【薬食審・医薬品第二部会】期待のインフルエンザ治療薬ゾフルーザが審議通過【承認了承】

  • 2018年2月2日
  • 2021年1月10日
  • 薬食審
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平成30年2月2日、厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会で新薬2製品についての審議が行われました。
兼ねてから話題になっていた1回のみの経口投与で治療が完結する新規作用機序のインフルエンザ治療薬ゾフルーザの承認が了承されました。
また、ミティキュア・アシテアの小児適応やハーボニーのセログループ2に対する適応、ハーセプチンのバイオシミラーなどが報告されています。

1日1回内服のインフルエンザ治療薬ゾフルーザ

平成30年2月23日承認されました。
http://www.shionogi.co.jp/company/news/qdv9fu000001apv4-att/180223.pdf

  • 成分名:バロキサビル マルボキシル
  • 製品名:
    • ゾフルーザ錠10mg
    • ゾフルーザ錠20mg
  • 申請者:塩野義製薬
  • 効能・効果:A型又はB型インフルエンザウイルス感染症
  • 用法・用量:
    • 成人及び12歳以上の小児には1回40mg(20mg 2錠)
      • ただし体重80kg以上は80mg(20mg 4錠)
    • 12歳未満の小児
      • 体重40kg以上 1回40mg(20mg 2錠)
      • 体重20〜40kg 1回20mg
      • 10〜20kg 1回10mg

インフルエンザ治療の第一選択になれるか?

今回承認間近となったゾフルーザ、非常に魅力的な薬剤です。
S-033188として塩野義製薬が開発していることが早くから話題になっていましたから、注目していた方も多いかと思います。
現在、主流のタミフル、イナビルのメリットを併せ持つ薬剤で、今後インフルエンザの治療はゾフルーザが主流になるかもしれません。

既存インフルエンザ治療薬についてのまとめ

現在日本国内で承認されているインフルエンザ治療薬は6種類あります。

  • シンメトレル錠・シンメトレル細粒(成分名:アマンタジン) ※A型のみ
  • タミフルカプセル・タミフルドライシロップ(成分名:オセルタミビルリン酸塩)
  • リレンザ(成分名:ザナミビル水和物)
  • ラピアクタ点滴静注(成分名:ペラミビル水和物)
  • イナビル吸入粉末剤(成分名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)
  • アビガン錠(成分名:ファビピラビル)

このうち、シンメトレルはA型にしか適応がなく、多くのウイルスが耐性を獲得していることが知られており、ほとんど使用されていません。
アビガンは催奇形性を持つことが判明しているため緊急時のみの製造となっているので流通していません。

タミフル、リレンザ、ラピアクタ、イナビルの4種類が国内のインフルエンザ治療薬の主流になります。
4種類ともノイラミニダーゼ阻害薬と呼ばれている薬になります。
(シンメトレルはM2タンパク阻害薬、アビガンはRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬)

1回のみのイナビルか経口投与のタミフルか

最も使用されているのはイナビルです。
やはり1回使用すればそれで終わりというのが魅力だと思います。
これに次ぐのがタミフルです。
異常行動の報道により敬遠する人がいるとは言え、吸入が困難な場合は内服治療を選択することが多いかと思います。
点滴1回で終了するラピアクタも魅力かもしれませんが、インフルエンザウイルス保有者が長期滞在することが可能な環境でないと難しいかもしれません。

経口1回のゾフルーザ!

そんな中、今回承認間近となったゾフルーザは1回のみの内服です。
まさにイナビルとタミフルのいいとこ取り。
小児適応もあります。

気になるのは薬価ですが、成人のゾフルーザ2錠適応で現在のイナビル2キットより少し高くなるんじゃないでしょうか?
なので80kg以上でゾフルーザ4錠となるとイナビルの方が安い・・・というかゾフルーザだと結構な値段になりそうですね。

新規作用機序のインフルエンザ治療薬

ゾフルーザの成分であるバロキサビルマルボキシルはキャップ依存的エンドヌクレアーゼ阻害剤と呼ばれています。
インフルエンザウイルスは一本鎖マイナス鎖RNAウイルス((-)RNAウイルス)と呼ばれており、宿主細胞(要するに人間の細胞です)に侵入した後、その中にある遺伝子等を利用して増殖していきます。
バロキサビルマルボキシルがターゲットとするキャップ依存的エンドヌクレアーゼは、インフルエンザウイルスが宿主のmRNA前駆体から自身の増殖に必要な部分を切り取るために働く酵素です。

つまり、ゾフルーザを服用することで、インフルエンザウイルス特有のキャップ依存的エンドヌクレアーゼを阻害し、インフルエンザウイルスが細胞内で増殖することを防ぐことができます。

既存のインフルエンザ治療薬との違い

タミフル・リレンザ・イナビルはノイラミニダーゼ阻害薬。
宿主細胞内でインフルエンザウイルスが増殖するのは抑えず、あくまでも細胞外に放出するのを防ぐ働きです。
インフルエンザウイルスの増殖自体を抑えるという意味ではRNA依存型RNAポリメラーゼ阻害薬であるアビガンの方がゾフルーザに近いかもしれませんね。
ですが、アビガンは催奇形性などの副作用が問題となっています。
臨床試験のデータでは、ゾフルーザはタミフルと同等以上の効果を持ち、副作用はタミフルよりも有意に少なかったようです。
小児を含む治験データでは50%以上の患者で投与翌日にウイルス力価が陰性化しているようなので、服用後の感染防止の効果も期待できます。

ゾフルーザの発売は5月よりも早い?

今回承認が了承されたので、通常であれば3月に承認、5月に薬価収載という流れになりますが、ゾフルーザは先駆け審査指定制度の対象品目に指定されています。
実際、承認申請が2017年10月25日なのに2月初旬と、半年もかからないで審議が行われました。
ひょっとしたら予定よりも早く薬価収載までたどり着く可能性もあります。
今シーズンのインフルエンザに使用できる可能性もありますね。

シオノギとロシュが提携して発売するようなので、タミフルで培ったノウハウを生かして爆発的に売れそうな薬です。
ただし、世界初の新薬であるわけですし、疾患の性質上、使用症例がかなり広範囲になりますから、慎重な使用が求められます。
そういった部分が少し怖くもあります。

ゾフルーザについては近いうちに別記事で詳しくまとめたいと思っています。

オレンシア点滴静注用に若年性特発性関節炎の適応が追加

平成30年2月23日承認されました。
https://www.bms.com/assets/bms/japan/pressrelease/20180223.pdf

  • 成分名:アバタセプト(遺伝子組換え)
  • 製品名:オレンシア点滴静注用250mg
  • 申請者:ブリストル・マイヤーズ スクイブ
  • 追加される効能・効果:若年性特発性関節炎

若年性特発性関節炎とは?

若年性特発性関節炎とは、16歳未満の小児で6週間以上持続する原因不明(特発性)の慢性の関節炎で、指定難病です。
若年性慢性関節炎(JCA:Juvenile Chronic Arthritis)や若年性関節リウマチ(JRA:Juvenile Rheumatoid Arthritis)と呼ばれることもありましたが、現在は若年性特発性関節炎(JIA:Juvenile Idiopathic Arthritisの呼び名で統一されているようです。
(参考URL:若年性特発性関節炎とは? | こどものリウマチ | 関節リウマチを知る | リウマチeネット

炎症性サイトカイン(IL-1b、IL-6、TNF-aなど)が原因で症状が引き起こされていることはわかっていますが、詳細な原因は不明のままです。

オレンシアの作用機序

オレンシアの成分であるアバタセプトはT細胞活性化阻害薬と呼ばれています。
作用機序はややこしいのでメーカーホームページを参照しますね。

炎症発生の上流に位置する抗原提示細胞とT細胞間の共刺激シグナルを阻害することでT細胞の活性化を抑制し(in vitro)、下流の炎症性サイトカインやメディエーターの産生を抑制します(in vitro)。
さらに近年、オレンシア®は、T細胞とB細胞の相互作用も阻害することや、リウマトイド因子・抗シトルリン化蛋白抗体(ACPA)の産生を抑制することも報告されており、オレンシア®の抗炎症作用が自己抗体を介するものである可能性が示唆されています。
最近のエビデンスによるとこれだけではなく、オレンシア®が骨吸収を担う破骨細胞の形成を阻害することでRAの骨破壊を抑制することが明らかになってきました。
http://www.orencia.jp/resource/1517423347000/orencia/action/index.html

治療の新たな選択肢に

現在、若年性特発性関節炎の治療は非ステロイド性抗炎症薬、プレドニゾロン、メトトレキサート少量パルス療法、抗IL-6受容体モノクローナル抗体トシリズマブ(製品名:アクテムラ)、TNF-α阻害薬エタネルセプト(製品名:エンブレル)などで行われています。
ですが、全ての症例に有効というわけではありませんし、副作用などの問題もあるので、オレンシアが加わることで治療の選択肢が広がります。

報告品目は7品目

審議の必要はなく、報告のみで問題ないと判断された品目です。

ミティキュア・アシテアに小児適応追加(H30.2.16承認)

2品目まとめて紹介します。

  • 成分名:コナヒョウヒダニ抽出エキス及びヤケヒョウヒダニ抽出エキス
  • 製品名:
    • ミティキュアダニ舌下錠3300JAU
    • ミティキュアダニ舌下錠10000JAU
  • 申請者:鳥居薬品
  • 効能・効果の変更内容:通常、成人及び12歳以上の小児には、投与開始後1週間は、ミティキュアダニ舌下錠3,300JAUを1日1回1錠、投与2週目以降は、ミティキュアダニ舌下錠10,000JAUを1日1回1錠、舌下にて1分間保持した後、飲み込む。その後5分間は、うがい や飲食を控える。 (小児適応取得に伴い取消線が削除)
  • 成分名:ヤケヒョウヒダニエキス原末・コナヒョウヒダニエキス原末
  • 製品名:
    • アシテアダニ舌下錠100単位
    • アシテアダニ舌下錠300単位
  • 申請者:塩野義製薬
  • :通常、成人及び12歳以上の小児には、1回100単位(IR)を1日1回舌下投与から開始し、1回投与量は100単位(IR)ずつ、300単位(IR)まで増量する。 なお、漸増期間は、原則として3日間とするが、患者の状態に応じて適宜延長する。舌下投与後は完全に溶解するまで保持した後、飲み込む。その後5分間は、うがいや飲食を控える。 (小児適応取得に伴い取消線が削除)

待望の小児適応

小児で発症するアレルギー疾患の大きな原因の一つとして室内塵ダニが知られています。
そのため、両剤ともに、専門医からはより低年齢の段階からアレルゲン免疫療法に使用したいという声が上がっていたそうです。
そういう意味では待望の小児適応と言えると思います。

ちなみに、今回の適応拡大のために行われた臨床試験は、

  • ミティキュア:「5〜17歳の小児室内塵ダニアレルギー性鼻炎患者を対象とした第III相臨床試験」
  • アテシア:「5歳以上16歳以下のアレルギー性鼻炎患者を対象とした臨床試験」

となっていますが、医師が問題なく治療を行うことが可能と判断した場合は、保険上、5歳未満の小児に対して使用することも可能のようです。
でも、現実問題使用可能かと言われるとどうなんでしょうか?
年齢が低い内に治療した方がアレルギーマーチを防げるとは思うのですが、それがどのくらい早くするべきなのかと言われると。。。あまり詳しくないのでわかりません。
どうなんでしょう?

ハーボニーがセログループ2(ジェノタイプ2)に対しても使用可能に(H30.2.16承認)

  • 成分名:レジパスビル アセトン付加物/ソホスブビル
  • 製品名:ハーボニー配合錠
  • 申請者:ギリアド・サイエンシズ
  • 変更後の効能・効果:セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善(適応追加に伴い下線部が追加)
  • 用法・用量:通常、成人には1日1回1錠(レジパスビルとして90mg及びソホスブビルとして400mg)を12週間経口投与する。(変更なし)

ソバルディとハーボニーどちらが優れている?

ハーボニーの12週間投与における持続的ウイルス学的著効率(SVR12)は96%だったようです。
ソバルディ+リバビリンでのSVR12率が96.4%なので同等の効果ですね。
効果が一緒ということであれば、1日1回のみでいいハーボニーの方が用法については有利ですよね。
あとは薬価。

  • ハーボニー:54,796.9円/錠(1日薬価)
  • ソバルディ:42,239.6円/錠(1日薬価)
  • レベトール:580.1円/カプセル
    • 1日薬価(60kg以下):1,740.3円
    • 1日薬価(60kgを超え80kg以下):2,320.4円
    • 1日薬価(80kgを超える):2,900.5円
  • コペガス:789.2円/錠
    • 1日薬価(60kg以下):2,367.6円
    • 1日薬価(60kgを超え80kg以下):3,156.8円
    • 1日薬価(80kgを超える):3,946.0円

ハーボニーの場合が1日薬価54,796.9円。
ソバルディ+レベトールで最大1日薬価45,140.1円。
ソバルディ+コペガスで最大1日薬価46,185.6円。
ハーボニーが1万円弱高いか・・・。
1日薬価ですからね。
4月の薬価改定でだいぶ安くなるとは思いますが・・・。

ハーセプチン初のバイオシミラー

ハーセプチンに初めてのバイオ後続品が登場します。

  • 成分名:トラスツズマブ(遺伝子組換え )
  • 製品名:
    • トラスツズマブBS点滴静注用60mg「NK」
    • トラスツズマブBS点滴静注用150mg「NK」
  • 一般名:トラスツズマブ後続1
  • 申請者:日本化薬
  • 成分名:トラスツズマブ(遺伝子組換え )
  • 製品名:
    • トラスツズマブBS点滴静注用60mg「CTH」
    • トラスツズマブBS点滴静注用150mg「CTH」
  • 一般名:トラスツズマブ後続1
  • 申請者:セルトリオン

ザイティガの適応拡大

  • 成分名:アビラテロン酢酸エステル
  • 製品名:ザイティガ錠250mg
  • 申請者:ヤンセンファーマ
  • 追加される効能・効果:内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺がん

FDGスキャン注の適応追加

公知申請が了承されていたものです。

  • 成分名:フルデオキシグルコース(18F)
  • 製品名:FDGスキャン注
  • 申請者:日本メジフィジックス
  • 追加される効能・効果:大型血管炎の診断における炎症部位の可視化

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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