2018年11月14日、厚労省の中医協・総会で新規医薬品の薬価が決定しました。
11月19日に告示され、11月20日に薬価収載されました。
また、マヴィレット配合錠の市場拡大再算定についても決定しています。
今年度から新しく導入された「薬価収載時の薬価再算定ルール」で市場拡大を理由として再算定が行われるのは初です。
マヴィレットの薬価再算定は平成31年2月1日に実施される予定です。
参考資料
今回の記事の参考にした資料です。
官報:平成30年11月19日(号外 第254号)
使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発1119第4号 平成30年11月19日)
新医薬品一覧表(平成30年11月20日収載予定)
市場拡大再算定の特例品目について
新規有効成分を含む新医薬品
まずは新規有効成分を含有する医薬品として承認され、薬価収載が決定した医薬品についてまとめます。
今回の薬価収載では5品目が該当します。
ベオーバ錠50mg
過活動膀胱治療薬「ベオーバ®錠50mg」の新発売について(平成30年11月27日/キョーリン製薬)過活動膀胱治療薬「ベオーバ®錠50mg」の新発売について(平成30年11月27日/キッセイ薬品)ベオーバ錠50mg 添付文書ベオーバ錠50mg インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価:ベオーバ錠50mg(185.70円/錠)
- 成分名:ビベグロン
- 申請者:杏林製薬
- 効能・効果:過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
- 用法・用量:通常、成人にはビベグロンとして50mgを1日1回食後に経口投与する。
- 1日薬価:185.70円
国内2番手の選択的β3アドレナリン受容体作動薬
ベオーバはベタニス(成分名:ミラベグロン)に続く、日本で2番目の選択的β3アドレナリン受容体アゴニストです。
過活動膀胱治療薬の主流は抗コリン剤ですが、尿閉のリスクや抗コリン作用による副作用などの問題があります。
選択的β3アドレナリン受容体作動薬は抗コリン薬特有の問題を回避することが可能であるため、過活動膀胱の第一選択となることが期待されるのですが、ベタニスは使用に際しての注意点(警告や禁忌等)が非常に多いことが問題でした。
ですが、ベオーバはそのほとんどを解消した薬剤になっています。
また、剤型も小さく、徐放性でもないので服用が容易になっている点も大きいです。
詳しい内容は過去記事を参照してください。
薬価:ベタニスと同じ
ベタニスの1日薬価を元に、類似薬効比較方式(I)で薬価が決定しています。
なので、ベオーバ錠50mgの185.70円/錠はベタニス錠50mgと全く同じです。
個人的にベタニスから改良されている部分が多い薬剤だとは思いますが、直接比較を行ったデータがないので薬価には反映されていないのだと思います。
ゾスパタ錠40mg
ゾスパタ錠40mg 添付文書ゾスパタ錠40mg インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価:ゾスパタ錠40mg(19,409.10円/錠)
- 成分名:ギルテリチニブフマル酸塩
- 申請者:アステラス製薬
- 効能・効果:再発または難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病
- 用法・用量:通常、成人にはギルテリチニブとして120mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回200mgを超えないこと。
- 1日薬価:58,227.30円
FLT3/AXL阻害剤ギルテリチニブの作用機序
FLT3受容体は細胞増殖に関するシグナル伝達に関わっていますが、FLT3遺伝子に変異が怒ることで、未成熟の白血球細胞が増殖し、ガン化が引き起こされてしまいます。
また、AXL受容体はがん細胞の増殖と薬剤耐性に関与しています。
ギルテリチニブはFLT3とAXLの2つを同時に阻害することで急性骨髄性白血病における腫瘍細胞の増殖と、薬剤耐性の獲得を抑制することができる薬剤です。
FLT3とAXLの2つのシグナル伝達を同時に阻害する薬剤は世界で初めてになります。
先駆け審査指定医薬品
ギルテリチニブは先駆け審査指定医薬品です。
先駆け審査指定についてPMDAのサイトから引用します。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/topics/tp150514-01.html
患者に世界で最先端の治療薬を最も早く提供することを目指し、一定の要件を満たす画期的な新薬等について、開発の比較的早期の段階から先駆け審査指定制度の対象品目(以下「対象品目」という。)に指定し、薬事承認に係る相談・審査における優先的な取扱いの対象とするとともに、承認審査のスケジュールに沿って申請者における製造体制の整備や承認後円滑に医療現場に提供するための対応が十分になされることで、更なる迅速な実用化を図るものです。
レセプトへの記載事項
使用に際してはレセプトへの記載が必要であることが通知されています。
4 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(4)ゾスパタ錠40mg
本製剤の効能・効果に関連する使用上の注意において、「十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、FLT3遺伝子変異陽性が確認された患者に投与すること。」とされているので、FLT3遺伝子変異陽性を確認した検査の実施年月日を診療報酬明細書に記載すること。
なお、当該検査を実施した月のみ実施年月日を記載すること。ただし、本剤の初回投与に当たっては、必ず実施年月日を記載すること。
薬価:有用性加算と先駆け審査指定制度加算の対象
エボルトラ点滴静注20mgの1日薬価を元に、類似薬効比較方式(I)で薬価が決定しています。
静注と錠剤の剤形の違いによる薬価の差はエンドキサン錠50mgと注射用エンドキサン500mgの剤形間比(0.251994)が参考にされています。
有用性加算(II)(A=5%)の理由は、以下のように記載されています。
FLT3(FMS-like tyrosine kinase3)等のチロシンキナーゼ阻害作用を有する新規作用機序医薬品。本剤は、再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病患者を対象とした臨床試験で、一定の寛解率が認められており、臨床的意義があると評価されていることから、有用性加算(II)(A=5%)を適用することが適当と判断
また、先駆け審査指定制度加算については最大20%のところ10%の加算になっていますが、その理由は以下のように記載されています。
新規の作用機序を有し、世界に先駆けて日本で承認されたものである一方で、『日本における承認事項の基礎となった臨床試験』に該当する中核的な探索的試験を、日本において実施していないことから限定的な評価とした
希少疾病用医薬品に指定されているため新薬等創出加算(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)に該当します。
ベージニオ錠
- 医薬品名と薬価
- ベージニオ錠50mg:3,258.70円/錠
- ベージニオ錠100mg:5,949.20円/錠
- ベージニオ錠150mg:8,460.10円/錠
- 成分名:アベマシクリブ
- 申請者:日本イーライリリー
- 効能・効果:ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん
- 用法・用量:内分泌療法剤との併用において、通常、成人にはアベマシクリブとして1回150mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
- 1日薬価:16,920.20円
CDK4/6阻害剤アベマシクリブの作用機序
細胞は一つの細胞が二つの細胞に分裂(細胞分裂)することで増殖していきます。
細胞分裂の周期を細胞周期と言いますが、細胞周期は間期(G1期→S期→G2期)とM期に分けられます。
通常、細胞は過剰に増殖しないための自己調節を行っていますが、ホルモン受容体陽性の乳がんの場合、その調節機能が失われてしまい、がん細胞が増殖していしまいます。
細胞周期を回転させるために必要な転写因子の一つがE2Fです。
細胞休止期において、E2Fはがん抑制因子であるpRBが結合することで抑制されています。
ホルモン受容体陽性の乳がんでは、E2Fが常に活性化している状態になってしまうため、がん細胞が増殖を続けてしまいます。
ホルモン受容体陽性とはエストロゲン受容体(ER*1)陽性のことを指しますが、ER陽性のがん細胞がエストロゲンと結合するとサイクリンDという物質が合成されます。
このサイクリンDとCDK4/6という酵素が複合体を形成した結果、E2FとpRBの結合が切られてしまい、E2Fが活性化、細胞周期が回転し続ける状態になってしまいます。
ベージニオ錠の有効成分であるアベマシクリブはサイクリン依存性キナーゼ(CDK4/6*2)阻害薬に分類され、CDK4/6を選択的に阻害することで、ER陽性乳がんの細胞周期を調節し、がん細胞の過剰な増殖を抑制します。
すでに承認されているイブランスカプセル(成分名:パルボシクリブ)に続く、国内2剤目のCDK4/6阻害薬です。
レセプトへの記載事項
使用に際してはレセプトへの記載が必要であることが通知されています。
4 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(5)ベージニオ錠50mg、同錠100mg及び同錠150mg
本製剤の効能・効果は「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」であることから、ホルモン受容体陽性、HER2陰性であることを確認した検査の実施年月日を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
なお、当該検査を実施した月のみ実施年月日を記載すること。ただし、本剤の初回投与に当たっては、必ず実施年月日を記載すること。
薬価:イブランスカプセルの1日薬価と同じ
イブランスカプセル125mgの1日薬価を元に、類似薬効比較方式(I)で薬価が決定しています。
イブランスカプセルの薬価は22,560.30円/カプセルですが、用法・用量を見ると以下のように休薬期間が存在するので、1日薬価は16,920.20円(0.725倍)となります。
内分泌療法剤との併用において、通常、成人にはパルボシクリブとして1日1回125mgを3週間連続して食後に経口投与し、その後1週間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
これとベージニオ(1日300mg)の1日薬価を合わせてベージニオ錠150mgの薬価(8,460.10円/錠)が決定されています。
加算適用品等の収載(イブランスカプセル)から3年以内3番手以内のため新薬等創出加算(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)に該当します。
ローブレナ錠
平成30年11月20日発売(第三世代のALK陽性非小細胞肺がん治療薬「ローブレナ®錠25㎎、同100㎎」本日発売)
ローブレナ錠 添付文書
ローブレナ錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- ローブレナ錠25mg:7,216.40円/錠
- ローブレナ錠100mg:25,961.00円/錠
- 成分名:ロルラチニブ
- 申請者:ファイザ
- 効能・効果:ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性または不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
- 用法・用量:通常、成人にはロルラチニブとして1日1回100mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
- 1日薬価:25,961.00円
第三世代のALK/ROS1チロシンキナーゼ阻害剤
現在承認されている、非小細胞肺がんに対するALK阻害薬は以下の通りです。
- 第1世代 ALK阻害薬:クリゾチニブ(ザーコリカプセル)
- 第2世代 ALK阻害薬:
- アレクチニブ(アレセンサカプセル)
- セリチニブ(ジカディアカプセル)
ロルラチニブは第3世代の未分化リンパ腫キナーゼ(ALK*3)阻害剤です。
他のALK阻害剤に対する耐性変異を有する非小細胞肺がんに対しても効果を発揮します。
条件付き早期承認制度
ロルラチニブは条件付き早期承認制度が適用される初めての薬です。
条件付き早期承認制度についてPMDAのサイトから引用します。
医薬品条件付早期承認制度への対応 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
重篤な疾患であって有効な治療法が乏しく患者数が少ない疾患等を対象とする医薬品について、我が国での治験実施が困難、あるいは実施可能であっても治験の実施にかなりの長時間を要すると認められる場合に、承認申請時に検証的臨床試験以外の臨床試験等で一定程度の有効性及び安全性を確認した上で、製販後に有効性・安全性の再確認等のために必要な調査等を実施すること等を承認条件により付与する取扱い等を整理し、明確化することにより、企業における開発予見性を高め、早期の実用化を促進する
レセプトへの記載事項
使用に際してはレセプトへの記載が必要であることが通知されています。
4 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(6)ローブレナ錠25mg及び同錠100mg
本製剤の効能・効果は「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」であることから、他のALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容の場合にのみ投与すること。
また、本製剤の投与開始に当たっては、使用していたALKチロシンキナーゼ阻害剤の品名を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
薬価:有用性加算の対象
ザーコリカプセル250mg(12,362.40円/カプセル)の1日薬価(24,724.80円)を元に、類似薬効比較方式(I)で薬価が決定しています。
有用性加算(II)(A=5%)の理由は、以下のように記載されています。
本剤は、既存のALK-TKIに耐性となる変異として報告されているG1202R変異等を有する患者に対して奏効が認められたことから、治療方法の改善が示されていると考えられる。ただし、奏効率の結果を基に、本薬の延命効果に関する評価を行うことは困難であることから、有用性加算(II)(A=5%)とすることが妥当と判断した。
有用性加算が適用されるため新薬等創出加算(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)に該当します。
ビーリンサイト点滴静注用35μg
再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病の治療薬 「ビーリンサイト®点滴静注用35 μg」新発売のお知らせ(平成30年11月27日)ビーリンサイト点滴静注用35μg 添付文書ビーリンサイト点滴静注用35μg インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価:ビーリンサイト点滴静注用35μg(281,345円/瓶)
- 成分名:ブリナツモマブ(遺伝子組換え)
- 申請者:アステラス・アムジェン・バイオファーマ
- 効能・効果:再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病
- 用法・用量:通常、ブリナツモマブ(遺伝子組換え)として以下の投与量を28日間持続点滴静注した後、14日間休薬する。これを1サイクルとし、最大5サイクル繰り返す。その後、ブリナツモマブ(遺伝子組換え)として以下の投与量を28日間持続点滴静注した後、56日間休薬する。これを1サイクルとし、最大4サイクル繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
- 1日薬価:150,051円
BiTE®抗体ブリナツモマブの作用機序
ビーリンサイト点滴静注の有効成分であるブリナツモマブは二重特異性T細胞誘導(BiTE*4)抗体に分類されます。
BiTE®抗体とは標的細胞とT細胞の二種類に対して特異性を有するように作られた抗体で、それぞれに結合することで標的細胞とT細胞を近くに誘導します。
その結果、T細胞本来の働きにより標的細胞の細胞自己死(アポトーシス)が誘導されます。
ブリナツモマブはT細胞表面に発現するCD3とB細胞表面に発現するCD19に対して特異性を持つBiTE®抗体であるため、B細胞性急性リンパ性白血病に対して抗がん作用を発揮します。
薬価:有用性加算と小児加算の対象
ベスポンサ点滴静注用1mg(1,307,092円/瓶)の1日薬価(126,041円)を元に、類似薬効比較方式(I)で薬価が決定しています。
有用性加算(II)(A=10%)の理由は、以下のように記載されています。
本剤は、腫瘍用薬として初めての二重特異性抗体であり、T細胞とB細胞性腫瘍細胞を架橋することにより、T細胞が活性化し、腫瘍細胞を傷害する新規作用機序医薬品である。本剤の臨床試験では、主要評価項目である全生存期間について、既存化学療法群に対する本薬群の優越性が検証されているものの、比較薬とは直接の比較試験が実施されていないことを踏まえ、有用性加算(II)(A=10%)とすることが妥当と判断した。
また、小児加算(A=5%)の理由は、以下のように記載されています。
本剤は、18歳未満の小児を対象に国内で臨床試験が実施され、小児に係る用法・用量が含まれていること、比較薬は小児加算を受けていないことから、加算の要件に該当する。加算率については、国内臨床試験における症例数が限られていること等から、5%が妥当であると判断した。
希少疾病用医薬品として指定されているため新薬等創出加算(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)に該当します。
フィラジル皮下注30mgシリンジ
平成30年11月20日発売(シャイアー・ジャパン 遺伝性血管性浮腫(HAE)の新規治療薬 「フィラジル®皮下注 30 mgシリンジ」を発売)
フィラジル皮下注30mgシリンジ 添付文書
フィラジル皮下注30mgシリンジ インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価:フィラジル皮下注30mgシリンジ(301,704円/筒)
- 成分名:イカチバント酢酸塩
- 申請者:シャイアー・ジャパン
- 効能・効果:遺伝性血管性浮腫の急性発作
- 用法・用量:通常、成人にはイカチバントとして1回30mgを皮下注射する。効果が不十分な場合又は症状が再発した場合は、6時間以上の間隔をおいて1回30mgを追加投与することができる。ただし、24時間あたりの投与回数は3回までとする。
- 1日薬価:301,704円
遺伝性血管性浮腫の発作治療薬
遺伝性血管性浮腫(HAE*5)とは、遺伝子の異常により、補体第1成分阻害因子(C1インヒビター)の機能が損なわれるために起きる疾患です。
体のあらゆるところに浮腫が現れるのが症状ですが、場合によっては激しい腹痛や窒息を起こすことがあります。
そのため、急性発作への対応が重要になりますが、急性発作へ使用できる薬剤はベリナートP静注用(人C1‐インアクチベーター)しか存在しませんでした。
フィラジル皮下注は、皮下注製剤なので自己注射が可能になります。
作用機序も異なり、C1インヒビターを補充するのではなく、ブラジキニン受容体拮抗作用により、急性発作に関与するブラジキニンの働きを抑制するものです。
在宅自己注射可能な医薬品
「遺伝性血管性浮腫の急性発作」に使用される医薬品であるため当然のことですが、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤であることが通知されています。(使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発1119第4号 平成30年11月19日))
2 療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等(平成18年厚生労働省告示第107号。以下「掲示事項等告示」という。)の一部改正について
(1)イカチバント製剤について、掲示事項等告示第10第1号の「療担規則第20条第2号ト及び療担基準第 20 条第3号トの厚生労働大臣が定める保険医が投与することができる注射薬」として定めたものであること。3 特掲診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第63号)の一部改正について
イカチバント製剤について、特掲診療料の施設基準等別表第9「在宅自己注射指導管理料、注入器加算、間歇注入シリンジポンプ加算、持続血糖測定器加算及び注入器用注射針加算に規定する注射薬」として定めたものであること。4 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(7)フィラジル皮下注30mgシリンジ
- 本製剤は、イカチバント製剤であり、本製剤の自己注射を行っている患者に対して指導管理を行った場合は、「診療報酬の算定方法」(平成20年厚生労働省告示 第59号)別表第一医科診療報酬点数表(以下「医科点数表」という。)区分番号 「C101」在宅自己注射指導管理料を算定できるものであること。
- 本製剤は注入器一体型のキットであるため、医科点数表区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料を算定する場合、医科点数表区分番号「C151」注入器加算は算定できないものであること。
5 関係通知の一部改正について
(4)「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(平成30年3月5日付け保医発0305第1号)を次のように改正する。
別添1第2章第2部第3節C200(1)中「及びエミシズマブ製剤」を「、エミシズマブ製剤及びイカチバント製剤」に改める。
別添3区分01(5)イ中「及びエミシズマブ製剤」を「、エミシズマブ製剤及びイカチバント製剤」に改める。
別添3別表1中「及びエミシズマブ製剤」を「、エミシズマブ製剤及びイカチバ ント製剤」に改める。
別添3別表2中「エミシズマブ製剤」の次に「イカチバント製剤」を加える。
薬価:有用性加算と市場性加算の対象
ベリナートP静注用500(99,483円/瓶)の1日薬価(298,449円)を元に、類似薬効比較方式(I)で薬価が決定しています。
有用性加算(II)(A=5%)の理由は、以下のように記載されています。
本剤は、遺伝性血管浮腫に用いられる皮下投与製剤である。遺伝性血管浮腫の発作時にはできるだけ早く治療することが必要であるところ、本剤は従来の静脈内投与製剤と比較して早期に治療を開始することができ、治療上の利便性が高いと考えられることから、有用性加算(II)(A=5%)とすることが適当と判断した。
また、市場性加算(I)(A=10%)の理由は、以下のように記載されています。
本剤は希少疾病用医薬品の指定を受けていることから加算の要件を満たす。ただし、効能・効果が同一の医薬品が既に薬価収載されていることから、限定的な評価とし、市場性加算(I)(A=10%)を適用することが適当と判断した。
希少疾病用医薬品として指定されているため新薬等創出加算(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)に該当します。
ジビイ静注用
- 医薬品名と薬価
- ジビイ静注用500:75,376円/瓶
- ジビイ静注用1000:139,307円/瓶
- ジビイ静注用2000:257,462円/瓶
- ジビイ静注用3000:368,761円/瓶
- 成分名:ダモクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)
- 申請者:バイエル薬品
- 効能・効果:血液凝固第8因子欠乏患者における出血傾向の抑制
- 用法・用量:本剤を添付の溶解液全量で溶解し、緩徐に静脈内注射する。なお、1分間に2.5mLを超える注射速度は避けること。通常、12歳以上の患者には、1回体重1kg当たり10~30国際単位を投与するが、患者の状態に応じて適宜増減する。定期的に投与する場合、通常、12歳以上の患者には、体重1kg当たり30~40国際単位を週2回投与するが、患者の状態に応じて、体重1kg当たり45~60国際単位を5日に1回投与、又は体重1kg当たり60国際単位を週1回投与することもできる。
- 1日薬価:75,376円
半減期延長型の遺伝子組換え第8因子製剤
PEG化することで半減期を延長した遺伝子組換え第8因子製剤です。
血友病Aに対する治療薬で2歳以上の患者に対して週2回使用します。
状態に応じて、5日ごと、または週1回の用法・用量が定められているようです。
在宅自己注射可能な医薬品
遺伝子組換え型血液凝固第VIII因子製剤なので在宅自己注射が可能です。
4 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(8)ジビイ静注用500、同静注用1000、同静注用2000及び同静注用3000
- 本製剤は遺伝子組換え型血液凝固第VIII因子製剤であり、本製剤の自己注射を行っている患者に対して指導管理を行った場合は、医科点数表区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料を算定できるものであること。
- 本製剤は針及び注入器付の製品であるため、医科点数表区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料を算定する場合、医科点数表区分番号「C151」注入器加算及び「C153」注入器用注射針加算は算定できないものであること。
薬価:ノボエイトと同じ1日薬価
ノボエイト静注用3,000(204,017円/瓶)の1日薬価(70,240円)を元に、類似薬効比較方式(I)で薬価が決定しています。
エイベリス点眼液0.002%
エイベリス点眼液0.002% 新発売のお知らせ(平成30年11月27日)エイベリス点眼液0.002% 添付文書エイベリス点眼液0.002% インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価:エイベリス点眼液0.002%(945.30円/mL)
- 成分名:オミデネパグ イソプロピル
- 申請者:参天製薬
- 効能・効果:緑内障・高眼圧症
- 用法・用量:1回1滴、1日1回点眼する。
- 1日薬価:47.30円
新しいプロスタノイド関連緑内障治療薬
プロスタノイド関連の緑内障治療薬には以下のものがあります。
- プロスタグランジンF2α誘導体:イソプロピル ウノプロストン(レスキュラ)、ラタノプロスト(キサラタン)、トラボプロスト(トラバタンズ)、タフルプロスト(タプロス)
- プロスタマイドF2α誘導体:ビマトプロスト(ルミガン)
今回審議されたオミデネパグ イソプロピルはこのどれにも当てはまらない新規化合物です。
宇部興産が創薬し、参天製薬と共同開発したものです。
プロスタグランジンF2α誘導体ではなく、直接プロスタノイドEP2受容体のみに選択的に作用する化合物であるため、プロスタグランジンF2α誘導体特有の副作用である虹彩色素沈着を起こさないのが特徴です。
薬価:タプロス点眼液0.0015%と同じ薬価
タプロス点眼液0.0015%(945.30円/mL)の1日薬価(47.30円)を元に、類似薬効比較方式(I)で薬価が決定しています。
エイベリス点眼液0.002%とタプロス点眼液0.0015%の薬価は全く同じです。
既存の有効成分を用いて作られた新規医薬品
既存の医薬品として使用されている有効成分を用いて作られた医薬品についてまとめます。
新医薬品3品目と規格追加(適応追加に伴う)1品目です。
モビコール配合内用剤
モビコール配合内用剤 新発売のご案内(平成30年11月29日)モビコール配合内用剤 添付文書モビコール配合内用剤 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価:モビコール配合内用剤(83.90円/包)
- 成分名:マクロゴール4000/塩化ナトリウム/炭酸水素ナトリウム/塩化カリウム
- 申請者:EAファーマ
- 効能・効果:慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)
- 用法・用量:本剤は、水で溶解して経口投与する。
- 通常、2歳以上7歳未満の幼児には初回用量として1回1包を1日1回経口投与する。以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量として4包まで(1回量として2包まで)とする。ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として1包までとする。
- 通常、7歳以上12歳未満の小児には初回用量として1回2包を1日1回経口投与する。以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量として4包まで(1回量として2包まで)とする。ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として1包までとする。
- 通常、成人及び12歳以上の小児には初回用量として1回2包を1日1回経口投与する。以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量として6包まで(1回量として4包まで)とする。ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として2包までとする。
- 1日薬価:260.30円(国内臨床試験での平均投与量)
浸透圧性下剤の新たな選択肢
マクロゴール4000を有効成分として用いたポリエチレングリコール製剤で、浸透圧性下剤に分類されます。
小児の便秘では、原則として浸透圧性下剤から治療を開始するようにされています。
そのため、日本小児栄養消化器肝臓学会から治療薬の開発が要望され、厚労省からの開発要請を受けてEAファーマと持田製薬が共同開発しました。
この2社のコンビはグーフィス錠と同じですね。
マクロゴール4000を有効成分としているものでは、同じくEAファーマの経口腸管洗浄剤モビプレップ配合内用剤がありますが、名前も組成も近くなっています。
浸透圧性下剤として海外では広く使用されているものがようやく日本でも使用可能になります。
日本で最も多く使用されている下剤は酸化マグネシウム製剤で、同じく浸透圧性下剤に分類されますが、酸化マグネシウムは高齢者の高マグネシウム血症のリスクがあります。
それを回避できるため、第一選択になり得る薬剤なのですが、服用方法が少し煩雑かもしれませんね。
(以下の留意事項により第一選択とすることはできませんね)
他の便秘症治療薬で効果不十分な場合に使用する
モビコールについては以下の留意事項が使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発1119第4号 平成30年11月19日)の中で通知されています。
これはやはり薬価のせいかなあ?
モビコールは第一選択とならず、カマグ等でダメならモビコールって形ですね。
4 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(1)モビコール配合内用剤
本製剤の成人への使用に当たっては、他の便秘症治療薬(ルビプロストン製剤、 エロビキシバット水和物製剤及びリナクロチド製剤を除く。)で効果不十分な場合に、器質的疾患による便秘を除く慢性便秘症の患者へ使用すること。
他の新規便秘症治療薬の通知も改訂
モビコールの登場により、他の便秘治療薬の留意事項も改訂されています。
5 関係通知の一部改正について
(1)「使用薬剤の薬価(薬価基準)等の一部改正について」(平成24年11月22日付け保医発1122第3号)の記の2の(1)を次のように改める。(1)アミティーザカプセル24μg
本製剤の使用に当たっては、他の便秘症治療薬(エロビキシバット水和物製剤、リナクロチド製剤及びマクロゴール4000配合製剤を除く。)で効果不十分な場合に、器質的疾患による便秘を除く慢性便秘症の患者へ使用すること。(2)「医薬品医療機器等法上の効能・効果等の変更に伴う留意事項の一部改正等について」(平成30年8月21日付け保医発0821第1号)の記の1を次のように改める。
1 効能・効果等の一部変更承認に伴う留意事項について
リンゼス錠0.25mg本製剤の器質的疾患による便秘を除く慢性便秘症への使用に当たっては、他の便秘症治療薬(ルビプロストン製剤、エロビキシバット水和物製剤及びマクロゴール4000配合製剤を除く。)で効果不十分な場合に使用すること。(3)「使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について」(平成30年4月17日付け保医発0417第3号)の記の3の(2)を次のように改める。
(2)グーフィス錠5mg 本製剤の使用に当たっては、他の便秘症治療薬(ルビプロストン製剤、リナクロチド製剤及びマクロゴール4000配合製剤を除く。)で効果不十分な場合に、器質的疾患による便秘を除く慢性便秘症の患者へ使用すること。
薬価:グーフィスの1日薬価より高い・・・
グーフィス錠5mg(105.80円/錠)の1日薬価 215.20円(国内長期投与試験での平均投与量)を元に、類似薬効比較方式(I)で薬価が決定しています。
小児加算(A=5%)の理由は、以下のように記載されています。
本剤は、小児に係る用法・用量が明示的に含まれていること、比較薬は小児加算を受けていないことから、加算の要件に該当する。加算率については、国内小児試験における症例数が限られていること等から、5%が妥当である
効果・有用性を考えるとグーフィスと比較して遜色ない薬剤だとは思うのですが、酸化マグネシウムに変わる便秘薬になるには260.30円の1日薬価は高すぎますね・・・。
トラディアンス配合錠
2型糖尿病治療剤「トラディアンス®配合錠AP/BP」発売のお知らせ(平成30年11月20日発売)トラディアンス配合錠 添付文書トラディアンス配合錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- トラディアンス配合錠AP:283.30円/錠
- トラディアンス配合錠BP:395.60円/錠
- 成分名:エンパグリフロジン/リナグリプチン
- 申請者:日本ベーリンガーインゲルハイム
- 効能・効果:2型糖尿病(ただし、エンパグリフロジン及びリナグリプチンの併用による治療が適切と判断される場合に限る)
- 用法・用量:通常、成人には1日1回1錠(エンパグリフロジン/リナグリプチンとして10mg/5mg又は25mg/5mg)を朝食前又は朝食後に経口投与する。
- 1日薬価:283.30円
国内3番目のDPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬配合剤
DPP-4阻害薬のトラゼンタ錠(成分名:リナグリプチン)とSGLT2阻害薬のジャディアンス錠(成分名:エンパグリフロジン)の配合剤です。
同じ作用機序の組み合わせの配合剤としては、
- カナリア配合錠(成分名:テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物/カナグリフロジン水和物)
- スージャヌ配合錠(成分名:シタグリプチンリン酸塩水和物/イプラグリフロジンL-プロリン)
に続く3剤目になります。
AP/BPの2規格が存在しますが、成分含有量は以下の通りになっています。
- トラディアンス配合錠AP:リナグリプチン5mg/エンパグリフロジン10mg
- トラディアンス配合錠BP:リナグリプチン5mg/エンパグリフロジン25mg
トラディアンス配合錠はDPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬配合剤の中で唯一複数の規格をもつ薬剤になります。
これがメリットとなるか煩雑化となるか・・・。
切り替えを行う際の注意
配合剤である以上、他のものと同じように、少なくともどちらかの成分を使用していて効果不十分の場合にのみ使用可能ということになります。
効能・効果に関連する使用上の注意
- 本剤を2型糖尿病治療の第一選択薬として用いないこと。
- トラディアンス配合錠AP(エンパグリフロジン/リナグリプチンとして10mg/5mg)については、原則として以下の場合に使用を検討すること。
- 既にエンパグリフロジン10mg及びリナグリプチン5mgを併用し状態が安定している場合
- エンパグリフロジン10mgの単剤治療により効果不十分な場合
- リナグリプチン5mgの単剤治療により効果不十分な場合
- トラディアンス配合錠BP(エンパグリフロジン/リナグリプチンとして25mg/5mg)については、原則として以下の場合に使用を検討すること。なお、特にエンパグリフロジン10mg及びリナグリプチン5mgの治療により効果不十分な場合に投与する際は、経過を十分に観察すること。
- 既にエンパグリフロジン25mg及びリナグリプチン5mgを併用し状態が安定している場合
- エンパグリフロジン10mg及びリナグリプチン5mgの治療により効果不十分な場合
- エンパグリフロジン25mgの単剤治療により効果不十分な場合
- 本剤は2型糖尿病と診断された患者に対してのみ使用し、1型糖尿病の患者には投与をしないこと。
- 高度腎機能障害患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の成分であるエンパグリフロジンの効果が期待できないため、投与しないこと。
- 中等度腎機能障害患者では本剤の成分であるエンパグリフロジンの効果が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断すること。
- 本剤投与中において、本剤の投与がエンパグリフロジン及びリナグリプチンの各単剤の併用よりも適切であるか慎重に判断すること。
保険適用上の注意事項
この点については使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発1119第4号 平成30年11月19日)の中で保険適用上の留意事項として記載されています。
4 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(2)トラディアンス配合錠AP及び同配合錠BP
- 効能・効果
2型糖尿病(ただし、エンパグリフロジン及びリナグリプチンの併用による治療が適切と判断される場合に限る。)であること。- 保険適用上の取扱い
- ア 糖尿病の診断が確立した患者に対してのみ適用を考慮すること。糖尿病以外にも耐糖能異常・尿糖陽性等、糖尿病類似の症状(腎性糖尿、甲状腺機能異常等)を有する疾患があることに留意すること。
- イ 本製剤を2型糖尿病治療の第一選択薬として用いないこと。
- ウ 本製剤のうち配合錠AP(エンパグリフロジン/リナグリプチンとして10mg/5mg)については、原則として、既にエンパグリフロジン1日10mg及びリナグリプチン1日5mgを併用し状態が安定している場合、エンパグリフロジン1日10mgの単剤治療により効果不十分な場合、あるいはリナグリプチン1日5mgの単剤治療により効果不十分な場合に使用を検討すること。
- エ 本製剤のうち配合錠BP(エンパグリフロジン/リナグリプチンとして25mg/5mg)については、原則として、既にエンパグリフロジン1日25mg 及びリナグリプチン1日5mgを併用し状態が安定している場合、エンパグリフロジン1日10mg及びリナグリプチン1日5mgの治療により効果不十分な場合、ある いはエンパグリフロジン1日25mgの単剤治療により効果不十分な場合に使用を検討すること。
- オ 本製剤投与中において、本製剤の投与がエンパグリフロジン及びリナグリプ チンの各単剤の併用よりも適切であるか慎重に判断すること。
DPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬配合剤のまとめ
現時点(平成30年7月時点)で判明しているDPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬配合剤についてまとめておきます。
配合剤名 | DPP-4阻害薬 | SGLT2阻害薬 |
---|---|---|
カナリア配合錠 | テネリグリプチン 20mg (テネリア錠20mg) | カナグリフロジン 100mg (カナグル錠100mg) |
スージャヌ配合錠 | シタグリプチン 50mg (ジャヌビア錠50mg) | イプラグリフロジン 50mg (スーグラ錠50mg) |
トラディアンス配合錠AP | リナグリプチン 5mg (トラゼンタ錠5mg) | エンパグリフロジン 10mg (ジャディアンス錠10mg) |
トラディアンス配合錠BP | エンパグリフロジン 25mg (ジャディアンス錠25mg) |
薬価:トラゼンタ+ジャディアンスの0.8倍
トラゼンタ・ジャディアンスともに日本ベーリンガーインゲルハイムの製品であるため、新医療用配合剤の特例(自社品の薬価の合計の0.8倍)が適用されています。
新薬14日間の処方制限の対象外
適応や用法・用量に変化がないので新医薬品の14日処方制限はありません。
2 療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等(平成18年厚生労働省告示第107号。以下「掲示事項等告示」という。)の一部改正について
(2)新医薬品(医薬品医療機器等法第14条の4第1項第1号に規定する新医薬品をいう。)については、掲示事項等告示第10第2号(1)に規定する新医薬品に係る投薬期間制限(14日分を限度とする。)が適用されるが、掲示事項等告示の改正によって、新たにトラディアンス配合錠AP、同配合錠BP、メトアナ配合錠LD及び同配合錠HDが当該制限の例外とされた。
メトアナ配合錠
(2型糖尿病治療剤「メトアナ®配合錠」新発売のお知らせ(平成30年11月21日発売))
メトアナ配合錠 添付文書
メトアナ配合錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- メトアナ配合錠LD:62.20円/錠
- メトアナ配合錠HD:62.20円/錠
- 成分名:アナグリプチン/メトホルミン塩酸塩
- 申請者:三和化学研究所
- 効能・効果:2型糖尿病(ただし、アナグリプチン及びメトホルミン塩酸塩の併用による治療が適切と判断される場合に限る)
- 用法・用量:通常、成人には1回1錠(アナグリプチン/メトホルミン塩酸塩として100mg/250mg又は100mg/500mg)を1日2回朝夕に経口投与する。
- 1日薬価:124.40円
国内3番目のDPP-4阻害薬/メトホルミン配合剤
DPP-4阻害薬スイニー錠(成分名:アナグリプチン)とビグアナイド薬(BG*6)メトグルコ(成分名:メトホルミン塩酸塩)の配合剤です。
メトホルミンとアナグリプチンで「メトアナ」、わかりやすいネーミングですね。
BG薬とDPP-4阻害薬の配合剤には
- エクメット配合錠(成分名:ビルダグリプチン/メトホルミン塩酸塩):1日2回
- イニシンク配合錠(成分名:アログリプチン安息香酸塩/メトホルミン塩酸塩):1日1回
がありますが、メトアナがここに割って入る意義があるのかどうか・・・。
切り替えを行う際の注意
メトホルミンを含む配合剤として他のものと同じように、少なくともメトホルミンを使用していて効果不十分の場合にのみ使用可能ということになります。
効能又は効果に関連する使用上の注意
- 本剤を2型糖尿病治療の第一選択薬として用いないこと。
- 本剤LD(アナグリプチン/メトホルミン塩酸塩として100mg/250mg)については、原則として以下の場合に使用を検討すること。
- 既にアナグリプチン100mg 1日2回及びメトホルミン塩酸塩250mg 1日2回を併用し状態が安定している場合
- アナグリプチン100mg 1日2回の単剤治療により効果不十分な場合
- メトホルミン塩酸塩250mg 1日2回の単剤治療により効果不十分な場合
- 本剤HD(アナグリプチン/メトホルミン塩酸塩として100mg/500mg)については、原則として以下の場合に使用を検討すること。
- 既にアナグリプチン100mg 1日2回及びメトホルミン塩酸塩500mg 1日2回を併用し状態が安定している場合
- アナグリプチン100mg 1日2回及びメトホルミン塩酸塩250mg 1日2回の治療により効果不十分な場合
- メトホルミン塩酸塩500mg 1日2回の単剤治療により効果不十分な場合
- 本剤投与中において、本剤の投与がアナグリプチン及びメトホルミン塩酸塩の各単剤の併用よりも適切であるか慎重に判断すること。
保険適用上の注意事項
この点については使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発1119第4号 平成30年11月19日)の中で保険適用上の留意事項として記載されています。
4 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(3) メトアナ配合錠LD及び同配合錠HD
- 効能・効果
2型糖尿病(ただし、アナグリプチン及びメトホルミン塩酸塩の併用による治療が適切と判断される場合に限る)であること。- 保険適用上の取扱い
- ア 糖尿病の診断が確立した患者に対してのみ適用を考慮すること。糖尿病以外にも耐糖能異常・尿糖陽性等、糖尿病類似の症状(腎性糖尿、甲状腺機能異常等)を有する疾患があることに留意すること。
- イ 本製剤を2型糖尿病治療の第一選択薬として用いないこと。
- ウ 本製剤のうち配合錠LD(アナグリプチン/メトホルミン塩酸塩として100mg/250mg)については、原則として、既にアナグリプチン100mg 1日2回及びメトホルミン塩酸塩250mg 1日2回を併用し状態が安定している場合、アナグリプチン100mg 1日2回の単剤治療により効果不十分な場合、あるいはメトホルミン塩酸塩250mg 1日2回の単剤治療により効果不十分な場合に使用を検討すること。
- エ 本製剤のうち配合錠 HD(アナグリプチン/メトホルミン塩酸塩として100mg/500mg)については、原則として、既にアナグリプチン100mg 1日2回及びメトホルミン塩酸塩500mg 1日2回を併用し状態が安定している場合、アナグリプチン100mg 1日2回及びメトホルミン塩酸塩250mg 1日2回の治療により効果不十分な場合、あるいはメトホルミン塩酸塩500mg 1日2回の単剤治療により効果不十分な場合に使用を検討すること。
- オ 本製剤投与中において、本製剤の投与がアナグリプチン及びメトホルミン塩酸塩の各単剤の併用よりも適切であるか慎重に判断すること。
薬価:スイニーと同じ
自社製品であるスイニーとメトホルミン塩酸塩錠MT「三和」が存在しますが、それぞれの薬価の合計の0.8倍がスイニーの薬価(62.20円/錠)を下回ったため、スイニー錠100mgと同じ薬価となっています。
新薬14日間の処方制限の対象外
適応や用法・用量に変化がないので新医薬品の14日処方制限はありません。
2 療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等(平成18年厚生労働省告示第107号。以下「掲示事項等告示」という。)の一部改正について
(2)新医薬品(医薬品医療機器等法第14条の4第1項第1号に規定する新医薬品をいう。)については、掲示事項等告示第10第2号(1)に規定する新医薬品に係る投薬期間制限(14日分を限度とする。)が適用されるが、掲示事項等告示の改正によって、新たにトラディアンス配合錠AP、同配合錠BP、メトアナ配合錠LD及び同配合錠HDが当該制限の例外とされた。
ロラピタ静注2mg
ロラピタ静注2mg 添付文書ロラピタ静注2mg インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価:ロラピタ静注2mg(2,225円/瓶)
- 成分名:ロラゼパム
- 申請者:ファイザー
- 効能・効果:てんかん重積状態
- 用法・用量:通常、成人にはロラゼパムとして4mgを静脈内投与する。投与速度は2mg/分を目安として緩徐に投与すること。なお、必要に応じて4mgを追加投与するが、初回投与と追加投与の総量として8mgを超えないこと。
通常、生後3ヵ月以上の小児にはロラゼパムとして0.05mg/kg(最大4mg)を静脈内投与する。投与速度は2mg/分を目安として緩徐に投与すること。なお、必要に応じて0.05mg/kgを追加投与するが、初回投与と追加投与の総量として0.1mg/kgを超えないこと。
- 1日薬価:8,900円
ワイパックスの静注
同成分としてワイパックス錠がありますが、その静注版です。
国際抗てんかん連盟によると「てんかん重積状態とは、発作停止機構の破綻あるいは発作を引き起こす状態が異常に遷延する状態」*7を指します。
てんかん重積状態の第一選択薬はジアゼパムまたはロラゼパムの静注とされていますが、ロラゼパム静注については国内未発売です。
そのため、 日本てんかん学会から治療薬の開発が要望され、厚労省からの開発要請を受けてファイザーが開発しました。
薬価:小児加算の対象
ノーベルバール静注用250mg(2,119円/瓶)の1日薬価(8,476円)を元に、類似薬効比較方式(I)で薬価が決定しています。
小児加算(A=5%)の理由は、以下のように記載されています。
本剤は、小児に係る用法・用量が明示的に含まれていること、比較薬は小児加算を受けていないことから、加算の要件に該当する。加算率については、国内臨床試験における症例数が限られていること等から、5%が妥当であると判断した。
四半期再算定で初の市場拡大再算定が決定
今回の中医協総会では、今年4月(2018年4月)から実施されている新薬価制度における年4回(新薬の薬価収載と同時)の薬価再算定ルールがマヴィレット配合錠に適応されました。
適応されるのは8月に決定したオプジーボの固定用量に伴う用法用量変化再算定に続いて2剤目で、四半期再算定で市場拡大再算定を受けるのはマヴィレットが初になります。
マヴィレットの薬価は25%引き下げ
C型肝炎治療薬であるマヴィレット配合錠ですが、6月診療分のデータにおいて、市場拡大の特例の要件である「年間販売額が1000億円超1500億円以下、かつ基準年間販売額の1.5倍超」に該当したと判断されました。
その結果、最大引下げにお該当する25%の引下げを受けることが決定しています。
- 現行薬価:24,180.20円/錠
- 新薬価:18,135.20円/錠
新薬価は平成31年2月1日から適用される予定です。
市場拡大といっても、拡大し続ける薬剤ではないんですが、やはりルールはルールなんでしょうね。
ところで、オプジーボの新薬価ってもう適用されたのかな?全然話を聞かないんですが・・・。
まとめ
今回の薬価収載は内服が多いので薬局でも使用する機会のある薬剤が多いですね。
特にベオーバやモビコール、メトアナ、トラディアンスは多くの薬局で採用されるのではないでしょうか?
モビコールは薬価がかなり高くなってしまったのが残念です。
安ければ第一選択となることが期待されたんですが、これだけ高くなると酸化マグネシウムの牙城は崩せないかな。。。
海外ではかなり安い薬剤が存在するので日本でもそうなって欲しかったんですがルールなので仕方がないですね。
オゼンピックの薬価収載は仕切り直し
今回もオゼンピック皮下注2mgは薬価収載されていません。
平成30年3月に国内3剤目の週1回GLP-1製剤として承認されていますが、維持用量が一回0.5mgであるため、2mg1キットでは新薬であるにも関わらず4週間分になってしまうことが問題とされていました。
ノボはそれを受けて1回使い切り製剤を製造するように方針転換したようです。
期待している方も多い医薬品なんですが、ノボ自身が開発している経口GLP-1製剤がそう遠くない将来には登場しそうなので、ノボは早めにオゼンピックを発売したいところだと思います。
ラグノスやオラビは?
今回収載されたモビコールと同じタイミングで承認され、浸透圧性下剤の新たな選択肢として期待されているラグノスNF経口ゼリーや販売権が富士フィルムから大正富山に移ったオラビ錠口腔用は今回の中医協での審議には登場していません。
が、報告品目として承認されているので来月のジェネリックの薬価収載と同じかその前くらいに薬価収載されるんじゃないかと思います。
*1:Estrogen Receptor
*2:Cyclin Dependent Kinase 4/6
*3:Anaplastic Lymphoma Kinase
*4:Bispecific T-cell Engagers
*5:Hereditary AngioedEma
*6:BiGanide
*7:Trinka E, Cock H, Hesdorffer D et al: A definition and classification of status epilepticus – Report of the ILAE Task Force on Classification of Status Epilepticus. Epilepsia 56: 1515-1523, 2015.