を抑えるためにまた別の薬が・・・というケースは向精神薬においてよく見られる気がします。
ただ、その背景には医療制度の問題もある気がします。
アメリカの薬剤師なんかに言わせたら、向精神薬に関わらず、日本は薬を使いすぎって話です。
ドイツとかもそうですが、抗精神病薬に限らず、ほとんどが一疾患に対して一薬剤です。
いろんな薬剤の中でも特に向精神薬が多く、その背景には、向精神薬の性質があるかとは思いますが、もっと根本的な見直しが必要なのだとは思います。

向精神薬の減量

じゃあ、減らせと言われてもどうやって?
向精神薬は安易に減量したり中止できる薬剤です。
さあ、どうしよう?

すでにガイドラインが作成されています。
プレスリリース詳細 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
http://www.ncnp.go.jp/nimh/syakai/01_project06.html

思いついた患者さんについて処方医に減量の提案を行うチャンスかもしれませんね。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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