budesonide/formoterolによるSMART療法

随分、間が空いてしまいました。
最低でも一週間に一回は更新するつもりだったんですが・・・。

そんな間に、シムビコートにSMART療法の用法が追加されました。
シムビコート発売前から話題になっていた用法で、ある意味、シムビコートの目玉。
これが追加される人も多かったんじゃないでしょうか。
(実際、こっそりとこういう使い方しているDrも多かったと思います)
それにしても、なんでこんなに承認に時間がかかったんだろう・・・?

SMART療法のSMARTは「Symbicort Maintenance and Reliever Therapy」の略。
「シムビコートによる維持及び発作療法」ってとこでしょうか。

添付文書の用法・用量では

「維持療法として1回1吸入あるいは2吸入を1日2回投与している患者は、発作発現時に本剤の頓用吸入を追加で行うことができる。本剤を維持療法に加えて頓用吸入する場合は、発作発現時に1吸入する。数分経過しても発作が持続する場合には、さらに追加で1吸入する。必要に応じてこれを繰り返すが、1回の発作発現につき、最大6吸入までとする。
維持療法と頓用吸入を合計した本剤の1日の最高量は、通常8吸入までとするが、一時的に1日合計12吸入(ブデソニドとして1920μg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として54μg)まで増量可能である。」

となっています。

つまり、一剤でコントローラーとレスキューの両方を兼ねることができるというわけです。

ここで復習。
ブデソニド/ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入剤(商品名:シムビコート)はサルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル吸入剤(商品名:アドエア)に続いて発売された吸入ステロイドと吸入LABA(長時間作用性β2刺激薬)の配合剤です。
最大の特徴はLABAであるホルモテロールの効果発現の速さ。
この効果発現の速さがSABA(短時間作用性β2刺激薬)的な効果となり、SMART療法が可能としています。

シムビコートは実にいい薬です。
先日、SMART療法の説明に来た、アストラゼネカとアステラスの美人MR二人にも、思わず「FP/MSに比べて劣ってるところってあるの?」って聞いてしまったくらい。
(ちなみに、ディスカスは水平にして使用、シムビコートは垂直にして使用するので切り替え時にはその点も指導してくださいという情報提供をしてくれました。)
ホルメテロールは効果発現の速さに加え、用量依存的に効果を増大可能。
患者がすぐに効果を実感できるのもいいことだと思います。
ドライパウダー製剤を比較しても、粒子径が小さいため、末梢気道炎症の抑制も期待できます。
また、デバイスにおいても、タービュヘイラーはディスカスよりも弱い力で吸うことができます。

欠点といえば、これは好みかもしれませんが、患者さんに説明する中で、ディスカスの方がタービュヘイラーより使いやすいってことかな?
あとはカウンターはディスカスの方が見やすい。

まあまあ、こんな素晴らしいシムビコート。
さらに、SMART療法という使い勝手のいい用法が追加されたんだから、鬼に金棒!
と思えばいいところですが、うがった見方をしてみました。

一番気になるのはSMART療法のエビデンスが不明瞭なところ。
SMART療法が喘息死の減少に繋がるかどうかの結果はまだでていません。
「そりゃ繋がるだろ」と言われそうですが、なかなか単純に思い通りになってくれないものです。
SMART療法を知った患者は、たしかに喘息発作時にいち早く対応することが可能となると思います。
でも、喘息患者によくある問題。
「SABAしか使わない」「SABAを使えば調子いいから」
こうなっちゃう可能性はないでしょうか?
今までの経験からすると十分有り得る話。
呼吸器の処方を扱っている人であればこういう患者さんが多いことはよくご存知だと思います。
ひょっとしたら、SMART療法ならぬ、SRT療法になっちゃう・・・?
こう考えた場合、喘息死に対するエビデンスはどうなるでしょう?
用法の使い勝手が患者のアドヒアランスに悪影響を与えてしまうかも?

もうひとつ気になるのは、「1日8吸入(最大12吸入)」しか使用できないってこと。
基本的に、SMART療法を必要とするのは通常の用法でコントロールがうまくいかないケース。
つまり、より重症な場合が多いと思うのですが、重症な人は維持療法で使用する用量が多い。
つまり、重症であれば重症であるほど、発作時に使用できる量が少ないという矛盾を抱えているんです。
ここがどうも納得できない・・・。

まあ、これからどんどんエビデンスが出てくるのでそれを見ないとなんとも言えないってことです。
SMART療法は非常に簡便で素晴らしい用法だと思うのですが、その簡便さがデメリットに繋がってしまうことのないようにしないといけませんね。
これは、自分たち薬剤師の服薬指導次第で克服できるはずですよね!

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

NO IMAGE
最新情報をチェックしよう!