ベゲタミンが販売中止に〜薬物乱用防止の観点から製造中止

  • 2016年6月16日
  • 2021年2月11日
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ベゲタミンが販売中止になるそうです。
正直、今のご時世では新規に承認されることは難しい薬剤かもしれません。
もし、承認されるとすれば、一定の制限がかけられるんじゃないかと思います。
その効果の強さから「飲む拘束衣」と呼ばれていたり、「赤玉」と呼ばれたりしています。
(昨年末に販売中止になったエリミンも赤玉と呼ばれていましたが、ベゲタミンが元祖ですね)
販売中止の経緯とベゲタミンについてもまとめ、代替薬について考えてみようと思います。

ベゲタミン配合錠の販売中止

塩野義製薬のホームページで「販売中止予定のご案内」が 公開されています。
https://www.shionogi.co.jp/med/download.php?h=62fda1e0b2918498edb453f29f879db0

さて、長らくご愛用いただいて参りました下記製品は、公益社団法人日本精神神経学会から「薬物乱用防止の観点からの販売中止」のご要望を提起いただき、社内検討を進めた結果、2016年12月31日をもちまして弊社からの供給を停止し、以降は流通在庫品限りで販売中止とさせていただきたく、謹んでご案内申し上げます。

公益社団法人日本精神神経学会から「薬物乱用防止の観点からの販売中止」のご要望
という文章が何気にすごいですよね。
薬価も安いですし、塩野義としても販売中止の要望を受けてまで継続して販売する理由が無かったのだと思います。

ベゲタミン配合錠A/B

最近はあまり見かけなくなった・・・と思うベゲタミン配合錠ですが、出るところではよく出ているのかもしれませんね。
薬局によってはおなじみの薬かもしれませんが、復習も兼ねてまとめておきます。

最強の睡眠薬

ベゲタミン配合錠の適応は、
「下記疾患における鎮静催眠:統合失調症、老年精神病、躁病、うつ病又はうつ状態、神経症」
鎮静剤、睡眠薬としては最後の砦、切り札とも言われているほど強いものです。

最強と言われるのはその成分。

  • ベゲタミン配合錠A:塩酸クロルプロマジン25mg、プロメタジン塩酸塩12.5mg、フェノバルビタール40mg
  • ベゲタミン配合錠B:塩酸クロルプロマジン12.5mg、プロメタジン塩酸塩12.5mg、フェノバルビタール30mg

メジャートランキライザー(CPZ)、ヒスタミンH1受容体拮抗薬、バルビツール酸という組み合わせ・・・。
ドパミンD2遮断、ヒスタミンH1受容体遮断、GABA受容体亢進の3段構えです。
鎮静・睡眠作用が強くて当たり前ですね。

そもそもバルビツール酸は今ではほとんど睡眠薬としては使用されていません。
CYP1A2・CYP2C9・CYP2C19・ CYP3A4などの酵素誘導の問題もありますし、安全域が狭い(治療域と毒性域が近い)こと、耐性がつきやすいことなどがその理由です。
現在は、ベンゾジアゼピン系が主流となっていますね。

ベゲタミン配合錠の組み合わせ

広島静養院(府中みくまり病院)の松岡龍三郎により創製されたとされているベゲタミン。
この配合を見ていると理にかなっている部分もあります。
クロルプロマジン(CPZ)によるパーキンソン症状の副作用を、プロメタジンの抗コリン作用(ムスカリンM1受容体拮抗作用)がある程度抑えてくれるはずです。
CPZとプロメタジンの鎮静・睡眠作用を加えることで、フェノバルビタールの量も抑えていますよね。
1つの薬剤でバランスが取れている、かなり絶妙な配合だと思います。

ただ、バルビツール酸は耐性を形成しやすいため、安易に使用すると服用量が増加。
また、過量服用を行ってしまうと致死的になりうるという危険性は否定できません。

ベゲタミンの代替薬は?

ベゲタミンはその効果の強さから、安易に、漫然に使用されている例もあったとは思います。
とは言っても、他の睡眠薬の効果が薄い、興奮が著しい状態の方などに、一定の管理の元で使用することで、最後の砦となりうる薬剤でした。

ベゲタミンが販売中止になったことで、どうしても・・・という方に代替薬が必要になるとは思います。
が、最強、最後の砦、切り札だったわけですからその代替と呼べるものは存在しないですね。
エリミン(成分:ニメタゼパム)が代替となりうるものだったとは思いますが、すでに販売中止になっていますね。

そうなると、エリミンの代替であるフルニトラゼパム(商品名:サイレース、ロヒプノール等)あたりがその候補になりうるのかもしれません。
もちろん、
ウィンタミンorコントミン + ヒベルナorピレチア + フェノバール
という組み合わせで再現することも可能だとは思いますが・・・。

できれば、これを機に安易なバルビツール酸の使用は避けたいところですね。
そうでないと「薬物乱用防止の観点からの販売中止」の意味がないです。
なかなか難しいケースもあるとは思いますが、可能な範囲でベンゾジアゼピン系(BZD)への切り替えを進めていきたいところです。
バルビツール酸系については離脱症状(痙攣大発作)のリスクもあるので使用量によっては販売中止に向けて減薬の準備を進めておかないといけないですね。

個人的にはベゲタミン自体、完全に不要な薬ではなく、状態によっては必要な薬とは思います。
ただし、睡眠薬として大きな制限なく処方できてしまうということが薬物乱用につながるリスクなんだと思います。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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