ボルタレン消化管閉塞、ソバルディ・ハーボニー脳血管障害、ヴィキラックス急性腎不全など〜添付文書の改訂指示

平成28年7月5日、厚労省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品について、添付文書を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回はボルタレン(成分名:ジクロフェナクナトリウム)による消化管の狭窄・閉塞、ベピオゲル・デュアック配合ゲルによる皮膚障害、エリキュースによる肝機能障害などが報告されています。
また、INFフリーのC型肝炎治療薬であるソバルディ・ハーボニーによる高血圧・脳血管障害、ヴィキラックスによる急性腎不全も報告されています。
もともと、慎重に使用する薬剤ではありますが、注意すべき項目が追加となることを意識したいところですね。

※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。

IFNフリーC型肝炎治療薬についての改訂指示

昨年、販売され話題となったインターフェロンフリーのC型肝炎治療薬ソバルディ、ハーボニー、ヴィキラックスについて、使用上の注意の改訂が指示されています。
ヴィキラックスについては死亡例が出ているので詳細を確認しておくべきかと思います。

オムビタスビル水和物・パリタプレビル水和物・リトナビルによる急性腎不全

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • ヴィキラックス配合錠

添付文書の「重要な基本的注意」の項に、以下の文章を追記するように指示が出されています。

本剤投与前及び投与開始後は定期的に腎機能検査(血清クレアチニン、BUN等)を行うこと。特に、腎機能が低下している患者、Ca拮抗剤を併用している患者では、急激に腎機能が悪化することがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

また、「副作用」の「重大な副作用」の項に、以下の文章を追記するように指示が出されています。

急性腎不全:急性腎不全があらわれることがあるので、定期的に腎機能検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

急性腎不全関連症例が14例(うち、因果関係が否定できない症例9例)報告され、死亡は1例(うち、因果関係が否定できない症例1例)です。

この死亡例はヴィキラックスの市販後調査の第5回中間報告に記載されていたものですね。
http://abbvie-channel.com/contents/contents/download.aspx?file=pdf/viekirax/report05.pdf
カルシウム拮抗剤(ニフェジピン)併用例かつ腎障害ありの患者さんでしたが、Ca拮抗薬の減量なしでヴィキラックスを投与しています。
ニフェジピンの血中濃度が高くなった結果、過度の低血圧を引き起こしてしまい、その影響により急性腎不全となってしまったと解釈していたのですが・・・。
「急性腎不全の副作用が追加」と言われると直接腎不全が引き起こされるように見えますね。
ただ、Ca拮抗剤の併用なしで腎機能の悪化が見られたケースもあったようなので、ヴィキラックス自体に腎障害を引き起こす要因があることは否定しきれないようです。
腎機能が悪い状態でも使用できる薬剤だったのですが、その考えを見直し、注意して治療を行わないといけませんね。
特に、CCB併用の場合、減量してからヴィキラックスを開始すべきということを再度徹底しなければならないです。

ソホスブビル関連製剤による高血圧・脳血管障害

INFフリーのC型肝炎治療薬と代表とも言えるソバルディ・ハーボニーですが、高血圧・脳血管障害の副作用が報告されています。
高血圧が起こる機序は何なんでしょう?
あまりにもイメージとかけ離れているので少々不思議ではあります。

ソホスブビルによる高血圧・脳血管障害

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • ソバルディ錠400mg

添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に、以下の文章を追記するように指示が出されています。

高血圧:高血圧があらわれることがあり、収縮期血圧180mmHg以上又は拡張期血圧110mmHg以上に至った例も報告されているので、投与中は血圧の推移等に十分注意すること。異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

脳血管障害:脳梗塞、脳出血等の脳血管障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

高血圧関連症例が1例(うち、因果関係が否定できない症例1例)報告され、死亡は0例です。
脳血管障害関連症例が25 例(うち、因果関係が否定できない症例8例)報告され、死亡は2例(うち、因果関係が否定できない症例0例)です。

リバビリン(ソホスブビルとの併用の用法を有する製剤)による高血圧・脳血管障害

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • コペガス錠200mg
  • レベトールカプセル200mg

添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項の〈ソホスブビルとの併用の場合〉に、以下の文章を追記するように指示が出されています。

高血圧:高血圧があらわれることがあり、収縮期血圧180mmHg以上又は拡張期血圧110mmHg以上に至った例も報告されているので、投与中は血圧の推移等に十分注意すること。異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

脳血管障害:脳梗塞、脳出血等の脳血管障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

高血圧関連症例が1例(うち、因果関係が否定できない症例1例)報告され、死亡は0例です。
脳血管障害関連症例が25 例(うち、因果関係が否定できない症例8例)報告され、死亡は2例(うち、因果関係が否定できない症例0例)です。

レジパスビル アセトン付加物・ソホスブビルによる高血圧・脳血管障害

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • ハーボニー配合錠

添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に、以下の文章を追記するように指示が出されています。

高血圧:高血圧があらわれることがあり、収縮期血圧180mmHg以上又は拡張期血圧110mmHg以上に至った例も報告されているので、投与中は血圧の推移等に十分注意すること。異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

脳血管障害:脳梗塞、脳出血等の脳血管障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

高血圧関連症例が7例(うち、因果関係が否定できない症例5例)報告され、死亡は0例です。
脳血管障害関連症例が30 例(うち、因果関係が否定できない症例11例)報告され、死亡は3例(うち、因果関係が否定できない症例0例)です。

ジクロフェナクナトリウム(経口剤、坐剤、注腸軟膏剤)による消化管の狭窄・閉塞

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • ボルタレン錠25mg
  • ジクロフェナクNa錠25mg
  • アデフロニック錠25mg
  • ダイスパス錠25mg
  • チカタレン錠25mg
  • ボルタレンSRカプセル37.5mg
  • ナボールSRカプセル37.5
  • ジクロフェナクNa徐放カプセル37.5mg
  • ジクロフェナクナトリウムSRカプセル37.5mg
  • サビスミンSRカプセル37.5mg
  • ダイスパスSRカプセル37.5mg
  • ボルタレンサポ12.5mg
  • ボルタレンサポ25mg
  • ボルタレンサポ50mg
  • ジクロフェナクナトリウム坐剤12.5mg
  • ジクロフェナクナトリウム坐剤25mg
  • ジクロフェナクナトリウム坐剤50mg
  • ジクロフェナクNa坐剤12.5mg
  • ジクロフェナクNa坐剤25mg
  • ジクロフェナクNa坐剤50mg
  • アデフロニックズポ12.5
  • アデフロニックズポ25
  • アデフロニックズポ50
  • ベギータ坐剤12.5
  • ベギータ坐剤25
  • ベギータ坐剤50
  • ボンフェナック坐剤12.5
  • ボンフェナック坐剤25
  • ボンフェナック坐剤50

添付文書の「副作用」重大な副作用の項に、以下の文章を追記するように指示が出されています。

消化管の狭窄・閉塞(消化管の潰瘍に伴い、狭窄・閉塞があらわれることがある)

消化管の狭窄・閉塞関連症例が5例(うち、因果関係が否定できない症例4例)報告され、死亡は0例です。
※因果関係が否定できない症例のうち、1 例は承認用法・用量外の症例

少し前にロキソニン(成分名:ロキソプロフェンナトリウム)で腸閉塞の副作用を追加する改訂が行われました。
腸内の粘膜障害がNSAIDs潰瘍を引き起こし、それが元でイレウスに発展してしまうということですね。
今回は大腸・小腸に限らず、より広い消化管という範囲になっていますね。

今回のものについても、ロキソニンの小腸・大腸の閉塞と同様に、特別なものという訳ではなく、従来の副作用の悪化してしまったケースと考えて良いと思います。

過酸化ベンゾイルによる皮膚障害

過酸化ベンゾイルを含む2製剤で皮膚障害についての改訂指示が出されています。
皮膚の紅斑や腫脹については、元々起こりうる副作用として知られているとは思いますが、その範囲が広がってしまうケースが報告されているようですね。

過酸化ベンゾイルによる紅斑・腫脹の範囲拡大

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • ベピオゲル2.5%

添付文書の「重要な基本的注意」の皮膚症状に関する記載に下線部を追記するよう指示が出されています。

本剤の使用中に皮膚剥脱(鱗屑・落屑)、紅斑、刺激感、腫脹等があらわれることがある。紅斑や腫脹が顔面全体や頚部にまで及ぶ症例も報告されているので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の使用を中止するなど適切な処置を行うこと。

皮膚症状関連症例が7例(うち、因果関係が否定できない症例6例)報告され、死亡は0例です。

クリンダマイシンリン酸エステル水和物・過酸化ベンゾイルによる紅斑・腫脹の範囲拡大

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • デュアック配合ゲル

添付文書の「重要な基本的注意」の皮膚症状に関する記載に下線部を追記するよう指示が出されています。

本剤の使用中に皮膚剥脱、紅斑、刺激感、腫脹等があらわれることがある。紅斑や腫脹が顔面全体や頚部にまで及ぶ症例、水疱、びらん等があらわれ、重症化した症例も報告されているので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の使用を中止するなど適切な処置を行うこと。

皮膚症状関連症例が5例(うち、因果関係が否定できない症例5例)報告され、死亡は0例です。

アピキサバンによる肝機能障害

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • エリキュース錠2.5mg
  • エリキュース錠5mg

添付文書の「副作用」重大な副作用の項に、以下の文章を追記するように指示が出されています。

肝機能障害:AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇等を伴う肝機能障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

肝機能障害関連症例が16例(うち、因果関係が否定できない症例5例)報告され、死亡は1例(うち、因果関係が否定できない症例0例)です。

エリキュースについては肝障害時の用量調節がシビアではない(用量調節は重度のみ)ため、肝臓への影響が少ないイメージがありましたが、見方を少し変えないといけませんね。

オキシトシンによるアナフィラキシー

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • アトニン−O注 1単位
  • アトニン−O注 5単位
  • オキシトシン注射液5単位「F」

添付文書の「副作用」重大な副作用の項のショックに関する記載に下線部を追記するよう指示が出されています。

ショック、アナフィラキシー:ショック、アナフィラキシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、血圧低下、発疹、発赤、そう痒感、血管性浮腫、呼吸困難、チアノーゼ等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

アナフィラキシー関連症例が5例(うち、因果関係が否定できない症例3例)報告され、死亡は0例です。
※因果関係が否定できない症例のうち、1例は過去に本剤を投与した際に過敏症の既往歴があった、禁忌に該当するもの

ニンテダニブエタンスルホン酸塩による血小板減少

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • オフェブカプセル100mg
  • オフェブカプセル150mg

添付文書の「副作用」重大な副作用の項に、以下の文章を追記するように指示が出されています。

血小板減少:血小板減少があらわれ、出血に至った重篤な症例も報告されているため、定期的に血液検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

血小板減少関連症例が5例(うち、因果関係が否定できない症例3例)報告され、死亡は2例(うち、因果関係が否定できない症例1例)です。

フィンゴリモド塩酸塩の使用上の注意変更

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • イムセラカプセル0.5mg
  • ジレニアカプセル0.5mg

添付文書の「効能・効果」の「効能・効果に関連する使用上の注意」の記載に、下線部を追記するように指示が出されています。

進行型多発性硬化症に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。一次性進行型多発性硬化症患者を対象とした海外のプラセボ対照臨床試験において、身体的障害の進行抑制効果は示されなかったとの報告がある。

また、「適用上の注意」の「その他の注意」の項に、以下の文章を追記するように指示が出されています。

3、一次性進行型多発性硬化症患者を対象とした海外のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験において、本剤0.5mg又はプラセボを1日1回36ヵ月間(最長5年間)経口投与した結果、本剤0.5mg群におけるEDSS、9-Hole Peg Test(上肢運動機能の評価指標)及びTimed 25-foot Walk Test(下肢運動機能の評価指標)を用いた複合的評価指標に基づく3ヵ月持続する障害進行が発現するまでの時間は、プラセボ群と比較して統計学的な有意差は認められなかった(ハザード比:0.95、95%信頼区間0.80~1.12)。

〈参考〉Lublin,F.,et al.:Lancet 2016;387:1075-1084

詳細は調査結果報告書を確認してください。
http://www.pmda.go.jp/files/000212890.pdf

カルムスチン使用時の気体の貯留

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • ギリアデル脳内留置用剤7.7mg

添付文書の「重要な基本的注意」の項に、以下の文章を追記するように指示が出されています。

本剤留置部位に気体の貯留が認められることがあり、神経症状を発現した例も報告されている。本剤留置後は、片麻痺、失語症、意識障害等の神経症状の観察を十分に行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。

気体の貯留関連症例が17例(うち、因果関係が否定できない症例0例)報告され、死亡は0例です。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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