薬局以外の在宅はどうなるのか?~薬剤師も気になる診療報酬改定

薬剤師も気になる診療報酬改定シリーズとして、診療報酬のうち調剤部分(調剤報酬)以外についてまとめていこうと思います。
診療報酬改定で大事なのは調剤報酬だけではありません。
薬剤師や薬局を訪れる患者さんと関わる医療がどう変わっていくのかを知らないことには薬局は成長できません。
そういう視点で考えていくシリーズです。

昨日の記事で調剤報酬の在宅部分の改正は、薬局と施設とがまとめて契約するのに抑止をかけるのが目的じゃないかとお話しました。
在宅に関する改定について考える~平成26年度調剤報酬改定 番外編 – 薬剤師の脳みそ

じゃあ、調剤以外の部分ではどうなんでしょうか?

まずは、医師の在宅医療に関連する診療報酬を簡単に説明していきます。

往診料

「往診料」とは患者の求めに応じて、訪問計画に基づかず不定期に患者宅を訪れて診察を行った場合に算定することが可能です。
診療時間が1時間を超えた場合、30分増すごとに患家診療時間加算(100点)を算定できます。
再診時には緊急加算・夜間加算・深夜加算なども算定可能です。

1 機能強化型在宅療養支援診療所(病院)
イ 病床を有する場合
(1)緊急に行う往診:850点
(2)夜間(深夜を除く。)の往診:1700点
(3)深夜の往診:2700点
ロ 病床を有しない場合
(1)緊急に行う往診:750点
(2)夜間(深夜を除く。)の往診:1500点
(3)深夜の往診:2500点

2 在宅療養支援診療所(病院)
(1)緊急に行う往診:650点
(2)夜間(深夜を除く。)の往診:1300点
(3)深夜の往診:2300点

3 1・2以外
(1)緊急に行う往診:325点
(2)夜間(深夜を除く。)の往診:650点
(3)深夜の往診:1300点

在宅患者訪問診療料

往診料に対して、「在宅患者訪問診療料」とは訪問計画に基づいて患者宅を訪れて診察を行った場合に算定することが可能です。
同一日に複数の患者を訪問した場合、同一建物かどうかで点数が変わります。
薬局の訪問薬剤管理指導料と似ていますね。
往診料と同じく、診察時間による患家診療時間加算が存在します。

改定前
1 同一建物居住者以外の場合:830点
2 同一建物居住者の場合
イ 特定施設に入居する者の場合:400点
ロ イ以外の場合:200点

在宅時医学総合管理料と特定施設入居者等医学管理料

在宅時医学総合管理料(在医総管)とは、通院が困難な患者に対し、総合的な在宅療養計画を作成、月2回以上の訪問診療を継続して行った場合、月に1回算定することが可能となる点数です。
投薬に関する費用(院内の場合:処方料・薬剤料、院外の場合:処方せん料)や一部の処置料は包括に含まれます。

特定施設入居者等医学管理料(特医総管)とは、特定施設の入居者を対象としたもので、他の算定要件は在医総管に準じます。
特医総管の対象者は以下のように定められています。

養護老人ホーム、軽費老人ホーム(A型に限る)、特別養護老人ホーム、特定施設(外部サービス利用型を除く)の入居者
短期入所生活介護、介護予防短期入所生活介護のサービスを受けている者

また、在医総管、特医総管ともに算定するためには一定の施設基準を満たさねばなりません。

一ヶ月の在宅による算定例

往診が3回、計画に基づく在宅訪問診療が4回あるとすると・・・。
在宅時医学総合管理料+往診×3(+加算)+在宅訪問診療料×4
という具合に算定可能です。
これに検査費用や包括に含まれない処置料、指導料、訪問看護の点数が加わります。

2014年度診療報酬 在宅医療に関する改定

参考資料は2月12日の中医協資料です。(総-1)
中央社会保険医療協議会 総会(第272回) 議事次第

P55~すごいインパクトのあるタイトルでまとめられています。
「在宅不適切事例の適正化」
保険診療の運用上、不適切と考えられる事例への対策を進める。

これは何を意味するのでしょうか?

少し前にさかのぼり、平成25年10月23日の中医協資料。
第252回 中央社会保険医療協議会 総会 議事次第
在宅医療(その4)について(総-3)の「6.在宅医療における患者紹介等の事例」(P129~)に注目してください。
読んでもらえばわかるので詳しくは書きませんが、高齢者用施設を新設する業者が医師に患者を優先して紹介する見返りを要求するケースなどが問題視されています。
これが今回の改正、「在宅不適切事例の適正化」の理由です。

それでは改定内容を見ていきましょう。

在宅時医学総合管理料の改定

1 機能強化型在宅療養支援診療所(病院)
イ 病床を有する場合
(1)処方せんを交付する場合:5000点→同一建物の場合:1200点が追加
(2)処方せんを交付しない場合:5300点→同一建物のの場合:1500点が追加
ロ 病床を有しない場合
(1)処方せんを交付する場合:4600点→同一建物の場合:1100点が追加
(2)処方せんを交付しない場合:4900点→同一建物のの場合:1400点が追加

2 在宅療養支援診療所(病院)
イ 処方せんを交付する場合:4200点→同一建物の場合:1000点が追加
ロ 処方せんを交付しない場合:4500点→同一建物のの場合:1300点が追加

3 1・2以外
イ 処方せんを交付する場合:2200点→3150点、同一建物の場合:760点が追加
ロ 処方せんを交付しない場合:2500点→3450点、同一建物のの場合:1060点が追加

3については同一建物以外の点数が950点プラスとなっていますが、すべてにおいて同一建物の場合が加わり、その点数は約1/4です・・・。

特定施設入居者等医学総合管理料の改定

1 機能強化型在宅療養支援診療所(病院)
イ 病床を有する場合
(1)処方せんを交付する場合:3600点→同一建物の場合:870点が追加
(2)処方せんを交付しない場合:3900点→同一建物のの場合:1170点が追加
ロ 病床を有しない場合
(1)処方せんを交付する場合:3300点→同一建物の場合:800点が追加
(2)処方せんを交付しない場合:3600点→同一建物のの場合:1100点が追加

2 在宅療養支援診療所(病院)
イ 処方せんを交付する場合:3000点→同一建物の場合:720点が追加
ロ 処方せんを交付しない場合:3300点→同一建物のの場合:1020点が追加

3 1・2以外
イ 処方せんを交付する場合:1500点→2250点、同一建物の場合:540点が追加
ロ 処方せんを交付しない場合:1800点→2550点、同一建物のの場合:840点が追加

こちらも在医総管と同様ですね・・・。

その他の在宅関連改定

在宅患者訪問診療料の同一建物居住者は1/2に変更されています。

2 同一建物居住者の場合
イ 特定施設等に入居する者の場合:400点→203点
ロ イ以外の場合:200点→103点

訪問看護の同一建物居住者については同一日に2人まではプラスとなっていますが、3人以上が新たに加わり、1/2近くのマイナスとなっています。

また、診療報酬の在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定要件、点数が調剤報酬に揃えられています。

同一建物居住者以外の場合:550点→650点
同一建物居住者の場合:385点→300点
月2回まで→月4回まで、薬剤師一人につき1日に5回まで

在宅不適切事例の適正化

そして以下の一文の記載が加わっています。

「保険医療機関等が経済的誘引により患者紹介を受けることを禁止する。」

はっきりと施設と医師・病院との独占的契約を禁止することを示していますし、その原因となる施設の患者とまとめて契約することによる利益の抑制にかかっていますね。
う~ん・・・。
たしかにしょうがないことだとは思うのですが・・・。
実際に施設の患者を診ていた医師・病院がすべて済的誘引による紹介を受けていたわけではないと思うので、ここまで厳しい改正が必要かどうかはよくわかりません。
個人的には、今の段階では、最後の一文と、もう少し緩めの減点でもよかったのではないのかなとも思います。

今回の改正で施設の在宅に力を入れていた医師の収入は間違いなく減ります。
その結果、在宅から医師が離れていく・・・なんてならなければいいのですが・・・。
あまりにショッキングな減点内容なのでそれがちょっと気になります。
医療費抑制も大事ですが、もう少し段階的に進めていってもよかったんじゃないかな?と思います。

在宅医療はまだまだ十分ではないです。
たしかに、診療報酬による経済的利益から過剰になっている部分も多々ありますが、そのバランスを取りながら、まだ十分でない部分を埋めることが先決かなとも思うんです。
昨日も書きましたが、やはり地方などでは在宅医療が進んでいません。
もう少し進んでからでも良かったのかなあと思うんです。

ただ、診療報酬が下がるということは患者さんの自己負担も下がるわけですから、今まで支払いの問題で在宅医療を受けることができなかった患者さんが受けれるようになり、その結果、在宅が進んでいくという可能性もあります。
実際のところ、どちらに転ぶのか、勉強不足でよくわかっていませんが、注目していく必要があると思います。

処方元の先生が施設を担当している場合、今後どのように考えていくかを確認しておきたいところですね。

在宅療養診療所の実績

機能強化型在宅療養診療所という施設基準がありますが、3人以上医師が配置されている必要があります。
今回、医師は3名以上確保されていないが、十分な緊急往診と看取りの実績をもつ在宅療養診療所に対する評価が新設されました。

施設基準:過去1年間の緊急往診の実績が10件以上かつ看取りの実績が4件以上

在宅療養実績加算

緊急、夜間又は深夜の往診:75点
ターミナルケア加算:750点
在宅時医学総合管理料 同一建物居住者以外の場合:300点
在宅時医学総合管理料 同一建物居住者の場合:75点
特定施設入居時等医学総合管理料 同一建物居住者以外の場合:225点
特定施設入居時等医学総合管理料 同一建物居住者の場合:56点
在宅がん医療総合診療料:110点

この改訂では、たしかに在宅の質の向上に対する評価というのがわかりますね。
在宅療養支援診療所を取っていても看取りや緊急往診を行っているかどうかで差が出るというわけです。
看取りという具体的な項目を評価することでどこまで在宅に本格的に取り組んでいるかがわかります。

これにより、在医総管、特医総管には実質、もう一つ点数区分が増えた形になりますね。
在宅療養支援診療所(病院)の内容に在宅療養実績加算が加わると…。

在宅時医学総合管理料2+実績加算
イ 処方せんを交付する場合:4200点+300点→4500点
同一建物の場合:1000点+75点→1075点
ロ 処方せんを交付しない場合:4500点+300点→4800点
同一建物のの場合:1300点+75点→1375点

特定施設等入居者医学総合管理料2+実績加算
イ 処方せんを交付する場合:3000点+225点→3225点
同一建物の場合:720点+56点→776点
ロ 処方せんを交付しない場合:3300点+225点→3525点
同一建物のの場合:1020点+56点→1076点

 

同一建物居住者に対する評価といい、実績に対する評価といい、薬局に関する(調剤報酬)改定に比べてさらにメリハリのきいた改訂になっています。
診療報酬全体を見ると、国が在宅医療に求めている方向性がより具体的に見えてくるところもあるのではないでしょうか?

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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