平成30年6月8日、厚生労働省の医薬品食品審議会(薬食審)医薬品第一部会が開催されました。
新薬2製品の製造承認の可否、1製品の適応追加の可否について審議され、全て承認が了承されました。
前回、平成30年5月23日の第二部会で審議されたものと同じく6月下旬ごろに正式に承認される予定です。
また、報告品目として2製品の新規格・適応・用法・用量の追加が報告されました。
新規医薬品
今回審議された新規医薬品は武田薬品のエンタイビオのみです。
新規潰瘍性大腸炎治療薬 エンタイビオ点滴静注用
2018年7月2日に承認されています。
潰瘍性大腸炎治療剤「エンタイビオⓇ」の日本における製造販売承認取得について
- 医薬品名:エンタイビオ点滴静注用300mg
- 成分名:ベドリズマブ(遺伝子組換え)
- 申請者:武田薬品
- 効能・効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
新しい潰瘍性大腸炎治療薬
潰瘍性大腸炎は免疫系の異常による疾患です。
免疫系が大腸粘膜を異物と認識した結果、血管内から腸管組織にTリンパ球が移動し、大腸粘膜を攻撃し、大腸粘膜の炎症を引き起こします。
症状の程度は様々ですが、エンタイビオの適応となるのは「中等症から重症の潰瘍性大腸」で「既存治療で効果不十分な場合」です。
Tリンパ球の遊走
血管内に存在する白血球の一種であるTリンパ球が標的部位に移動することを、「Tリンパ球の遊走」と言います。
活性化されたTリンパ球の表面には「α4β7インテグリン」と呼ばれるタンパク質が発現しています。
この「α4β7インテグリン」と呼ばれるタンパク質が、血管内皮細胞に発現している「MAdCAM-1*1」に結合することで、活性化Tリンパ球が血管内皮に接着し、そこから組織内に移行していきます。
ヒト化抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体の働き
エンタイビオの有効成分であるベドリズマブは「ヒト化抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体」と呼ばれています。
ベドリズマブは「α4β7インテグリン」に特異的に結合することで、「α4β7インテグリン」と「MAdCAM-1」の結合を阻害し、「Tリンパ球の遊走」を抑制、炎症を軽減します。
日本でも大型新薬となるか?
エンタイビオはすでに海外で発売(Entyvio)され、2016年度は全世界で1432億円を売り上げるブロックバスター*2です。
抗TNFα抗体による治療に対し効果不十分な場合でも効果が期待できることから、日本での承認が期待されています。
これまでエンティビオと呼ばれていましたが、日本国内での正式名称はエンタイビオになったみたいですね。
気になるのは薬価ですが、かなり高くなりそうですね。
→平成30年8月29日に薬価収載予定です。
エンタイビオ点滴静注用300mg:274,490円/瓶
既存の成分による新薬
レボノルゲストレルを配合する月経困難症薬ジェミーナの承認が了承されています。
ジェミーナ配合錠
2018年7月2日に承認されました。
ジェミーナ®配合錠 製造販売承認取得のご案内
- 医薬品名:ジェミーナ配合錠
- 成分名:レボノルゲストレル/エチニルエストラジオール
- 申請者:ノーベルファーマ
- 効能・効果:月経困難症
初のレボノルゲストレル配合月経困難症薬
レボノルゲストレル0.09mg、エチニルエストラジオール0.02mgの配合剤です。
28日間を1周期とするか、84日間を1周期とするか、患者ごとに用法を選択できるようです。
配合されるレボノルゲストレル/エチニルエストラジオールの量は異なりますが、成分としてはアンジュ、トリキュラー、ラベルフィーユと同じですね。
レボノルゲストレルを有効成分とする月経困難症治療薬としては子宮内黄体ホルモン放出システムであるミレーナがありますが、レボノルゲストレルを配合した薬剤で月経困難症薬に対する適応を有する薬剤は初めてです。
新規格、効能・効果の追加について審議された医薬品
トレリーフにレビィ小体型認知症に対する適応追加
パーキンソン病治療剤「トレリーフ®」のレビー小体型認知症に伴う パーキンソニズムの効能・効果を追加する一部変更承認取得について
- 医薬品名:
- トレリーフ錠25mg
- トレリーフOD錠25mg
- 成分名:ゾニサミド
- 申請者:大日本住友製
- 効能・効果:レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム(レボドパ含有製剤を使用してもパーキンソニズムが残存する場合)
レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムに対する適応を有する初の医薬品
現在は「パーキンソン病(レボドパ含有製剤に他の抗パーキンソン病薬を使用しても十分に効果が得られなかった場合)」の適応しかありませんが、「レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム(レボドパ含有製剤を使用してもパーキンソニズムが残存する場合)」が追加になります。
承認されれば「レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム」を適応に持つ薬剤は初めてです。
(アリセプトが適応とするのは「レビー小体型認知症」)
→平成30年7月2日に承認されました
報告品目
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたものです。
フェントステープ0.5mgの追加と用量変更
2018年7月2日に承認されました。
フェントステープ0.5mgの薬価収載は11月の予定です。
- 医薬品名:
- フェントステープ0.5mg(新規格追加)
- フェントステープ1mg
- フェントステープ2mg
- フェントステープ4mg
- フェントステープ6mg
- フェントステープ8mg
- 成分名:フェンタニルクエン酸塩
- 申請者:久光製薬
- 用法・用量:
0.5mgの追加と0.5mg単位の用量調節
新たな規格であるフェントステープ0.5mgが追加になります。
それに伴い、開始用量が0.5mgから選択できるようになり、0.5mg単位での用量調節も可能になります。
ジアグノグリーン注射用
- 医薬品名:ジアグノグリーン注射用25mg
- 成分名:インドシアニングリーン
- 申請者:第一三共
- 追加される効能・効果:血管及び組織の血流評価
- 用法・用量:
すでに公知申請が認められている適応
適応追加になる「血管及び組織の血流評価」の適応は公知申請が認められているため、すでに保険使用可能となっています。
今回承認されれば正式な適応として追加されます。