原則禁忌から禁忌に移行される項目について〜2019年7月17日改訂指示

令和1年7月17日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回は令和元年度第4回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会で検討されていた原則禁忌の見直しについての改訂指示が出されています。

添付文書の記載用量の変更

今回の添付文書改訂についての通知です。
「使用上の注意」の改訂について(薬生安発0328第1号 平成31年3月28日)
今回の通知は2019年6月26日に行われた「令和元年度第4回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」の中で検討された「添付文書記載要領の改正に伴う原則禁忌の取扱いについて」に基づくもので、平成31年3月28日に行われた原則禁忌に伴う改訂指示に続くものです。

今回の原則禁忌廃止は平成31年4月1日から施行された医療用医薬品の添付文書等の記載要領について(薬生発0608第1号 平成29年6月8日)を反映させたことによります。

1 本記載要領の要点
(1)旧局長通知に含まれる「原則禁忌」及び「慎重投与」の廃止、並びに「特定の背景を有する患者に関する注意」の新設等、添付文書等の項目・構造を見直したこと。
引用元:医療用医薬品の添付文書等の記載要領について(薬生発0608第1号 平成29年6月8日)

2019年3月22日の資料の中では以下のように記載されています。

現在の添付文書中に記載されている「原則禁忌」に記載されている事項は、基本的には「特定の背景を有する患者に関する注意」の項目に移行する予定であるが、中には「禁忌」に移行することが適切と考えられる記載も存在する。
この度、現在の添付文書において「原則禁忌」とされている事項のうち、「禁忌」に移行することが適当と考えられる記載について、国内外の関連するガイドライン、類薬の添付文書における「禁忌」の記載等を考慮しつつ検討を行い、製造販売業者にも意見を聞いて対象を選定し、改訂案を作成し、安全対策調査会において議論を行った。
引用元:添付文書記載要領の改正に伴う原則禁忌の取扱いについて(令和元年度第4回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 資料2-1)

参考資料

今回の記事で参考とした資料です。
令和元年度第4回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 資料

 

使用上の注意の改訂指示(令和元年7月17日)

PMDAへのリンクを貼っておきます。

今回、原則禁忌から禁忌に移行されるものの一覧です。
原則禁忌のまま残るものについては、今後、新添付文書に切り替わる際に「特定の背景を有する患者に対する注意」に移行されます。

医薬品名
(製品名)
原則禁忌→禁忌原則禁忌のまま
スキサメトニウム
(スキサメトニウム注「マルイシ」、レラキシン注用200mg)
急性期後の重症の熱傷、急性期後の広範性挫滅性外傷、四肢麻痺のある患者重症の熱傷(急性期後の重症の熱傷を除く)、広範性挫滅性外傷(急性期後の広範性挫滅性外傷を除く)、尿毒症、ジギタリス中毒の既往歴のある患者あるいは最近ジギタリスを投与されたことのある患者
エチレフリン塩酸塩
(エホチール注10mg)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者心室性頻拍のある患者
フェニレフリン塩酸塩
(ネオシネジンコーワ注)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者心室性頻拍のある患者
オザグレルナトリウム
(カタクロット注射液、 注射用カタクロット、キサンボン注射用、キサンボンS注射液 等)
重篤な意識障害を伴う大梗塞の患者脳塞栓症のおそれのある患者:心房細動、心筋梗塞、心臓弁膜疾患、 感染性心内膜炎及び瞬時完成型の神経症状を呈する患者
精製ツベルクリン
(一般診断用精製ツベルクリン「PPD」)
ツベルクリン反応検査においてツベルクリン反応が水ほう、壊死等の非常に強い反応を示したことのある者
上記に掲げる者のほか、ツベルクリン反応検査を行うことが不適当な状態にある者
明らかな発熱を呈している者
重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
まん延性の皮膚病にかかっている者
副じん皮質ホルモン剤を使用している者

 

スキサメトニウム:急性期後の重症の熱傷、急性期後の広範性挫滅性外傷、四肢麻痺のある患者

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

具体的な添付文書改訂内容

【旧記載要領】に従ってまとめます。
添付文書 > 禁忌 の項に以下の内容が新設されます。

禁忌
急性期後の重症の熱傷、急性期後の広範性挫滅性外傷、四肢麻痺のある患者[血中カリウムの増加作用 により、心停止を起こすおそれがある。] 引用元:スキサメトニウム注40・100「マルイシ」 添付文書

これに伴い、添付文書 > 原則禁忌 の項から「四肢麻痺」が削除され、下線部が追記されます。

原則禁忌
重症の熱傷(急性期後の重症の熱傷を除く)、広範性挫滅性外傷(急性期後の広範性挫滅性外傷を除く)、尿毒症、ジキタリス中毒の既往歴のある患者あるいは最近ジキタリスを投与されたことのある患者 [血中カリウムの増加作用により、心停止をおこすおそれがある。] 引用元:スキサメトニウム注40・100「マルイシ」 添付文書

海外の添付文書等を参考に改訂が検討され、重症の熱傷、広範性挫滅性外傷、四肢麻痺が禁忌に移行されています。
重症の熱傷と広範性挫滅性外傷については急性期後のみが禁忌とされました。

エチレフリン塩酸塩:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

具体的な添付文書改訂内容

【旧記載要領】に従ってまとめます。
添付文書 > 禁忌 の項に以下の内容が新設されます。

禁忌
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
引用元:エホチール注10mg 添付文書

これに伴い、添付文書 > 原則禁忌 の項から「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」が削除されます。

フェニレフリン塩酸塩:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

具体的な添付文書改訂内容

【旧記載要領】に従ってまとめます。
添付文書 > 禁忌 の項に以下の内容が新設されます。

禁忌
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
引用元:ネオシネジンコーワ注 添付文書

これに伴い、添付文書 > 原則禁忌 の項から「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」が削除されます。

オザグレルナトリウム:重篤な意識障害を伴う大梗塞の患者

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

  • カタクロット注射液20mg(添付文書IF
  • カタクロット注射液40mg(添付文書IF
  • 注射用カタクロット20mg(添付文書IF
  • 注射用カタクロット40mg(添付文書IF
  • キサンボン注射用20mg(添付文書IF
  • キサンボン注射用40mg(添付文書IF
  • キサンボンS注射液20mg(添付文書IF
  • キサンボンS注射液40mg(添付文書IF
  • オキリコン注シリンジ80mg(添付文書IF
  • オサグレン点滴静注用20mg(添付文書IF
  • オザグレルNa注80mgシリンジ「各社」
  • オザグレルNa注射用20mg「各社」
  • オザグレルNa注射用40mg「各社」
  • オザグレルナトリウム点滴静注液「各社」
  • オザグレルNa点滴静注20mg「各社」
  • オザグレルNa点滴静注40mg「各社」
  • オザグレルNa点滴静注80mg「各社」
  • オザグレルNa点滴静注80mgバッグ「各社」
  • オザグレルNa点滴静注80mg/100mLバッグ「IP」
  • 注射用オザグレルナトリウム20mg「F」
  • 注射用オザグレルナトリウム40mg「F」
  • オザグレルNa注射液20mgシリンジ「サワイ」
  • オザグレルNa注射液40mgシリンジ「サワイ」
  • オザグレルNa注射液80mgシリンジ「サワイ」
  • オザグレルNa注射液80mgバッグ「サワイ」

具体的な添付文書改訂内容

【旧記載要領】に従ってまとめます。
添付文書 > 禁忌 の項に下線部の内容が追記されます。

禁忌
重篤な意識障害を伴う大梗塞の患者、脳塞栓症の患者[出血性脳梗塞が発現しやすい] 引用元:カタクロット注射液 添付文書

これに伴い、添付文書 > 原則禁忌 の項から「重篤な意識障害を伴う大梗塞の患者」が削除されます。

精製ツベルクリン:ツベルクリン反応検査においてツベルクリン反応が水ほう、壊死等の非常に強い反応を示したことのある者、ツベルクリン反応検査を行うことが不適当な状態にある者

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

  • 一般診断用精製ツベルクリン「PPD」(添付文書IF
  • 一般診断用精製ツベルクリン(PPD)1人用(添付文書IF

具体的な添付文書改訂内容

【旧記載要領】に従ってまとめます。
添付文書 > 禁忌 の項に以下の内容が新設されます。

禁忌
ツベルクリン反応検査においてツベルクリン反応が水ほう、壊死等の非常に強い反応を示したことのある者
上記に掲げる者のほか、ツベルクリン反応検査を行うことが不適当な状態にある者
引用元:一般診断用精製ツベルクリン「PPD」 添付文書

これに伴い、添付文書 > 原則禁忌 の項から「ツベルクリン反応検査においてツベルクリン反応が水ほう、壊死等の非常に強い反応を示したことのある者」、「上記に掲げる者のほか、ツベルクリン反応検査を行うことが不適当な状態にある者」が削除されます。

まとめ

着々と原則禁忌の見直しが進められていますね。
というか、正直、原則禁忌がこれだけあることを知りませんでした。
廃止になってからそれを知るなんて・・・。
原則禁忌といえば、今はなき、フィブラートとスタチンの併用、バルプロ酸と妊娠のイメージでしたね。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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