【ブルーレター】ベージニオ錠による重篤な間質性肺炎【安全性速報】

2019年5月17日、厚生労働省はベージニオ錠(一般名:アベマシクリブ)を発売する日本イーライリリーに対して「安全性速報(ブルーレター)」により注意喚起を行うよう指示しました。
ベージニオ錠の投与後に重篤な間質性肺疾患を発現、死亡に至った症例が報告されたことを踏まえたもので、同時に、添付文書の警告欄の追記するように改訂指示も出されています。
安全性速報(ブルーレター)が出されるのは2015年2月4日のラミクタール錠(一般名:ラモトリギン)による重篤な皮膚障害に関する注意喚起以来、4年ぶりになります。

※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。

ベージニオによる重篤な間質性肺炎(ブルーレター)に関する資料一覧

はじめに、今回のブルーレター(安全性速報)に関連する資料についてまとめます。
詳しい内容については以下の資料を読んでいただくのが一番です。
患者さん向けのものもあるので一通り確認しておきましょう。

安全性速報(日本イーライリリー株式会社)
医療関係者向け

患者さん向け

報道発表資料(厚生労働省)

ベージニオ錠 基本情報

 

ベージニオ錠による重篤な間質性肺炎

今回の安全性速報はそこに記載されている通り、重篤な間質性肺炎の発症と死亡例の報告を受けてのものです。

2018年11月30日の発売開始以降、市販直後調査中の2019年5月14日までの間に、本剤使用患者において間質性肺疾患の重篤な症例が14例報告されました。このうち3例は、死亡に至った症例として報告されてい ます(推定使用患者数約2,000人)。このため、本剤の「使用上の注意」の「警告」に追加記載し、注意喚起することに致しました。
引用元:安全性速報(ベージニオ®錠 50mg、100mg、150mg による重篤な間質性肺疾患について)

ベージニオ錠による間質性肺炎についてですが、元々「重大な副作用」の項に「間質性肺疾患(2.7%)」と添付文書に記載されており、注意喚起が行われていました。
それにもかかわらず、重篤な症例と死亡例が出てしまったことを踏まえてのブルーレターということになります。

投与における留意事項

ブルーレターには投与に当たっての留意事項が以下の通り記載されています。

  • 本剤の投与にあたっては、間質性肺疾患の初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)を確認し、胸部X線検査の実施等、患者の状態を十分に観察してください。
  • 異常が認められた場合には、本剤の投与を中止し、必要に応じて、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施するとともに、適切な処置を行ってください。
  • 患者又は家族に対して、間質性肺疾患の初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)が発現した場合には、速やかに医師・薬剤師にご連絡いただくよう指導ください。

引用元:安全性速報(ベージニオ®錠 50mg、100mg、150mg による重篤な間質性肺疾患について)

さらに、患者さん向けの注意事項も作成されています。

次のような症状が急に出現したり、持続する場合には、すぐに医師又は薬剤師にご連絡ください。

  • 階段を登ったり、少し無理をしたりすると息切れが する・息苦しくなる
  • 空咳が出る
  • 発熱する   など

引用元:乳癌治療薬 「ベージニオ錠」を服用される患者様とご家族の皆様へ

ベージニオ錠を服用中、もしくは今後投与開始となる方にはこれらの情報提供を必ず行なうようにしてください。

ベージニオ錠について

ベージニオ錠について簡単にまとめておきます。

  • 医薬品名
    • ベージニオ錠50mg
    • ベージニオ錠100mg
    • ベージニオ錠150mg
  • 成分名:アベマシクリブ
  • 製造販売元:日本イーライリリー
  • 効能・効果:ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
  • 用法・用量:内分泌療法剤との併用において、通常、成人にはアベマシクリブとして1回150mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

ベージニオは2018年11月20日に薬価収載されています。
過去記事に薬価収載時の記事があります。
通常、薬局でそんなにお目にかかる薬ではないので存在を意識していない方も少なくないとは思いますが、ベオーバやエイベリス点眼、モビコール、トラディアンス、メトアナと同時に薬価収載されていると言えば、いつ頃登場した薬かイメージしやすいでしょうか?

ベージニオ錠の有効成分であるアベマシクリブはサイクリン依存性キナーゼ(CDK4/6)阻害薬に分類され、CDK4/6を選択的に阻害することで、ER陽性乳がんの細胞周期を調節し、がん細胞の過剰な増殖を抑制します。
すでに承認されているイブランスカプセル(成分名:パルボシクリブ)に続く、国内2剤目のCDK4/6阻害薬です。
引用元:平成30年11月20日に薬価収載された医薬品一覧とマヴィレットの市場拡大再算定

ということです。

添付文書の改訂指示

今回の安全性速報の発出と同時に、添付文書の改訂指示も出されています。
(別添3:令和元年5月17日付通知「医薬品の「使用上の注意」の改訂及び安全性速報の配布等について」)

警告の追加

添付文書 > 【警告】 に以下の内容が新設されます。

警告
2.間質性肺疾患があらわれ、死亡に至った症例も報告されているので、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び胸部X線検査の実施等、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には、本剤の投与を中止し、必要に応じて、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施するとともに、適切な処置を行うこと。
引用元:ベージニオ錠 添付文書

慎重投与の追加

添付文書 > 【使用上の注意】 > 1. 慎重投与 に以下の内容が新設されます。

1. 慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
2.間質性肺疾患のある患者又はその既往歴のある患者〔間質性肺疾 患が増悪するおそれがある。〕
引用元:ベージニオ錠 添付文書

重要な基本的注意の改訂

添付文書 > 【使用上の注意】 > 2. 重要な基本的注意 が下線部の通り変更されます。

2. 重要な基本的注意
(2)間質性肺疾患があらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び胸部X線検査の実施等、患者の状態を十分に観察すること。また、患者に副作用について説明するとともに、間質性肺疾患の初期症状が発現した場合には、速やかに医療機関を受診するよう説明すること。
引用元:ベージニオ錠 添付文書

元々記載されていた「また、必要に応 じて、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施すること。」については「警告」と「重大な副作用」の項に移動した形になります。

重大な副作用の変更

添付文書 > 【使用上の注意】 > 4. 副作用 > (1)重大な副作用 の項の「間質性肺疾患」に関する記載が下線部の通り変更されます。

(1)重大な副作用
4)間質性肺疾患(2.7%):間質性肺疾患があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、本剤を中止し、必要に応じて、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施するとともに、適切処置を行うこと。
引用元:ベージニオ錠 添付文書

 

まとめ

数年ぶりに登場したブルーレターについてまとめました。
イレッサ(ゲフィニチブ)による印象が強いせいか、分子標的薬といえば間質性肺疾患というイメージがあります。
にもかかわらず、間質性肺疾患による死亡例が出てしまうのは劇症性の場合の症状悪化の早さもありますが、我々薬剤師の注意喚起の不十分さにもあるのではないかと考えてしまいます。
入院のような管理下での投与でない限り、患者さん自身で初期症状を自覚し、報告してもらうしか症状悪化を食い止める方法はありません。
外来治療を行う際には我々薬剤師が初期症状と迅速な報告の大切さについて懇切丁寧に説明することが大切だと思います。
もちろん、いたずらに不安にさせ、コンプライアンスが低下するようなことが内容に、服用することを十分理解してもらった上でのことになります。
今回のようなブルーレターを見るたびに、副作用の説明を行うことについて見つめ直すことが大切です。
もちろん、ベージニオについての指導を見直すことは当然ですが、そのほかの薬剤でも十分な指導を行うことができているか?
患者さんを不安にさせることや待ち時間を言い訳にしていないか?
今一度、考え直す機会を持ちたいと思います。

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